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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第二部 捨てられたものたち

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第17話 氷の玉座に食卓を ―― 後編「冷たくされ続けた者」

◆◆◆


ALMAの光が、ボレアスの腕をなぞり終えると、頭上の光球が静かに明滅した。しばらくの沈黙の後、解析結果を告げる声が響いた。


ALMA『対象内部の熱量低下を確認。外部冷却ではなく、継続的な流出と推定します』


その言葉に、俺は思わず眉をひそめた。頭の中で、これまで見てきた断片がゆっくりと繋がっていく。声のない戦場で見た振動、崩落する保管庫、そして今、目の前にある霜の亀裂。全部が、一つの流れの中にあるような気がした。


直也「熱量の流出……つまり、外から冷やされてるんじゃなくて、内側から失われてるってことか」


ALMA『肯定です。原因は特定できていませんが、鎖および保管庫の構造が、対象の内部熱を吸い上げている可能性があります』


俺は、ボレアスの腕に走る霜の亀裂を見つめた。昨日よりも深く、広く刻まれたそれは、単なる疲労の跡ではなかったのかもしれない。昨日、円形の床であの敵たちを一斉に固定した時の負荷が、今もまだ、彼女の内側で尾を引いているのだとしたら。それだけではないのかもしれない。もっと長い時間をかけて、少しずつ、削られ続けてきたのだとしたら。


直也「だったら、お前が冷たいんじゃない。ずっと、冷たくされ続けてるんじゃないのか」


その言葉を口にした瞬間、ボレアスの表情が、はっきりと変わった。これまで見せたことのない、鋭い拒絶の色だった。


ボレアス「戯言を」


彼女は鎖を鳴らし、身を強張らせた。氷の玉座に座る背筋が、いつも以上に張り詰めている。


ボレアス「妾は北風じゃ。冷たくあることこそ、妾の在り方よ」


直也「それがお前の力なのは分かる。でも、それしかないと誰が決めた」


ボレアス「貴様に何が分かる」


その声には、これまでにない強い拒絶があった。氷の玉座の周囲の温度が、僅かに下がった気さえした。俺は、それでも続けた。


直也「分からないよ。でも、力と、それしかない生き方は、別物なんじゃないか」


ボレアス「妾は、止めるために生まれた。それ以外の何者でもない」


彼女の言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようだった。何度も繰り返し唱えることで、初めて保てる何かのように。俺は、それ以上強くは押さなかった。ここで言い争っても、彼女を追い詰めるだけだと分かっていた。


しばらく、重い沈黙が流れた。氷の壁に反射する光だけが、静かに揺れている。


その沈黙を破ったのは、ゼピュロスだった。彼女は、それまで黙って話を聞いていたが、ふと、静かな声で口を開いた。いつもの威勢の良さとは違う、どこか思慮深い響きだった。


ゼピュロス「役目があることと、それしかないことは、同じじゃないでしょ」


ボレアスが、ゼピュロスへ視線を向けた。これまでの言い争いとは違う、探るような眼差しだった。


ゼピュロス「私だって、自分は斬るための剣だと思ってた。壊すことが仕事だって。でも、昨日、違う使い方があるって知った」


ゼピュロスは、自分の手のひらを見つめながら、言葉を選ぶように続けた。普段の勢いに任せた口調とは違う、一言一言を確かめるような話し方だった。


ゼピュロス「風は、斬るためだけにあるんじゃない。運ぶことも、支えることもできる。それを知ったからって、私が風じゃなくなったわけじゃない」


ボレアスは、何も言い返さなかった。ただ、じっとゼピュロスを見つめている。その視線には、反発とは違う、何か戸惑いに似た色が浮かんでいた。自分とは違う答えに辿り着いた誰かを、どう受け止めればいいのか分からずにいるようだった。長い沈黙の末、彼女はようやく視線を逸らした。


ゼピュロス「あんたも、止めるだけが全部じゃないんじゃないの」


その言葉に、ボレアスは長い沈黙で応えた。反論しようとして、しかし言葉が出てこない、そんな沈黙だった。


リィナが、静かに口を開いた。それまでの静けさを、そっと破るような声だった。


リィナ「食べるかどうかは、ボレアスさんが決めてください」


彼女は、器を無理に差し出すことも、下げることもしなかった。ただ、玉座のそばに置いたまま、その選択をボレアス自身へ委ねた。強制でも、命令でもない。ただ、選ぶ権利だけを、静かに差し出していた。


リィナ「必要だから食べてほしいわけじゃありません。私たちが、あなたのために作りたかっただけです」


その言葉には、これまでのどんな説得よりも、飾らない率直さがあった。


その言葉に、ボレアスは何も答えなかった。ただ、その視線は、玉座のそばに置かれた器から、まだ離れていなかった。


俺たちは、それ以上何も言わず、帰り支度を始めた。ポン太が布を畳み、器を片付けていく。長居は無用だと、誰もが自然と理解していた。


ポン太「へへっ、今日の器代は請求しとくぜ」


直也「せめて今日くらい黙ってろ」


ポン太「商売に休みはねぇんだよ、旦那」


そう言いつつも、ポン太の視線もまた、玉座の方をちらりと気にしていた。軽口とは裏腹に、彼なりに何かを感じ取っているのかもしれない。


軽口を交わしながらも、俺たちの足取りは、来た時よりも幾分か重かった。何かを解決できたわけではない。それでも、何もしなかったわけでもない。その中途半端な感覚が、妙に胸に残った。ボレアスの器だけが、玉座のそばに、ぽつんと残されている。


