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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第三部 四つの風

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第23話 燃えているのに、熱くない ―― 後編「ノトス」

◆◆◆


炎の向こうで、人影が動いた。


今度は見間違いじゃない。揺れる火の隙間から細い腕が見え、続いて肩、頭、長い髪が姿を現す。


少女だ。


直也「おい! そこ危ないぞ!」


反射的に声を上げると、人影が止まった。こちらを振り向いた少女の顔が、炎の向こうに浮かぶ。


直也「聞こえてるか!?」


少女は俺を見た。ほんの一瞬だけ目が合い、その直後、露骨に眉をひそめる。


「来んな!」

直也「燃えてんだぞ!」

「見りゃ分かる!」

直也「だったら出てこい!」

「オレが燃やしてんだよ!」

直也「……は?」


予想していなかった答えに、足が止まった。


ゼピュロス「自分で?」

ボレアス「そのようじゃな。少なくとも、あの炎はあやつの動きに従っておる」

直也「いや待て。自分で燃やしてるなら余計に意味が分からん」


少女はもう俺たちを見ていなかった。興味を失ったらしく、目の前に積まれた黒い木材へ向き直る。


右手が上がった。


次の瞬間、周囲で揺れていた炎が一斉に動いた。


直也「うおっ!」


何本もの炎が少女の腕を避けるように走り、その先にある木材へ集まっていく。火は瞬く間に膨れ上がり、さっき炉で見たものより、さらに強く燃え盛った。


普通なら、あんなものに包まれれば一瞬で燃え尽きる。


なのに、木材は表面を黒くし、煙を上げ、赤く焼けただけだった。形はそのまま残っている。炎の勢いに対して、燃え方が明らかに遅い。


少女が舌打ちした。


「……クソ」


火が消える。


少女はしゃがみ込み、燃え残った木材を睨みつけた。指先で黒くなった表面を軽く叩いてみるが、崩れる様子はない。


「なんで燃えねえんだよ」


険しい顔のまま立ち上がり、もう一度手を伸ばす。


直也「待て待て待て」


少女が面倒そうにこちらを見る。


「なんだよ」

直也「今またやろうとしただろ」

「そうだけど」

直也「さっき駄目だっただろ」

「だからもう一回やる」

直也「同じことしてどうするんだよ」


少女は少し考えた。本当に少しだけだった。


「もっと燃やす」

ボレアス「待て」


少女の手が止まる。ボレアスが一歩前へ出ると、呆れたように腕を組んだ。


ボレアス「同じことを繰り返しても結果は変わらぬぞ。火力を上げれば済むというなら、先ほどの炎でとっくに灰になっておろう」


少女は初めてボレアスをまともに見た。頭から足元まで視線を動かし、その目が一瞬だけ止まる。


だが、すぐに木材へ戻った。


「じゃあ次はもっと燃やす」

ボレアス「話を聞いておったか!?」

「聞いた」

ボレアス「ならばなぜそうなる! まずは燃えぬ原因を調べるのが先じゃろう!」

「調べてる間に燃やせばいいだろ。燃えたらそれで終わりだ」

ボレアス「順序というものがあるじゃろう!」

「面倒くせえな」

ボレアス「貴様!」

ゼピュロス「……すごい」

直也「何が」

ゼピュロス「氷女が押されてる」

ボレアス「押されておらぬ! 話の通じぬ相手に道理を説いておるだけじゃ!」

直也「それ、押されてる側が会議でよく言うやつだぞ」

ボレアス「何の会議じゃ!」


ノトスより先にボレアスが食いついてきた。そこじゃない。


少女は俺たちの言い合いなど最初から存在しなかったように、また廃材へ手を伸ばす。


直也「ちょっと待て」

「今度はなんだよ」

直也「お前、ここの人間なのか?」

「違う」

直也「じゃあ、なんでここの物を燃やしてるんだよ」

「燃えねえから」

直也「答えになってない」

「オレにはなってる」

直也「俺にはなってないんだよ」


少女は面倒そうに俺を見る。怒っているというより、本気で「なんでそんなことを聞くんだ」という顔だった。


「燃やそうとした。燃えなかった。だから燃えるまでやってる。それ以外に何があんだよ」

直也「説明されたのに情報量が増えてない……」

「聞いたのはお前だろ」

直也「……もういい。たぶん聞いても同じところを周回するだけだ」


横でゼピュロスが肩を震わせていた。


直也「笑うな」

ゼピュロス「だってマスター、すごい顔してる」

直也「お前が増えたみたいな気分なんだよ」

ゼピュロス「私、あんなに話通じなくないわよ! ちゃんと説明する時はするもの!」

「うるせえな」

ゼピュロス「ほら、全然違う!」

直也「そこで証明するな」


言い返したゼピュロスが少女を見る。その表情から、ふっと笑いが消えた。


さっき炉の前で感じていた、説明のできない近さ。ボレアスと出会った時にも覚えたという感覚が、目の前の少女を見たことで、さらに強くなったらしい。


ゼピュロス「……やっぱり」


少女の視線がゼピュロスへ向いた。初めて、廃材以外のものをちゃんと見るような目だった。


「……なんだ、お前」

ゼピュロス「それこっちの台詞なんだけど。さっきからずっと変な感じがするのよ。知らないはずなのに、完全に知らない感じもしないっていうか……」


少女は眉を寄せた。


「オレもだ。お前見てると、なんか引っかかる。けど、何が引っかかってんのか分かんねえ」

ゼピュロス「私も分かんない」


それ以上は続かなかった。


2人とも、感じているものを言葉にできないらしい。


少女が次にボレアスを見る。さっきより少し長く視線を向けられ、ボレアスも黙って見返した。


「お前も変だな」

ボレアス「初対面の者に言われたくはない。もっとも、妾も貴様を見て似たような違和感を覚えておるがな」

「じゃあ同じだろ」

ボレアス「何が同じなのかを聞いておるのじゃ」


少女は眉を寄せたまま考える。


「……分かんねえ」

ボレアス「妾もじゃ」

「じゃあいい」

ボレアス「よくはない! 分からぬからこそ確かめる必要があるじゃろう!」


少女はもう廃材へ向き直っていた。


直也「……なんなんだ、こいつ」

リィナ「でも、悪い人ではなさそうですよ。少し乱暴ですけど、私たちに何かしようとはしていませんし」

直也「判断早くない?」

リィナ「少なくとも、私たちを燃やそうとはしてませんから」

直也「基準そこ?」

ポン太「旦那、初対面としては大事なところだぜ。俺っちだって、商売相手がいきなり財布か命を取りに来ねぇって分かれば、それだけで話はしやすくなる」

直也「商人の初対面チェック、物騒すぎない?」

ポン太「旅商人なんてそんなもんだぜ」


それはそうかもしれない。


いや、納得していいのか?


