ギャング団の結婚パーティー(その一)
豪華なホテルで、結婚パーティーが盛大に行われている。ギャング団の結婚パーティーだ。
見るからに、かなりの金を使っているのがわかる。
天井まで届きそうな「シャンパンタワー」に、それとほぼ同じ高さの「ウェディングケーキ」だ。
ウィンロードは率直な感想を口にする。
「人相の悪い出席者が多いな」
「そうか? 俺はイケメンぞろいだと思うぜ。同業者ながら、いい面構えをしている。写真に撮って、警察署の中に飾りたいくらいだ」
映像の中でいきなり、パーティー会場のドアが勢いよく開いた。
出席者たちの多くがそっちを見る。
だが、誰もいない。ドアの向こう側は無人だ。
その直後、今度は会場の通気孔から、白い煙が流れてくる。
出席者たちは慌てた。
なにせ、ここにいるのは、ギャング団の関係者ばかりだ。敵対する組織は、ごまんといる。そんな奴らから恨みを買うのは「日常茶飯事」。ギャングの「職業病」だ。
よって、この白い煙はたぶん、ろくなもんじゃない。とっさに口に、ハンカチやナプキンをあてる。
次の瞬間だ。
テーブルクロスをめくり上げて、その内側から何者かが飛び出してくる。
頭部全体を覆う「黒い仮面」だ。目の部分だけが赤く光っている。
全身には、黒い金属スーツを着用していた。さらに背中には、銀色のマントだ。
出席者たちは驚く。
あの『黒仮面』だ。日本で大学生たちのドミノを破壊していった、正体不明の人物。
なぜ、そんな奴がここにいる?
パーティーの余興か? 身内の仮装?
しかし、それにしては、警備担当者たちの慌て方がリアルすぎるような・・・・・・。
そんな出席者たちの顔を画面ごしに見ながら、提督は考える。
あの『黒仮面』が本物であれ、ニセモノであれ、パーティーが始まる前から、テーブルの一つに潜んでいたのは間違いない。
といっても、これは二つのギャング団による結婚パーティーだ。その会場は前もって、徹底的に調べたはず。暗殺者が潜んでいないか。爆弾が仕掛けられていないか。
(にもかかわらず、あのテーブルの下に『黒仮面』は潜伏していたことになる)
普通に考えるなら、出席者たちの中に「裏切り者」がいる。いや、この『黒仮面』の潜伏技術が卓越している可能性も・・・・・・。
だが、今は思ったことを口には出さない。まずは映像の確認を優先した。
画面の中の『黒仮面』を目で追う。
日本に現れた時の映像は、これまでに何回も見る機会があった。
日本の時と同じだ。今回も『黒仮面』は、インラインスケートをはいている。
そして、手には「黒いボウリングの玉」だ。
ただし、日本の時とはサイズが違う。通常のボウリングの玉よりも小さい。ハンドボールくらいだ。
(『ドミノ・クラッシュ・ボウリング』には、あのサイズの玉もあるが・・・・・・)
通常サイズの玉と比べて、あのサイズの玉を使うには、高い技術が求められる。
その使い手として代表的なのは、
(日本の島原ヒミコ)
しかし、『黒仮面』の体格は明らかに男性だ。
不審人物の登場によって、パーティー会場が騒然となる。
そんな中を、インラインスケートで滑走していく『黒仮面』。
その向かう先には、シャンパンタワーがある。
出席者たちもそれに気づき、急いで席から立ち上がった。上着の内側を素早く手で探る。
ここで大事なことを思い出した。このパーティーは、武器の持ち込みが禁止だ。銃がない!
ギャングたちは舌打ちをする。
こうなったら、体を張って防ぐまでだ。次々と通路に飛び出すと、シャンパンタワーの前で立ちはだかる。またたく間に、肉の壁をつくり上げた。
見たか! これがギャングの結束力だ! シャンパンタワーへの道は封じたぞ!
ここで『黒仮面』が向きを変えた。今いる通路はあきらめて、隣の通路へ向かうようだ。
そっちの通路の先には、ウェディングケーキがある。
しかし、そっちでもギャングたちの壁が、ほとんど完成していた。ケーキの正面はほぼ完全に防御されている状態。
たとえ銃の弾が向かってきても、絶対に止めてやるぞ! そんな気迫で、男たちが密集隊形を組んでいる。よし! たった今、ケーキ正面の壁が完成した!
立ちはだかる人間の壁。それを目にしておきながら、『黒仮面』はこのまま挑戦する気らしい。しなやかな動きで、投球体勢に入った。
ボウリングの玉は一つだけだ。外せば次はない。
しかも、ここはギャング団の結婚パーティー。ギャングたちに捕まれば、地獄行きが確定する。
なので、これは「投球後の逃走も考えながらの一投」だ。非常に難易度の高い一投になる。
こうして放たれたボウリングの玉。ウェディングケーキに向かって進んでいく。
その場にいたギャングたちは、この玉を「速い」と感じたようだ。そんな表情をしている。
が、ウィンロードの目には「少し遅いな」と映っていた。
だからこそ、警戒する。「速さ」を捨てた分、あの玉は「別の何か」に力を注いでいる。
ディザスターから、事件の結末は聞いているのだ。ここからどうやって、あの「シャンパンタワー」を破壊するのか。
ボウリングの玉が向かう先にあるのは、シャンパンタワーではなく、「ウェディングケーキ」だ。
普通に考えるなら、ウェディングケーキを倒して、シャンパンタワーを巻き込む方法。
しかし、ウェディングケーキの前には、すでにギャングたちの壁が完成している。
この状況を突破して、あのウェディングケーキを破壊するためには・・・・・・。




