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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第二部 捨てられたものたち

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第17話 氷の玉座に食卓を ―― 前編「火を使わない料理」

◆◆◆


「はい、動かないでくださいね」


リィナが、ポン太の尻尾へ丁寧に包帯を巻いていた。昨日の激戦から一晩明け、俺たちは保管庫の外、比較的安全な区画にある安宿の一室に戻っていた。窓から差し込む朝の光が、装備に残る昨日の泥や埃を照らしている。


身体のあちこちに残る疲労は、一晩の眠りだけでは完全には抜けていなかった。それでも、昨日の激しい崩落を思えば、こうして静かな朝を迎えられているだけで十分だった。窓の外からは、街の穏やかな喧騒が聞こえてくる。取り戻したばかりの、不揃いな生活の音だった。


ポン太「へへっ、悪いな嬢ちゃん。だが、これも治療費として計上させてもらうぜ」


リィナ「もう、いつもそればっかり」


リィナは苦笑しながらも、手つきは丁寧だった。ポン太の尻尾は、昨日の負傷からまだ完全には回復していない。それでも歩けないほどではなく、時折顔をしかめる程度で済んでいた。


ポン太「痛みってのは金じゃ買えねぇが、金で誤魔化すことはできるんだよ」


直也「その理屈、いつか破綻するぞ」


ポン太は肩をすくめながらも、リィナの手当てを大人しく受けていた。普段の軽口とは裏腹に、その様子には確かな信頼が滲んでいた。


ゼピュロスは部屋の隅で、翠色の風刃を手元に薄く形成し、その調子を確かめるように眺めていた。昨日の戦いで、彼女は初めて「壊す」以外の風の使い方を掴んだ。その満足感が、疲労の滲む顔にも僅かに表れている。いつもなら退屈そうにしている朝の時間も、今日はどこか落ち着いた様子だった。


直也「音、熱、流れ、か……」


俺は昨日の戦闘を思い返しながら、ぼんやりと呟いた。1つを動かせば、残りに負荷が移る。あの均衡の正体は、まだ何一つ解けていない。ボレアスが背負っているものの正体も、依然として謎のままだった。北風、止める力、玉座、鎖。断片は増えていくのに、全体像はまだ見えてこない。


考えても、今すぐ答えが出るものではない。それでも、頭の片隅から離れてくれなかった。


そんな中、リィナが包帯を巻き終えた手を止め、顔を上げた。何かを思い出したような、それでいて決意を固めたような表情だった。


リィナ「そうだ。約束しましたから。温かいものを、持っていきます」


直也「約束って、ボレアスにか」


リィナ「はい。次は温かいものを持ってきますって、言いましたから」


昨日、消耗しきったボレアスへ向けて、リィナが交わした小さな約束だった。あの時は、戦闘の余韻の中で交わされた軽い言葉のようにも聞こえた。だが、リィナにとっては、そうではなかったらしい。


ゼピュロス「あの女王様が、素直に受け取ると思ってるの?」


ゼピュロスが、手元の風刃をふっと散らしながら、半信半疑の顔をした。


リィナ「受け取ってもらえるかは分かりません。でも、約束したので」


その真っ直ぐな言葉に、俺は思わず苦笑した。この短い旅の中で、リィナはずっとこうだった。理屈より先に、自分の言葉を守ろうとする。


ポン太「材料費、運搬費、それから危険手当も忘れずにな」


直也「まだ何も決まってないのに、もう請求書ができてるのか」


ポン太「商売の基本だぜ、旦那。先に見積もっとかねぇと、後で揉める」


直也「揉めるのはお前の請求のせいだろ」


ポン太「細けぇことは気にすんな」


俺は頭上の光球へ視線を向けた。昨日の激しい戦闘の後も、こいつの明滅は変わらず律儀だった。何度見ても、その規則正しさには妙な安心感がある。


直也「ALMA、保管庫の中で火を使ったらどうなる」


ALMA『推奨できません。現在の保管庫内部は、音、熱、流れの均衡が不安定な状態です。高温の熱源を持ち込んだ場合、局所的な融解や負荷移動を誘発する可能性があります』


直也「つまり、熱い料理はアウトってことか」


ALMA『体温に近い温度であれば、局所負荷は限定的と推定します』


直也「体温に近い、ね……」


熱い料理ではなく、冷たくない料理。矛盾しているようで、案外難しい注文だった。人肌程度の温もりを保ったまま、器からこぼさず、冷めきる前に届ける。単純なようで、条件は意外と多かった。


リィナ「それなら……スープが良いと思います」


リィナは早速、宿の台所を借り、鍋に向かい始めた。根菜を刻み、穀物を加え、ゆっくりと煮込んでいく。とろみのある汁が、木べらでかき混ぜるたびに、とろりと重たげに揺れた。かすかに立ち上る湯気が、狭い台所を優しい匂いで満たしていく。


リィナ「これなら、少し冷めても食べやすいと思います」


その手つきには迷いがなかった。まるで、この一杯のために、これまでの旅で見てきた色々な生活の知恵を全部思い出しているようだった。汚れを残す判断も、振動を整える集中力も、全部この手の中に生きている気がした。


直也「切るのは俺がやるよ」


俺はまな板の前に立ち、根菜を細かく切っていった。会社員時代、料理などほとんどしたことがなかったが、この旅でいつの間にか包丁を握ることにも慣れていた。小さく、匙で掬いやすい大きさに。誰かのために切る野菜は、自分のために切るときより、少しだけ丁寧になる気がした。