その時、金白の光が視界に入った。


さっきからALMAが妙に静かだ。


直也「ALMA」

ALMA『はい』


返事はあった。


直也「今度は見えるだろ」


沈黙。


直也「ALMA?」


金白の光が、少女の周囲をゆっくり移動する。まるで、そこに何もない空間を調べているように。


ALMA『……対象を認識できません』

直也「いや、いるだろ。目の前に」

ALMA『……はい』

直也「はい?」

ALMA『直也さんの発言内容は理解できます』

直也「そうじゃなくて」


返事がない。


直也「俺が言ってることじゃなくて、あいつだよ」


少女を指差す。その本人は俺たちの会話に興味がないらしく、燃え残った金属片を足先で転がしていた。


直也「見えてないのか?」

ALMA『視覚情報内に、直也さんが指示している対象と一致する生命反応を確認できません』

直也「でも俺には見えてる」

ALMA『はい』

直也「ゼピュロスにも」

ゼピュロス「見えてるわよ。さっきからずっと喋ってるじゃない」

直也「ボレアスにも」

ボレアス「当然じゃ。これだけ騒がしい者を見落とす方が難しかろう」

ノトス「誰が騒がしいんだよ」

ボレアス「貴様じゃ!」

リィナ「私にも見えています」

ポン太「俺っちにもだぜ。旦那たちと同じもんが見えてる」

直也「全員見えてるぞ」

ALMA『……はい』

直也「それでも認識できない?」


今度の沈黙は長かった。


ALMAの光が一度だけ弱くなる。


ALMA『……はい』


普段なら、ここで何かが続く。観測条件だの、誤差だの、情報不足だの。こっちが聞いていないところまで説明するのがALMAだ。


なのに、何も続かない。


直也「……本当に分からないのか」

ALMA『……』


答えはなかった。


その時、炎が上がった。


振り向くと、少女が燃え残りの前に立ち、右手を炎の中へ伸ばしていた。


リィナ「危ない!」

「平気だ」


炎が少女の腕を包む。だが、皮膚も服も焼けない。


少女は炎の奥へ手を入れたまま、じっと燃え残りを見ている。すると、さっきまで周囲で揺れていた火が一本、また一本と動き始めた。


直也「なんだ……?」


炉の縁に残った火。木材の表面で揺れていた火。地面に残った小さな火。それらが次々と少女の手元へ吸い寄せられていく。


熱は来ない。


それなのに、目の前には確かに炎がある。


やがて全ての火が一つになり、少女の掌の上で小さく揺れた。


その火を、少女が握る。


消えた。


直也「……消した?」

ゼピュロス「違う」

直也「何が?」

ゼピュロス「分かんないけど……消したって感じじゃないのよ。自分のところに戻したっていうか……うまく言えないけど」

ボレアス「妾にも、そう見えた。火を消したのではなく、あやつが引き取ったような……妙な感覚じゃ」


炎はなくなり、煙も少しずつ薄くなっていく。


だが、そこには黒く焦げた廃材が、そのまま残っていた。


少女は黙ってそれを見下ろしている。さっきまでの勢いが一瞬だけ消えた。


落ち込んでいるようには見えない。ただ、自分がやったことと、その結果を確かめているようだった。


そして。


「……クソ。なんで燃えねえんだよ」


やっぱり腹を立てた。


直也「それ、さっきからずっと燃やしてたのか?」

「ああ」

直也「いつから?」

「知らねえ」

直也「自分のことだろ」

「覚えてねえよ。燃えねえから何回もやってた。何回目かなんて数えてねえ」

直也「それで施設丸ごと止めたのか……」


少女が初めて周囲を見る。


離れた場所から様子を窺っている作業員たち。止まった炉。積み上がった処理待ちの廃材。


「あー……これ、オレのせいか?」

直也「今気づいたの?」

「燃やせば終わると思ったんだよ。燃えねえ物が残ってるから、燃やせば片付くだろ」

直也「終わってないからこうなってるんだよ」

「見りゃ分かる」

直也「その台詞、今度は俺が言いたい」


少女は少しだけ口を曲げた。笑ったのか、苛立ったのか分からない。


ただ、最初よりは俺たちを見ている。


俺は改めて少女を見る。


直也「お前、名前は?」


少女の目が俺に向いた。


短い沈黙のあと、今度は素直に答えた。


