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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U
第二部 捨てられたものたち

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第16話 動いた氷と、止められない崩落 ―― 後編「導く風、止める氷」

◆◆◆


残る修正体2体と、異形化した没収品の群れが、黒い扉へ向けて一斉に動き出していた。整いすぎた足並みで、迷いなく同じ方向を目指すその姿は、何度見ても薄気味悪かった。この保管庫全体が、まだ「正しさ」を諦めていない証拠のようだった。


ALMA『構造維持限界を再計算。残り推定12分です』


俺は保管庫の中を素早く見渡した。崩れた棚、傾いた通路、天井から絶えず落ちる氷の破片。この惨状の中に、まだ使える場所がないか、探すしかなかった。時間は待ってくれない。12分という数字が、頭の隅で容赦なく削れていくのを感じていた。焦りで視界が狭まりそうになるのを、深く息を吸って抑え込む。


黒い扉の少し手前、床のルーンが円を描くように交差している一角があった。周囲の崩れた棚を使えば、そこへ通じる道を絞り込める。


直也「あそこだ」


俺は円形の床面を指差した。整列を強制する力の名残なのか、床のルーンだけは、この惨状の中でも綺麗な円を描いたまま残っていた。皮肉なことに、崩壊しきったこの場所で、唯一形を保っている箇所だった。


直也「全部、あの円の中へ入れる」


ボレアス「その場所ならば、数秒だけ、全域を固定できよう。ただし、真上の亀裂が大きい。長くは持たぬ」


場所そのものにも、時間の制約があるということだった。急がなければならない。この保管庫のどこにも、余裕という言葉は残っていないらしい。


ゼピュロスが、俺の意図を先に読んだ。


ゼピュロス「要するに、吹き飛ばすんじゃなくて、運べばいいのね」


直也「そうだ。必要な場所まで動かせ」


ゼピュロス「……それなら、得意よ」


さっきまでの不満げな顔が、少しだけ変わっていた。攻撃を制限されることへの苛立ちではなく、新しい使い方を試す顔だった。壊すことだけが自分の役目じゃない、と気づいたような、そんな表情だった。


ポン太が、自分で切り開いた横道から素早く動き出す。


ポン太「あっちは任せとけ、旦那!」


普段のふてぶてしさが、こういう場面では逆に頼もしく見えた。損得勘定でしか動かないような口ぶりのくせに、いざという時は誰よりも体を張る。彼は棚板を蹴り倒し、修正体の進路を狭めていく。石や破片を巧みに転がし、正面から迫るゼピュロスとの間で、敵を挟み込むように誘導していく。尻尾の痛みなど感じさせない身のこなしだったが、額には冷や汗が浮かんでいた。


1体が円の外へ逃げようとした瞬間、リィナが動いた。息を切らしながらも、彼女の目は白い浸食の経路を正確に追っていた。


リィナ「そこは、繋がってます……!」


杖の先が閃き、円外へ伸びていた白い浸食の経路だけを断ち切る。逃げ場を失った修正体が、体勢を崩した。一撃で終わる派手さはないが、確実にその役目を果たしていた。


ゼピュロス「そこ!」


細く絞った風が、敵の脚元を掬うように押した。荒々しい突風ではない。狙った方向へ、正確に押し出すだけの風だった。これまでの豪快な一撃とはまるで違う、繊細な力加減だった。異形化した没収品も、破壊されることなく、床を滑るように円の中へ集まっていく。


ALMA『対象の集約率、82パーセントです』


あと一歩。だが、その一歩が一番厄介だった。


直也「まだ足りない。全部入れる!」


最後の1体が、円の外へ逃れようとする。だが、その動きも読まれていた。ポン太が最後の棚板を倒し、逃げ道を完全に塞ぐ。


ポン太「出口を作るのも商売、塞ぐのも商売でさぁ!」


その声には、いつもの軽さがあったが、動きにはもう余裕がなかった。尻尾を庇いながらの動作は、明らかに鈍くなっている。白い杭を構えた修正体の1体が、彼のすぐ横をかすめて通り過ぎた。


直也「ポン太、下がれ!」


ポン太「合点だ……!」


彼は最後の一撃で棚を完全に崩し、退路を塞ぎきると、そのまま尻尾を抱えて安全な横道へ転がり込んだ。息を切らしながらも、しっかりと全員の退路を確認してから座り込む。契約と代償に生きる男の、最後まで律儀な仕事ぶりだった。これ以上動く余力は、もう残っていなかった。


