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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第三部 四つの風

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第24話 燃えない理由 ―― 前編「返事のない光」

◆◆◆


ノトスが施設の裏手へ消えてから、しばらく誰も口を開かなかった。


さっきまで炎の前にいた少女の姿は、もう見えない。残っているのは燃え残った廃材と、いつもの金白の光だけだった。


俺はその光を見上げる。


直也「ALMA」


返事がない。


直也「……ALMA?」


金白の光が、一度だけ小さく明滅した。


ALMA『……はい』

直也「聞こえてたのか?」

ALMA『はい』

直也「じゃあ返事くらいしろよ」

ALMA『……その指摘は妥当です』

直也「素直だな」

ALMA『訂正すべき点がありません』

直也「そこはいつものALMAだな」


返事が遅れた理由を聞こうとして、やめる。今のこいつに理由を聞いても、答えられるならさっき答えていた気がする。


直也「さっき、未確認反応が2件あったよな」

ALMA『はい』

直也「今は?」

ALMA『……未確認反応、1件です』

直也「減った1件って、ノトスだったのか?」


また、わずかな間が空いた。


ALMA『反応の消失は確認しています。ただし、直也さんが「ノトス」と呼称している対象との対応関係は確認できません』

直也「そこまで見えてないのか」

ALMA『はい』

ゼピュロス「でも、あの子がいなくなったら1つ減ったんでしょ? だったら、あの子だったんじゃないの?」

直也「俺もそう思うんだけどな」

ALMA『推測としては成立します。ただし、観測情報のみから同一対象であると断定することはできません』

ボレアス「面倒じゃな」

直也「それは同意する」

ALMA『同一評価が2件確認されました』

直也「集計するな」

ボレアス「なぜそこだけ律儀なのじゃ」


ゼピュロスが吹き出し、リィナも口元を押さえて笑った。


だが、ボレアスはすぐにALMAへ視線を戻した。


ボレアス「では、妾たちには見えていたものが、そなたには見えておらぬのか」

ALMA『ボレアスが指している対象を特定できないため、回答できません』

ボレアス「……そうであったな」


さっきまでの勢いが少しだけ消えた。


ボレアスの時も、ALMAはうまく分類できずにいた。


ただ、あの時は姿を捉えていた。ノトスは、対象として特定することさえできない。


同じ異常なのかどうかは分からない。


直也「名前は?」

ALMA『「ノトス」という音声情報は記録されています』

直也「じゃあ、名前は分かってるんだな」

ALMA『発話者および対象との対応関係を確定できません』

直也「面倒くさいな、その答え!」

ALMA『正確性を優先しています』

直也「そういうところだけいつも通りだな」

ALMA『現象の複雑性と、説明の複雑性は必ずしも――』

直也「今は増やさなくていい」

ALMA『承知しました』


素直に引っ込んだ。


それはそれで調子が狂う。


直也「ノトスがいなくなった方向に反応は?」

ALMA『新たな反応は確認できません』

直也「……そうか」


見えていた反応が1件減った。


俺たち全員に見えていた少女を、ALMAだけが認識できなかった。


そして、そいつが去った方向にも新しい反応はない。


分からないことばかり増えていく。


リィナ「直也さん」


声をかけられて振り向くと、リィナが炉の方を見ていた。


リィナ「火、戻ってます」

直也「火?」


作業員たちが、恐る恐る炉へ燃料を入れている。


炎が上がった。


さっきまでと同じ場所だ。


だが、近づく前から違いが分かった。


直也「……熱い」


顔に熱気が当たる。


当たり前のことなのに、思わず声に出していた。


ゼピュロス「今度はちゃんと熱いわね」

ボレアス「火なのだから熱いのは当然であろう」

直也「さっきまで、その当然がなかったんだよ」

ボレアス「ならば戻ったということか?」

直也「全部戻ったならいいんだけどな」


炉の近くまで行く。


炎そのものは普通だった。熱気が肌に届き、作業員たちは額の汗を拭っている。床へ落ちた小さな木片にも火が移り、端から黒くなっていった。


そこまでは普通だ。


問題は、その隣だった。


直也「……残ってる」


ここへ来るまでに見てきたものと同じ、途中で燃えるのをやめたような廃材が、そのまま床に転がっている。


作業員が新しい火へ押し込む。


表面が黒くなり、煙が上がる。


それでも、そこから先へは進まない。


作業員「やっぱり駄目だ」


