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3-2 サチカは元の世界では男性に嫌われまくってた

「うーん……相変わらずいいねえ、あのブラス王子のケツは……」


ここ数日、ブラス王子は少しずつ部屋から出るようになって、城の近くの庭園で素振りをやっている姿を目にするようになった。


(ふふ、これもキュプラが頑張ったおかげなんだろうな……ひひ、眼福眼福。よくやってくれてるよな、あの女は)


そう思いながら私は王子のそのほっそりした腕を見ながらよだれを垂らしながらも、近くにおいてあった本を見つめた。


(にしても暇だよなあ……)


この世界には、当然だが娯楽が少なく、遠乗りと木の実の採取、後は刺繡や読書くらいしか余暇を過ごす方法はない。


(私は馬にも乗れないし刺繍も嫌いだから、読書くらいだけど……それにしても、なんでここ、中世風の世界なのにこんなに庶民の識字率が高いんだろうな。本棚が庶民の部屋にもあるらしいし……)



私も前世では漫画は好きな方だったが、まだこの世界は写本が主流なためか普及していないこともあり、読むのはもっぱら小説しかない。


そして私は当然官能小説が好きだ。

この「貞操観念逆転世界」であれば男性向けのほうが私には面白いかなと思って手に取ったが、正直期待外れだった。


先日まで読んでいた小説をもう一度手にとってパラパラと読み直す、私はため息をつく。


『ツマリ……僕は君とは一緒になれない……結婚式はあげられない』

『なんでよ、アダン!』

『それは……。まだ、隣国であるアルト共和国との交渉が済んでいないからなんだ……。それが片付くまで、僕たちだけが幸せになることは出来ない!』

『知ってるわ。……けど、本当の理由は違うんでしょ?』

『うん……』

『私はあなたが兄妹だと知っている! けど、それでも私は……!』


そこまで読んで私は本を投げ捨てた。


(ったく、この作品も真面目でお硬いし導入がなげーよなあ……もっと初っ端から濡れ場を用意しとけっつの)


最近の「しょっぱなからアクセル全開でおっぱじめる」形式のコンテンツに慣れた私には、こういうじっくり読むタイプの小説は性に合わないのだ。



そんな風に考えていると、素振りを済ませた王子が汗を拭きながら私の方を見てくれた。

それを見て私は大声で声をかける。


「おーい、ブラス王子! 元気にしてんのか?」

「うん、まあ少しずつだけどね!」

「ならいいけどよ! あまり無理すんなよな!」

「ありがとう、サチカさん!」


そんな風に叫びながらも私は王子の滴る汗をじっくりと眺めて思った。


(いいねえ、あの汗が体にへばりついて肢体が丸見えじゃんかよ……けど、もっとしっかりあの裸体を拝みてえなあ……)



そんな風に思いながら私は王子が城に戻っていくのを見た後、見るべきものが無くなった私は部屋の外に出た。




(そもそも、こんな娯楽のない世界じゃ、やることなんて男漁り位しかねえよなあ……)


そんな風に思いながらも、私は城内を歩きながら、兵士の男性たちを眺めまわしながらも挨拶を繰り返す。


「おはようございます、サチカ様!」

「ああ、おはよう、シルバ!」

「こんにちは、サチカさん! 今日はどうされました?」

「お前らが汗かいてる姿を見に来ただけだよ」


余り頻繁に来るので、私は顔を覚えられてしまった。

……まあ、私もここのイケメンたちの顔は覚えているのだからおあいこだが。


(まあ、流石にあいつらに手を出すわけにはいかないけどなあ……)


いくらなんでも城内の兵士に手を出したら『嘆きの修道院』どころかその場でゴルド王子あたりから真っ二つにされること位は分かり切っている。



それでも、彼らが私からの挨拶を拒まないだけ嬉しい。元の世界では挨拶するだけでクラスの男子から睨まれていたからな。


そう思いながら城を歩いているとゴルド王子を見つけた。



「あれ、ゴルド王子じゃんか!」

「おはよう、サチカ殿」


そうにこやかに笑うゴルド王子は、相変わらず非の打ちどころがない佇まいをしている。



「何してんだよ、こんなところで」

「これから少し、用事があってな。ところであなたは何をしていたんだ?」

「え? そりゃ、兵士たちの値踏みだよ。皆いい感じに筋肉ついててカッコいいなって思っててさ」

「……なに?」


私はそうスケベな発言をしてみた。

だがゴルド王子はほう、とまた感心したような表情を見せてきた。


「ふむ……。相変わらず仕事熱心だな」

「はあ?」

「我が城の兵たちに食事がいきわたっているか、確認をしていたということだろう? ……流石だな、サチカ殿。常に領民のことと城内の治安を意識してくれているとは」



いやいやいや、何言ってんだ、相変わらず?

私は単に兵士の体がエロいかどうか、見ていただけなんだが。


……まあいいや、これだけ期待させておいた方が『化けの皮』がはがれた時に失望して、私を断罪してくれそうだし。

ゴルド王子は私に笑みを浮かべて答える。


「実をいうとな、あなたの評判は兵士からとてもいいんだ」

「はあ? なんで私が?」

「庶民の俺たちにもニコニコと挨拶してくれるし、俺たちのことに関心を持ってくれている、とな。……キュプラにも見習わせたかったのだが……」


何を言ってるんだ。

キュプラこそブラス王子にふさわしいはずだ。そう思って思わず首を振る。


「いやいや、何言ってんだ? キュプラはブラス王子のことをあれだけ大事にしてるじゃんか。兵士のことまで気にかけるのは無理だと思うぜ?」

「……そう、だな……」


そういうと、何やら表情を曇らせた。

……ああ、なるほど。そういうことか。


(もう、婚約者をキュプラに決めたから、私を放逐することを気にしてるってことか? ……ヒヒ、楽しみだなあ……ゴルド王子も来いよな、嘆きの修道院に……まあ、こねーだろうけど。けど、ブラス王子は来てくれっかなあ……)


そんな風に私がニヤニヤとしていると、ゴルド王子はフフ、と笑いかけてきた。



「それでは私はこれで失礼するよ」

「ああ、気を付けてな」


そういってゴルド王子が出ていったのを見て、私はポンと手を叩きた。



(そうだ……。あいつがいないってことは……部屋、漁り放題じゃね?)


折角だから彼のパンツの一つも持っていきたいが、流石にそれをやるほど愚かではない。

だが、なんか面白そうな私物があるかもしれない。そう思った私は、こっそりと部屋に入ることを決めた。

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