ALMA『集約完了』


全ての対象が、円の中へ収まっていた。だが、頭上の亀裂は、さっきよりも大きく広がっている。


直也「今だ、止めろ!」


ボレアス「またそれを言わせる気か」


直也「文句は後だ。今しかない!」


ボレアスが、両手を鎖ごと持ち上げるように構えた。氷の玉座から離れられないその身体が、それでも精一杯、力を振り絞ろうとしているのが分かった。


黒い扉の周辺から、これまでにない強い冷気が噴き出す。円形床面の全体が、一瞬にして凍りついた。修正体2体と、異形化した没収品のすべてが、同時に動きを止める。


ALMA『複数対象の同時固定により、単体固定時を大きく上回る負荷が予測されます。固定維持可能時間、推定6秒です』


たった6秒。瞬きをする間もない、あまりにも短い猶予だった。


直也「ゼピュロス、全部を壊すな! 核だけだ!」


ALMAが、2体の胸部にある接続点へ光を向けた。ゼピュロスが風を纏った刃を構え、一直線に踏み込む。


ゼピュロス「私の風を、勝手に利用させないでよね!」


翠色の刃が、1体目の接続点を貫いた。凍りついた敵は、避けることも防ぐこともできない。動けないものを斬るというのは、いつもとは違う感覚だったが、今はためらっている暇はなかった。返す刃で、2体目の接続点も切り裂く。白い浸食が慌てて逃げようとしたが、リィナがその経路を即座に断ち切った。逃げ場を失った浸食は、その場で力を失っていくしかなかった。


白い装甲が、次々と崩れ落ちていく。再構成する先を失い、破片の一つも残さず消えていった。この保管庫を支配していた「正しさ」の一部が、また一つ崩れた瞬間だった。誰に望まれたわけでもない秩序が、静かに終わりを迎えていく。


異形化していた残りの生活道具も、白い浸食だけが剥がれ落ち、元の壊れた姿へと戻っていく。


ボレアスが固定を解いた。円形床面に亀裂が走ったが、黒い扉と玉座は守られていた。


直也「……終わった、のか」


だが、安堵する間もなかった。天井からの崩落は、まだ続いている。


直也「ボレアス、全部止めるな! 落ちる先だけ止めろ!」


直也「ゼピュロス、全部動かすな! 流す場所だけ作れ!」


2人が一瞬だけ顔をしかめたが、すぐに状況を理解した。全部を止めるのでも、全部を動かすのでもない。危険なところだけを止め、逃がすべきところだけを動かす。その線引きを、2人はもう体で覚え始めていた。ボレアスが危険な箇所だけを固定し、ゼピュロスが崩れる瓦礫の流れを安全な方向へ逃がす。リィナが退路上に残る浸食を除去し、俺たちは崩れ続ける通路を抜けて、ポン太の待つ横道へと駆け込んだ。


ALMA『構造崩壊速度の低下を確認しました。即時崩落の危険は回避されています』


保管庫が直ったわけではない。ただ、一時的に、崩れる速度を抑えただけだった。根本的な解決には、まだほど遠い。


崩落の音が遠のき、ようやく息をつける静けさが戻ってきた。俺は息を整えながら、亀裂の入った鎖を見た。


直也「……1つを戻せば、1つが軽くなるんじゃない。残りに重さが移るんだ」


ALMA『肯定。音、熱、流れは、同一の均衡を分担している可能性が高いと判断します』


まだ、詳しい仕組みまでは分からない。だが、少なくとも、単純に一つずつ解いていけば終わる話ではないことだけは、はっきりした。音を戻せば、熱と流れが揺れる。この均衡は、思っていたよりずっと繊細に絡み合っている。まるで、無理やり均等に切り分けられた何かが、ようやく本来の形を取り戻そうとしているようだった。


ゼピュロスが、勝ち誇ったように腰に手を当てた。汗だくのはずなのに、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。


ゼピュロス「ほら、私の風がなきゃ無理だったでしょ」


ボレアス「妾が止めねば、何一つ斬れなかったであろう」


いつもの言い争いだった。だが、ボレアスの声には、明らかにいつもの張りがなかった。語気だけは強いのに、その奥に隠しきれない疲労が滲んでいる。


リィナが、そっと彼女の手元を覗き込んだ。指先から腕にかけて、薄い霜の亀裂が幾筋も走っている。まるで、長く酷使された道具のような痛々しさだった。


ボレアスが、隠すように腕を引いた。


ボレアス「これは冷気の影響じゃ。気にするな」


リィナ「違います。冷たいんじゃなくて……疲れているんです」


ボレアスが、言葉を失った。


ボレアス「……余計な観察をするでない」


拒絶する言葉だったが、リィナを追い払う仕草はなかった。それどころか、視線を逸らしただけだった。


リィナ「次は、温かいものを持ってきます」


ボレアス「要らぬ」


リィナ「でも、持ってきます」


ゼピュロスが小さく笑った。ポン太が、尻尾を庇いながらも、食事代と危険手当をぶつぶつと数え始めている。


疲労と安堵が入り混じった空気の中、俺たちは黒い扉を離れた。


◆◆◆


氷の玉座に一人残されたボレアスは、亀裂の入った鎖へそっと触れた。


鎖は切れていない。だが、以前よりも僅かに緩んでいる。


ボレアス「……温かいもの、か」


それは、誰にも届かないほど小さな呟きだった。


ボレアスはしばらく、直也たちが去った黒い扉を見つめ続けていた。冷たい静寂の中に、確かに小さな熱が灯っていた。


◆◆◆(導く風、止める氷)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうございます。


次回第17話「氷の玉座に食卓を」

氷に閉ざされた玉座へ、小さな約束を届けに行く。


次回更新予定:8月7日(金)になります。


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