1-1 こういう『チュートリアルキャラ』は結構好きだったりする
「まあこの国の文化面は制作者が日本人なんでそこまで日本と変わらないっす。言語は日本語と同じなんで、そこは心配しないでいいっすよ」
しばらくセドナから城内の案内を受けながら、簡単なこの世界の文化について教わった。
城自体は広いが、思ったよりも設備の数は多くない、幸い数日もすれば慣れるだろう。
だが、そんなことよりも私が驚いたのは、城内の中で飛び交う※女男の発言だった。
(※サチカは貞操観念逆転世界の出身なので『男女』とは呼ばない)
「ついにこないださ、酒場の看板娘をデートに誘うのに成功したんだよ!」
と楽しそうに話す兵士の男性達。
「今夜は指名が多くて大変なのよねえ……羽振りが良い客が多いのは嬉しいけど」
という、恐らく夜職を兼務しているであろう※ランドレスの女達。
(※下働きを行う女中のこと)
マジでここは『貞操逆転世界』なんだな。
そう思っていると、前からメイドと思しき女性がぺこりと頭を下げてきた。
「サチカさん、初めまして」
「お、おう……宜しく……」
「その……。頑張ってくださいね? ……どうか、嘆きの修道院に行くことのないよう、お祈りしております……」
「あ、ああ。ありがとな(まあ、寧ろそれが狙いなんだけどな……)」
セドナによると、私は『昨日婚約者候補としてこの国に輿入れした、属国の姫君』という設定らしい。
そしてライバルは私より数カ月早くこの国に来ており、すでに王子とは顔見知りとのことだ。
「そうだ、サチカさん。これを渡しておきやす」
「これは?」
そういうとセドナは懐からオレンジ色の瓶を取り出した。
「先ほどお話しした、性病防止と妊娠防止の薬っす。基本的に副作用はないんで、安心してつかあさい」
「へえ……効果はどれくらい持つんだ?」
「大体一日持つそうです。高い薬でもないんで、もしまた必要ならあっしに言ってくだせえ」
「サンキュ、セドナ」
なるほど、避妊については特に問題ないということか。
こりゃ、もう神様が『この世界の男を片っ端から抱きまくれ』って言ってるのにも等しいな。
(早速セドナをベッドに誘うってのもいいかなあ……こいつも結構カッコいいし……ヒヒヒ……)
そういいながら私は一緒に城内を案内セドナの引き締まった尻をじっと見つめた。
しばらく見ていると、セドナが少し不思議そうに尋ねてきた。
「……あの、サチカさん?」
「あ……えっと……」
「あっしのズボンに何かついてるんすか?」
「あ、いや……そういうわけじゃ……アハハ……」
やっぱりそうだ。
この世界の男性は『身体を見られること』に対して酷く鈍感だ。
前の世界ではこんな目つきをしていたら一瞬で不審者扱いだったのだが。
(ま、今日のところは勘弁してやるか……)
セドナ曰く、私が『転生者』と知っている人は他にいないらしい。であれば、彼とは面倒ごとを起こすべきではない。
そう思いながら、私は薬を懐にしまった。
「それと、サチカさん」
「なに?」
「あっしは『中立』の立場なんで、サチカさんもライバルにも平等に力を貸しやす。こう見えてあっしは物知りなんで、心理学、農業、機械工学、なんでも教えられやすし、国の年表や歴史なども聞きたければ、スマホ代わりにいつでもどうぞ」
「なるほど、本当にあんたは『お助けキャラ』なんだな。よくメニュー画面とか『歴史の解説』とかしてくれるような」
「ハハ、まあそんなところっす」
それはさぞかし頼もしいことだろう。
それなら是非その力でライバルを勝たせろ。そして私を『嘆きの修道院』送りにしてほしいものだ。
そしてセドナは城の中央付近まで到着すると足を止めた。
ちょうど城内を一周したのだろう。
「……一通り案内は終わりやした。何か質問はありやすか?」
「いいえ」
折角なので私も『乙女ゲーム』の選択肢に答えるノリで返すと、セドナは少し意外そうな表情をしながらも、すぐにニッコリと笑ってきた。
「そうっすか? ならあっしはこれで失礼しやす。健闘を祈りやす、サチカさん」
「あ、ああ……」
そういうと、セドナは去っていった。
「さて……」
彼の姿が見えなくなったのを見て、私は手近に転がっていた古びた剣を手に持った。
重いが、女の私でも振り回すことくらいは出来そうだ。
「よっしゃあ! さっそく王子の部屋に突撃するぜええええ!」
こいつで、件のひきこもり王子の部屋のカギをぶっ壊して上がり込む。
そして、王子のことをこれでもかというほど罵倒しまくり、プライドを傷つけてやる。
そうすれば、王子からその咎によって『婚約破棄』を言い渡され、私はめでたく『嘆きの修道院』で楽しいセックスライフを送れるって寸法だ。
(うまくすれば、王子がキレて『男性を舐めるんじゃないぞ!』っていいながら、私を襲ってくれるかもしれねえよなあ……ヒヒ、最高じゃんか!)
完璧だ! まさに一石二鳥の素晴らしい作戦!
(悪いなセドナ! 折角案内してもらって悪いが、もう私はバッドエンドに向けて突っ走るんだよお!)
そういいながら、私は王子の部屋に向かって走っていった。




