表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/38

第10話(1)仮通行札と、開けちゃいけない扉 ―― 手続きの迷宮(ラビリンス)

◆◆◆


内壁ゲートを越え、中核区画へと足を踏み入れた俺を待っていたのは、白亜の宮殿のような巨大な建物だった。

それは、空を突くような時計塔を備えた、威圧的なまでの「秩序」の結晶だ。

入り口の壮麗なアーチには、磨き抜かれた金文字でこう刻まれている。

「中央行政区画・総合案内センター。あなたの正しい生活を、10の窓口でサポートします」


直也「……10の窓口? 案内所が10個に分かれてるのか? 入り口の時点で、もうお腹いっぱいなんだが」


俺がその巨大な扉の前で呆然と立ち尽くしていると、正面から流れるような、しかし一切の無駄を削ぎ落とした動作で案内員が寄ってきた。

その服装は一分の隙もなくプレスされ、貼り付けたような笑顔は、光の反射角度まで計算されているかのように鏡のごとく輝いている。

案内員は俺の前でピタリと止まると、機械的な予備動作と共に、短く、そして鋭く言葉を放った。


案内員「いらっしゃいませ。新規来訪者ですね。まずは確認です」

案内員「視線は水平にお願いします。瞬きは3秒に1回が正解です」

案内員「口角の角度は15度です。測定器を呼びますか?」


直也「測定すな! ……あー、すまない。この街での滞在許可が欲しいんだ。どこに行けばいい?」


案内員「滞在許可ですね。お客様の目的、出身、現在の幸福度、および靴のサイズに基づき、最適な窓口へご案内いたします。初めての方は、まずこちらの1番から10番までの説明資料をお読みください。所要時間は1種類につき15分です。正しい読書姿勢を維持してください」


案内員の手から、次々と色鮮やかなパンフレットが差し出される。その厚みは一冊一冊がちょっとした文庫本ほどもあり、合計すると俺の腕の中にずっしりと重みがのしかかった。


直也「読むだけで2時間半かかるじゃないか! 俺はただ、のんびり旅をしたいだけなんだ。スローライフの第一歩で、なんでこんな論文みたいな資料を読まなきゃいけないんだよ」


案内員「左様でございますか。では『滞在希望者向け・親切な手続き案内窓口』へどうぞ。なお、スローライフをご希望の場合は、別途『安寧生活享受申請書』の提出が必要です。あくびは指定区域でお願いします」


直也「スローライフって申請制なん!? 勝手にのんびりしちゃダメなのかよ。あくびの場所まで決められるのか! 寝ぼける権利すら奪う気か!」


俺は案内員に押し付けられた10種類のパンフレットを抱え、巨大なホールへと足を踏み入れた。

そこは、第8話で見た市場の喧騒とは無縁の、不気味なほどの静寂に満ちていた。

高い天井からは柔らかな魔法の光が降り注いでいるが、その光さえもが「正しい照度」に固定されている。

番号が振られた窓口には、俺と同じように生気を失った顔で書類と格闘する人々が、定規で測ったような正確な列を作っていた。

床には『正しい待ち方』という白い線が縦横無尽に引かれ、そこから1ミリでも足がはみ出そうものなら、天井から音もなく飛んできた「姿勢矯正ドローン」が耳元で親切な警告音を鳴らし続ける。


ALMA『解析。この施設内では、全ての行動が「申請」と「承認」のサイクルで管理されています。直也さん、ここでは自由な呼吸さえも、公害防止条例の枠内で許可されているようです。過呼吸は騒音公害とみなされますので、深呼吸は慎んでください』


直也「冗談だろ……。自分の肺を動かすのにも許可がいるのかよ。……おい、リィナちゃん、大丈夫か? 顔色が悪いぞ」


リィナ「は、はい……。なんだか、この場所にいるだけで、自分が呼吸していること自体が間違ったことのように思えてきて……。あ、あのポスター、見てください」


リィナが震える指で差した先には、『正しい瞬きのタイミング』という大きな啓発ポスターが貼られていた。

そこには、周囲の人間と瞬きを同期させることで「社会的な調和」が生まれ、個人の眼球疲労も最適化されると、恐ろしいほど論理的な図解で説明されていた。

リィナはそれを見ながら、必死に周囲の通行人の瞼の動きを盗み見、自分の瞬きを調整しようとしていた。


ゼピュロス「あはは! マスター、見てよあの看板!『正しいあくびの仕方は45度の角度で』だって! この街の人たち、バカじゃないの? そんなにキチッとしてたら、風も吹けなくなっちゃうよ!」