別の作業員が火かき棒で位置を変える。


作業員「火は戻ってるのに、こいつだけ燃えねえ」

直也「ALMA」

ALMA『周辺温度の上昇を確認。現在の熱伝播は通常の範囲です。ただし、燃え残った対象に追加の変化は確認できません』

直也「つまり、火の方は普通に戻った。でも、燃え残る現象は消えてない」

ALMA『はい』

直也「嫌な切り分けができたな」

ALMA『ただし』

直也「……まだあるのか」

ALMA『燃え残った対象そのものの状態について、現時点では原因を断定できません』

直也「追加情報が必要?」

ALMA『はい』

直也「先回りするようになったな」

ALMA『会話効率の向上を試みています』

直也「そういう進化は早いんだよ」


金白の光が、何事もなかったように明滅した。


ノトスがいた時には、炎そのものがおかしかった。


熱が広がらない。


なのに今は、その異常だけが消えている。


残ったのは、燃えない物だけだ。


ボレアス「どれ、妾にも見せよ」


ボレアスが前へ出る。


直也「何する気だ?」

ボレアス「燃えぬのであろう? ならば冷やしてみればよい」

直也「なんでそうなる」

ボレアス「熱を受けても変わらぬというなら、逆も試す価値はあろう。妾とて何でも凍らせたいわけではないぞ。分からぬものを、そのまま眺めておる方が気になるだけじゃ」


少し前なら「凍らせれば分かる」で終わっていた気がする。


今は、自分が何を確かめたいのかまで考えているらしい。


直也「壊すなよ」

ボレアス「誰に物を言うておる」

ゼピュロス「物を壊した実績なら、あんた結構あるわよ」

ボレアス「貴様にだけは言われとうない!」

直也「そこは2人とも反省してくれ」


ボレアスが燃え残りへ手を向けた。


冷気が流れる。


床が白く曇り、廃材の周囲に薄い霜が広がった。近くに落ちていた灰も凍りつき、作業員たちが慌てて数歩下がる。


だが、燃え残った黒い部分だけは何も変わらない。


霜すら付いていなかった。


ボレアス「……む」

直也「付かないな」

ボレアス「見れば分かる」

ゼピュロス「負けた?」

ボレアス「負けておらぬ!」

ゼピュロス「でも、効いてないじゃない」

ボレアス「妾の冷気が弱いのではない。周囲は見ての通り凍っておる。あれだけが冷気を受け付けておらぬのじゃ。効かぬのと、届いておらぬのは違う!」

直也「誰もお前の査定してないから落ち着け」

ボレアス「あと一度だけじゃ!」

直也「子供か!」


冷気がもう一度強くなる。


リィナ「ボレアスさん、床が滑ります!」

ボレアス「……分かった」


即座に冷気が止まった。


直也「リィナの言うことは素直に聞くんだな」

ボレアス「転ぶのは嫌じゃ」

直也「理由が急に普通だな」


周囲には霜が残っている。


だが、黒い燃え残りには何も付いていない。


ボレアスがしゃがみ込み、触れない程度まで顔を近づけた。


ボレアス「熱も冷気も届いておるはずなのに、これだけが変わらぬ。まるで、何も受け付けぬようじゃな」


誰もすぐには答えなかった。


火は普通に熱くなった。


なのに、燃え残りはそのままだ。


ノトスが全部の原因だったわけではない。


それだけは、はっきりした。


ポン太「旦那。ちょっといいか?」


いつの間にか事務小屋の方へ行っていたポン太が、古い帳面を抱えて戻ってきた。


直也「何見てるんだ?」

ポン太「搬出記録だぜ。こういう施設なら、入ってきた物だけじゃなく、出ていった物も記録してるはずだからな。商売でも同じだ。品物がどこから来たかだけ見てたら、倉庫なんざすぐ詰まっちまう。どこへ出したかまで追って、やっと荷物の流れが分かるってもんだ」

直也「なるほど。そっちは専門分野か」

ポン太「へへっ、俺っちを何だと思ってるんだい」

直也「金の計算ができる小動物」

ポン太「そりゃ褒めてんのか?」

直也「半分くらいは」

ポン太「残り半分は追加料金にしとくぜ」

直也「そこは経費で」

ポン太「何の経費だよ」

直也「俺にも分からん」


ポン太が笑いながら帳面を開く。


そこには日付と品目、数量らしい数字が細かく並んでいた。


俺には何が何だか分からないが、ポン太は迷わず指を滑らせていく。


ポン太「やっぱりな。処理しきれなかった廃材は、ここに置きっぱなしじゃねぇ。一定量を超えたら別の集積所へ回してる」

直也「どこへ?」

ポン太「施設の裏手から出てる搬出路だ。ここから北東にしばらく行ったところに、もう一つ集積所があるらしいぜ」

リィナ「裏手……」


リィナが顔を上げた。


俺も同じことを思い出していた。


ノトスが去った方向だ。


ポン太「旦那たちが言ってたノトスも、そっちへ行ったんだろ? だったら確認する価値はあるぜ。あの嬢ちゃんが道を知ってたかは知らねぇけど、裏手からそのまま進めば搬出路に乗る」

