第1話の12 「脇の下を見せて踊らないで」
ココットが大衆浴場にようやく戻ってきたときは、お昼ごろになってからでした。
この時刻になると、日付の変わる深夜ごろから午前中にかけての仕事を終えた労働者たちが、身体の疲れを洗い流すために結構訪れていました。
「ドコちゃんは・・・どこかしら?」
キョロキョロと女性の湯の方を入り口から覗くと、隅っこの方で、竹で編んだやや斜めに寝られる椅子に身体をあずけ、くつろいでいるドルコナの姿を見つけました。
大衆浴場で貸し出している『てるてる坊主』のような、袖なしで上下のつながった簡素な白い衣服を着て、身体の力を抜いて気分良さそうにしていました。
そばには風呂場で洗ったのか、だいぶ綺麗になった頭蓋骨の被り物が置いてありました。
そんな身体を冷やしそうな格好で、ドルコナは気持ち良さそうに眠っている様子でした。
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ココットは番頭に軽く頭を下げてから、ドルコナに近づいていきました。
「ドコちゃん?」
「…ん? あっ、ココっち。おはよー」
ココットに気づいて、ドルコナは目を開けました。
「ちゃんと髪の毛も切ってもらったみたいね。前髪はばっさり行ってないみたいだけど」
綺麗に洗ったドルコナの髪の毛は、少し硬そうな感じでしたが、やまぶき色の綺麗な色合いを見せていました。
ココットほどではないものの、後ろ髪は首筋が見えるくらいまで短くなっていました。
前髪はある程度切ったものの、長さは残したようで、おでこに少しかかるくらいの長さは残っていました。
また横の髪もある程度残し、小さく三つ編みが造られていました。
汚れが落ちた肌の色は、ココットの記憶にあるよりも、少し日焼けをしていました。
「伸ばし放しだったわき毛も、ちゃんと剃ってもらったよ。くすぐったくて、ゲラゲラ笑っちゃった」
ドルコナはそのままの姿勢で万歳をして、それからユラユラと海藻のように左右に揺らしました。
確かにわきの下は綺麗に剃りあげられていました。
「脇の下を見せて踊らないで。はしたない」
注意をされて、ドルコナは腕を下ろしました。
「因みにドワーフの女性って、放っておくとわき毛がすっごい伸びるんだよね。旅に出てから知ったよ。また伸ばそうかな?」
「勝手にしなさい。それよりも…」
ココットはドルコナに近づき、ぐるりと一周しながらすんすんと鼻を鳴らしました。
取り敢えず清潔になっているようでした。
「一応大丈夫そうね。はい。着替えを持ってきたから、取り敢えず着替えてね。私のだから、サイズがちょっと合わないかもだけど」
「ありがとー。お風呂に入って、やっとさっぱりしたよ。そのお陰で、『大衆浴場』が『体臭の浴場』になったみたいだけど」
綺麗になった身体を確かめるように動かしながら、ドルコナはそんなことを言いました。
「つまらないダジャレを言ってないで、さっさと着替えなさいっ! 色々聞きたいことも多いんだけど、取り敢えずこの後は私の住居に移動するわよ。ドコちゃんの洗濯物も干さなくちゃいけないし。話はそれからね」
「あいあ~い。そりゃ、脱皮っ!!」
それまで着ていた『てるてる坊主』のような服を、その場ですっぽりと脱ぎました。
その下は全裸でした。
「ちょっ、こんなとこで裸にならないでよっ!? ちゃんと脱衣所で着替えてきなさいっ!」
ココットは着替えを入れた大きな袋をドルコナに押し付け、彼女の肌を隠しました。
「旅の途中、大自然の中の野営だと、水浴びなんて、いっつもこんな感じだったよ? すっぽんぽんの『解・放・感!』ってやつ? いや~、旅装束って、何か窮屈でね~」
「あんた、もう、野生に還れ」
ココットはドルコナを追い出すように外を指をさしました。
(つづく)