ゼピュロスが空中で退屈そうに回転しながら、案内所の天井付近にある巨大なデジタル掲示を指差して笑う。

その奔放な動き……「垂直と水平」というこの世界の基本ルールを無視した軌道に、周囲の案内員たちの視線が一斉に突き刺さった。


案内員「お客様、空中での回転は『三次元移動規制』に抵触する恐れがあります。速やかに地上10センチの位置へ着地してください。それが、あなたにとって最も安全な正解です。膝の角度は垂直、足首は90度にお願いします」


ゼピュロス「やーだね! 私は風なんだから、どこで回ろうと勝手でしょ! あんたたちの正解なんて、私の風で全部吹き飛ばしてあげる!」


直也「ゼピュロス、煽るな! ……すみません、こいつはただの『浮遊する不純物』だと思って無視してください。膝の角度とか言ってる場合か! 任意の圧が強すぎるんだよ、この建物!」


俺はゼピュロスの首根っこを強引に掴んで、床から10センチの高さまで引きずり下ろした。

ようやく辿り着いた1番窓口で、俺は事務的な笑みを凍りつかせている係員に、滞在許可の件を切り出した。

係員は、俺が差し出した仮の証明書をピンセットで恭しくつまみ上げると、顕微鏡で細菌でも覗くような目つきで点検を始めた。


係員「滞在許可ですね。中核区画への立ち入りには、登録料として金貨3枚、および保証金として金貨5枚、合計8枚が必要です。なお、これは『最も標準的で親切な』プランの価格です。未納は不親切な行為とみなされ、生活ランクが下方修正されます。入金の手順は、24番窓口で説明されます」


直也「……は? 金貨8枚? 第8話で詐欺師に取られた分を返してもらったばっかりなのに、それだけで全部消えるじゃないか。滞在するだけで破産しろっていうのか」


金貨8枚。今の俺たちの全財産を合わせても、到底足りない。

この世界の「正しさ」を享受するには、あまりに法外な入場料が必要だった。

俺が窓口の前で膝をつき、絶望に暮れていると、背後からポン太が音もなく近づき、俺の耳元で囁いた。


ポン太「へへっ、旦那。あそこの『親切な窓口』は、金持ちと、自分を捨てた人形たちのための場所だぜ。金がねぇなら、あっちの『裏の掲示板』を見るこった。……ただし、あそこは俺っちみたいな『はみ出し者』のテリトリーだがな」


直也「裏の掲示板? ……また条件付きか? お前の言うことは、いつも後から高くつくからな」


ポン太「当たり前だろ? 俺っちはガイドだ。旦那を『正解』という名の檻から救い出してやる代償さ。……条件は一つ。今日中に稼いだ金の3割を、俺っちの仲介手数料として支払うことだ。これは『裏契約』の更新料と、この行政区の空気代みたいなもんだよ」


直也「3割! 仲間加入の条件が重すぎるだろ! 案内役の顔して、しっかり取り立てる気満々じゃないか! エグい商売してやがるな!」


ゼピュロス「払えばいいじゃん。マスター、金がないなら働くしかないでしょ。ほら、あっちの真っ黒な看板に行こうよ! 動かないと、おじさんの足も腐っちゃうよ!」


ゼピュロスに背中を何度も突つかれ、俺は案内所の隅にある、魔法の光も届かないような灰色の掲示板へと向かった。

そこには、表のピカピカな電光掲示とは対照的に、手書きの、しかしこの世界の癖で読みやすく整えられた依頼が並んでいた。

だが、その依頼名を見た瞬間、俺の脳は一瞬でフリーズした。


『中央物流港第3搬入口における一時的貨物再配置および没収品移送補助ならびに季節外れの霜取り清掃を兼ねた特別清掃業務・およびそれらに付随する事務手続きの補助』


直也「……依頼名、長すぎだろ! 読むだけで体力が削られて、一日が終わるわ! なんで要約しないんだよ! 『倉庫の掃除』って書けば三文字で済むだろ!」


ポン太「へへっ。名前が丁寧なのは、この世界の礼儀なんだよ。……内容は要するに、倉庫の力仕事と、余計なものを綺麗にする仕事だ。今日中に終わらせれば、仮通行札だけは手に入る。それがあれば、今日一日はこの不気味な視線から逃げられるぜ。どうする、旦那?」


直也「……今日中に稼いで、この息苦しい場所から抜ける。それしか道はないみたいだな。スローライフをするために、まず泥にまみれて、紙の海に溺れるか。最悪だ」


俺は、一文字も頭に入ってこない長い依頼書を、掲示板から乱暴に剥ぎ取った。

受付に戻る際、係員が「正しい剥がし方ではありません。角度が10度ズレています」と呟いたが、俺はそれを中指を立てる代わりに無視して、中核区画のさらなる深部、物流港へと足を踏み出した。


◆◆◆ 手続きの迷宮ラビリンス ◆◆◆

次回の更新日3月31日(火)第10話(2)仮通行札と、開けちゃいけない扉 ―― 紙吹雪の包囲網になります。

感想を頂ければ励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