↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/18

17

朝になり、聖杯城で一晩を過ごしたリアルは、朝食を作るために厨房に立った。使い慣れた鍋で野菜の入ったトマトスープを作り、ロールキャベツを煮た。厨房に舌をそそる香りが漂う。リアルは一人で料理をする時間が心を休める時間だった。自分の気に入った物が集まる馴染んだ空間は、長い年月変わることがなかった。料理を待つ人がいる。そんな生活も良いものだと思って二千年間リンと付き合ってきた。


リアルは食堂で料理の香りを楽しむリンに、作りたての温かな料理と白パンを運んだ。料理が卓に揃うと、二人は一緒に食事をした。


リンはいつも通り、料理を味わった。トマトスープは、リアルの家に伝わる家庭料理だとリンは聞いていた。長く伝わる変わらぬ味を、変わらぬ心のまま胃を満たした。


食事を終えると、リアルはコーヒーを淹れ、リンと共に飲んだ。


「今日は休みでしたか?リアル」


リンは答えを知っている問いを尋ねた。


「私はいいのよ。今日は予定が無かったから。携帯端末で連絡が取れれば自由にしていいのが館長よ」


リアルは寛ぎながら、コーヒーを飲んだ。リンは眉を下げた。リンが伴侶を迎えたことに、リアルが心の負担になっていることを感じた。リンはそれ以上触れずに話を変えた。


「外の空気を吸いませんか、リアル」

「何かあるの?」

「たまには一緒に空を見ませんか」


リアルはコーヒーをテーブルに置いた。


「いいわよ」


リンは立ち上がり、リアルと共に城を出た。コーヒーカップが宙に浮かび、二人に付いてきた。




城の前に着くと、リンは手を打って、小さな円いテーブルと二脚の椅子を出現させた。コーヒーカップはテーブルに落ち着き、二人は椅子に座った。いつもは濃い霧に覆われた湖は、今は晴れており、高い空が見えていた。水色の空は雲が無く水のように澄んでいて、リアルは鏡の国を思い出した。


日のない空に、うっすらと光の橋が浮かび上がった。虹だった。リアルは聖杯城の異空間で虹を見たのは初めてだった。


「これって私たちしか見てないのよね」


リアルは世界で二人しか見ていない風景を静かに喜び、魔術で作った者に礼を言った。リンは空を眺めたまま言った。


「リアル、小さな異空間ですが、これからも一緒に同じ風景を眺めましょう」


リアルはカップを干した。


「私もリアと同じみたいね。リンとそばにいられれば、それでいいわ。昔からそうだったわよね。リンが変わらないように、私も変わらないわ」


リンは白い眉を寄せて笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。