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3-6 彼女の本音は本音として受け取られていない

「ゴルド王子!」


ああ、惜しい!

あと少しで王子の裸が見れたのに……。


「そもそもお



そう思いながら私は振り向いた。

彼は信じられないものを見るような目で、私たちを見つめていた。


「何を……やっていたんだ……?」

「あ、いや、その……」

「聴いてください、ゴルド王子! あの女が、ブラス様を誑かして、その……」

「なんだ?」

「脱衣ポーカーを……やっていました……! 私はお止めしたんです! ですが、この女はそれを止めずにこんな破廉恥なことをしていたんです……!」

「……ほう……」


そういいながらゴルド王子はチラリと私の方を見た。


「……なるほど。……それで、こんなバカ騒ぎをしていたってことか……」

「違います、兄上! 私が……サチカを誘ったんです! 恥ずかしながら……!」

「サチカ……か……」


あれ、ブラス王子は庇ってくれるんだ。

だがゴルド王子はその発言を聴いて少し考えるような素振りを見せた。



「……昨日まで『サチカさん』と呼んでいたと記憶しているが」

「え? ……あの、サチカがそう呼んでいいって言ってくれたから……」

「ああ。別にいいだろ、ゴルド王子? さん付けってのも堅苦しいと思ってさ」

「ふむ……。まあ状況は呑み込めた。……次に聞きたいのは、これだが……」


そういって魔道板を取り外して私たちに見せつけてきた。


「これは私の部屋にあったはずのコレクションだ。もらい物で、一度も聴いたことはなかったが……なぜここにある?」

「アハハ、ごめんごめん。ゴルド王子の部屋からちょっと拝借させてもらったんだ」

「なぜだ?」

「だってさ、あんたらの曲ってつまんねーんだよ。だからもっとテンションブチ上げるような曲をブラスと聞きたくてさ。楽しかったろ?」

「ああ! ……ダンスって楽しいものだったんだね」

「……ほう……」


そう言ってくれるなら、またいつでもやりたい。

だがキュプラは当然そんなバカ騒ぎは嫌うのだろう、割り込んできてハッキリと批判してきた。


「だ、ダメですよ、ブラス王子! 信じられますか? この女、まるでサバトのような乱痴気騒ぎにブラス様を誘っていたんです!」

「サバトだと?」

「ええ、定石も決まり事も無視して、ただ体を動かしながら踊り狂うだけ! 庶民の下劣な曲を聞きながら、そんなことをさせていたのですわ!」

「なるほど……」


まあ、サバトと言われたら否定は出来ない。

そもそもパンツ一丁でギャンブルやっている姿を見せている時点で、私はもう断罪確定だろうが。


「それでキュプラ、お前はここで何をしていたんだ?」


ん、なんかキュプラに対する風当たりが強いな。

そう思ったがキュプラは気づかないようで、胸を叩くようにして豪語した。


「はい! 私は王子に紅茶を持っていったあと、しっかりとダンスの手ほどきをしておりました! 社交界に出ても恥をかかないようにと思いまして!」

「そうだったのか。お前が恥をかかないために教えてくれていたのか?」

「はい!」

「……そうか」


そういうと、どこか失望したような様子でゴルド王子は頷いた。

……何か地雷を踏んだのか? よくわからないが。


「それでブラス。……これはお前がサチカ殿に命令してさせたものなのか?」

「そ、そうです兄様! ……私が悪いんです、だからサチカは罰さないでください!」

「ちげーよ、ブラス! 庇わないでいいって! ……違うよ、ゴルド王子。私はただこいつと遊びたくって、そいつを持ち出しただけだから!」


そういうと、ゴルド王子は少し呆れたような表情を見せた。


「なるほどな……。ところで、サチカ殿」

「なんだよ」

「……このトランプは君が用意したものか?」

「ああ」

「なるほど……よくできてるな」


そういいながら、ゴルド王子は場に残っているカードをひっくり返してシャッフルした。

……まさか。


そう思っていると、ゴルド王子は一番上のカードを見て答える。



「ハートのジャック」

「あ!」


めくったら、指定通りのカードだった。

ゴルド王子はニヤリと笑いながら続ける。


「クラブの5」

「まさか……」

「スペードの2」

「サチカさん……イカサマ、やってたんですか?」

「やべ……」


そういいながらゴルド王子は10枚ほどカードを指定してめくっていった。

無論カードの指定は全て正しかった。そしてカードを指さして答える。


「……カードの裏に細工がされている。古典的なガンカードだな」

「う……」

「さて……。分かったか、ブラス。お前が今まで負けていたのは偶然じゃない。サチカ殿に最初から踊らされていたということだ」

「……っち……」

「なんて卑劣な! 最初から、自分が脱ぐつもりなんてなかったのですわね? サチカさんは、王子に恥をかかせるためにこんなカードを用意していたんです!」

「そんな……そうだったの、サチカ?」


こいつは流石にまずったか?