「ノトス」

直也「ノトス……」

ノトス「なんだよ」

直也「いや。名前聞いただけ」

ノトス「聞いたから答えた。それでいいだろ」

直也「そうだな」

ゼピュロス「ノトス……」

ボレアス「……」


2人もその名前を口の中で確かめるようにしている。


何かを思い出したわけじゃない。ただ、聞き覚えがないはずの名前が、妙に引っかかっているように見えた。


俺はALMAを見る。


金白の光は、何も言わなかった。


ノトスは燃え残った木材の前にしゃがみ、黒くなった表面を指でなぞった。一度、二度。さっきまでなら、そのままもう一度燃やしていたかもしれない。


だが、ノトスは手を離して立ち上がった。


ノトス「もういい」

直也「諦めるのか?」

ノトス「違う」


即答だった。


直也「じゃあ何するんだよ」

ノトス「別のやり方探す。これじゃ燃えねえって分かったから、同じこと続けても仕方ねえだろ」

直也「……さっきまで『もっと燃やす』って言ってた奴と同一人物だよな?」

ノトス「やって駄目だったから変えんだよ」

直也「切り替えだけは異様に早いな」

ノトス「駄目なやり方にいつまでも付き合う方が面倒だろ」


それだけ言うと、ノトスは歩き出した。


本当に迷いがない。ついさっきまであれだけ火に執着していたのに、駄目だと決めた瞬間には、もう次へ向かっている。


直也「おい、待て!」


ノトスが振り返る。


ノトス「何だよ」

直也「どこ行くんだ?」

ノトス「知らねえ」

直也「知らないのかよ!」

ノトス「別のやり方を探しに行くんだから、最初から場所まで知ってるわけねえだろ。歩いてりゃ何か見つかる」

直也「計画書を出せとは言わないけど、せめて目的地くらい決めろよ……」

ノトス「面倒くせえな。じゃあな」

直也「軽いな!」


ノトスはもう振り返らなかった。施設の裏手へ続く道を、そのまま歩いていく。


止める理由が見つからない。


そもそも俺たちは、あいつが何者なのかすら知らない。何を探しているのか。なぜここへ来たのか。どうして火を操れるのか。


分からないことしかない。


ゼピュロスが、遠ざかっていくノトスの背中を見送っていた。


ゼピュロス「……変なの」

ボレアス「貴様に言われたくはなかろう」

ゼピュロス「なんで私基準なのよ! 私、あそこまで行き当たりばったりじゃないわよ!」

ボレアス「先ほどまで自分と近いなどと言っておったではないか」

ゼピュロス「近い感じがするのと変なのは別!」

ボレアス「便利な理屈じゃな」

ゼピュロス「氷女に言われたくない!」

直也「お前らは平常運転に戻るの早いな……」


少しだけ、いつもの空気が戻った。


リィナが困ったように笑い、ポン太は止まった炉を眺めてから作業員たちの方へ目をやった。俺もそちらを見る。


火は消えた。


異常が解決したわけじゃない。燃え残った物もそのままだ。


ただ、ノトスだけがいなくなった。


そこで、ふと気づいた。


直也「ALMA」


返事がない。


俺は肩の横を見る。金白の光は、いつもの位置に浮かんでいる。


直也「さっきの、どうなってる?」


一拍。


二拍。


ALMA『……未確認反応、1件』

直也「今さらかよ」

ALMA『……はい』

直也「目の前にいたぞ」

ALMA『……はい』

直也「しかも喋ったぞ」


返事がない。


直也「お前、結局ノトスを認識できたのか?」


金白の光が、わずかに明滅する。


直也「ALMA?」


返事がない。


俺は光球を見つめた。


こいつが答えられないことはあった。分からないと答えることもあった。観測できないなら、観測できないなりの理由を並べることだってあった。


でも。


呼びかけそのものに、何も返さないことはなかった。


直也「……ALMA?」


金白の光が、もう一度だけ揺れた。


それでも。


返事はなかった。


◆◆◆(ノトス)◆◆◆

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


次回更新予定:10月16日(金)


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