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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U


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第10話(3)仮通行札と、開けちゃいけない扉 ―― 勝利未満の通行権

◆◆◆


「止まれと言われて止まるバカがどこにいる!」


俺は背後から迫る「親切な包囲網」から逃れるべく、物流港の迷路のようなコンテナ群を全速力で駆け抜けた。

背後からは、数十人の衛生警備隊が、一分の乱れもない足並みで追いかけてくる。

彼らは抜剣もしていなければ、怒号を上げてもいない。

ただ、拡声器を通したような、澄み渡るほど丁寧な声が、短文の連射となって俺の鼓動を追い詰めてきた。


警備員「お客様、抵抗は危険です。安全のため、その場で停止してください」

警備員「姿勢は正しい停止姿勢でお願いします。両手は胸の前、指は開いてください」

警備員「呼吸は落ち着いて。吸って2秒、吐いて4秒です。繰り返してください」


直也「吸って2秒とか決めるな! 呼吸くらい自分のリズムでさせろ!」


俺が走りながら叫ぶと、隣を浮遊するゼピュロスが、この状況を楽しそうにケラケラと笑い飛ばした。


ゼピュロス「あはは! マスター、あの人たち、マスターの健康を心配してくれてるよ? 一度捕まって、4秒吐き続けてみたら?」


直也「窒息するわ! ……おい、リィナちゃん、足元に気をつけて!」


リィナ「は、はいっ! 直也さん、あの方たち、手に持っている棒が光っています! あれ、すごく『正しく』痛そうです!」


リィナが指差した先では、警備員たちが「親切な誘導棒」を構えていた。

それは打撃を与えるための武器ではなく、触れた対象の筋肉を強制的に弛緩させ、正しい伏せの姿勢へと導くための「矯正具」だ。


警備員「安心してください。これは任意ですが、強く推奨します」

警備員「転倒の恐れがあります。転倒の際は手をつかないでください。理想の角度で接地してください」


直也「任意の圧が強いんよ! 転倒の仕方にまで注文をつけるな!」


行き止まりのコンテナ壁に突き当たり、俺は舌打ちした。

左右を警備員たちに塞がれ、彼らは一歩一歩、マニュアル通りの歩幅で距離を詰めてくる。

その目は、俺たちを「保護すべき対象」ではなく「整理すべき不純物」として冷徹に捉えていた。


直也「……やむを得ない。ゼピュロス、魔剣モードだ! 切り刻む必要はない、風で道を作れ!」


ゼピュロス「待ってました! 本気で行くよ、マスター!」


ゼピュロスの体が淡い緑の光に包まれ、俺の右手に重厚な感触が戻ってきた。

風の魔剣。中身はスカスカの置物同然だったはずだが、ゼピュロスが宿った今のそれは、掌に吸い付くような確かな熱を帯びている。


直也「ALMA、リィナちゃんの魔法使用を一時承認しろ。目的は逃走経路の確保だ!」


ALMA『……状況をスキャン。緊急性を確認。対象「リィナ」による生活魔法『お掃除』の使用を、限定的な摩擦制御として承認します。直也さん、過度な研磨は世界の綻びを広げます。結果のみを出力してください』


リィナ「あ、許可が出ました! はいっ……きれいに、します!」


リィナが杖を振ると、俺たちの足元の石畳が、一瞬だけ妙に滑らかな艶を帯びた。

床に残っていた泥と細かな粉塵が、目に見えない膜で撫でられたみたいに薄く均され、追ってきた警備員たちの足運びが揃って狂う。


警備員「足幅は肩幅です。測定の用意が整いました」

警備員「あ、足元が……不親切な滑らかさです。姿勢制御が困難……」


丁寧な口調を崩さないまま、警備員たちが足を取られ、次々と「正しくない姿勢」で転倒していく。

彼らの動きが乱れたその瞬間、俺は魔剣を振り抜いた。


直也「ゼピュロス、行け!」


ゼピュロス「風よ、踊れ! おじさんたちの視界、ちょっとだけ借りるよ!」


魔剣から放たれた突風が、通路を埋め尽くしていた紙吹雪を巻き込み、巨大な白い渦となって警備員たちの視界を奪った。

それは決定的な打撃ではない。ただ、彼らの「正しい視界」を一時的に遮断するだけの、地味で、しかし確実な小細工だ。


ゼピュロス「どや! 道、開いた!」


直也「自慢はあとだ! 今のうちに抜けるぞ!」


俺たちは警備員たちの間を、文字通りすり抜けるようにして駆け抜けた。

背後からは、依然として「視界不良につき、正しい誘導を継続します」「目を閉じて深呼吸を」という、うざすぎるアドバイスが追いかけてくる。


直也「勝ったっていうより、ただ通っただけだろ、これ……!」


派手に勝ったわけじゃない。

ただ、通れる隙を作って、泥臭く抜けただけだ。

でも今の俺たちには、その勝ち方のほうが合っていた。


ポン太「旦那、こっちだ! シャッターの隙間へ滑り込め!」


ポン太の合図で、俺たちは閉じかけの巨大な鉄扉の下へと身を投げ出した。

冷たいコンクリートの上を滑り、扉が閉まる不快な金属音を背中で聞きながら、俺たちはようやく「親切な追跡者」たちの声を遮断することに成功した。


しばらくの間、聞こえるのは俺たちの荒い呼吸音だけだった。

ようやく顔を上げた俺を襲ったのは、これまでの物流港とは明らかに異なる、肌を刺すような寒気だった。


直也「……冷えるな。ここはどこだ?」


俺たちの目の前に広がっていたのは、見上げるほど高い天井を持つ、巨大な倉庫だった。

だが、他の区画とは決定的に違う点がある。

すべての壁が霜に覆われ、通路の奥からは、青白い冷気が霧のように漂ってきているのだ。


ALMA『報告。周囲の気温、マイナス15度。急速に低下中。ここは、没収品の中でも特に「不安定な情報」を隔離するための、没収品保管区画……通称、冷える倉庫です』


ゼピュロス「……っ」


俺の手の中で魔剣モードを解除したゼピュロスが、珍しく言葉少なに、小さく震えているのが分かった。

彼女の視線は、霧の向こうに鎮座する、ひときわ巨大で「開けてはいけない」雰囲気を醸し出している黒い扉へと注がれていた。


直也「ゼピュロス? どうした」


ゼピュロス「……なんでもないよ。ただ、ここ、私の嫌いな匂いがする」


彼女の不機嫌な声が、冷たい空気の中に溶けて消えた。

俺は自分の肩を抱きながら、その「奥」に潜む何かの気配を、確かに感じ取っていた。


◆◆◆(勝利未満の通行権)◆◆◆

次回の更新日04月07日(火)第10話(4)仮通行札と、開けちゃいけない扉 ―― 冷気の境界線

になります。

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