昔の俺なら、こんな面倒事は全部誰かに任せていただろう。切る大きさなんて気にしたこともなかった。それが今は、相手が匙を持ちやすいかどうかまで考えている。自分でも、少し可笑しかった。誰かの体調を思って包丁を握るなんて、あの頃の自分には想像もつかなかった。


ポン太は、どこからか拾ってきた布切れと、壊れていない木箱を組み合わせ、器を包む保温箱を作っていた。手先は意外なほど器用で、布を何重にも巻きつけながら、隙間なく包んでいく。


ポン太「これで多少は冷めにくくなるはずだ。手間賃、忘れんなよ」


直也「分かってる分かってる」


ポン太「口だけじゃなく、ちゃんと払えよ」


直也「払うって言ってるだろ」


そんなやり取りをしながらも、ポン太の手はしっかりと保温箱を組み上げていく。布の重ね方一つにも、旅の中で培われた工夫が滲んでいた。


ゼピュロスは、腕を組んで壁にもたれていたが、リィナが鍋をかき混ぐたび、さりげなく風を送って表面の温度が偏らないようにしていた。誰に頼まれたわけでもないのに、絶妙な加減で空気を動かしている。


ゼピュロス「別に、手伝ってるわけじゃないから」


直也「はいはい」


ゼピュロス「本当だから!」


そう言いながらも、彼女の視線は鍋から離れなかった。風の魔剣娘が台所仕事を手伝う姿は、この旅を始めた頃には想像もできなかった光景だった。誰かのために力を使うことに、彼女なりに慣れ始めているのかもしれない。


やがて、スープが出来上がった。湯気が立つほど熱くはない。だが、器を両手で包めば、じんわりとした温もりが伝わってくる程度の温度だった。


リィナ「……できました」


リィナが、少し照れくさそうに器を見せた。とろみのある淡い黄色のスープが、木の器の中で静かに揺れている。


直也「良い匂いだな」


リィナ「味は、薄めに仕上げました。誰にでも食べやすいように」


直也「ボレアスの好みも分からないしな」


リィナ「はい。だから、癖のない味にしました」


直也「よし、行くか」


俺たちは、ボレアス用の一杯と、残りのスープを移した小鍋を保温箱に収めた。人数分の木の器も、ポン太がまとめて荷物へ括りつける。身支度を整え、あとは向かうだけだった。


保管庫へ向かう道のりは、昨日の崩落の跡が生々しく残っていた。倒れた棚、割れた壁、まだ完全には固まりきっていない氷の破片。昨日あれほど激しく戦った場所とは思えないほど、静かな朝の光がそこに差し込んでいた。ポン太は尻尾の負傷もあり、今回は先頭ではなく後方から周囲を確認する役に回った。


ポン太「旦那、右側の通路はまだ危ねぇ。左から行った方がいい」


直也「了解」


崩れた棚の隙間を縫うように進む俺たちの足音が、静まり返った通路に小さく響いた。昨日の激戦が嘘のように、辺りには誰の気配もない。壁のルーンも、今日は落ち着いた明滅を繰り返している。少なくとも、昨日ほどの緊迫感は感じられなかった。


黒い扉に近づくにつれ、器を包む保温箱越しにも、外の冷気が染み込んでくるのが分かった。手のひらで感じる温もりが、少しずつ薄れていくのが分かる。時間との勝負だということを、誰もが自然と理解していた。


リィナ「冷める前に、届けましょう」


リィナが、器へもう一度、生活魔法で保温をかけ直す。強い熱ではなく、ただ冷めるのを穏やかに遅らせるだけの、控えめな魔法だった。淡い光が器の周囲を包み、ほんの少しだけ、温もりが長持ちするように整える。杖を握る手には、いつになく真剣な力がこもっていた。誰かのために魔法を使うことに、彼女はいつも一切の手を抜かない。


ALMA『現時点で急激な構造変化は確認されません。短時間の滞在であれば、危険度は限定的と推定します』


昨日、この空間は激しい戦場だった。それが今日は、食事を届けるためだけに立ち入る場所になる。奇妙な感覚だったが、悪くない変化だとも思えた。


直也「よし、それなら」


黒い扉が、昨日の激戦の跡を残したまま、俺たちの前に立っていた。隙間から漏れる冷気の向こうに、氷の玉座がぼんやりと見えている。


俺は器を抱えたリィナと目を合わせ、頷いた。彼女の表情には、緊張と、それを上回る決意があった。


直也「行くぞ」


扉の隙間をくぐり、俺たちは氷の玉座がある空間へと足を踏み入れた。冷たい空気の奥に、あの静かな気配が確かに感じられた。今日はどんな言葉が返ってくるのか、正直、俺にも予想がつかなかった。


◆◆◆(火を使わない料理)◆◆◆

第二部はいよいよクライマックスです。

ボレアス編は続けて読んでいただいた方が流れを楽しめると思うので、第20話までは少しテンポを上げて公開していきます。

よろしければ最後までお付き合いください。

具体的なスケジュールとして


【第二部 クライマックス公開スケジュール】


8/7(金)第17話 前編

8/9(日)第17話 中編

8/11(火・祝)第17話 後編

8/13(木)第18話 前編

8/15(土)第18話 中編

8/17(月)第18話 後編

8/19(水)第19話 前編

8/21(金)第19話 中編

8/23(日)第19話 後編

8/25(火)第20話 前編

8/27(木)第20話 中編

8/29(土)第20話 後編


ストックはほぼ空になりますが(笑)、最後までぜひお付き合いください!

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