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ドミノ・クラッシュ・ボウリング  作者: ℃
【第一章】 世界大会予選

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19/23

ギャング団の結婚パーティー(その二)

 ボウリングの玉(たま)が、ギャングたちの壁(かべ)に迫(せま)る。


 ところが、衝突(しょうとつ)の直前(ちょくぜん)になって、玉(たま)の動(うご)きが変(か)わった。


 横(よこ)に大(おお)きくそれていく。急激(きゅうげき)な横(よこ)移動(いどう)だ。


 このあと、テーブルの一(ひと)つ、その下(した)へと消(き)える。


 が、すぐに反対(はんたい)側(がわ)から出(で)てきた。


 その先(さき)には「シャンパンタワー」がある!


 予想(よそう)外(がい)の軌道(きどう)に、焦(あせ)るギャングたち。


 テーブルの存在(そんざい)で油断(ゆだん)していた。そっち側(がわ)は「がら空(あ)き」だ。


 その「がら空(あ)き」になっている場所(くうかん)を、ボウリングの玉(たま)が悠々(ゆうゆう)と走(はし)り抜(ぬ)ける。


 そして、シャンパンタワーの土台(どだい)部分(ぶぶん)に命中(めいちゅう)した!


 タワーがバランスを崩(くず)していく。


 シャンパンの入(はい)ったグラスが次々(つぎつぎ)と宙(ちゅう)に舞(ま)った。


 床(ゆか)に落(お)ちて、ガラスが割(わ)れる。その音(おと)が止(と)まらない。


 会場(かいじょう)内(ない)で何(なん)種類(しゅるい)もの悲鳴(ひめい)が上(あ)がった。


 が、惨劇(さんげき)はまだ終(お)わりではない。


 この時(とき)、黒(くろ)いボウリングの玉(たま)は次(つぎ)の獲物(えもの)へと向(む)かっていた。


 シャンパンタワーの土台(どだい)部分(ぶぶん)に当(あ)たった反動(はんどう)。その跳(は)ね返(かえ)りを利用(りよう)して、新(あら)たな道(みち)を進(すす)んでいく。「ウェディングケーキ」に向(む)かって。


 たとえ正面(しょうめん)を壁(ギャングたち)で塞(ふさ)がれていても、ケーキの横(よこ)は「がら空(あ)き」だ。


 そして、今度(こんど)も命中(めいちゅう)。シャンパンタワーに続(つづ)いて、ウェディングケーキも傾(かたむ)き始(はじ)める。


 よもやの事態(じたい)に、会場(かいじょう)内(ない)の悲鳴(ひめい)がさらに大(おお)きくなった。


 ウェディングケーキを守(まも)ろうと、その土台(どだい)部分(ぶぶん)を押(お)さえる者(もの)たちがいる。


 しかし、すでに手(て)遅(おく)れだった。ケーキは中段(ちゅうだん)付近(ふきん)から、地(じ)すべりを起(お)こしている。それより上(うえ)は絶望(ぜつぼう)的(てき)だ。


 頭上(ずじょう)から迫(せま)りくるケーキに、その場(ば)にいたギャングたちは混乱(こんらん)していた。


 逃(に)げた方(ほう)がいいのか。それとも、このケーキを受(う)け止(と)めた方(ほう)がいいのか。


 どっちの方(ほう)が、ギャング団(だん)の親分(おやぶん)や幹部(かんぶ)たちに良(よ)い印象(いんしょう)を与(あた)えるのか。


 答(こた)えが出(で)ないまま、ケーキの下(した)敷(じ)きになるギャングたち。生(なま)クリームとスポンジの中(なか)で呆然(ぼうぜん)とするしかなかった。


 結婚(けっこん)パーティーの主役(しゅやく)の一(ひと)つ、ウェディングケーキが崩壊(ほうかい)。


 この時(とき)、ケーキの崩壊(ほうかい)を最後(さいご)まで見(み)届(とど)けずに、ギャングたちが『黒(くろ)仮面(かめん)』を捕(つか)まえようとしていれば、もしかしたら結末(けつまつ)は変(か)わっていたかもしれない。


