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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第二部 捨てられたものたち

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第18話 黒い扉は、選択に応える ―― 前編「再現できない反応」

◆◆◆


「……妙な波形だな、これ」


俺は、ALMAが見せている観測記録を覗き込みながら呟いた。宿の一室、朝食を終えたばかりのテーブルの上に、淡い光の波形が幾重にも浮かんでいる。


あの時、ボレアスがスープを口にした瞬間の記録。時刻を示す線の脇に、小さな山が2つ、ほぼ同時に立っている。何度見返しても、その形は変わらなかった。


ALMA『対象内部の熱流出量が、一時的に変化しています。同時刻、黒い扉のルーンにも通常とは異なる発光パターンを検出しました』


直也「原因は」


ALMA『特定できていません。当該時刻に発生した外部要因は、スープの摂取のみです』


俺は、光球の淡い明滅を見上げた。ALMA自身も、この結果に対して何か引っかかっているような、そんな気配があった。いつもなら即座に断定的な解析を返すこいつが、珍しく歯切れの悪い言い方をしている。その些細な違和感が、余計に胸の奥をざわつかせた。あいつ自身も、この現象を持て余しているように見えた。


リィナが、少し不安げに観測記録を見つめた。


リィナ「私たちが作った、あのスープが……何か、悪い影響を?」


直也「悪いかどうかは、まだ分からない。だから確かめに行く」


リィナの表情が、少しだけ強張った。自分が用意したものが、何か予期せぬ結果を招いたのではないか。そんな心配が滲んでいる。あの時、精一杯の思いを込めて作ったスープだった。それが良くない結果へ繋がっていたとしたら、彼女にとっては辛いことだろう。


直也「心配すんな。悪い変化だとは、俺も思ってない」


俺は、あえて軽い調子で付け加えた。実際、あの時の器の周りで氷が溶けた光景は、少なくとも悪意のあるものには見えなかった。むしろ、あの温かさに近い何かだった気がする。


俺たちは身支度を整え、保管庫へ向かった。あの日からさらに一晩が明け、崩落の余波もいくらか落ち着いている。それでも、油断はできない場所だった。崩れた棚の一部は、まだ完全には片付いていない。壁のルーンも、以前ほどではないが、時折不規則な瞬きを見せていた。


黒い扉の前に着くと、ボレアスがいつも通り玉座に座っていた。俺たちを見て、片眉を上げる。指先の霜の亀裂は、あの時からわずかに落ち着いたように見えたが、完全に消えたわけではなかった。


ボレアス「今度は何をしに来た。また飯か」


直也「いや、今日は実験だ。付き合ってほしい」


ボレアス「実験、じゃと」


その言葉に、ボレアスの表情が微かに険しくなった。実験、という言葉自体が、単純に気に入らなかったらしい。自分を測られたり、扱われたりすること自体を、彼女は嫌う。


俺は簡潔に、観測記録のことを説明した。あの時の変化、原因不明の反応、それを確かめたいということ。ボレアスは眉をひそめたが、拒絶はしなかった。少し離れた場所で、ポン太が興味深そうに耳を傾けている。契約や仕組みに敏い彼らしく、口は挟まず、じっと成り行きを見守っているようだった。


直也「まず、条件を絞り込みたい。ゼピュロス、頼む」


ゼピュロス「はいはい、了解」


ゼピュロスが、ふわりと身を起こし、軽い足取りで黒い扉の前に立った。気負った様子は一切ない。まるで、いつもの日課をこなすような、あっさりとした構えだった。彼女にとって、これはただの検証作業に過ぎないらしい。


直也「まずは弱い風を、扉に当ててくれ」


ゼピュロス「弱い風ね。はい」


翠色の風が、ふわりと扉を撫でた。ルーンに変化はない。俺は、扉の表面を注意深く観察していたが、光の揺らぎ一つ見当たらなかった。


直也「じゃあ、思い切り」


ゼピュロス「私、風量調節器じゃないんだけど?」


文句を言いながらも、彼女は言われた通りに力を込めた。強い風が扉全体を叩く。埃と細かな氷片が舞い上がったが、ルーンの発光パターンには、何の変化も現れなかった。風が収まった後、ゼピュロスは肩をすくめて振り返った。


ゼピュロス「見た? 今のかなり本気だったんだけど」


直也「見てた。でも、何も起きてない」


ALMA『風圧による反応、検出されず』


直也「次は熱だな」


俺は懐から、宿で用意してきた温石を取り出した。じんわりと熱を持つそれを、扉の表面へ押し当てる。手のひらに伝わる温もりが、扉の冷たさに少しずつ吸われていくのが分かった。あの時のスープと同じくらいの温度を意識して選んだつもりだったが、果たしてどこまで正確に再現できているのか、自分でも自信はなかった。


