↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第三部 四つの風

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/97

第23話 燃えているのに、熱くない ―― 中編「燃え残るもの」

◆◆◆


丘を下り、煙の方角へ進む。


近づくにつれて、最初に高い煙突が見え、その下に石造りの建物がいくつか並んでいるのが分かった。周囲には板材や金属片を積んだ荷車が止まり、荷台から荷物を降ろしている男たちの姿もある。


村ではない。工房とも少し違う。


ゼピュロス「何ここ? 煙突はあるけど、工房にしては荷物が変じゃない?」

直也「俺に聞くな。分かるわけないだろ」

ゼピュロス「最近それ多くない?」

直也「知らないものは知らないんだよ」

ALMA『正確な回答です』

直也「お前は評価しなくていい」

ALMA『今後の参考情報として記録します』

直也「記録もしなくていい」

ALMA『承知しました』

リィナ「直也さん、前を見てくださいね」

直也「はい」


リィナの一言が一番効いた。


坂を下りきると、施設の全体が見えた。


石壁に囲まれた敷地の中には、大きな炉が2基。その周囲に古びた木材、割れた樽、錆びた金具、欠けた道具、用途の分からない部品が種類ごとに積まれている。


煙は、そのうち奥側の炉から出ていた。薄い灰色で、さっき遠くから見たものと同じ色だ。


ポン太「なるほどな。こりゃ処理場だぜ、旦那」

直也「処理場?」

ポン太「使えなくなった物を集めて、燃やせる物は燃やす。潰せる物は潰す。金物なら分けて回収する。街道沿いにゃ、たまにこういう場所があるんだ」

直也「こんな何もないところに?」

ポン太「何もないからいいんだろ。町の真ん中で朝から煙を上げてみろ。商売どころか洗濯物まで台無しだぜ」

直也「それもそうか」


問題は、俺たちの地図にはこの施設が描かれていないことだった。


地図にない村の次は、地図にない処理場。


会社の資料なら、そろそろ右上に大きく「要改訂」と書いて回覧に回したいところだ。


敷地の入口では、作業着姿の男が荷車の中身を確認していた。


俺たちに気づくと、手を止めて怪訝そうな顔をする。


作業員「旅人か? こんなところに用があるようには見えんが」

直也「向こうの丘から煙が見えたんで、何かあったのかと思って来ました」

作業員「ああ……煙か」


男は振り返り、奥の炉を見た。さっきまで普通だった顔が、露骨に曇る。


作業員「何かあったと言えば、あったな。こっちも昨日から、それで仕事にならん」

直也「火事じゃないんですよね?」

作業員「火事なら、まだ分かりやすかった。消せばいいからな」


その直後、奥の炉から炎が大きく噴き上がった。


直也「うおっ!」

リィナ「わっ!」

ポン太「おいおい、大丈夫なのかい!」


反射的に身構える。


だが、すぐに違和感に気づいた。


熱が来ない。


これだけ離れているとはいえ、あれほどの炎が上がれば、多少は熱気が流れてきてもよさそうなものだ。それなのに、頬に触れる空気はほとんど変わらなかった。


ボレアスが炉を見つめ、ゆっくりと目を細める。


ボレアス「……妙じゃな。あれだけ炎が立っておるというのに、周囲の熱がほとんど増しておらぬ。妾の冷気とは違う。熱そのものが、外へ出てきておらぬように見える」

直也「やっぱりそう見えるか」

ゼピュロス「氷女が無意識に熱を吸ってるんじゃないの?」

ボレアス「何でも妾のせいにするでない! 妾が冷やしておるなら、もっと分かりやすく霜でも付いておるわ!」

ゼピュロス「じゃあ試してみたら?」

ボレアス「試さぬ!」

直也「今は増やすな」


ALMAの金白の光が俺の肩から離れ、炉の方へ少し近づいた。


ALMA『周辺温度を確認。炎の規模に対し、熱放射量が著しく不足しています』

直也「前の焦げ跡と同じか?」

ALMA『類似性があります。ただし、同一現象であるとの断定には追加情報が必要です』

直也「またそれか」

ALMA『先ほど、会話の分かりやすさも優先するよう要請されました』

直也「で、分かりやすくなった結果がそれ?」

ALMA『はい』

直也「胸張るところじゃないからな」


作業員が俺たちを見比べていた。正確には、俺たちというよりALMAを見ている。


作業員「その光、今の火を調べてるのか?」

直也「たぶん。こういう時は俺より頼りになります」

ALMA『調査は可能です』

直也「ほら」

ALMA『ただし、原因特定を保証した発言ではありません』

直也「客先説明みたいに免責事項を後付けするな」

作業員「……よく分からんが、見るだけなら好きにしてくれ。こっちも原因が分からなくて困ってる」


俺たちは男について敷地の中へ入った。


近くで見ると、積まれている物は本当に雑多だった。折れた椅子、底の抜けた箱、歪んだ鍋、欠けた刃物、錆びた留め具。完全に壊れている物ばかりではなく、まだ使えそうに見える物もかなり混じっている。


