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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第二部 捨てられたものたち

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第17話 氷の玉座に食卓を ―― 中編「必要のないもの」

◆◆◆


氷の玉座に座ったボレアスが、俺たちを見て眉をひそめた。指先と腕には、昨日から続く霜の亀裂が刻まれたままだった。光の加減によっては、昨日よりも濃く見える気さえした。


身構えるような視線が、俺たちへ突き刺さる。昨日の激しい攻防の記憶が、まだ彼女の中にも色濃く残っているのだろう。


ボレアス「今度は何を壊しに来た」


その声には、いつもの高圧的な響きがあった。だが、僅かに掠れているのを、俺は聞き逃さなかった。玉座に座る姿勢も、心なしか、いつもより力が抜けているように見えた。


直也「壊しには来てない。約束を守りに来た」


俺は、努めて軽い調子で言った。昨日の戦闘の緊張感とは、まるで違う空気をこの場に持ち込みたかった。今日は誰も傷つけに来たわけじゃない。それだけは、はっきりさせておきたかった。


リィナが一歩前へ出て、保温箱から器を取り出した。器を包む保温箱を開くと、ほのかな温もりが手元へ伝わった。ここへ来るまで、幾度か保温をかけ直してきたおかげで、まだじんわりとした熱を保っていた。


リィナ「温かいもの、持ってきました」


ボレアス「……」


ボレアスは、器を一瞥した後、すぐに視線を逸らした。その一瞬だけ、彼女の瞳に何かが揺れた気がしたが、すぐにいつもの冷たい無表情へ戻ってしまった。


ボレアス「妾に、そのようなものは不要じゃ」


リィナ「はい。必要だから持ってきたわけではありません」


その返答に、ボレアスが僅かに目を見開いた。予想していなかった言葉だったのだろう。


ボレアス「……何を言うておる」


リィナ「必要かどうかじゃなくて、約束したから、持ってきました」


ボレアスは、しばらく言葉を探すように沈黙した。彼女にとって、与えられるものには、いつも理由と対価が伴ってきたのかもしれない。役割のないもの、対価を求めないものを差し出されることに、慣れていないのかもしれない。


ボレアス「妾は止める者じゃ。腹を満たす必要などない」


その言葉には、単なる強がりだけでなく、彼女なりの確固とした自己認識があるように聞こえた。止める者であること以外に、自分の存在理由を見出せていないのかもしれない。


リィナは、それ以上言い返さなかった。ただ、静かに玉座の近くまで歩み寄り、手が届く距離に器を置いた。


リィナ「では、ここに置いておきます」


ボレアス「持ち帰れ」


リィナ「食べなくても構いません。でも、持ち帰りません」


ボレアスは、苛立たしげに鎖を鳴らした。だが、それ以上は何も言わなかった。


俺たちは、玉座から少し離れた場所に布を敷き、自分たちの食事の準備を始めた。ポン太が布を広げ、ゼピュロスが器を並べる。誰も、ボレアスへ何かを強要するつもりはなかった。ただ、この空間で、いつも通りの食事を始めるだけだった。


昨日まで激しい戦場だった場所に、簡素な布と木の器が並ぶ。氷の壁に反射する淡い光の中、それはどこか奇妙で、それでいて不思議と落ち着く光景だった。


ポン太「へへっ、こういう時こそ商売根性だ。手間賃と場所代、両方いただくぜ」


直也「誰に払わせる気だ」


ポン太「もちろん、旦那にだよ」


そう言いながらも、ポン太の手つきは手慣れたもので、あっという間に簡素な食卓が整っていく。布の敷き方一つにも、旅の中で身についた要領の良さが滲んでいた。


俺たちは、各々の器にスープを注ぎ、食事を始めた。口に運べば、穏やかな温もりと、優しい根菜の甘みが広がる。


ゼピュロス「……薄くない、これ?」


一口すすったゼピュロスが、顔をしかめた。匙を持ったまま、器を疑わしげに眺めている。


リィナ「体調を考えて、味は控えめにしたので」


ゼピュロス「私の分まで薄めなくていいのに」


直也「お前は体調万全だもんな」


ゼピュロス「そうよ! だからもっと濃い方が」


そのやり取りを聞いていたのか、いつの間にか黙って耳を傾けていたらしい玉座の方から、小さな声が聞こえた。


ボレアス「貴様の舌が、単に贅沢なだけであろう」


ゼピュロス「は? 誰が贅沢よ!」


ボレアス「己の分もろくに味わえぬ舌で、よく文句など言えるものじゃ」


ゼピュロス「今、私にケンカ売った!?」


ゼピュロスが立ち上がりかけ、俺は慌てて彼女の肩を押さえた。


直也「食事中に喧嘩するな」


ゼピュロス「向こうが先に煽ったのよ!」


ボレアス「事実を述べたまでじゃ」


しばらく、二人の応酬が続いた。ポン太が面白そうに眺め、リィナは苦笑しながら食事を続けている。だが、ふとボレアスが我に返ったように、口を噤んだ。


自分が、いつの間にか会話に参加してしまったことに、気づいたようだった。玉座から少し身を乗り出していた姿勢を、慌てて元へ戻す。


リィナが、小さく笑った。俺も、つられて笑ってしまった。


直也「案外、話し好きなんだな」


ボレアス「勘違いするでない」


そう言ったきり、ボレアスは口を噤んだ。だが、その沈黙は、拒絶というより、どこか気恥ずかしさを隠すためのもののように見えた。誰かと言葉を交わすこと自体、彼女にとってはひどく久しぶりの経験なのかもしれない。