直也「歩いてたら着くってやつか」

ゼピュロス「本人なら本当にそれだけで行きそうね」

ボレアス「地図も見ずにか?」

直也「お前がそれ言う?」

ボレアス「妾は地図を見たぞ!」

ゼピュロス「上下逆にね」

ボレアス「上が北だと誰が決めた!」

直也「その議論またやるの?」


リィナが笑いながら、施設の外へ目を向けた。


リィナ「でも、行ってみてもいいんじゃないでしょうか。ここの燃え残りだけ見ていても、これ以上は分からなさそうですし」

ポン太「俺っちも賛成だぜ。次の集積所なら、ここと違う記録が残ってるかもしれねぇ」

ゼピュロス「甘いものもあるかもって?」

ポン太「それは関係ない!」

直也「今ちょっと間があったぞ」

ポン太「気のせいだぜ、旦那」

直也「商談だったら議事録に残すところだからな」

ポン太「旅に議事録持ち込むなよ」

直也「元会社員を甘く見るな」

ゼピュロス「誰と戦ってるのよ、マスター」


リィナがまた笑う。


その声を聞きながら、俺はALMAを見る。


直也「未確認反応の方角は?」

ALMA『断定には――』

直也「追加情報が必要」


一拍。


直也「先に言えた」

ALMA『会話効率の向上を確認しました』

直也「俺の方かよ」


金白の光が、何事もなかったように明滅する。


こうして話している分には、いつものALMAだ。


なのに、ノトスのことになると何かが抜け落ちる。


俺はそれ以上聞かなかった。


今は答えがない。


だったら、見に行くしかない。


施設を出る前に、リィナが街道側へ続く焦げ跡を振り返った。


リィナ「直也さん。ここへ来る途中の跡も、同じだったんですよね」

直也「ああ。途中で止まってた」

リィナ「じゃあ、この施設だけで起きていることじゃないのかもしれませんね。ここにある物だけ調べても、分からないのかも」


言い切らず、リィナはもう一度焦げ跡を見る。


それから荷物を持ち直した。


俺たちは施設の裏手へ回った。


確かに道がある。荷車が何度も通ったらしく、土には深い轍が残っていた。


その先は緩やかな坂になり、遠くで森の中へ消えている。


ボレアス「また知らぬ道か」

直也「嫌そうに言う割には、ちょっと楽しそうだな」

ボレアス「気のせいじゃ」

ゼピュロス「顔に出てるわよ」

ボレアス「出ておらぬ!」

リィナ「ふふっ」

ポン太「まあ、道があるだけ昨日よりましだぜ。荷車が通れるなら、少なくとも崖には突っ込まねぇ」

直也「比較対象が昨日なの、だいぶ基準低くなってない?」


誰も否定しなかった。


歩き出す前に、俺は一度だけ振り返った。


火は熱い。


ちゃんと燃えている。


それでも、その横には黒い燃え残りが残ったままだ。


ボレアス「行かぬのか?」

直也「今行く」

ボレアス「置いていくぞ」

直也「最近それ気に入ってるだろ」

ボレアス「旅人らしいのであろう?」

直也「そこだけ覚えたのかよ」

ボレアス「悪いか」

直也「いや」


少し考えてから、俺は笑った。


直也「……それはそれでいいんじゃないか」

ボレアス「何じゃ、その言い方は」

ゼピュロス「褒められてるのよ、たぶん」

ボレアス「たぶんとは何じゃ!」


騒ぎながら先へ進む2人を、リィナが追う。


ポン太も帳面を鞄へ押し込み、その後に続いた。


俺も歩き出す。


肩の横には、金白の光。


その先には、俺たちには見えていて、ALMAには見えない少女がいるかもしれない。


そして、もう一つ。


まだ消えていない未確認反応がある。


分からないものが、また増えた。


けれどボレアスなら、たぶんこう言う。


知らないから、見に行くのだと。


……それは少し分かる。


◆◆◆(返事のない光)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回更新予定:10月20日(火)になります。


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