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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第二部 捨てられたものたち

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第20話 氷の玉座を降りる日 ―― 中編「止める者の選択」

◆◆◆


黒い扉の反応は、しばらくして静まった。ルーンの輝きは元の一定なリズムへと戻り、空気の軋みも消えていた。それでも、俺たちは誰も、すぐにその場を離れようとはしなかった。


ボレアス「……もう、収まったようじゃ」


彼女は、そう呟きながらも、まだ扉の方へ視線を残していた。何かを確かめるような、それでいて確かめきれずにいるような、そんな横顔だった。


直也「ALMA、今の反応、もう少し詳しく分かるか」


ALMA『解析を継続します』


頭上の光球が、静かに動いた。淡い光が、玉座と鎖と、床に刻まれた亀裂の一つ一つへ、丁寧に沿っていく。長い沈黙が、氷の広間に満ちた。


その間、誰も口を挟まなかった。ポン太は瓦礫の隙間から拾い上げた金属片を、飽きもせず布で磨いている。ゼピュロスは壁にもたれ、手元に薄く形成した風刃を、意味もなく開いたり閉じたりしていた。リィナは、ボレアスのそばに置かれた器を見つめ、それからそっと、保温の魔法をかけ直した。誰も、何かを問い詰めようとはしなかった。


ポン太「……なあ、この静けさ、俺っちは嫌いじゃねぇよ」


誰に言うでもなく、ポン太が呟いた。磨いていた金属片を懐へしまい、あくびを一つ噛み殺す。


ゼピュロス「らしくない台詞ね」


ポン太「たまにはな」


そんな短いやり取りだけが、氷の広間に静かに響いて、また消えていった。


やがて、ALMAの光が止まった。


ALMA『報告します。玉座から鎖を通じ、対象の熱が継続的に吸い上げられている構造を確認しました』


直也「熱が、吸われてる……」


ALMA『鎖の波形は、単純な拘束用の構造とは一致しません』


直也「じゃあ、何のためだ」


ALMA『特定できません。目的、および対価の有無についても、現時点では解析不能です』


歯切れの悪い報告だった。だが、その歯切れの悪さこそが、今のALMAの精一杯なのだろうと、俺には分かった。分からないことを、分からないと言う。それだけでも、以前のこいつなら、もう少し違う言い方をしていた気がする。


ボレアス「……拘束のためでは、ない、と」


彼女は、自分の腕に走る霜の亀裂を、じっと見つめながら呟いた。


ボレアス「妾は、ずっと、閉じ込められておるのだと思っておった」


直也「違うのか」


ボレアス「分からぬ。分からぬから、余計に、腹立たしい」


彼女は、吐き捨てるように言ったが、その声には、これまでの尖った拒絶とは違う、戸惑いに似た響きがあった。自分の身体に何が起きているのか、今まで一度も、本当の意味では知らずにいたのかもしれない。


俺は、それ以上、何も聞かなかった。


ここで「じゃあどうする」と聞けば、それはまた、あの日と同じ過ちになる。答えを急かすことも、選択を差し出すことも、今の俺がやるべきことではなかった。


リィナが、ボレアスのそばへ、そっと器を寄せた。何も言わず、ただ位置を直しただけだった。冷めないようにという、いつもの気遣いだけが、そこにあった。


俺は、少し離れた場所に腰を下ろした。何をするでもなく、崩れた天井の隙間から落ちる氷の粒を、ぼんやりと眺めた。リィナも、静かに片付けの手を動かしている。ポン太は、崩れた壁にもたれて目を閉じていた。眠っているのかと思えば、時折、片目だけ開けてこちらの様子を窺っている。ゼピュロスは、退屈そうに髪をいじりながら、それでも部屋を出ていこうとはしなかった。


長い時間が流れた。氷の壁に反射する光だけが、静かに揺れている。ボレアスは、時折、鎖に触れては離し、また触れた。指先の霜が、そのたびに、かすかに軋んだ。


何度か、口を開きかけては、また閉じる。その繰り返しだった。玉座の背に預けていた身体を起こしては、また戻す。視線は、鎖と、自分の手のひらと、それから遠く扉の方を、行ったり来たりしていた。