そう思いながらもゴルド王子はこちらを見つめてきた。


「……さて、サチカ殿」


こええええええ!

ギラリと見つめただけで、こちらが思わず縮みあがるような表情でこちらを睨みつけるゴルド王子に、思わず私は震えた。



「……なぜ、こんなことをしたのか。正直に答えてくれるか?」

「……お、おう……」

「言っておくが、嘘を言った場合どうなるか分かっているな?」


そう目が光った。

……まずい、断罪エンドになるなら望むところだが、最悪切り殺されるかもしれない。

だが、もうここはハッキリ本音を言ってしまおう。



「……からだよ」

「なんだ?」



「王子の裸が見たかったんだよ! 決まってんだろ!」



「……ほう?」

「だってさ、見たらわかるだろ! あんなに背が高くて顔が良くて、しかもいい体してるんだぜ? そりゃ、脱いだ姿を見てえんだよ!」

「な、なんて下品な……!」

「そうだよ、下品で悪かったな! どうせ私はな! ブラスのことをエロい目でしか見てなかった※変態アマだよ! あんたら上品な連中とは違ってな!」


(※貞操逆転世界のサチカの世界では『変態野郎』がこう表現される)


「サチカ……」


ブラス王子も、私の本音を聴いて驚いた表情を見せた。まあ当然か。


「悪かったよ。ブラス。けどさ、マジで楽しかったぜ。あんたのその恥ずかしそうな顔も、綺麗な肌が露わになってくのもさ」

「まあ、やっぱりあなたは下品な女でしたのね?」


そうだよ、キュプラ。あんたこそ、婚約者にふさわしい。

ブラス王子を幸せにするのは、あんたに任せる。


「……悪いな、私はさ。あんたにずっとそういう目で見てたんだよ。性欲をずっと向けてたってわけ。……失望したろ? こんなエロいバカ女にさ」

「……兄様……」

「……なるほど……」


さて、どうなる? 最悪、斬られるなら処刑日前に夜逃げしよう。

娼婦で食いつなぐってのも、それはそれで楽しみだし。



「……ハハハ……」

「見事だな……サチカ殿は……」



だが、私の想像に反して、二人は急に笑いながらふっと緊張が緩むのを感じた。


「兄様……これってさ……そういうこと、だよね……」

「そうだな……。いい婚約者候補を持ったな、ブラス……」


なんだ、一体何が起きた?

何を言ってんだ、こいつらは? 私はただ単に『私はずっと王子をエロい目で見てた』って言っただけだぞ?


「さて、ブラス。……サチカ殿の聡明さに免じ、今回のバカ騒ぎは不問にしよう」

「あ、ありがとうございます!」

「……いい顔で笑うようになったな、ブラス」

「そ、そうですか? 僕は……全然変わってませんよ。立派な兄様に嫉妬して、劣等感を抱えてるまんまですから。いつか爆発しちゃいますから、その時は受けて立ってください」


そうブラス王子は笑顔を向けていた。

こういう、どっか吹っ切れた顔も少し退屈だが、これもこれで綺麗なものだ。

ゴルド王子も楽しそうに笑って答える。


「ハハ、いい返事だ。……さて、そろそろ夕食の時間だな。とりあえず部屋を片付けたら共に食事を取ろう」

「ええ! それと兄様! 明日から私も剣の訓練場に連れて行ってください!」

「……ほう。もう体調はいいのか?」

「まだ万全じゃないですけど……。けど、少しずつでも遅れを取り戻したいですから」



そういうと、隣からキュプラが嬉しそうに声を上げてきた。


「ブラス王子! 『私の』意見を聴いてくれるんですね? 明日から剣術の稽古場にいくという話を!」

「……うん……」

「ああ、なんて嬉しいのでしょう! ゴルド王子! 私の愛が届いてくれたみたいで、この喜びを神に伝えたいと思います!」

「……フン……そうだな」


あれ、さっきからゴルド王子の様子が変だな。

……いや、疲れてて感情を表現できないだけだろう。


「よし、じゃあさブラス! 服を全部脱がせられなかったのは残念だったけど、飯に行こうぜ? 折角だから景気づけに大食い勝負するか? こう見えても食う量は男性にも負けねえからさ! 負けたらアイス奢りってことでどうだ?」

「ああ、負けないぞ!」


そういいながら私たちは食堂に向かった。

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