その後は、しばらく静かな時間が続いた。ポン太の食器がかちゃかちゃと鳴る音、リィナが小さく啜る音、ゼピュロスの咀嚼音。それまで封じや修正の気配しかなかったこの空間に、生活の音が満ちていく。


ポン太「へへっ、こういう静かな時間も悪くねぇ」


ポン太が、器を傾けながら呟いた。彼にしては珍しく、素直な感想だった。


直也「珍しく金の話をしないな」


ポン太「今は食後の請求を考えてるところだ」


直也「結局考えてるのか」


そんな軽口が飛び交う中、ボレアスは、何も食べなかった。だが、その音を、拒絶するでもなく、ただ聞き続けていた。目を閉じ、静かに耳を傾けている様子は、まるで長い間忘れていた何かを、少しずつ思い出そうとしているようにも見えた。


これまでこの空間には、修正の気配と、封じの緊張と、時折響く鎖の音しかなかったはずだ。誰かの咀嚼音や、他愛のない軽口が響くことなど、きっと一度もなかったのだろう。


俺たちの食事が終わりに近づく頃、ボレアス用の器だけが、手つかずのまま残っていた。器に残っていた温もりも、少しずつ失われているようだった。誰も口には出さなかったが、皆、その器を時折気にしていた。


リィナが、そっと器へ手をかざし、保温の魔法をかけ直した。急かすでも、無理に勧めるでもない。ただ、冷めきってしまわないように、静かに手を添えるだけだった。その所作には、押しつけがましさが一切なかった。


その時、リィナの視線が、ボレアスの腕へ止まった。指先から肘のあたりまで、細い線がいくつも走っている。


リィナ「……増えています」


霜の亀裂が、昨日よりも明らかに深く、そして広く走っていた。まるで、乾いた土が水分を失っていくように、その亀裂は静かに、しかし確実に広がっていた。


ボレアス「見るな」


ボレアスが、慌てたように腕を袖の中へ引っ込めた。だが、その仕草そのものが、何かを隠そうとしていることの証明になっていた。誤魔化そうとすればするほど、隠しきれない何かが滲み出てしまう。それは、これまで見てきたボレアスの態度とは、少し違う種類の反応だった。


頭上の光球が、静かに動いた。ALMAの光が、ボレアスの腕と鎖へ沿うように向けられる。淡い光の筋が、亀裂の形をなぞるように移動していく。まるで、傷の深さを一つひとつ確かめているようだった。


ボレアス「貴様も、勝手に妾を測るでない」


ALMA『観測中です』


ボレアスは、不快そうに鎖を鳴らしたが、それ以上、光を拒む手段は持たなかった。氷の玉座から動けない身体では、光から逃れることさえできない。その事実が、彼女の苛立ちをさらに強めているようだった。


ALMA『生命維持および構造維持に関わる異常と判断しました』


ボレアス「異常などと、大袈裟な」


ボレアスは吐き捨てるように言ったが、その声には、いつものような余裕がなかった。鎖を鳴らす仕草にも、どこか力なさが滲んでいる。


俺は、その様子を見ながら、胸の奥に小さな違和感を覚えていた。昨日から見えていた些細な変化が、今は妙に重く感じられた。


思っていたより、深刻な状態なのではないか。そんな疑念が、胸の奥に浮かんだ。昨日の戦闘の消耗だけでは、説明がつかない気がした。ボレアスの纏う空気そのものが、昨日よりも、確かに何かを失っているように見えた。


リィナも、心配そうにボレアスを見つめていた。だが、それ以上、無理に言葉をかけようとはしなかった。彼女なりに、今はそっとしておくべき時だと分かっているのだろう。


食事の残りを片付けながら、俺たちは無言のまま、それぞれの考えを抱えていた。ポン太でさえ、それ以上は請求の話をしなかった。ボレアス用の器だけが、まだ手つかずのまま、玉座のすぐそばに残されていた。リィナがかけ直した保温魔法のおかげで、まだ僅かな温もりを保っているようだった。


◆◆◆(必要のないもの)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうござます。


【第二部 クライマックス公開スケジュール】


8/11(火・祝)第17話 後編

8/13(木)第18話 前編

8/15(土)第18話 中編

8/17(月)第18話 後編

8/19(水)第19話 前編

8/21(金)第19話 中編

8/23(日)第19話 後編

8/25(火)第20話 前編

8/27(木)第20話 中編

8/29(土)第20話 後編


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