誰も、それを急かさなかった。ポン太でさえ、片目を開けたまま、それ以上は何も言わなかった。


ボレアス「……妾は」


その一言に、俺は顔を上げた。だが、彼女はそこで言葉を止めた。まだ、続きを見つけられずにいるようだった。


俺は、何も言わなかった。ただ、そこにいた。


しばらくして、彼女は、もう一度口を開いた。


ボレアス「妾は、ずっと、これが役目だと思っておった。止める者として、ここに在ることが、妾の全てじゃと」


直也「うん」


ボレアス「じゃが、さっきの扉を見て、思うたのじゃ。あれは、妾に、何かを問うておるのではないか、と」


直也「何を」


ボレアス「知らぬ。じゃが……妾自身に、問われておる気がした」


彼女は、そこで一度、深く息を吸った。


俺は、続きを待った。ただ、待った。何かを言わせるためではなく、彼女が自分の言葉に辿り着くのを、邪魔したくなかった。


ボレアス「……妾は」


そこまで言いかけて、彼女の手が、無意識に鎖を強く握りしめた。指先の霜が、ぱきり、と小さく鳴る。手放そうとしているものを、最後にもう一度確かめるような、そんな仕草だった。


ボレアス「……忘れよ」


彼女は、一度、言葉を引っ込めた。玉座の背へ、身体を強く預け直す。その横顔に、俺は初めて、これまでの迷いより深い何かを見た気がした。


だが、その姿勢は、長くは保たれなかった。


握りしめていた指から、少しずつ、力が抜けていく。やがて、鎖から手が離れた。今度は、確かめるためではなく、ただ、手放すために。


長い、長い間があった。


ボレアス「……降りたい」


それは、驚くほど小さな声だった。自分の言葉に、自分で戸惑っているような響きだった。


俺は、何も言わなかった。頷くことすらしなかった。ここで何か言葉を返せば、それはまた、彼女の選択に俺の色を混ぜることになる。ただ、その一言を、静かに受け止めた。


その瞬間だった。


かちり、と小さな音がした。


彼女の手首を縛っていた鎖の一つが、微かに緩んだ。誰かが外したのではない。ただ、自らその形を解くように、輪が少しだけ、緩やかになっていた。


ボレアス「……な、なんじゃ」


彼女自身が、一番驚いていた。緩んだ鎖を、信じられないものを見るような目で見つめている。


ALMA『……鎖の接続に、変化を検出』


ALMAの声にも、わずかな戸惑いがあった。数値を並べるいつもの調子ではなく、事実をそのまま口にするだけの、素直な報告だった。


ポン太が、思わず腰を浮かせかけた。だが、俺はそれを、目だけで制した。


直也「触るな」


短く、それだけ言った。


ポン太「……分かってるよ、旦那」


彼は、浮かせかけた腰をゆっくりと戻した。誰も、鎖に手を伸ばさなかった。壊すことも、外すことも、誰の役目でもなかった。


ゼピュロスが、小さく息を吐いた。


ゼピュロス「……これ、あんたがやったんじゃないの」


ボレアス「……妾は、何もしておらぬ」


ゼピュロス「そうよね。だから、いいんじゃない」


その一言に、ボレアスは、何も言い返さなかった。ただ、まだ驚きの抜けきらない目で、緩んだ鎖を見つめ続けていた。


背後で、黒い扉のルーンが、また淡く輝きを増していくのが分かった。前ほどの激しさではない。それでも、確かに、応えていた。


ボレアスは、緩んだ鎖と自分の手のひらを、交互に見つめていた。


その沈黙は、拒絶ではなかった。むしろ、これまでのどんな沈黙よりも、静かだった。彼女がまだ、自分の中で何かを組み立てている途中なのだと、俺には分かった。


俺は、それ以上、何も言わなかった。今日は、それ以上踏み込まなくていい気がした。答えは、まだ全部出なくていい。ただ、彼女が自分の言葉で、一つだけ何かを選んだ。それだけで、今日は十分だった。


頭上の光球が、静かに明滅を続けている。氷の広間に、いつもより少しだけ、柔らかな沈黙が満ちていた。


◆◆◆(止める者の選択)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうござます。


【第二部 クライマックス公開スケジュール】


8/29(土)第20話 後編


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