18
リアは故郷で結婚式の案内の用件が終わると、聖杯城の城の前に姿を現した。城の主はのんびりと湖で釣りをしていた。リアはリンを見て、顔を輝かせた。
「ただいま、リン」
「お帰りなさい、リア」
リンは岸から立ち上がり、帰ってきた妻をゆるりと抱きしめた。リアはリンに身を任せた。リンはリアの頭を撫で、旅から帰った者を労った。リアはリンの霧の匂いに包まれながら、小さく呟いた。
「リン、長く城を空けてすみません」
「私はリアと結婚した時、リアの旅を待つことは心に決めていました。お疲れさまです、リア」
リンは不在の時間を満たすように、優しく言った。
「待っていてくれて、ありがとうございます」
「城でリアの故郷の話を聞かせて下さい」
リンは手を解くと、リアの手を繋いで城へ入った。
リンは城の居間に着くと、リアの厨房で白茶を淹れて、黒い長椅子に座るリアの隣に座った。リアは温かな茶をゆっくり味わった。
「美味しいですね、リン」
リンは微笑んだ。リンはリアが隣にいることに多幸感を覚えた。リアはこの先も仕事で長く城を空けることが多い。リアが帰還した時間は、ゆっくりとリアを愛でたいとリンは思った。リンはお茶を飲みながら、リアへの愛情を認めることができる生活を良かった、と心の底から思った。
リアは故郷での結婚式の手回しについてリンに話した。その後、リアは鞄から小箱を取り出した。
「リンのお茶に合うと思って、買ってきました」
リアは小箱をテーブルに置いて蓋を開けると、丸い小さなお菓子が並んでいた。
「これは、僕の国の有名なお菓子です。芋に似せて作られています」
リンは一つ手に取り、包みを解いて食してみた。豆の餡が程よく甘く、焼き芋の味を思わせた。
「どうですか、リン」
リアは無言で食べるリンに、眉を寄せて尋ねた。リンはリアを見つめて微笑み、無言で唇を重ねた。リアはいきなりのキスに、心を紅潮させた。キスは長く続き、リアは口の中の甘い味を美味しいと思った。
リンは唇を離すと、穏やかに言った。
「甘い菓子ですね。大事に頂きましょう。ありがとう、リア」
リアはリンの答えにぼんやりとした。今までリンと離れて我慢していた愛情が蓋を開け、心がリンの愛情表現をもっと欲しいと欲を出した。リアは頬を染めて、リンの服の裾をそっと掴んだ。
「寂しかったです、リン。僕はリンのそばにいることを覚えて、欲が深くなりました。一緒にいる時間は、甘えさせて下さい」
「リアの時間が許すなら、私たちはこれから心を温めあいましょう」
「はい、リン」
リアは俯いて肯い、リンはリアの肩を抱き、リアの私室へ空間を渡って移動した。
二人は夫婦の営みを交わした。その後、二人は身体を寄せ合いながら横になった。リアは呟いた。
「好きです、リン。このまま一緒にいたいです……」
「私もです、リア」
リンは言葉を重ねた。リアは続けた。
「僕が城にいない間、リンがリアルと過ごすことは、嫉妬がないと言えば嘘になります。でも、リンの心が変わらないことは知っています。僕が城にいる間は、僕のことだけを見ていてくれて、ありがとうございます」
リンはリアの髪を優しく撫でた。
「私は二人の人を伴侶としました。珍しいことなのでしょう。一人に決めない愛に連れ添ってくれる伴侶に恵まれて、私は幸せです。リア、私はリアが長く城にいることを望んでいます」
「……リアルの分の時間はどうするのですか?」
リアは小声で呟き、眉を寄せて俯いた。
「相談して決めましょう。今はリアルは週末の手の空いた時間に城に泊まります。仕事のあるリアと重なることはないでしょう」
「そう、ですか」
リアは何となく顔を曇らせた。
「リア、大丈夫ですよ」
リンはリアの心を温めるように明るくささやいた。リアはリンの楽天的な「大丈夫」で、何度も元気が湧き出ていた。この魔術師の言葉は、今まで本当に「大丈夫」だった。リアはほだされた。
「今まで祝い事や年中行事を一緒にいられなかった分、共に年を過ごしましょう」
「はい、リン」
リアは微笑んだ。




