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ドミノ・クラッシュ・ボウリング  作者: ℃
【第一章】 世界大会予選

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18/23

ギャング団の結婚パーティー(その一)

 豪華(ごうか)なホテルで、結婚(けっこん)パーティーが盛大(せいだい)に行(おこな)われている。ギャング団(だん)の結婚(けっこん)パーティーだ。


 見(み)るからに、かなりの金(かね)を使(つか)っているのがわかる。


 天井(てんじょう)まで届(とど)きそうな「シャンパンタワー」に、それとほぼ同(おな)じ高(たか)さの「ウェディングケーキ」だ。


 ウィンロードは率直(そっちょく)な感想(かんそう)を口(くち)にする。


「人相(にんそう)の悪(わる)い出席者(しゅっせきしゃ)が多(おお)いな」


「そうか? 俺(おれ)はイケメンぞろいだと思(おも)うぜ。同業者(どうぎょうしゃ)ながら、いい面(つら)構(がま)えをしている。写真(しゃしん)に撮(と)って、警察署(けいさつしょ)の中(なか)に飾(かざ)りたいくらいだ」


 映像(えいぞう)の中(なか)でいきなり、パーティー会場(かいじょう)のドアが勢(いきお)いよく開(ひら)いた。


 出席者(しゅっせきしゃ)たちの多(おお)くがそっちを見(み)る。


 だが、誰(だれ)もいない。ドアの向(む)こう側(がわ)は無人(むじん)だ。


 その直後(ちょくご)、今度(こんど)は会場(かいじょう)の通気孔(つうきこう)から、白(しろ)い煙(けむり)が流(なが)れてくる。


 出席者(しゅっせきしゃ)たちは慌(あわ)てた。


 なにせ、ここにいるのは、ギャング団(だん)の関係者(かんけいしゃ)ばかりだ。敵対(てきたい)する組織(そしき)は、ごまんといる。そんな奴(やつ)らから恨(うら)みを買(か)うのは「日常茶飯事(いつものこと)」。ギャングの「職業病(あたりまえ)」だ。


 よって、この白(しろ)い煙(けむり)はたぶん、ろくなもんじゃない。とっさに口(くち)に、ハンカチやナプキンをあてる。


 次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)だ。


 テーブルクロスをめくり上(あ)げて、その内側(うちがわ)から何者(なにもの)かが飛(と)び出(だ)してくる。


 頭部(とうぶ)全体(ぜんたい)を覆(おお)う「黒(くろ)い仮面(かめん)」だ。目(め)の部分(ぶぶん)だけが赤(あか)く光(ひか)っている。


 全身(ぜんしん)には、黒(くろ)い金属(きんぞく)スーツを着用(ちゃくよう)していた。さらに背中(せなか)には、銀色(ぎんいろ)のマントだ。


 出席者(しゅっせきしゃ)たちは驚(おどろ)く。


 あの『黒(くろ)仮面(かめん)』だ。日本(にほん)で大学生(だいがくせい)たちのドミノを破壊(クラッシュ)していった、正体(しょうたい)不明(ふめい)の人物(じんぶつ)。


 なぜ、そんな奴(やつ)がここにいる?


 パーティーの余興(よきょう)か? 身内(みうち)の仮装(かそう)?


 しかし、それにしては、警備(けいび)担当者(たんとうしゃ)たちの慌(あわ)て方(かた)がリアルすぎるような・・・・・・。


 そんな出席者(しゅっせきしゃ)たちの顔(かお)を画面(がめん)ごしに見(み)ながら、提督(ウィンロード)は考(かんが)える。


 あの『黒(くろ)仮面(かめん)』が本物(ほんもの)であれ、ニセモノであれ、パーティーが始(はじ)まる前(まえ)から、テーブルの一(ひと)つに潜(ひそ)んでいたのは間(ま)違(ちが)いない。


 といっても、これは二(ふた)つのギャング団(だん)による結婚(けっこん)パーティーだ。その会場(かいじょう)は前(まえ)もって、徹底(てってい)的(てき)に調(しら)べたはず。暗殺者(ヒットマン)が潜(ひそ)んでいないか。爆弾(ばくだん)が仕掛(しか)けられていないか。


(にもかかわらず、あのテーブルの下(した)に『黒(くろ)仮面(かめん)』は潜伏(せんぷく)していたことになる)


 普通(ふつう)に考(かんが)えるなら、出席者(ギャング)たちの中(なか)に「裏(うら)切(ぎ)り者(もの)」がいる。いや、この『黒(くろ)仮面(かめん)』の潜伏(せんぷく)技術(ぎじゅつ)が卓越(たくえつ)している可能性(かのうせい)も・・・・・・。


 だが、今(いま)は思(おも)ったことを口(くち)には出(だ)さない。まずは映像(えいぞう)の確認(かくにん)を優先(ゆうせん)した。


 画面(がめん)の中(なか)の『黒(くろ)仮面(かめん)』を目(め)で追(お)う。


 日本(にほん)に現(あらわ)れた時(とき)の映像(えいぞう)は、これまでに何回(なんかい)も見(み)る機会(きかい)があった。


 日本(にほん)の時(とき)と同(おな)じだ。今回(こんかい)も『黒(くろ)仮面(かめん)』は、インラインスケートをはいている。


 そして、手(て)には「黒(くろ)いボウリングの玉(たま)」だ。


 ただし、日本(にほん)の時(とき)とはサイズが違(ちが)う。通常(つうじょう)のボウリングの玉(たま)よりも小(ちい)さい。ハンドボールくらいだ。


(『ドミノ・クラッシュ・ボウリング』には、あのサイズの玉(たま)もあるが・・・・・・)


