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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第三部 四つの風

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第22話 追跡開始 ―― 前編「手ぶらの北風」

◆◆◆


橋の依頼を終えた翌朝、俺たちは宿を出た。


昨夜、リィナとボレアスは、あの果物を分け合って食べたらしい。今朝の食堂で、ボレアスが妙に静かだったのは、その余韻だったのかもしれない。誰も、それについては触れなかった。


頭上の光球が、いつも通りの調子で明滅している。


ALMA『未確認反応2件の追跡は継続中です。ただし、方角はまだ絞り込めていません』


直也「待ってても仕方ないし、次の町まで進むか」


誰からも異論は出なかった。荷を背負い直し、街道へ足を向ける。朝の空気は冷たく澄んでいて、歩き出すには悪くない日だった。ゼピュロスが大きく伸びをし、ポン太は懐の勘定帳を確かめるように何度も捲っている。5人での旅立ちは、これが初めてだった。


しばらく歩いたところで、俺はふと違和感に気づいた。


直也「……お前、荷物は」


ボレアス「ない」


直也「着替えは」


ボレアス「ない」


直也「水筒は」


ボレアス「ない」


直也「金は」


ボレアス「ない」


俺は、思わず足を止めた。ボレアスは、両手をぶらぶらとさせながら、悪びれもせず歩いている。考えてみれば当然だった。玉座に鎖で繋がれていた彼女には、旅支度をする機会も、その必要も、これまで一度もなかったのだ。それでも、これほど堂々と「ない」を連発されると、こちらが拍子抜けしてしまう。


直也「何ならあるんだよ」


ボレアス「妾がおる」


直也「自信満々に言うな」


ゼピュロス「一番かさばる荷物だけあるわね」


ボレアス「誰が荷物じゃ!」


ポン太「食費は増えたな」


ボレアス「貴様まで乗るでない!」


リィナ「でも、着替えは本当に必要ですよ?」


ボレアス「……必要なのか?」


その一言に、彼女の口調から、ふっと高飛車な色が抜けた。本気で分かっていなかったらしい。全員が、一瞬だけ黙り込んだ。


直也「そこからかよ」


ポン太「へへっ、着替えなしで何日保つか賭けるか、旦那」


直也「賭けの対象にするな」


ポン太「儲け話には目がなくてな」


◆◆◆


ポン太が、懐から折り畳んだ紙を取り出した。既に旅支度の必要経費を計算してあったらしい。几帳面な文字で、品目と概算価格がびっしりと並んでいる。


ポン太「着替え、水筒、雨具、小袋、寝具、あとは保存食。最低限これだけは要る」


リィナ「傷薬も、少し多めに用意した方がいいかもしれません」


ポン太「おっ、いいとこ気づくな嬢ちゃん。追加しとくか」


ボレアス「旅をするだけで、なぜそこまで要る」


ポン太「生きるってのは金がかかるんだよ」


ボレアス「妾は今まで何も要らなかったぞ」


直也「それ玉座に固定されてたからだろ」


ボレアス「……便利ではあった」


直也「評価するとこそこ!?」


ゼピュロスが噴き出す。だが、その一言の軽さの裏に、彼女なりの正直さがあることに、俺は気づいていた。


歩きながら、それぞれの役割が自然と見えてくる。リィナが治療と生活面を、ポン太が金と契約を、ゼピュロスが索敵と機動力を、俺が全体の判断と調整を担う。誰かが決めたわけではない、長い旅の中で自然とそうなっていった分担だった。


