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ドミノ・クラッシュ・ボウリング  作者: ℃
【第一章】 世界大会予選

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22/23

ぷくぷくぷくぷく浮上中

 レッドショットとワイルドホイールが、アメリカを出発(しゅっぱつ)した日(ひ)。


 日本(にほん)では、すでに深夜(しんや)だ。


 そんな時間(じかん)に、港(みなと)に向(む)かう三(さん)台(だい)の車(くるま)があった。


 どれも黒(くろ)塗(ぬ)りの高級(こうきゅう)車(しゃ)だ。人気(ひとけ)の少(すく)ない方(ほう)へと向(む)かっている。


 しばらく走(はし)って、タイヤが止(と)まった。


 車(くるま)の右(みぎ)側(がわ)には、古(ふる)い倉庫(そうこ)が並(なら)んでいる。


 左(ひだり)側(がわ)には、夜(よる)の海(うみ)だ。黒(くろ)い波(なみ)が揺(ゆ)れている。


 周囲(しゅうい)に人(ひと)の気配(けはい)はない。港(みなと)のにぎやかな場所(ばしょ)にある灯(あか)りも、ここまではほんの少(すこ)ししか届(とど)いていない。


 そんな暗(くら)がりで、まずは前後(ぜんご)の二(に)台(だい)から、体格(たいかく)のいい男(おとこ)たちが降(お)りてくる。


 半数(はんすう)は黒(くろ)いスーツ姿(すがた)だが、もう半数(はんすう)はその上(うえ)に救命(きゅうめい)胴衣(どうい)を着(き)ていた。


 男(おとこ)たちが無言(むごん)で、二手(ふたて)に分(わ)かれる。前方(ぜんぽう)へ走(はし)る集団(グループ)と、後方(こうほう)へ走(はし)る集団(グループ)。


 事前(じぜん)の打(う)ち合(あ)わせ通(どお)りに、それぞれの配置(はいち)についた。前方(ぜんぽう)も後方(こうほう)も、黒(くろ)いスーツと救命(きゅうめい)胴衣(どうい)の混成(こんせい)部隊(ぶたい)だ。


 ここから先(さき)は秘密(ひみつ)厳守(げんしゅ)。関係者(かんけいしゃ)以外(いがい)に知(し)られては、色々(いろいろ)と面倒(めんどう)なことになる。


 真(ま)ん中(なか)の車(くるま)からも、二人(ふたり)が降(お)りた。どちらの男(おとこ)も黒(くろ)いスーツだ。救命(きゅうめい)胴衣(どうい)は着(き)ていない。


 この二人(ふたり)はまず、周囲(しゅうい)を警戒(けいかい)した。


 次(つぎ)に無線(むせん)で、他(ほか)の男(おとこ)たちからの報告(ほうこく)を聞(き)く。


 そのあと夜(よる)の海(うみ)を見(み)た。すぐ手前(てまえ)から沖(おき)に向(む)かって。


 片方(かたほう)の男(おとこ)は肉眼(にくがん)だが、もう片方(かたほう)の男(おとこ)は暗視(あんし)ゴーグルを使用(しよう)している。


「どうだ?」


「それらしいものは見(み)えない」


 二人(ふたり)の男(おとこ)たちは、そのことを雇(やと)い主(ぬし)に報告(ほうこく)する。


 自分(じぶん)たちの雇(やと)い主(ぬし)は、真(ま)ん中(なか)にある車(くるま)、その「後部(こうぶ)座席(ざせき)」にいた。


「いや、どうも近(ちか)くにいるようだ。たった今(いま)、スマホにメールが届(とど)いた」


 そう言(い)って、紋(もん)付(つ)き袴(はかま)の老人(ムラサメ)は笑(わら)う。


 この老人(ムラサメ)は『ドミノ・クラッシュ・ボウリング』の「考案者(こうあんしゃ)」だ。


 そして、『日本(にほん)DCB協会(きょうかい)』の「会長(かいちょう)」と、『世界(せかい)DCB協会(きょうかい)』の「会長(かいちょう)」を兼任(けんにん)している。