ALMA『表面温度、上昇を確認。ルーンへの影響、検出されず』


直也「魔力はどうだ。リィナ、頼めるか」


リィナ「は、はい」


リィナが杖を構え、扉へ向けて「お掃除」を弱くかけた。淡い光が扉の表面を撫でるように広がった。慎重に、丁寧に、まるで扉を傷つけないよう気を遣うような手つきだった。あの時、器へ保温をかけ直していた時と同じ、優しい所作だった。だが、ルーンは相変わらず沈黙している。


ALMA『魔力反応、検出されず』


一通りの条件を試し終え、俺たちは顔を見合わせた。風も、熱も、魔力も、何一つとして扉を動かさなかった。用意できる限りの検証を尽くしたはずなのに、手応えは何一つ得られていない。焦りにも似た沈黙が、しばらく俺たちの間に流れた。


直也「……全部、外れか」


俺は腕を組み、扉を見つめた。熱でも、風でも、魔力でもない。だとしたら、あの時、何が違っていたのか。


ゼピュロス「ねぇ、これもしかして」


彼女が、扉から一歩下がりながら言った。両手を後ろで組み、興味なさそうに扉を眺めている。


ゼピュロス「風の問題じゃないんじゃない? 私、さっきから全然関係ない気がしてきた」


直也「かもな」


その切り替えの早さが、いっそ気持ちよかった。無駄に粘って自分を責めるでもなく、あっさりと見切りをつける。それもまた、彼女らしい在り方だった。悩むべき場面と、さっさと切り替えるべき場面を、彼女は本能的に見分けているのかもしれない。


ボレアス「戯言を並べるなら、さっさと帰れ」


その口調には、いつもの尖りがあった。だが、俺は気にせず考え続けた。頭の中では、いくつもの可能性が浮かんでは消えていく。


ALMA『補足情報。あの保管庫の均衡崩壊以降、音・熱・流れの3要素は独立していない可能性が示唆されています。今回の反応も、単一の物理量では説明できない可能性があります』


直也「独立してない、か……」


音を戻せば、熱と流れが揺れる。あの時も、何か一つの要素だけを動かしたわけじゃなかった。だとすれば、今回の反応も、単純な物理量の足し算では説明がつかないのかもしれない。この世界の均衡は、いつも俺たちの予想より複雑に絡み合っている。


俺は、あの時の光景を思い返した。ボレアスが、匙を取り、ためらいながらも口へ運んだ瞬間。器の周りの氷が、音もなく僅かに溶けていった、あの光景。あれは、誰かに促されたからではなかった。リィナは「決めてください」と言っただけで、それ以上は何も強制しなかった。誰も、食べろとは言わなかった。


あの時、違ったのは何だったのか。俺の中で、何かが繋がりかけていた。


直也「なあ、ボレアス。あの時、お前はなんであのスープを食べた」


ボレアス「……知らぬ。気まぐれじゃ」


直也「気まぐれ、か」


そっけない答えだったが、その声には、どこか誤魔化すような響きがあった。俺は、あえてそれ以上は追及しなかった。だが、頭の中の仮説は、少しずつ形を持ち始めていた。


物理的な条件じゃない。あの時、それまでと違っていたのは、ただ一つ。


あの一口だけ、それまでのボレアスの判断とは、何かが違っていた気がする。まだ、それが何なのか、はっきりとは言葉にできない。だが、確かに何かが違った。


直也「……もしかして」


ALMA『直也さん、何か仮説がありますか』


直也「まだ、確信は持てない。でも、試してみる価値はあると思う」


俺は、黒い扉を見上げた。継ぎ目のない黒い表面に、氷のルーンが静かに刻まれている。この扉が反応したのは、物理現象ではなく、もっと別の何かに対してだったのかもしれない。


ボレアス「何を企んでおる」


直也「企むってほどじゃない。ただ、確かめたいことがある」


俺の視線に、ボレアスは訝しげな表情を返した。その瞳には、警戒と、僅かな興味が入り混じっているように見えた。これまでの高圧的な態度とは、少しだけ違う色だった。何を考えているのか、彼女自身にもまだ整理がついていないのかもしれない。


だが、俺はまだ、この仮説をどう検証すればいいのか、はっきりとした方法を持っていなかった。物理条件のように、風の強さや熱量を数値で調整することはできない。ボレアス自身の「意思」を、どうやって外から確かめればいいのか。誰かの心の内側を測る道具など、この世界のどこにも存在しないはずだった。それでも、何か方法があるはずだと、俺は思考を巡らせ続けた。


ゼピュロス「で、結局どうすんの?」


ゼピュロスが、興味深そうに俺の顔を覗き込んだ。


直也「……考える」


その日は、それ以上の答えを出せないまま、俺たちは保管庫を後にした。帰り道、誰も多くを語らなかった。空はもう夕暮れに近づいていた。それでも、胸の奥では、その仮説だけが静かに残り続けていた。


◆◆◆(再現できない反応)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうござます。


【第二部 クライマックス公開スケジュール】


8/15(土)第18話 中編

8/17(月)第18話 後編

8/19(水)第19話 前編

8/21(金)第19話 中編

8/23(日)第19話 後編

8/25(火)第20話 前編

8/27(木)第20話 中編

8/29(土)第20話 後編


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