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3-5 イカサマを疑えないのは育ちのよさゆえか

「このカードを……いや、このカードか?」

「へへへ、何にするかな……っと……」


魔道板が爆音をかき鳴らす中でポーカーを私たちは始めた。

幸いなことに、ブラス王子は頭がいい。通常のポーカーの手役についてはすぐに理解してくれた。


「なあ、ブラス王子? これが最後のゲームになりそうだな」

「ああ……。その……ほんとにさ、勝ったら……」

「勿論脱ぐさ。だから安心しなよ」


最初のゲームは正直花を持たせてやるつもりだ。

まずは勝利をさせないと、この後のゲームに乗ってこないかもしれないからだ。



「よ、よし。このカードなら……」

「へえ、ここで1枚交換か……ってことは……」


恐らく手札はツーペアだろう。ブラス王子は嬉しそうな表情をしていることから見ても間違いない。

……だとしたら、ワンペアの私では勝ち目が薄い。



「……で、どうするかな、サチカさんは?」

「……フォルドだ」

「よし! なんとか勝てたか……」


そういってブラス王子は手を広げた。


「あれ、その手役って……」

「ブタ? そんな……」

「ふう……。上手くひっかけられてよかったよ」


ブラス王子の表情を見て、私はブラフにひっかけられたことに気がついた。

なるほど、もうそういう高等技術も使えるわけか。流石に王子だということはある。


「へえ、やるじゃんか……」

「それで、サチカさん。その……」

「ああ、これで私の負けだからな。それじゃあしっかり見ておきなっと!」


そういって私は上着をもう一枚脱ぎ、ぽいと服を投げすてた。

派手な色の下着を身に着けている私を見て、思わずキュプラは顔を赤らめて叫ぶ。


「な……なんて破廉恥なことをしますの!?」

「え? 気にすんなよ。なあブラス王子もさ。こういう格好の方が好きだろ?」


どうやらこの世界の女たちは肌を晒すことに相当な抵抗があるようだし男性側も初心なタイプであれば見ることに抵抗が強いようだ。

私はブラス王子の前で体を揺らしながら尋ねて見る。


「え……えっと、うん……」



ブラス王子は恥ずかし気に顔を背けた。


(……うん、いいねえ。)


こうやって、無垢な男性が顔を赤らめるのはたまらない。

私はこれが見たかった。また、私の裸体できちんと興奮するのかも確認したかった。……見た感じ、どうやら私を性の対象としては見てくれているようだ、有難い。


多分私を嘆きの修道院送りにした後、彼は通ってくれるだろう。いや、その前に『味見』と称して私の体で気持ちよくなってくれるかもしれない。その時が楽しみだ。


「へえ……そんじゃ、こっからは本気でやるぜ?」

「うん、次のゲームに移ろう!」


だが、それさえわかればもう負ける意味はない。

……そもそも二人は気づいていない。


ポーカーをやるなら『ディーラーにカードを配らせること』が常識だということに。

そして、自前のカードを使うような奴を信用してはいけないことに。





ーーーーーーーーーーーーーー



「う……」

「な、なんで……?」


それからしばらくして、私は連戦連勝を続けていた。

全てのターンで私はブラス王子に勝利して、すでに王子はパンツ一丁だ。だが私はこんなセミヌードでは我慢できるわけがない。

※読者のためにも、王子を全裸にしてやらなければ。


(※初見の方のために。彼女は『自分こそが正しい貞操観念の住人であり、おかしいのは自分のいる世界の方』と思っています)