ボレアスが、それに気づいたように呟いた。


ボレアス「それで、妾には何を任せるつもりじゃ」


直也「別に今すぐ決めなくてもいい」


ボレアス「妾を遊ばせておくとは、随分と余裕のある一行じゃな」


直也「遊んでていいって意味じゃない」


ボレアス「ならば最初からそう言え」


別に、急いで決める必要もないと思っただけだった。だが、本人はそう思っていなかったらしい。


そう言うと、彼女は誰に頼まれるでもなく、自分で仕事を探し始めた。役目を与えられるのを待つより、自分から動く方が、彼女の性分に合っているのだろう。


◆◆◆


まず彼女が目をつけたのは、俺の荷物だった。


ボレアス「寄越せ」


直也「持ってくれるのか」


ボレアス「勘違いするな。貴様が遅れれば妾まで迷惑する」


そう言って俺の荷物をひったくると、危なげなく背負って歩き出す。だが、しばらくして俺は水筒に口をつけ、思わず顔をしかめた。


直也「……水筒凍ってるんだけど」


ボレアス「冷やしてやった。感謝せよ」


直也「飲めねぇよ」


ボレアス「軟弱じゃな」


ゼピュロス「なんでマスターが怒られてるのよ」


ALMA『確認しました。内容物は凍結しています』


直也「見りゃ分かる」


ALMA『では、確認は不要でしたか』


直也「そうじゃなくて、どうすれば飲めるかを言えよ」


ALMA『温めれば融解します』


直也「それも見りゃ分かる!」


ALMA『冷却を行った本人への申し立てを推奨します』


ボレアス「妾のせいにするでない」


ALMA『事実関係を整理しただけです』


直也「お前、そういうところだけ容赦ないよな」


俺は結局、凍った水筒を懐に入れ、体温で溶けるのを待つことにした。ボレアスはそれを見て、満足げに頷いている。良かれと思ってやったことなのは、間違いないのだろう。ただ、方向性が、少しばかりずれていた。


リィナ「私の水筒、少し分けましょうか」


直也「助かる」


ボレアス「妾のもてなしを断るとは、贅沢な男じゃ」


直也「もてなしになってないんだよ、それ」


次にボレアスが向かったのは、先を歩いていたゼピュロスの隣だった。


ボレアス「前方は妾が見る」


ゼピュロス「そこ私の担当!」


ボレアス「役割を独占するでない」


ゼピュロス「あんた昨日まで仲間じゃなかったでしょうが!」


押し問答の末、ボレアスは渋々引き下がった。だが、その顔には、はっきりと不満が浮かんでいた。何もせずに歩くだけの時間が、性に合わないのだろう。


ポン太「へへっ、そんな暇そうな顔してんなら、荷物もう一つ持つか?」


ボレアス「誰が暇じゃと言った」


ポン太「顔に書いてあるぜ」


それでも諦めきれなかったのか、次に彼女が指差したのは、分かれ道の先だった。


ボレアス「こちらじゃ」


直也「なんで分かる」


ボレアス「勘じゃ」


直也「やめろ」


ボレアス「信用のない男じゃな」


結局、正しい道はポン太の地図が示す方だった。


ボレアス「……またか」


仕事を探しては空振りする、そんな午前だった。それでも、彼女の表情には、以前のような苛立ちや焦りは見えなかった。空振りすら、どこか楽しんでいるようにも見えた。


ゼピュロス「懲りないわね、あんた」


ボレアス「妾がこの程度で諦めると思うたか」


ゼピュロス「そこ威張るところ?」


そんな軽口を交わしながら、俺たちは歩き続けた。


◆◆◆


昼を過ぎた頃、俺たちは街道脇の休憩所へ立ち寄った。木のベンチがいくつか並び、旅人たちが思い思いに足を休めている。井戸端では、旅装束の男が水筒に水を汲んでおり、その隣で、老いた商人が地図を広げて何かを確認していた。荷馬の嘶きと、旅人たちの談笑が、のんびりとした空気を作っている。


俺たちは荷を下ろし、しばしの休息へ入った。ボレアスは、迷わずベンチに腰を下ろす。だが、すぐに眉をひそめた。


ボレアス「……硬いな」


直也「ベンチだからな」


ボレアス「妾が座るには、いささか質が悪い」


ゼピュロス「昨日まで氷の椅子だった人が、贅沢言わないでよ」


ボレアス「氷の椅子と、木の板を比べるでない」


ゼピュロス「比べたのあんたじゃない」


そんなやり取りに、リィナが小さく笑った。ポン太は懐の帳面を開き、今日一日の出納を確かめている。


ふと、そのポン太の手が止まった。地図と、休憩所の案内板を、何度も見比べている。


ポン太「……旦那」


直也「なんだ」


ポン太「この分岐、地図と位置違わねぇか?」


俺も覗き込んだ。確かに、少しだけずれている気がする。だが、それだけだった。旅の道具としては、地図など多少の誤差があって当然のものだ。


直也「地図が古いんじゃないか」


ポン太「かもな。この手の地図は、書いてから何年も更新されねぇことも珍しくねぇ」


その程度の会話で、俺たちはそれ以上気にしなかった。旅の途中、地図の誤差など、珍しい話でもない。


それでも、頭の片隅に、その一言だけが、小さく引っかかったまま残った。


◆◆◆(手ぶらの北風)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回更新予定:9月29日(火)になります。


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