表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルダシールと銀華~千年の時空を駆ける鬼と狐の恋物語  作者: 秋津ネオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/62

影の熱に倒れる夜

  北へ向かうと決めたあと、三人は丘を離れた。夜の冷気が山道を流れ、星の光が弱まっていく。アリアは胸の奥の熱が引かず、歩くたびに息が浅くなるのを感じていた。


「アリア。歩けるか」


 アルダシールが横目で見た。アリアは頷こうとしたが、足がふらついた。


「大丈夫、だと思う」


「思うではない。顔色が悪い」


 その瞬間、胸の奥で銀華が鋭く叫んだ。


「アリア。止まれ」


 アリアは返事をしようとしたが、言葉が出なかった。視界が揺れ、星が滲む。足元の影が波打つように揺れた。


「アリア」


 アルダシールが駆け寄ったが、その前にアリアの体が崩れた。地面に倒れ込む寸前、銀華の声が胸の奥で震えた。


「影の熱が限界だ。アリアが持たない」


 アルダシールが抱きとめ、アリアを背負った。


「どこか休める場所を探す」


「無駄だ。影喰の残滓がこの山に残っている。止まれば飲まれる」


 銀華の声は焦っていた。これまでにない緊迫だった。


「ではどうする」


「北へ向かうしかない。封印の近くなら、アリアの影は安定する」


 アルダシールは強く頷き、アリアを背負ったまま歩き出した。


 そのときだった。

 道の先で、白いものが揺れた。


 風ではない。

 影でもない。

 光でもない。


 白い“尾”のようなものが、木々の間を横切った。


「銀華。今のは」


「私ではない。別のものだ」


 銀華の声が震えた。


「封印が揺れている。千年前に散ったものが、戻り始めている」


 アリアは意識が薄れながらも、白い尾を見た気がした。

 その瞬間、胸の奥の熱が少しだけ和らいだ。


「アリア。聞こえるか」


 アルダシールの声が遠くで響く。


「大丈夫。まだ大丈夫」


 アリアはかすかに答えた。


 白い尾は、北の方へ消えていった。

 まるで三人を導くように。


「行くぞ。あれを追う」


 アルダシールが歩き出す。

 銀華が静かに言った。


「アリア。あなたは今、境目にいる。影に落ちるか、記憶が開くか。そのどちらかだ」


 アリアは背中で揺られながら、白い光の残像を見つめた。


 北へ向かう旅は、もう後戻りできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