「ほら、ブラス王子、あんたの番だぜ?」

「わ、分かった。……じゃあ、コールで」

「よっしゃ! ……私はフルハウス。あんたは?」

「……ストレートだ……まさか、これで負けるなんて……」

「サチカさん……あなた、強すぎやしませんか?」

「そりゃそうだろ? ベテランを舐めんなっての」


無論、これは嘘だ。

私はイカサマをやっているのだ。負けるわけがない。

だが、それを見破れていない二人はそう驚いたような表情で私を見つめてきた。


「どうだ、ブラス王子? ……パンツ一丁になった気分はさ? 次で最後の一枚だよなあ?」

「……うん……正直恥ずかしいよ……」

「へへ、いい顔じゃんか。そんな姿じゃ、もう王子なんて言えねえよな。……そうだ、『ブラス』って呼んでいいか?」

「え?」

「今だけはさ、王子とかそういうの止めねえか? 一人の男と女ってことで、ギャンブルやろうぜ?」

「な……サチカさん、無礼にも程がありませんか?」


うん、知ってるよキュプラ。

王子にギャンブルで恥をかかせて、さらにプライドまでへし折るのが目的だから。全裸を拝めて王子にも嫌われることができて最高じゃんか。


そう思いながらブラス王子に尋ねると。


「……わ、分かった。いいよ……」


顔を真っ赤にしながらそう答えてきた。

よし、こちらの言動に腹を立てて顔を赤くしてやがるな。

そう思いながらも私は笑う。



「へへ、それじゃ呼ばせてもらうぜ、ブラス。私もサチカでいいぜ?」

「え、いいの?」

「ああ。さん付けってのも堅苦しいしな。呼び捨てで呼びなよ、これからもさ」

「ありがとう、サチカ。……よし、次は勝つぞ!」


ブラス王子はそういって楽しそうに床を叩いた。


「……いい顔じゃん、ブラス?」

「そ、そうかな?」

「王子の顔じゃなくって、そういう顔の方があんたはいいと思うぜ? 私は、王子の顔じゃなくて『あんたの』顔が好きだしな」

「……そう……なんだ……」

「よし、じゃあこのゲームでラストにしてやるよ。丸裸にしてやっからな」


そういいながら、私はカードを配る。




ーーーーーーー


それから数十分後。

時刻はそろそろ夕食時だ。


ブラス王子とこうやってゲームを楽しむのもいいが、はやく彼の全裸を拝みたい。ツー化早くしないと、ゴルド王子が帰ってきてしまう。


勝負を急ぐとしよう。


「……さて、ブラス?」

「なに、サチカ?」

「……そろそろ、思いっきり勝負に出てやるからさ。かかってきなよ」


そういって私は手持ちのチップを全部賭けた。



「オールインだ」

「え?」

「さて、どうすんだ? ……コールしてみなよ? 勝ったら一発逆転、私の生乳を拝むことが出来るんだぜ?」

「ブラス王子、それは罠です! ……あの下品な顔を見てください! 絶対何か企んでますって!」


おっと、流石に気づいたか、キュプラも。

まあこれだけ連戦連勝してたら当然だろうが。


「あん? ……怖いのか、キュプラ?」

「そういう話じゃありません!」

「で、どうするんだよ、ブラス? 怖いなら、降りてもいいんだぜ?」



この世界の男性たちは、元の世界の女と一緒で『逃げること』を酷く嫌う。

こうやって挑発すれば乗るはずだ。そう思いながらニヤニヤと笑っていると、



「よ、よし……分かった。コールだ……」

「へえ、勇気あるじゃん。そんなに私の裸が見たいのか?」

「……うん……」

「ちょ、ブラス王子! なんでこんなブスの裸なんて……!」


よし、いい返事だ。

だがどうでもいい。早く見せろ、あんたのその体を余すところなく。


(ヒヒヒ、上手く引っかかってくれて良かったな……)


私の手役はフォーカードだ。

王子の手役はフラッシュと分かっている。……流石は王族、引きが強いとはこのことだ。惜しむべくは、私のズルに気づけなかったことだろうが。



「さあ、ショーダウンだ。負けたら全裸になってもらうぜ、王子!」

「……望むところだ、さあ、行くぞ! せーの……」



ガンガンと豪快なBGMが鳴り響く中、そういって互いの手役を開けようとした瞬間。


「なんだ、このバカ騒ぎは!」



……ゴルド王子が、ドアをバタンと開けて、私たちの部屋に入ってきた。

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