 スマホに届(とど)いたメールは、これから会(あ)う相手(あいて)からのもので、


 ――ぷくぷくぷくぷくぷくぷく。


 どうやら、すぐそばの海中(かいちゅう)に潜(ひそ)んでいるらしい。


 ムラサメは車(くるま)を降(お)りた。


 これから人(ひと)に会(あ)う。『ドミノ・クラッシュ・ボウリング』の世界(せかい)大会(たいかい)、その『特別(とくべつ)推薦(すいせん)枠(わく)』の一人(ひとり)だ。


 またもや、「彼女(かのじょ)」からのメールが届(とど)く。


 ――ぷくぷくぷくぷく浮上(ふじょう)中(ちゅう)。


 茶色(ちゃいろ)いスーツを着(き)た中年(ちゅうねん)男性(だんせい)も、ムラサメのあとから車(くるま)を降(お)りた。


 ムラサメが事前(じぜん)にくわしく説明(せつめい)していないので、「どうして、こんな場所(ばしょ)で?」と、不安(ふあん)げな表情(ひょうじょう)をしている。この中年(ちゅうねん)男性(だんせい)は黒(くろ)いアタッシュケースを持(も)っていた。


 彼(かれ)は外務(がいむ)省(しょう)の役人(やくにん)だ。ある手(て)続(つづ)きのために、この場(ば)に同行(どうこう)してもらっている。


 ムラサメは海面(かいめん)に目(め)を向(む)けた。


 と同時(どうじ)に、その場所(ばしょ)の水(みず)がいきなり、大(おお)きく盛(も)り上(あ)がってくる。


 海中(かいちゅう)から紺碧(こんぺき)の物体(ぶったい)が浮上(ふじょう)してきた。流(なが)れ落(お)ちる水(みず)の奥(おく)では、いくつもの青(あお)いライトが点滅(てんめつ)している。


 海中(かいちゅう)から出(で)てきたばかりの大(おお)きな右(みぎ)手(て)が、コンクリートの岸壁(がんぺき)をつかんだ。


 続(つづ)いて左(ひだり)手(て)。そっちも岸壁(がんぺき)をつかむ。


 紺碧(こんぺき)の物体(ぶったい)の頭部(とうぶ)にある青(あお)いライト、「巨人(サイクロプス)の一(ひと)つ目(め)」のようなそれが、ムラサメたちの方(ほう)を向(む)いた。


 そして、残(のこ)りの全身(ぜんしん)も、海中(かいちゅう)から陸地(りくち)へと上(あ)がってくる。


 ムラサメは微動(びどう)だにしない。紺碧(こんぺき)の物体(ぶったい)の全身(ぜんしん)を観察(かんさつ)する。


 これが最新(さいしん)型(がた)の『アクティブ・ロボットアーマー』か。頭部(とうぶ)と胴体(どうたい)とがほとんど一体(いったい)化(か)しており、その手足(てあし)は太(ふと)い。


 今(いま)は「人(ひと)型(がた)」だが、「潜水艦(せんすいかん)形態(けいたい)」にもなれるとか。これまでの『アクティブ・ロボットアーマー』にはなかったタイプだ。水陸(すいりく)両用(りょうよう)で、変形(へんけい)可能(かのう)なタイプ。


 それで事前(じぜん)に、ムラサメのもとに打診(だしん)があった。「海中(かいちゅう)航行(こうこう)試験(しけん)」に協力(きょうりょく)して欲(ほ)しいと。


「インドからはるばる、日本(にほん)へようこそ」


 ムラサメは歓迎(かんげい)する。


 といっても、この『アクティブ・ロボットアーマー』はインドからずっと、「潜水艦(せんすいかん)形態(けいたい)」で海中(かいちゅう)航行(こうこう)してきたわけではない。


 ここの沖(おき)合(あ)いまでは大型(おおがた)貨物船(かもつせん)で来(き)た。海中(かいちゅう)航行(こうこう)を開始(かいし)したのは、そこからだ。それでも数(すう)十(じゅっ)キロメートルはある。


 ぷしゅー。


 機体(きたい)内外(ないがい)の気圧(きあつ)差(さ)を調整(ちょうせい)する音(おと)がした。


 そして、『アクティブ・ロボットアーマー』の前面(ぜんめん)ハッチが開(ひら)いていく。


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