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1-4 基本的にサチカは単細胞の馬鹿です

そして翌日。

私は夢を見ていた。



『サチカ! 昨日は良くも僕のことをあれだけコケにしてくれたな!』

『ああ、王子! 済まなかった。私はただ良かれと思って……』

『だまれ! 何が良かれと思ってだ! ああも無礼な女はお前が初めてだ! 婚約は解消する!』


夢の中に出てきたブラス王子は、憎しみを込めた目で私を睨みつけてきた。

まあ当然だろう、あれだけのことを言ったんだから。


『解消、ということはまさか……』

『そうだ! あの『嘆きの修道院』に君を送りつけてくれる!』

『うひょ! ……じゃない、なんてことを! ……なんて待ち遠しい、じゃない、恐ろしいことを考えるんだ……およよ……』


そう言いながらも、夢の中の『私』は、必死につらそうな演技をしていた。この世界の『貞淑な女性』を意識しているのが、客観的に見ても明らかだった。

そんな私の胸元を見て、王子はにやりと笑う。



『いや、だめだ。それだけでは気が収まらないな。あれだけ僕のことをバカにしたんだ。その代償を体に刻みつけさせてやる!』

『その意気だ! ……じゃない、何をするつもりだ、ブラス王子!』

『こうしてやるんだよ!』


そう言うと、ブラス王子は強引にキスをすると私の首筋を抑えたまま、私の下に潜り込んで叫んだ。


『さあ、僕の上に乗れ! ぼろ雑巾みたいになるまで、この手は離さないからな!』

『よっしゃ、任せろ! ……じゃない、えっと……まあいいや、それじゃ、いただきまーす!』



だが、そこまで言って王子のズボンに手を伸ばしたところで私は目を覚ました。



ーーーーーーーーーーーーー



「ん……夢だったのか。くそ、いいとこだったのに……」


思わず私はそうつぶやいた。

だが、きっとこれは正夢になるだろう。


そう思いながら私は、下半身が熱くなるのを感じながら、足音を待った。


(来た!)


そしてしばらくの後、数人の足音が聞こえて、私の部屋の前に止まる。

使用人のセドナの足音ではない。彼は機械のように規則的な歩き方だった。

だから、やはりブラス王子とお供達だろう。


だが、王子にだけ襲われるのではもったいない。周りの取り巻きも結構良い感じの奴らだし、あいつらも『その気』にさせてやろう。


(ひらめいた!)


ふと私は思いついた。

私達の世界の女は『男体』を見ただけで欲情する。

ということは彼らも同様なはずだ。


(そうだ、この世界の貞操観念なら、きっと私の裸なんかでも興奮すんだよな……良し、それなら……全裸待機とまではいかないが……)



そう思って私は服を脱ぎ、下着姿で待ち構えた。

そして少しののち。


「サチカ殿は、おられるか?」


そう聞こえてきたので私は待ちきれずにドアを開く。

そして大股を開きながらバッと手を伸ばして彼らを迎え入れる。


「ウェルカアアアム!」

「うお!」

「わあ!」

「む……!」



だが、そこにいた男はブラス王子ではなかった。


「あ、あれ……? 誰だ、あんた……」


長身でガッシリした体躯、そして派手さはないが実用性の高そうな鎧に身を包んだ男性だった。


周囲の兵士たちが困惑し腰を抜かすなか、彼だけは落ち着いた口調で答える。

「なるほど、見事だ……虚をついて侵入者を怯ませるとは……流石はサチカ殿だ」

「え? あ、いや、そういうわけじゃ……」


そうか、この世界では「下着姿の女」のインパクトは強すぎたのか。

だが、単に私は彼らを興奮させるための餌だったのだが、どうやら誤解されたようだ。

その男は兵士たちに叫ぶ。


「お前たち! 彼女がその気だったら、お前たちの首はそこに落ちてたぞ!」

「は!」

「申し訳ありません!」

「城内だからと油断するな! いかなる時も兵士ならば、常に心に芯を持て! 分かったな!」

「「はい!」」


そういうと、兵士たちもまた冷静さを取り戻したのか、その身なりの良い男に敬礼を行った。


「サチカ殿。先ほどの不意打ちは見事だった。……だが、ご婦人がそのような姿をする必要はない。我々は敵ではないのだから」


その男は自分のマントを外すと私に被せ、ニッコリと非の打ちどころのない表情で笑顔を見せてきた。


「そして済まない、挨拶が遅れたな。私の名前はゴルド。ブラスの兄だ。賊ではないから安心していい。直接顔を見せるのは初めてだな、サチカ殿には」

「あ、ああ……」


キラキラしたバックを背負っていそうなたたずまい。

冷静な態度と整った容姿、そして何よりそのカリスマ性。なるほど、ブラス王子が劣等感を抱くわけだ。


ここまで完璧だと、逆にエロを感じない。

やっぱ、ブラス王子の方が抱きつぶしがいがあるな、と思いながらも私は尋ねた。


「要件は分かってるぜ」

「流石だな、サチカ殿」

「ああ。あんたが、王子の代わりに私を『嘆きの修道院』に送るんだろ?」

「……はあ?」


そういうとゴルド王子は不思議そうに首を傾げた。



「そんなわけないだろう」

「じゃあ、何しに来たんだよ?」

「……そなたに礼をいうために来たのだ」


そう言うと、ゴルド王子は取り戻した兵士とともに、深々と頭を下げてきた。



「君のおかげだ。今朝、ブラスが食卓にやってきてくれたんだ。……ついに、彼は部屋から出てきてくれてな」

「はあ? どういうことだよ」



私は確か昨夜はただ、セクハラをしただけだ。

しかもブラス王子がブチ切れるように、わざと酷い物言いをして。



……なのに、なぜそうなる?

私の頭では理解が追いつかなかった。

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