リィナが、その中の木箱の前で足を止めた。


リィナ「これも燃やしてしまうんですか? 角が少し割れているだけですし、直せばまだ使えそうに見えますけど……」

作業員「ああ。見た目だけじゃ分からんからな。どこまで傷んでるか調べて、直して、それから使っていいか確認する。その手間の方が、新しい物より高くつくこともある」

ポン太「使えそうなのと、使っていいのは別だぜ、嬢ちゃん。荷を支える道具なんかは特にな。途中で壊れりゃ、中身まで駄目になる」

リィナ「……捨てたくなくても、捨てることがあるんですね」

ポン太「商売じゃ珍しくねぇ話だ」


リィナは少し名残惜しそうに木箱を見たが、それ以上は何も言わなかった。


作業員「その処理が、できなくなった」


男が奥の炉を指差した。


炉の前には、黒く焦げた木材が山になっている。


作業員「昨日からずっとこんな調子だ。最初は燃料が悪いと思って追加した。空気の通り道も掃除したし、火力も上げた。それでも変わらん」

直也「燃えない?」

作業員「いや、燃えるんだよ。それが一番気味悪い。燃えて、焦げて、煙まで出る。なのに、なくならない。朝から何度も炉へ入れてるのに、ずっと残ってやがる」


炎の中では、木材の表面だけが黒く焼け、形はそのまま残っていた。


直也「ALMA、どう見える?」

ALMA『確認しています。燃焼反応を検出。対象表面の炭化も進行しています』

直也「じゃあ燃えてる?」

ALMA『はい』

直也「でも減ってない」

ALMA『はい』

直也「……気持ち悪いな」

ALMA『同意します』


ボレアスが炉の近くまで歩いていった。


熱を気にする様子もなく、燃え残った木材をじっと見ている。


ボレアス「……止まっておるな」

直也「何が?」

ボレアス「変化がじゃ。火も煙も動いておる。木も焦げておる。じゃが、燃やされる側だけが途中で止まり、その先へ進んでおらぬように見える」

ゼピュロス「氷女が言うと説得力あるわね。止めるの得意だもの」

ボレアス「だから妾がやったのではない!」

ゼピュロス「誰もそこまで言ってないけど?」

ボレアス「その顔が言っておる!」

直也「顔で会話するな」


ボレアスは不満そうに鼻を鳴らしたが、炉から離れなかった。


直也「気になるのか?」

ボレアス「当然じゃ。妾の知らぬ現象を目の前にして、見ずに帰る方が気持ち悪かろう」

直也「怖くない? 火だぞ」

ボレアス「妾は氷を扱うが、火を見ただけで溶けるわけではないぞ」

直也「それもそうか」

ゼピュロス「完全に野次馬ね」

ボレアス「旅人じゃ!」

ゼピュロス「同じようなものでしょ」

ボレアス「違う!」


ゼピュロスが笑いながら炉の横を通り過ぎた。


積まれた廃材の間を覗き込み、そのまま反対側へ回ろうとして――途中で足を止める。


あまりに急だった。


直也「ゼピュロス?」


返事がない。


さっきまでボレアスをからかっていた顔から、笑みが消えている。視線は炉ではなく、そのさらに奥へ向けられていた。


直也「どうした?」

ゼピュロス「……いる」

直也「誰が?」

ゼピュロス「分かんない。でも、いる」

直也「見えるのか?」

ゼピュロス「見えてない。音もしてない。でも、あっちに何かいるのは分かる」


声が低い。


冗談を言っている調子ではなかった。


俺もゼピュロスの視線を追う。


炉。積まれた廃材。その奥に作業用の通路があり、何人かの作業員が動いている。


それ以外には何も見えない。


直也「作業してる人じゃなくて?」

ゼピュロス「違う」


ゼピュロスが胸元へ手を当てた。


