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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第二部 捨てられたものたち

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第19話 正しい場所へ戻す者 ―― 中編「戻される者たち」

◆◆◆


沈黙が張り詰めた空気を割るように、均衡執行体が、大きく一歩を踏み込んだ。


その瞬間、俺の視界が、奇妙な揺らぎに包まれた。周囲の景色が、二重写しになったように歪む。目の前には崩れた保管庫が広がっているはずなのに、なぜか脳裏には、あの古いオフィスの光景が浮かび上がってきた。西日の差し込む、誰にも見向きもされない指定席。書類の積み上がったデスク、誰も座らない会議室の椅子。Outlookの予定表に並ぶ、出席任意の会議名。


直也(……なんだ、これ)


均衡執行体『対象一、初期状態への復帰を開始』


その声と共に、身体の奥から、奇妙な感覚がせり上がってくる。まるで、誰かに背中を押されて、来た道を無理やり引き戻されるような感覚だった。足元の感覚が、石畳から、あの見慣れたオフィスの床へと、ゆっくり置き換わっていくようだった。抵抗する間もなく、意識の奥まで侵食されていく気配があった。


力が俺の記憶を読んだわけじゃない。ただ、元いた場所へ引き戻される感覚に、俺自身が、あのオフィスを重ねているだけだった。仲間との繋がりを切り離され、この保管庫に異物として最初に記録された状態へ、戻されようとしている。


直也「うわっ……!」


俺は思わずよろめいた。膝の力が抜けそうになる。頭の中で、会社員だった頃の自分の姿が、やけに鮮明に像を結んでいた。誰にも話しかけられず、誰の役にも立たず、ただ椅子に座っているだけの毎日。


ALMA『直也さん、意識をこちらに集中してください!』


頭上の光球が、激しく明滅している。その声に縋るように、俺は歯を食いしばった。


直也「くそ、離れろ……!」


必死に踏ん張ると、引き戻される感覚が、わずかに緩んだ。だが、完全には消えない。まるで見えない手が、今もどこかで俺の襟首を掴んでいるようだった。


隣では、リィナが杖を抱きしめるようにして立ち尽くしていた。


リィナ「わ、私の魔法が……知らない形に戻って……!」


彼女の杖の先から、これまで見たこともないような、ぎこちない光が漏れている。まるで、生活魔法を覚えたての頃のような、不安定な輝きだった。汚れを残すことも、悪いところだけを見分けることも、今のこの光にはできそうになかった。積み上げてきたものが、根こそぎ引き剥がされていくような感覚だった。


均衡執行体『対象二、規格外能力の無効化を確認』


ゼピュロスの姿の輪郭も、うっすらと揺らいでいた。人型を保つ線が、時折、剣の形へと戻りかけている。


ゼピュロス「ちょっと……ふざけないでよ……!」


彼女は歯を食いしばりながら、自分の腕を強く抱いた。剣に戻りかけるたびに、意志の力でそれを押し戻しているようだった。額に汗が滲み、その表情には、これまで見たことのない必死さがあった。


ポン太もまた、姿が薄くなりかけていた。輪郭が透け、向こう側の瓦礫が見え隠れする。


ポン太「くそ、こういうのは契約違反だっつーの……!」


彼は懐から、何かの証文らしきものを取り出し、それを強く握りしめていた。契約という概念そのものに、自分の存在を繋ぎ止めようとしているようだった。尻尾の先まで薄くなりかけていたが、それでも彼は諦めなかった。


直也「みんな、耐えろ! こいつの狙いは、俺たちがバラバラになることだ!」


俺は叫びながら、必死に足を踏ん張った。この均衡執行体は、俺たちを個別に、それぞれの「正しい位置」へ引き戻そうとしている。一人一人を、それぞれが積み上げてきたものから切り離し、孤立させようとしている。まるで、この短い旅そのものを、なかったことにしようとしているようだった。


直也(……いつもの動きじゃ駄目だ)


とっさに、そう思った。ボレアスが止め、ゼピュロスが斬り、リィナが支え、ポン太が退路を作る。それが、この短い旅で作り上げてきた勝ち方だった。何度も繰り返し、確実に機能してきた連携だった。だが、その決まった役割分担そのものが、今は危うい気がした。


直也(決まった動きをなぞるほど、あいつの思う壺かもしれない)


「正しい位置へ戻す」敵を相手に、いつもの「正しい役割」で立ち向かえば、それこそが敵の望む構図になる。俺が指揮し、みんながその通りに動く。それすらも、一種の「正しい配置」に見えてしまうかもしれない。


直也「みんな、いつもの動きをするな! 自分で、今できることを選べ!」


俺は叫びながら、均衡執行体へ向かって駆け出した。指示を出すためじゃない。核の位置を、自分の目で確かめるためだった。仲間たちを、敵の狙いから少しでも逸らすためだった。石畳を蹴る足音だけが、やけにはっきりと耳に響いた。


直也「胸部のルーンだ! あれが、処理の中心になってる!」


均衡執行体の攻撃が、俺を狙って振り下ろされる。とっさに横へ転がりながら、俺はその一瞬で、胸部のルーンの塊をはっきりと目に焼き付けた。石畳に肩を強く打ちつけたが、痛みを気にする余裕はなかった。


