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ドミノ・クラッシュ・ボウリング  作者: ℃
【第一章】 世界大会予選

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23/23

私が話す

「とーちゃーく♪」


 黒髪(くろかみ)に褐色(かっしょく)の肌(はだ)をした女性(じょせい)が、この『アクティブ・ロボットアーマー』の操縦(そうじゅう)席(せき)から、笑顔(えがお)で告(つ)げてくる。


 彼女(かのじょ)はフリーダ。『ドミノ・クラッシュ・ボウリング』の世界(せかい)大会(たいかい)、その『特別(とくべつ)推薦(すいせん)枠(わく)』の一人(ひとり)だ。


 インドの大手(おおて)ロボット企業(きぎょう)で開発(かいはつ)主任(しゅにん)をしている。若(わか)き天才(てんさい)だ。今(いま)は黒(くろ)い潜水服(ダイビングスーツ)の上(うえ)に、白衣(はくい)を羽織(はお)っている。


「えーと、パスポート、パスポートっと」


 のんびりした口調(くちょう)だが、両(りょう)手(て)は大急(おおいそ)ぎで動(うご)いている。


 彼女(フリーダ)は目当(めあ)ての物(もの)を見(み)つけると、まずはムラサメを見(み)て、次(つぎ)にボディーガードの二人(ふたり)組(ぐみ)、最後(さいご)に外務(がいむ)省(しょう)の役人(やくにん)へと視線(しせん)を移(うつ)した。


「手(て)続(つづ)きをお願(ねが)いしまーす。入国(にゅうこく)の目的(もくてき)は、世界(せかい)大会(たいかい)の出場(しゅつじょう)でーす」


 それぞれの雰囲気(ふんいき)から判断(はんだん)したらしく、外務(がいむ)省(しょう)の役人(やくにん)に向(む)かって、パスポートや必要(ひつよう)書類(しょるい)一式(いっしき)をパスしてきた。


 あわてて受(う)け取(と)る外務(がいむ)省(しょう)の役人(やくにん)。危(あや)うく地面(じめん)に落(お)とすところだった。


 ペンライトを口(くち)にくわえて、書類(しょるい)に目(め)を通(とお)す。フリーダ自身(じしん)の入国(にゅうこく)手(て)続(つづ)きに加(くわ)えて、『アクティブ・ロボットアーマー』の持(も)ち込(こ)み手(て)続(つづ)きもある。


 とはいえ、この状況(じょうきょう)だ。『アクティブ・ロボットアーマー』の機体(きたい)内部(ないぶ)を、細(こま)かく検査(けんさ)できるわけではない。


 だから、ムラサメを全面(ぜんめん)的(てき)に信用(しんよう)することにした。事前(じぜん)にくわしい説明(せつめい)こそなかったが、何(なに)か問題(もんだい)が起(お)きた場合(ばあい)には、ムラサメが全責任(ぜんせきにん)を負(お)う約束(やくそく)になっている。


 なので、とっとと手(て)続(つづ)きを済(す)ませるに限(かぎ)る。こんなところをマスコミに嗅(か)ぎつけられたら、面倒(めんどう)なことになりかねない。


 外務(がいむ)省(しょう)の役人(やくにん)が所定(しょてい)の作業(さぎょう)を進(すす)める中(なか)、二(に)台(だい)のスマホがほとんど同時(どうじ)に振動(しんどう)した。


 ムラサメのスマホと、フリーダのスマホだ。


 二人(ふたり)はそれぞれ電話(でんわ)に出(で)る。


 かけてきた相手(あいて)は違(ちが)うが、内容(ないよう)はだいたい同(おな)じだ。


 そのことを、ムラサメもフリーダも直感(ちょっかん)する。互(たが)いに視線(しせん)を合(あ)わせると、意味(いみ)ありげに笑(わら)った。


 ムラサメが言(い)う。


「その車(くるま)は通(とお)していい」


 電話(でんわ)の向(む)こう側(がわ)から、「ですが」と聞(き)こえてくるが、


「いいから通(とお)すんだ」


 数分(すうふん)後(ご)、ムラサメとフリーダがいる近(ちか)くに、黒(くろ)い大型(おおがた)トラックが到着(とうちゃく)した。


 トラックを運転(うんてん)しているのは女性(じょせい)で、褐色(かっしょく)の肌(はだ)に金色(きんいろ)の髪(かみ)をしている。黒(くろ)いサングラスをかけているので、瞳(ひとみ)の色(いろ)はわからない。


 この女性(じょせい)はプロの『運(はこ)び屋(や)』だ。人(ひと)や物(もの)を目的地(もくてきち)まで運(はこ)ぶ。依頼料(いらいりょう)は「時価(きまぐれ)」だ。


