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朝になり、聖杯城で一晩を過ごしたリアルは、朝食を作るために厨房に立った。使い慣れた鍋で野菜の入ったトマトスープを作り、ロールキャベツを煮た。厨房に舌をそそる香りが漂う。リアルは一人で料理をする時間が心を休める時間だった。自分の気に入った物が集まる馴染んだ空間は、長い年月変わることがなかった。料理を待つ人がいる。そんな生活も良いものだと思って二千年間リンと付き合ってきた。
リアルは食堂で料理の香りを楽しむリンに、作りたての温かな料理と白パンを運んだ。料理が卓に揃うと、二人は一緒に食事をした。
リンはいつも通り、料理を味わった。トマトスープは、リアルの家に伝わる家庭料理だとリンは聞いていた。長く伝わる変わらぬ味を、変わらぬ心のまま胃を満たした。
食事を終えると、リアルはコーヒーを淹れ、リンと共に飲んだ。
「今日は休みでしたか?リアル」
リンは答えを知っている問いを尋ねた。
「私はいいのよ。今日は予定が無かったから。携帯端末で連絡が取れれば自由にしていいのが館長よ」
リアルは寛ぎながら、コーヒーを飲んだ。リンは眉を下げた。リンが伴侶を迎えたことに、リアルが心の負担になっていることを感じた。リンはそれ以上触れずに話を変えた。
「外の空気を吸いませんか、リアル」
「何かあるの?」
「たまには一緒に空を見ませんか」
リアルはコーヒーをテーブルに置いた。
「いいわよ」
リンは立ち上がり、リアルと共に城を出た。コーヒーカップが宙に浮かび、二人に付いてきた。
城の前に着くと、リンは手を打って、小さな円いテーブルと二脚の椅子を出現させた。コーヒーカップはテーブルに落ち着き、二人は椅子に座った。いつもは濃い霧に覆われた湖は、今は晴れており、高い空が見えていた。水色の空は雲が無く水のように澄んでいて、リアルは鏡の国を思い出した。
日のない空に、うっすらと光の橋が浮かび上がった。虹だった。リアルは聖杯城の異空間で虹を見たのは初めてだった。
「これって私たちしか見てないのよね」
リアルは世界で二人しか見ていない風景を静かに喜び、魔術で作った者に礼を言った。リンは空を眺めたまま言った。
「リアル、小さな異空間ですが、これからも一緒に同じ風景を眺めましょう」
リアルはカップを干した。
「私もリアと同じみたいね。リンとそばにいられれば、それでいいわ。昔からそうだったわよね。リンが変わらないように、私も変わらないわ」
リンは白い眉を寄せて笑んだ。