 通常(つうじょう)サイズの玉(たま)と比(くら)べて、あのサイズの玉(たま)を使(つか)うには、高(たか)い技術(ぎじゅつ)が求(もと)められる。


 その使(つか)い手(て)として代表(だいひょう)的(てき)なのは、


(日本(にほん)の島原(しまばら)ヒミコ)


 しかし、『黒(くろ)仮面(かめん)』の体格(たいかく)は明(あき)らかに男性(おとこ)だ。


 不審(ふしん)人物(じんぶつ)の登場(とうじょう)によって、パーティー会場(かいじょう)が騒然(そうぜん)となる。


 そんな中(なか)を、インラインスケートで滑走(かっそう)していく『黒(くろ)仮面(かめん)』。


 その向(む)かう先(さき)には、シャンパンタワーがある。


 出席者(ギャング)たちもそれに気(き)づき、急(いそ)いで席(せき)から立(た)ち上(あ)がった。上着(うわぎ)の内側(うちがわ)を素(す)早(ばや)く手(て)で探(さぐ)る。


 ここで大事(だいじ)なことを思(おも)い出(だ)した。このパーティーは、武器(ぶき)の持(も)ち込(こ)みが禁止(きんし)だ。銃(じゅう)がない!


 ギャングたちは舌(した)打(う)ちをする。


 こうなったら、体(からだ)を張(は)って防(ふせ)ぐまでだ。次々(つぎつぎ)と通路(つうろ)に飛(と)び出(だ)すと、シャンパンタワーの前(まえ)で立(た)ちはだかる。またたく間(ま)に、肉(にんげん)の壁(たて)をつくり上(あ)げた。


 見(み)たか! これがギャングの結束力(けっそくりょく)だ! シャンパンタワーへの道(みち)は封(ふう)じたぞ!


 ここで『黒(くろ)仮面(かめん)』が向(む)きを変(か)えた。今(いま)いる通路(つうろ)はあきらめて、隣(となり)の通路(つうろ)へ向(む)かうようだ。


 そっちの通路(つうろ)の先(さき)には、ウェディングケーキがある。


 しかし、そっちでもギャングたちの壁(かべ)が、ほとんど完成(かんせい)していた。ケーキの正面(しょうめん)はほぼ完全(かんぜん)に防御(ガード)されている状態(じょうたい)。


 たとえ銃(じゅう)の弾(たま)が向(む)かってきても、絶対(ぜったい)に止(と)めてやるぞ! そんな気迫(きはく)で、男(おとこ)たちが密集隊形(スクラム)を組(く)んでいる。よし! たった今(いま)、ケーキ正面(しょうめん)の壁(かべ)が完成(かんせい)した!


 立(た)ちはだかる人間(ギャングたち)の壁(かべ)。それを目(め)にしておきながら、『黒(くろ)仮面(かめん)』はこのまま挑戦(ちょうせん)する気(き)らしい。しなやかな動(うご)きで、投球(とうきゅう)体勢(たいせい)に入(はい)った。


 ボウリングの玉(たま)は一(ひと)つだけだ。外(はず)せば次(つぎ)はない。


 しかも、ここはギャング団(だん)の結婚(けっこん)パーティー。ギャングたちに捕(つか)まれば、地獄(じごく)行(い)きが確定(かくてい)する。


 なので、これは「投球(とうきゅう)後(ご)の逃走(とうそう)も考(かんが)えながらの一投(いっとう)」だ。非常(ひじょう)に難易度(なんいど)の高(たか)い一投(いっとう)になる。


 こうして放(はな)たれたボウリングの玉(たま)。ウェディングケーキに向(む)かって進(すす)んでいく。


 その場(ば)にいたギャングたちは、この玉(たま)を「速(はや)い」と感(かん)じたようだ。そんな表情(かお)をしている。


 が、ウィンロードの目(め)には「少(すこ)し遅(おそ)いな」と映(うつ)っていた。


 だからこそ、警戒(けいかい)する。「速(はや)さ」を捨(す)てた分(ぶん)、あの玉(たま)は「別(べつ)の何(なに)か」に力(ちから)を注(そそ)いでいる。


 ディザスターから、事件(じけん)の結末(けつまつ)は聞(き)いているのだ。ここからどうやって、あの「シャンパンタワー」を破壊(クラッシュ)するのか。


 ボウリングの玉(たま)が向(む)かう先(さき)にあるのは、シャンパンタワーではなく、「ウェディングケーキ」だ。


 普通(ふつう)に考(かんが)えるなら、ウェディングケーキを倒(たお)して、シャンパンタワーを巻(ま)き込(こ)む方法(ほうほう)。


 しかし、ウェディングケーキの前(まえ)には、すでにギャングたちの壁(かべ)が完成(かんせい)している。


 この状況(じょうきょう)を突破(とっぱ)して、あのウェディングケーキを破壊(クラッシュ)するためには・・・・・・。


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