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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U


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第12話(4)黒い扉と、凍った返答 ―― 風刃の退路と、最初の一声

◆◆◆


黒い扉周辺の本点検は、もはや静かな狂気へと変わりつつあった。

取っ手の霜を削り落としても、壁のルーンの縁を磨き上げても、空間そのものが俺たちの作業を「不純物の混入」として拒絶してくる。

終わりの見えない不毛な反復作業に、俺の腕は既に感覚を失いかけていた。

だが、作業を長引かせた代償は、疲労だけでは済まなかった。


異常は、唐突に一段階上のレベルへと引き上げられた。


直也「……おい、足が」


床から這い上がってきた氷が、まるで透明な蛇のように俺の防寒外套の裾に絡みつき、足を床に縫い付けようとしていた。

強引に引き抜こうとするが、氷は粘着質に変形し、ブーツの表面を厚く覆い尽くしていく。

ただ滑るだけの氷ではない。明確な「捕縛の意志」を持った拘束だ。


リィナ「直也さん!壁のルーンが、勝手に光っています!」


リィナの悲鳴に近い声に振り返ると、黒い扉の周囲に刻印されていたルーン文字が一斉に青白い光を放ち始めていた。

誰も魔力を流していない。空間に停滞していた冷気そのものが燃料となり、防衛機構を強制起動させているのだ。


ポン太「旦那、こいつはヤバいぜ!ただの現状維持の魔法じゃねぇ。空間が俺たちを『エラーの元凶』として完全に処理しようとし始めてるんだ!」


ポン太が尻尾の毛を逆立てながら叫ぶ。

俺の足元の氷はさらに這い上がり、膝の位置まで到達しようとしていた。

防寒外套の「正しき姿勢」を強制する力すらも、この絶対的な低温と空間の圧力の前では軋みを上げ、機能不全を起こし始めている。

静けさそのものが、物理的な質量を持った泥のように俺たちの身体にまとわりつく。

鼓膜が圧迫され、思考が鈍り、呼吸をするたびに肺の内側が薄く凍りついていくような絶望的な感覚。


直也「冗談じゃない。こんな凍った保管庫の床で、都合の良い氷像にされてたまるか!」


俺は足元の氷を蹴り砕くことを諦め、腰の鞘に手をかけた。

この理不尽な空間のルールに干渉できるのは、規格外の力だけだ。

俺は一気にゼピュロスを引き抜いた。


ゼピュロス「だから嫌だって言ったのよ!こんな空気が四角く死んでる場所で、私を出さないで!」


ゼピュロスは不満を爆発させながらも、刀身から強烈な突風を解き放った。

圧縮された翠色の風の刃が、俺たちの足元を覆い尽くそうとしていた氷の蔦を容赦なく粉砕する。

ただ風を吹かせたのではない。停滞した空気を強制的に循環させ、空間の「正しさの圧」を物理的にかき乱したのだ。


ゼピュロス「ほら、さっさと道を開ける!風の魔剣様の機嫌がこれ以上悪くなる前にね!」


風が吹き荒れ、一時的にだが周囲の沈黙が破られた。

息ができる。俺は大きく息を吸い込んだ。


直也「助かった。リィナちゃん、今のうちに足場を頼む!」


リィナ「はいっ! えいっ!」


リィナが杖を振ると、砕け散った氷の破片ごと、足元の床がツルツルの、しかし「俺たちだけは絶対に滑らない」都合の良い材質へと変質した。

不快な氷の拘束が完全に消え、足が再び自由に動くようになる。

ただの清掃魔法が、最深部の絶対的なルールの網の目を縫って、足場という概念を整え直したのだ。


直也「よし、一気に下がるぞ!ALMA、退避ルートの計算と誘導を頼む!」


俺は背後を振り返らずに、頭上に浮かぶ光球へ向かって叫んだ。

だが。

いつもなら即座に返ってくるはずの、あの無機質で事務的な声が、返ってこない。


直也「……ALMA?」


俺は不審に思い、視線を上げた。

ALMAの青白い発光が、まるで極寒の風に晒されたロウソクの炎のように、冷たく揺れていた。

規則正しく明滅していた光のパターンが不規則に乱れ、ノイズが混じったようにチカチカと瞬いている。

一秒、二秒、三秒。

それは、常に最適解を即答し続けてきたALMAにとって、あり得ないほどの明確な「間」だった。

計算に時間がかかっているのではない。

まるで、何か別の巨大な情報に一瞬だけ視線を奪われ、処理の優先順位を強制的に書き換えられたかのような、空白の時間。


ALMA『……再計算。ルート確保。後方五メートル地点の安全を確認しました』


直也「お前、今、なんか間が空かなかったか?」


ALMA『否定します。処理速度に遅延は発生していません。……ただ、観測データに未定義の干渉を検知。注意してください』


ALMAの言葉に、俺は嫌な汗が背中を伝うのを感じた。

あのALMAが「未定義」と言った。この世界の全てをカタログのように分類してきたあいつが、だ。


その直後だった。

俺たちが後退しようと足を踏み出した瞬間、黒い扉の向こう側から、静寂を切り裂くような声が響いた。


それは、これまで俺たちを追い詰めてきたシステムが発する、機械的で親切な警告音ではない。

明確な意思と、圧倒的な格の違いを感じさせる、「人格を持つ冷たい声」だった。


「……そこへ触れるでない」


声は氷を叩いたように高く、澄み切っていて、それゆえに酷薄なほど冷たかった。


「妾の前で騒ぐな。耳障りじゃ」


その言葉が響いた瞬間、背後でゼピュロスが、息を呑んでピタリと動きを止めるのが分かった。

俺も、足の筋肉が完全に硬直して一歩も動けなくなった。

扉の向こう側には「誰もいない」はずだ。ただの没収品の保管庫の最深部であり、ただの凍りついた空間のはずだった。

だが、確かに「誰か」がいる。


「その手を引け。愚かな真似はやめよ」


その言葉は、俺たちを明確に見下ろしていた。

システムとして不純物を排除するのではない。自分の庭に迷い込んだ羽虫が鬱陶しいから払いのけるような、絶対的な高位者としての冷酷な宣告。

俺たちは、ついに「開けちゃいけない扉」の向こう側にある、本当の異常と接触してしまったのだ。



◆◆◆(風刃の退路と、最初の一声)◆◆◆

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回更新予定:5月29日(金)

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