第1話の15 「本当に、生きていてくれて良かった」
差し入れは、ソーセージを挟んだ大きなホットドッグが二本で、その上に溶かしたチーズがかけられていました。
「いただきます」
「いただきます」
二人手を合わせてから食べ始めました。
「いや~、まともな食事なんて、しばらくしていなかったな。何せ路銀がほぼ尽きちゃったからね。この辺りじゃ使えない硬貨ばかり残っているよ。今じゃただの金属の円盤だけど、デザインが悪くないから、好事家たちに売れないかな?」
「まあ、さっきのドコちゃんの姿を見れば、何となく想像が出来るわ。ドコちゃん、昔に比べると随分痩せてたもん」
「うん。お風呂の時、あばら骨が浮き出ていた。裸になっても、全然色気がないなって思ったよ」
「元々色気なんてないでしょ?」
ココットが淹れたお茶をすすりつつ、もぐもぐと食事を続けながら、そんなことを話しました。
「色々と知りたいことが多いんだけど、それはまた落ち着いてからゆっくりとね。しばらくこの町に滞在するつもりなんでしょ? お金が無いっていうんだから。宿に泊まれないなら、お金が出来るまでうちに泊っていきなさいよ」
「うん。そう言ってくれるとありがたいな。ココっちが立て替えてくれたお金、ちゃんと返したいし。取り敢えず、あとで何か売れそうなものでもあるか、ダメモトで荷物をあさってみるよ」
「別に返さなくて良いわよ。そんなつもりじゃ無かったんだし。何よりもドコちゃんが元気だったんだから、それが一番よ」
ココットは壁際の箪笥の上にあるドルコナの写真に目線を送りました。
同じようにドルコナもそちらに目を向けました。
「あれはいつぞやにアタシが送った写真だね。ちゃんと届いてくれたんだ。随分前に訪れた場所だったと思うけど、大切にしてくれてありがとうね」
「他にも何通か、手紙も届いたわ。でもある時から全く来なくなって、心配していたんだから」
「やっぱりそうなんだ。遠くへ行くほど、未開の土地になるからね。もっとも遠いところでは、そもそも手紙という文化がなかった」
「とんでもないところまでいったのね。後学のためにもあとでゆっくり聞かせてもらいたいわ」
そう言ってココットは指先に着いたチーズをなめとりました。
★
「それにしてもココっち、写真の周り、随分と賑やかなことになっているけど? むしろあれじゃ祭壇だよね?」
ドルコナは写真を取り巻くお飾りを指さしました。
「あれねえ…。あれは…」
そこで一旦ココットは言葉を切りました。
一口お茶を飲んでから、また口を開きました。
「だって……、だってドコちゃん……、死んじゃったって思っていたから……」
その途端、緊張の糸が切れたのか、ココットはぽろぽろと涙をこぼし始めました。
「そっか、そうだったんだね。ごめんごめん」
頭をかいたドルコナでしたが、どことなく、照れ隠しのような表情を見せていました。
「でも、良かった…。本当に、生きていてくれて良かった」
「臭くても?」
「それは、ちょっと…、やめて欲しかったかな? ぶち壊しだったもん」
ここでようやく、ココットは笑顔を見せました。
「あ~、そりゃ、悪かったね~。やり直そっか?」
「やらないわよ。あんな再会の仕方でも、十分嬉しかったから」
「そいつは良かった」
二人はお互いにニッコリとした微笑みを見せあいました。
(つづく)