均衡執行体『対象一、逸脱行動を確認』


直也「悪いな、台本通りには動かない」


言いながら、俺は次の動きへ意識を切り替えた。


俺は立ち上がりながら、埃を払った。指揮官として動くのではなく、一人の観察者として、この敵の弱点を確かめる。それが、今の俺にできる、いつもと違う動き方だった。この短い旅で身につけた、観察するという武器を、今こそ使う時だった。


その時、氷の玉座から、ボレアスの声が響いた。凛とした、揺るぎのない声だった。


ボレアス「……直也。あの核、妾が知っている」


直也「知ってるのか!」


ボレアス「胸部のルーンに刻まれた命令が、妾の鎖と同じ癖を持っておる。あれは、止めるだけでは壊れぬ」


俺は驚いた。彼女が、自分の知識を自分から差し出したのは初めてだった。これまでのボレアスなら、聞かれるまで黙っていたはずだ。玉座に座ったまま、それでも彼女は戦況を鋭く見据えていた。


ボレアス「妾の力を、どこへ使うかは妾が決める」


その、静かで力強い一言に、俺は息を呑んだ。これまでの彼女なら、力の使い方を誰かに決めてもらうか、あるいは全力で抵抗するかの二択しか知らなかったはずだ。今、彼女は自分の意思で、力の使い道を選んでいた。誰にも命じられず、どこを止め、どこを止めぬかを、自分の判断で決める。それは、あの日交わした約束の続きだった。


その言葉と共に、冷気が走った。だが、それは均衡執行体の全身を包むものではなかった。半分は、リィナの足元をそっと固めるように。もう半分は、均衡執行体の片脚だけを、細く鋭く縛るように。無駄なく、狙いを絞った力の使い方だった。


ボレアス「小娘、今のうちに好きに動け。奴の右脚は、しばし縫い止めておく」


意外な提案に、リィナは一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。


リィナ「は、はい……!」


リィナは、驚きながらも、震える杖を握り直した。そして、いつもの「支える」魔法ではなく、別の使い方を試した。杖の先を、均衡執行体の足元の石畳へ突き立てる。


リィナ「悪いところだけ……全部、見つけます!」


淡い光が、均衡執行体の足元へ這うように広がっていく。巨躯の脚から石畳へ伸びる、白い固定の線。数ある繋がりの中から、その異常な一本だけを、彼女の光が選り分けていく。汚れと残すべきものを見分ける、いつもの手つきだった。誰に指示されたわけでもない、彼女自身が思いついた使い方だった。集中する額に、うっすらと汗が滲んでいる。


リィナ「この白い線……薄く、削ります!」


淡い光がその一本へ集中する。石畳を縛りつけていた白い固定が、少しずつ細く、頼りなくなっていく。


その声には、確かな手応えがあった。その声を聞いた瞬間、ゼピュロスが動いた。だが、いつものように核へ真っ直ぐ斬りかかるのではなく、リィナが示した足元へ、風を叩きつける。


ゼピュロス「そこ、悪くない位置ね!」


翠色の風が、集中した圧となって石畳を叩く。均衡執行体の巨躯が、大きく傾いだ。片脚を固定されたまま受けた一撃に、その動きが明らかに鈍る。


ポン太は、退路を確保する代わりに、崩れかけた棚の残骸を、均衡執行体の足元へ次々と蹴り込んでいた。いつもなら真っ先に逃げ道を探す彼が、今は自ら前へ出ていた。その判断の速さには、これまでの旅で培った勘のようなものが働いているようだった。


ポン太「退路は後回しだ! 今は足止めが先だろうが!」


均衡執行体『行動パターンの予測不能性が上昇』


その声には、初めて動揺のような響きが混じった。装甲のルーンが、不規則に明滅し始める。まるで、処理しきれない情報の奔流に、戸惑っているようだった。


直也「そりゃそうだ。俺たちは、お前が思ってる『正しい俺たち』じゃない」


均衡執行体が体勢を崩したまま、必死に姿勢を立て直そうとする。だが、傾いた巨躯は、思うように制御できないようだった。バラバラに見える俺たちの動きこそが、決められたパターンを持たない、最大の脅威だった。


ALMA『警告。ボレアスさんによる二重固定――リィナさんの足場と、対象の右脚への拘束――の維持限界まで、残り推定四秒』


ボレアス「あと少しじゃ……!」


彼女の声には、確かな苦しさがあったが、それでも力を緩めなかった。鎖を握る指先から、細い霜の亀裂が新たに広がっていく。


直也「俺の指示は待つな! 自分で次を選べ!」


それぞれが次の動きを自分で選び、その一つ一つが、一つの隙へと重なっていく。ゼピュロスの風、リィナが薄めた固定線、ポン太の瓦礫。バラバラに見えて、確かに一つの結果へ向かっていた。


ALMA『維持限界まで、残り推定二秒』


ボレアス「妾の力も、そう長くは保たぬぞ……!」


その声には、これまでにない切迫感があった。


俺は、最後の力を振り絞って叫んだ。ここで決めなければ、これまで積み上げてきたものすべてが、水の泡になる。誰か一人でも欠ければ、この一瞬の隙は閉じてしまう。


直也「今だ、核が開いた!」


◆◆◆(戻される者たち)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうござます。


【第二部 クライマックス公開スケジュール】


8/23(日)第19話 後編

8/25(火)第20話 前編

8/27(木)第20話 中編

8/29(土)第20話 後編


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