 しかし、気(き)づいた時(とき)には遅(おそ)かった。


 シャンパンタワーとウェディングケーキを破壊(クラッシュ)した犯人(はんにん)は、すでに会場(かいじょう)の外(そと)へ逃走(とうそう)している。


 そこで映像(えいぞう)が止(と)まった。


 リモコンを手(て)にしたまま、ディザスターが聞(き)いてくる。


「どうだ、ウィンロード。何(なに)か気(き)づいたか?」


 真(ま)っ先(さき)に思(おも)いついたのは、ボウリングの玉(たま)が急激(きゅうげき)な横(よこ)移動(いどう)をした件(けん)だ。


 それについて自分(じぶん)の意見(いけん)を言(い)う前(まえ)に、次(つぎ)のことを確認(かくにん)しておく。


「あのボウリングの玉(たま)は現場(げんば)に残(のこ)っているよな。その内部(ないぶ)は調(しら)べたのか?」


 世界(せかい)には、機械(きかい)仕掛(じか)けの玉(たま)が存在(そんざい)する。それを使(つか)っているなら、投球者(くろかめん)のボウリング技術(ぎじゅつ)について、いくらか評価(ひょうか)を下(さ)げた方(ほう)がいい。


「ああ。すぐに調(しら)べた結果(けっか)、あれは普通(ふつう)のボウリングの玉(たま)で、内部(ないぶ)に機械(きかい)などはなかったらしい」


 となると、あの横(よこ)移動(いどう)は投球者(くろかめん)の技術(テクニック)によるもの。


 あれと同(おな)じ技(わざ)を、ウィンロードは知(し)っている。


「あの横(よこ)移動(いどう)は、日本(にほん)のヒミコが使(つか)う『螺旋(らせん)勾玉(まがたま)』だな」


 ただし、その劣化(れっか)コピーだ。ヒミコの技(わざ)ほど洗練(せんれん)されていない。玉(たま)の動(うご)きに硬(かた)さがあった。ヒミコの『螺旋(らせん)勾玉(まがたま)』はもっとなめらかに、そして、力(ちから)強(づよ)く動(うご)く。


 それに、あの『黒(くろ)仮面(かめん)』は、体格(たいかく)からして男性(おとこ)だ。ヒミコではない。


 とはいえ、あの状況(じょうきょう)で、あそこまでのコピー技(わざ)を使(つか)うとは、ただ者(もの)ではないだろう。


 しかも、奴(やつ)は自(みずか)らの目的(もくてき)を果(は)たしている。


 シャンパンタワーの破壊(クラッシュ)。おそらく、ウェディングケーキもだ。あれは偶然(たまたま)ではなく、計算(けいさん)によるもの。


 ウィンロードは知(し)っている。あのような「跳(は)ね返(かえ)りを利用(りよう)してのドミノ破壊(クラッシュ)」。あれを得意(とくい)としている人物(おとこ)がいる。


 その人物(おとこ)の名(な)はディザスター。


「おまえが真(ま)っ先(さき)に疑(うたが)われるわけだ」


「ああ。人(おれ)の技(わざ)を使(ぱく)って、余計(よけい)なことをしやがって」


 ボウリングの玉(たま)を何(なに)かにぶつけて、その跳(は)ね返(かえ)りを利用(りよう)する。ディザスターの得意(とくい)技(わざ)だ。『サンダー・ピンボール』。


 ただし、『黒(くろ)仮面(かめん)』が使(つか)ったのは、その劣化(れっか)コピーだ。跳(は)ね返(かえ)り後(ご)のキレが足(た)りない。ディザスターの『サンダー・ピンボール』なら、もっと派手(はで)にウェディングケーキは崩壊(ほうかい)していただろう。


 ウィンロードは考(かんが)え込(こ)む。


 ヒミコの『螺旋(らせん)勾玉(まがたま)』と、ディザスターの『サンダー・ピンボール』。


 それぞれの劣化(れっか)コピーとはいえ、一回(いっかい)の投球(とうきゅう)で二(ふた)つの技(わざ)を併用(へいよう)した。


 簡単(かんたん)にできることではない。


(あの『黒(くろ)仮面(かめん)』は何者(なにもの)だ?)


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