俺たちは、黒い扉へ向けて歩き出した。振り返れば、氷の玉座がいつものように静かにそこにある。


ボレアス「……」


背後から、何かを言いかけるような気配がした。だが、振り返っても、ボレアスは何も言わなかった。ただ、こちらを見つめる視線だけが、いつもより長く感じられた。俺は、何かを期待して立ち止まりたくなる衝動を抑え、そのまま扉へと足を進めた。今は、何も強要しない方がいい。そう自分に言い聞かせた。答えを急かすことは、この場合、優しさではなく押し付けになる。


◆◆◆


一行が去った後、氷の玉座には、ボレアス一人が残された。


保管庫の中は、いつもの静寂に戻っていた。だが、その静寂の質は、以前とは何かが違っていた。ついさっきまで、確かにここに、誰かの声と、食器の音と、笑い声があった。それらが消え去った今、残された静寂は、以前よりもずっと重く感じられた。


長い時間、この場所には自分一人だった。誰かが訪れることも、誰かの声が響くこともなかった。それが当たり前だったはずなのに、今は、その当たり前が、少しだけ違って見える。氷の玉座も、鎖も、変わらずそこにある。それなのに、この空間そのものが、僅かに違って感じられた。


ボレアスは、玉座のそばに置かれた器を、長い間見つめていた。器から伝わっていた温もりも、今は僅かに残るだけだった。だが、その周囲だけ、氷の輝きが僅かに違って見える気がした。誰かが、自分のためだけに用意したもの。それがこの場所にあるという事実そのものが、これまでの日々にはなかったことだった。役目のためではなく、ただ自分のために存在するもの。それをどう扱えばいいのか、ボレアスにはまだ分からずにいた。


手を伸ばしかけて、止める。


その動きを、何度か繰り返した。まるで、何かを試すように、あるいは何かを恐れるように。


鎖が、小さく軋んだ。自分自身の迷いに反応するように、細い亀裂の入った1本が、微かに震えている。


リィナの言葉が、頭の中で繰り返される。


「必要だから持ってきたわけではありません」


その言葉の意味を、まだ完全には理解できていない。役割も対価も伴わないものを、なぜ差し出すことができるのか。


ゼピュロスの言葉も、耳の奥に残っている。


「役目があることと、それしかないことは、同じじゃないでしょ」


あの風の少女は、確かに何かを知っていた。自分と似た何かを抱えながら、それでも違う答えに辿り着いている。


そして、最後の言葉も。


「食べるかどうかは、ボレアスさんが決めてください」


これまでのボレアスは、常に役割によって選択を決められてきた。止めるか、止めないか。固定するか、しないか。それは全て、保管庫の均衡のための判断であり、自分自身のための選択ではなかった。妾は北風であり、止める者であり、それ以外の何者でもないはずだった。


ここで初めて、自分だけのために選べるものが、目の前に残されていた。誰にも命じられず、誰の役にも立たず、ただ自分がどうしたいかだけが、そこにあった。


長く置かれていた器の縁には、いつの間にか薄い氷が張りついていた。


長い沈黙の後、ボレアスはゆっくりと手を伸ばした。


指先が、器の表面に触れる。強い熱ではない。凍えた指先に、痛みを与えない程度の、穏やかな温もりだった。これほど穏やかな温度に触れた記憶は、ボレアスにはなかった。氷とも、冷気とも違う、もっと柔らかな何かだった。


匙を取り、ごく少量だけ、口へ運ぶ。


味が、舌の上にゆっくりと広がる。根菜の優しい甘みと、控えめな塩気。特別な味ではない。だが、その素朴さが、かえって胸の奥に染み込んでくるようだった。誰かが、自分のためだけに考えて作った味だった。


ボレアス「……ぬるい」


不満げな声だった。


だが、匙を持つ手が、僅かに止まった。


不満そうに眉を寄せながらも、その視線は、器から離れなかった。この温もりを、もう一度確かめるように。舌の上に残る、あの穏やかな感触を、まだ手放したくないというように。


置こうとした匙を、結局、そのまま握っている。


自分でも、なぜそうしたのか分からなかった。


ボレアスは、匙を置かなかった。


器の周囲を覆っていた薄い氷が、音もなく、ほんの少しだけ溶けていた。


◆◆◆(冷たくされ続けた者)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうござます。


【第二部 クライマックス公開スケジュール】


8/13(木)第18話 前編

8/15(土)第18話 中編

8/17(月)第18話 後編

8/19(水)第19話 前編

8/21(金)第19話 中編

8/23(日)第19話 後編

8/25(火)第20話 前編

8/27(木)第20話 中編

8/29(土)第20話 後編


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