ゼピュロス「なんて言えばいいのかな。見えてないのに、そこだけ妙に近い感じがするの。知らないはずなのに、完全に知らないとも思えないっていうか……」


その言葉を聞いた瞬間、別の声が重なった。


ボレアス「……おるな」


俺は振り返った。


ボレアスも同じ方向を見ていた。


直也「お前も?」

ボレアス「うむ。姿は見えぬ。音も聞こえぬ。じゃが、何もない場所とは明らかに違う」


ゼピュロスがボレアスを見る。


いつもなら、ここでどちらかが余計な一言を入れる。


今回は言わなかった。


直也「2人とも同じ場所を見てるんだよな」

ボレアス「そうじゃな」

直也「何か分からないか?」

ボレアス「分からぬものを、分かったように言う気はない。じゃが、気のせいで片づけるには、はっきりしすぎておる」

ゼピュロス「私も。……なんか、初めてって感じがしないのよね」

直也「初めてじゃない?」

ゼピュロス「うまく言えないけど……前にもあった気がする」

ボレアス「……妾か?」

ゼピュロス「たぶん。あんたと最初に会った時に近い。でも、同じじゃない」


ボレアスはしばらく黙った。


ボレアス「妾には、近いとは思えぬな」

直也「じゃあ何だ?」

ボレアス「……真逆じゃ」

ゼピュロス「真逆?」

ボレアス「それ以上は分からぬ。妾とは違う。じゃが、まったく知らぬとも思えぬ」

ゼピュロス「……それ、私が言いたかったやつかも」

ボレアス「ならば最初からそう言え!」

ゼピュロス「言葉が出なかったのよ!」

直也「そこで喧嘩に戻るのかよ」


少しだけ力が抜けた。


だが、2人が同じ場所に何かを感じていることは変わらない。


俺は肩の横へ視線を戻した。


直也「ALMA、この先に誰かいるか?」

ALMA『確認します』


金白の光が炉の方へ移動し、小さく明滅する。


数秒。


いつもなら、すぐに答えが返ってくる時間を過ぎても沈黙が続いた。


ゼピュロス「いるわよ」

ALMA『……』

ゼピュロス「いるってば」

ALMA『観測結果では、存在しません』

ゼピュロス「いるって言ってるでしょ!」

ALMA『信頼の問題ではありません。現在の観測結果を述べています』

ゼピュロス「だから、その観測がおかしいって言ってるの!」

ボレアス「妾も同じものを感じておるぞ。もう一度調べよ」

ALMA『……再確認します』


金白の光が強く明滅する。


俺は炉の奥を見た。


何も見えない。


それでも、性格も考え方もまるで違うゼピュロスとボレアスが、同じ方向を見ている。


偶然で片づけるには気持ちが悪い。


ALMA『周辺生命反応、再照合完了』

直也「どうだ?」

ALMA『確認できません』

ゼピュロス「ほら、また!」

直也「待て。ALMA、燃焼異常は?」

ALMA『同方向に偏っています』

直也「2人が感じてる方向と?」

ALMA『はい』

直也「じゃあ、そこに何かある可能性は?」

ALMA『否定できません』

直也「でも存在は確認できない」

ALMA『はい』

直也「……いるのか、いないのか?」


一拍。


ALMA『……判定できません』


誰もすぐには喋らなかった。


ALMAが分からないと言うこと自体は、これまでにもあった。知らないものや、解析に時間がかかるものだってある。


だが今回は少し違う。


ゼピュロスとボレアスは同じ場所に何かを感じている。燃焼の異常まで同じ方向に偏っている。


それなのに、ALMAにはその「何か」だけが見つけられない。


作業員「おい! 離れろ!」


突然、男の声が響いた。


振り向くと、炉の炎が大きく膨らんでいた。