 今回(こんかい)の依頼人(いらいにん)はフリーダで、運(はこ)ぶのは最新(さいしん)の『アクティブ・ロボットアーマー』。


「よいしょっと」


 機体(きたい)の前面(ぜんめん)ハッチを開(あ)けたまま、フリーダは『アクティブ・ロボットアーマー』を操縦(そうじゅう)する。黒(くろ)い大型(おおがた)トラックへと向(む)かっていった。


 トラックの後方(こうほう)トレーラー、その側面(そくめん)が展開(てんかい)し始(はじ)める。


 フリーダは思(おも)った。機体(きたい)を分解(ぶんかい)しなくても、トレーラーの中(なか)に何(なん)とか入(はい)りそうだ。この『アクティブ・ロボットアーマー』には、かなり窮屈(きゅうくつ)な姿勢(しせい)をさせることになるけれど。


 もう一度(いちど)トラックの運転(うんてん)席(せき)を見(み)る。


 そこにいる『運(はこ)び屋(や)』の顔(かお)を見(み)て、フリーダはにやりとした。


 あの顔(かお)は見(み)たことがある。


 日本(にほん)の大学生(だいがくせい)たちのドミノを、『黒(くろ)仮面(かめん)』が破壊(クラッシュ)していった時(とき)だ。その映像(えいぞう)の一(ひと)つにほんの少(すこ)し、トラックの運転(うんてん)席(せき)が映(うつ)っていた。あの女性(じょせい)が映(うつ)っていたのだ。


 そして、フリーダは別(べつ)の場所(ばしょ)でも、あの顔(かお)を見(み)たことがある。


 中東(ちゅうとう)の某国(ぼうこく)だ。


(そこのお姫(ひめ)さま♪)


 突然(とつぜん)、フリーダのスマホに着信(ちゃくしん)がある。


 さっきは、この『運(はこ)び屋(や)』からだった。ムラサメの部下(ぶか)たちに、先(さき)に進(すす)むのを止(と)められていて、「どうすればいいのか?」を、フリーダに聞(き)いてきたのだ。


 で、今度(こんど)はインドの本社(ほんしゃ)から。


 出(で)ると、相手(あいて)は自分(フリーダ)の部下(ぶか)で、早口(はやくち)で用件(ようけん)を言(い)ってくる。今(いま)すぐ主任(フリーダ)と話(はな)したい、そんな電話(でんわ)が本社(ほんしゃ)にかかってきているらしい。


「わかった。その電話(でんわ)は、こっちに回(まわ)して。私(わたし)が話(はな)す」


 数(すう)秒(びょう)して、スマホから聞(き)こえてくる声(こえ)が変(か)わった。


 相手(あいて)はビジネスのお得意(とくい)様(さま)だ。といっても、ギャングだけど。


「今(いま)、日本(にほん)にいるらしいな?」


「そうだよ、出張(しゅっちょう)中(ちゅう)。先(さき)に言(い)ってなかったっけ? 言(い)ってたつもりだったんだけど」


「ああ、知(し)っているから電話(でんわ)した。すまないが、緊急(きんきゅう)で仕事(しごと)を頼(たの)みたい。ちょっと気(き)になる情報(じょうほう)をつかんでな」


 仕事(しごと)の内容(ないよう)を相手(あいて)が告(つ)げてくる。


 フリーダは短(みじか)く考(かんが)えてから、


「まあ、いいけど。それって、私(わたし)の専門(せんもん)分野(ぶんや)じゃない気(き)がする。だから、依頼料(いらいりょう)は高(たか)くつくよ。成功(せいこう)報酬(ほうしゅう)も弾(はず)んでもらわなきゃ」


 すると、相手(あいて)が提示(ていじ)してきた。自分(フリーダ)が予想(よそう)していた金額(きんがく)の、三(さん)倍(ばい)以上(いじょう)だ。言(い)ってみるもんだね、とフリーダはにんまりする。


 ただし、高額(こうがく)な分(ぶん)、この仕事(しごと)に関(かん)する質問(しつもん)は禁止(きんし)だ。急(きゅう)を要(よう)する。今(いま)すぐミッションにあたれ。


「了解(りょうかい)」


 相手(あいて)はお得意(とくい)様(さま)だし、このミッションには個人(こじん)的(てき)にも興味(きょうみ)がある。


(島原(しまばら)ヒミコか。たしか、世界(せかい)大会(たいかい)の日本(にほん)代表(だいひょう)だっけ)


 予定(よてい)変更(へんこう)だ。大型(おおがた)トラックの目的地(もくてきち)が変(か)わった。


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