第1話の11 「刈り上げキノコ言うなっ!」
そのあと、ココットはバタバタと動き回りました。
まずはドルコナを連れて朝から開いている行きつけの大衆浴場に行きました。
ここは掃除とお湯の入れ替えを除き、常に開いているので、こんなときはありがたいものでした。
大衆浴場の主人に事情を話し、ドルコナにはまず徹底的に身体を綺麗にして、風呂に入るように命じました。
またドルコナの汚れた衣服や下着、加えて大きな背負い袋に入っていた他の着替えなど、全ての衣服の洗濯をお願いしました。
だいぶ汚れていたが、それでもにこやかに引き受けてくれた洗濯専門の人たちに、ココットは『さすがはプロだなあ』と、尊敬の念を抱いてしまいました。
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元々ドルコナを大衆浴場に連れて行く予定など無かったので、ココットは持ち合わせがありませんでした。
「すみません。私は一旦戻って、お金を取ってきます。彼女のこと、よろしくお願いします。私の故郷の友人なんです。万が一、私が戻ってこなければ、その分だけ彼女をこき使っていただいて結構です。むしろ、引き取っていただいても構いません」
「ひどい。アタシ、人質なんだ~? ひっど~い! 何十年ぶりかの再会なのに~」
悪びれることなくドルコナはそんなことを口にしました。
「二度も言うなっ!! あんたのためのでしょうがっ!! ア・ン・タ・のっ!」
ココットは言葉に合わせて足を踏み鳴らしました。
「あと、お風呂を上がったら、あっちで髪の毛も切ってもらうこと!」
ココットが指さした先では、チョキチョキと鋏を鳴らして客を待っている床屋の姿がありました。
こちらを見て、ニヤリと笑いました。
やる気満々のようです。
「え~、切るの~? 面倒くさいんだよね~」
ドルコナは伸びて不潔になった髪の毛をブンブンと振りました。
「切・り・な・さ・いっ! これよりももっとバッサリとね!」
再び言葉に合わせて足を踏み鳴らしながら、更に念を押すように、ココットは自分の後頭部を指さして強い口調で言いました。
「いや~。刈り上げキノコはいや~」
そう言いながらドルコナは自分の後頭部を刈り上げる仕草を見せました。
「刈り上げキノコ言うなっ!」
ドルコナを指さしてそれだけ言い残すと、ココットは自分の暮らす集合住宅に戻っていきました。
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「おや、ココット? 何だか忙しそうだね?」
お向かいの店先で、掃除をしていたハンブが声をかけました。
「ええ。ちょっと今は取り込み中で…。また、あとでっ!」
それだけ言い残すと、急いで外部階段を駆け上がっていきました。
「ふむ。何か用意しておいた方が良いのかな?」
何かを察したハンブは、店の中に戻りました。
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ココットは自室に戻ると、直ぐに箪笥の奥から着替えになる衣服と下着を取り出し、適当な手提げ袋の中にギュッと詰め込みました。
またバケツのような大きな洗濯かごを別の部屋の住人から借り、自分の頭にかぶりました。
「あと、お金お金・・・」
がまぐちの内容を確認し、更に多めに貨幣をへそくりから追加して、がまぐちの口を閉じました。
「よし。次は…」
ココットは忘れ物がないか確認すると、鍵をかけて、再び外に出て行きました。
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それから掛け持ちしている仕事場を順番に回り、理由を話して、お休みの許可を得ました。
場所がそれぞれ離れているので、行ったり来たりと、大忙しでした。
普段、走ることのない運動不足気味のココットの脚が、パンパンになりました。
(つづく)