別の作業員たちも慌てて距離を取り始める。炎はさっきより明らかに大きく、屋根の高さ近くまで噴き上がっている。


直也「全員下がれ!」

リィナ「直也さんもです! 早く!」

ポン太「旦那、見物するには近すぎるぜ!」

直也「見物じゃない!」


俺も数歩下がる。


だが、やはり熱くない。


目の前でこれだけの炎が上がっているのに、肌を焼くような熱気が来ない。視覚だけが危険だと叫び、身体の感覚がそれを否定している。


ゼピュロス「……さっきより大きいのに、全然熱くない」

ボレアス「火だけが大きくなっておる」

ALMA『燃焼反応、急激に増大しています』

直也「原因は?」

ALMA『解析中です』


炎が揺れる。


最初は風だと思った。


だが、違う。


何本もの炎の先端が同じ方向へ傾き、いったん戻ったかと思うと、今度は炉の奥へ向かって細長く伸びていく。


ゼピュロス「これ、風じゃない。少なくとも私が動かしてるんじゃないわ」

直也「お前が言うなら、そこは信用する」

ゼピュロス「そこだけ?」

直也「今ツッコむところじゃない!」


炎がさらに傾いた。


右へ。


そして、炉の奥へ。


散っていた火が引っ張られるように細く伸び、一点へ向かって集まり始める。


まるで、そこに何かがいるみたいに。


ゼピュロスが息を呑んだ。


ゼピュロス「……あっち。やっぱり、あそこよ」

ボレアス「うむ。先ほどより近い」


2人がほとんど同時に動いた。


直也「おい、待て!」

ゼピュロス「マスター、こっち!」

直也「だから一人で先に行くなって!」


しかも今回は、ボレアスまでその後を追い始めた。


直也「お前は止める側だろ!」

ボレアス「知らぬものが目の前にあるのじゃぞ! 今は見る側じゃ!」

直也「都合よく担当部署を変えるな!」

リィナ「直也さん、私たちも行きましょう!」

ポン太「へへっ、結局全員で追うのかい」

直也「そうなるよな!」


俺たちは炉の横を回り込む。


奥には、廃材を投入するための細い通路が続いていた。炎はその先へ引かれるように伸びているのに、近づいても熱は増えない。


先頭を走っていたゼピュロスが角を曲がり――急に止まった。


直也「ゼピュロス?」

ゼピュロス「……いた。やっぱりここ」

直也「見えるのか?」

ゼピュロス「見えてない。でも、さっきよりはっきり分かる。すぐそこ」


ボレアスも追いつき、ゼピュロスの隣で奥を睨んだ。


ボレアス「近いぞ。妾にも分かる」


俺は2人の間から奥を覗いた。


燃え残った木材。黒く焦げた金属。その向こうへ炎が集まっている。


揺れる火の隙間で、何かが動いた。


直也「……人?」


一瞬だった。


炎の向こうを影が横切った。


小さい。


少なくとも、ここで働いている大人の作業員とは体格が違う。人の形をしているように見えた。


直也「ALMA、今の見えたか?」


返事はすぐに来た。


ALMA『……生命反応は確認できません』

ゼピュロス「いるって言ったでしょ」

直也「ああ。俺にも見えた」


炎がさらに奥へ集まる。


その向こうで、もう一度。


人影が動いた。


今度は、さっきよりはっきりと。


誰かがいる。


燃えている場所の、真ん中に。


なのに。


ALMAだけが、その存在を見つけられない。


◆◆◆(燃え残るもの)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回更新予定:10月13日(火)になります。


よろしければブックマーク・評価などで応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。