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3-3 サチカの「メタ発言」は我々に向けたものでない

そしてしばらくののち、時刻はすでに昼を過ぎていた。



「いやあ、大漁大漁! うへへ……」


幸いゴルド王子の部屋には誰もいなかったので、安心して物品を物色できた。

そして彼の部屋から出た私は、両手いっぱいに魔道板を持ったまま出てきた。


「こんなに沢山めぼしいもんが手に入るなんてな、いやあ助かった!」


魔道板とは簡単に言うとレコードのようなもので、特定の装置に乗せると録音した音楽が鳴り響くものである。音質でいうとレコードにすら及ばない代物だが、あまり音質にこだわらない私にはこれくらいでちょうどいい。


(私の好きそうなジャンルの曲が結構見つかって良かったぜ。……けど、一人で聴くっつーのも味気ないな……そうだ、ブラス王子のところに行くかな……)


私は派手な爆音を鳴らすようなロックミュージックが好きだ。幸いゴルド王子もあまり聞いてはいなかったようだが、その手の音楽の魔道板が部屋に置いてあった。恐らく貰い物だろう。


こういうのは皆で派手に聞く方が面白い。

そう思いながら私はブラス王子のもとに向かった。




ーーーーーーーーーーーー


(ん? どうやら先客がいるのか……?)


ブラス王子の部屋の前で、私は立ち止まった。

どうやら中から物音と美しい音色の曲が流れている。

私はドアの鍵穴を覗き込んでみた。



「ねえ、ブラス王子? いい音色の曲だと思わない?」

「ああ、そうだな……」


そこでは、キュプラがブラス王子と一緒にカモミールティーを飲みながら話し合っていた。

どうやら彼女が王子を元気づけに来ていたようだ。


「いかがかしら、このお茶は? わざわざ朝からセドナに……ゴホン! 私が買い付けて淹れたものですわ?」

「いい香りだね、心が落ち着くよ。ところで、その……砂糖は……」

「いけませんよ、ブラス様? あなたはゴルド王子とともにこの国を支える身なのですから。お砂糖で体を甘やかすなどもってのほかですから」

「そ、そうか……」


そういいながらも、キュプラは砂糖瓶を手で押さえつけた。

先日の一件で知ったが、ブラス王子は相当な甘党だ。少しシュンとした顔をしているブラス王子は、相変わらずそそる。思いっきり食らいつきたい。


キュプラは自分のティーカップに砂糖を数杯ほど入れ、それを飲み干した後に尋ねる。



「ところでブラス王子、最近は剣の練習も少しずつ進めていらっしゃるそうですわね?」

「ああ。……少しずつでいいから、出来ることをやろうと思ったからさ」

「とてもいい心がけですわね? よかったら翌週、稽古に復帰するように復帰しませんか? 私の方から近衛隊長にお伝えしますので」

「あ、いや……それはまだ……」


だが、そういうと少し躊躇するような表情を見せるブラス王子。

彼に対して、キュプラは肩をポンと叩きながら答える。


「大丈夫ですよ、ブラス王子! あなたならきっと次の試験は受かります! 私はあなたには期待していますから!」

「……ああ……」

「それじゃあ、後で私の方から連絡しておきますわね?」

「う、うん……」


へえ、相変わらずキュプラはいい子だな。

確かにブラス王子の剣の腕は、素振りの時の動きを見ただけで素人でも分かるほどの才能がある。


だから、彼のその才能を無駄にしないようにしてくれているのか。

そんな風に思っていると、キュプラは立ち上がり、魔道板を取り換えた。



「さて、それじゃあブラス王子? レッスンをしませんか?」

「レッスン?」

「ええ。折角剣の練習も始めたんですもの。次は舞踏の練習もしないといけませんよね?」


そういいながら彼女が流した曲は、よく舞踏会などで流れているワルツだった。


「さあ、私が今日はリードして差し上げますから、一緒にダンスの練習をしましょう?」

「そ、そうだな……」

「王族であれば、当然しっかりと教養があることを示さないと恥をかきますからね? 私に恥を……ゴホン、この王家の恥にならないよう、しっかり練習の再開をしませんと! ほら、立ってください!」

「うん……」


そしてキュプラはブラス王子を立たせると、彼の手を取って音楽に合わせてダンスを始めた。


(あ、ずりい! 私も王子の手を握りてえのに!)



「ワンツー、ワンツー。おっと王子、その足の動きは間違いですわ?」

「あ、ああゴメン……」

「それと表情、もっと明るい表情で顔を上げてくださいませ」

「そう、だね……」

「うん、まあまあですわ? 60点ですわね。後で宿題表を作りますので、お読みくださいね、王子?」

「わかった……」

「では次の楽章に進みましょう」

(はあ、ああいうのも楽しそうでいいなあ……。けど私、ダンスとか全然ダメだしなあ……)


なんて素晴らしいカップルなのだろうと私は二人を見ていて思った。

親切に採点をしてあげるキュプラが、楽しそうにブラス王子とダンスを行うのを私は少し羨ましく思いながら見つめていた。


そしてしばらくダンスを続けた後に、キュプラはブラス王子の胸にそっと顔をくっつけてぽつりと呟く。


「ねえ、ブラス王子?」

「なんだ?」

「私……こうやって王子の社会復帰のために頑張って居ますわよね?」

「そうだな……。それについては感謝しているけど……」

「フフ、ですよね? ……だから、思いません?」

「何をだ?」

「あの女……。じゃない、サチカ様よりも、私の方がずっとあなたの后にふさわしいと……どうかしら、王子?」


おお、なんてすばらしいことをいうんだ、キュプラは!

その通り、私なんかよりあんたの方がずっと王子を幸せにできるはずだ。『嘆きの修道院』でハーレム生活を送るのは、私にこそふさわしい!


「キュプラ……。それは……やめてくれ……僕は、彼女を……」


その先はいう必要はない。

どうせ「彼女を嘆きの修道院に送るのは気が引ける」だろう。


だが、私にとってその『断罪』はご褒美でしかないのだから!

不老と不妊の魔法をかけられて、朝から晩まで男たちとセックス三昧だぜ? そんなの最高に決まってるのは※読者の皆も分かるだろう。



(※サチカは、この世界ではなく自分の方が『貞操逆転世界』の住民だということに気づいていない)


よし、であれば私を断罪するための後押しをしてやろう。

そう思いながら私は、ドカッとドアを蹴り飛ばして二人の部屋に乱入することにした。



「へーい!」

「な、サチカさん?」

「おう、ブラス王子! それにキュプラ嬢! 遊びに来たぜ!」

「何の用ですの?」

「へへへ、決まってんだろ? ゴルド王子がいない間にしか出来ないことをするためだよ!」


ブラス王子が同情して私をこの城にとどめ置こうとするなら、私がその良心の呵責ごと吹き飛ばしてあげよう。


ついでにキュプラの好感度も相対的に上げてやろう。ブラス王子のことを幸せに出来るのは、キュプラの方に決まってるのだから。



「遊ぶって……何をなさるつもりですの?」

「決まってんだろ?」


そういって私はトランプ(なんでこれがこの時代にあるのかは置いておこう)を取り出して叫んだ。



「脱衣ポーカーだよ!」

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