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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U


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第9話(5)親切な関所と、泥だらけの裏契約 ―― 粘着テープの手続きと、座標の綻び

◆◆◆


内壁ゲートの裏側、薄暗いサービス通路の入口に到達した俺たちを待っていたのは、表の喧騒を忘れさせるほどの「過剰な静寂」と、それに相反するような看板の群れだった。


「……なんだこれ。矢印のバーゲンセールか?」


俺は思わず足を止め、頭上に並ぶ案内板を見上げた。

そこには『搬入の方はこちらへ』『点検希望の方はこちらへ』『迷われた方は、まずこちらへ』といった言葉が、十数枚も重なり合って掲示されている。

驚くべきは、そのすべての矢印が、最終的には同じ「正面の受付」へと誘導するように配置されていることだった。


ゼピュロス「わー! あっちもこっちも『こちらへ』だね! これ、マスターみたいに優柔不断な人なら、一日中ここでぐるぐる回ってられるんじゃない?」


直也「誰が優柔不断だ。親切が多すぎて逆に迷うんだよ。案内っていうのは、選択肢を減らすためにあるもんだろ。これじゃあ正解を絞らせないための罠だ」


ゼピュロス「迷うなら、私が風で全部の看板を引っこ抜いてあげようか? そしたら矢印なんて気にしなくて済むよ!」


直也「物理で解決しようとするな。……とにかく、あっちの『正面受付』に行ったら、またあのアイロンがけされた連中に捕まる。ポン太、ルートはこっちで合ってるんだな?」


俺が問いかけると、ポン太は露骨に顔をしかめ、自分の毛並みを気にしながら頷いた。


ポン太「……ああ。だが旦那、ここから先は正面の検問より『うざい』ぜ。あっちがアイロンなら、こっちは粘着テープだ。一度捕まったら、手続きの山で身動きが取れなくなる」


ポン太の言葉通り、搬入口の奥へ進むと、そこには青い制服を着た係員たちが整然とデスクを並べていた。彼らは武器を持っていない。代わりに持っているのは、分厚い書類の束と、どこまでも丁寧な「事務的な微笑」だった。


点検員「ようこそ、裏側導線へ。お荷物の確認と、存在証明の手続きを承ります。まずはこちらの申請書三枚にご記入を。すべて『正しい文字』でお願いします。一文字でも乱れがあれば、親切な書き直しが適用されますので」


直也「……手続きの親切圧、か。正面とはまた別のベクトルで攻めてくるな」


ALMA『解析。この領域における手続きは、情報の「規格化」を目的としています。申請、確認、最適化……。直也さん、彼らの提案する手順に従うと、私たちの行動履歴がすべてシステムにログとして……失礼、記録として固定されます』


直也「今それいらん。……リィナちゃん、俺たちの見た目が泥だらけなのが一番の問題だ。点検員にジロジロ見られてる。ここは、特例として『お掃除』を申請する。ALMA、承認しろ」


リィナ「は、はい! あの方たちの視線、なんだか『汚れているものは直さなきゃ』って言われているみたいで……怖いです」


リィナが杖を構えると、俺の脳内でALMAの声が響いた。


ALMA『申請を確認。目的、点検員の注視回避。……承認します。ただし、一括消去ではなく、泥跳ねや匂いの「目立つ部分」のみを周辺環境の平均値に同調させます。魔法名の連呼は禁止です。結果のみを出力してください』


リィナの杖が微かに、光というよりは熱のようなものを帯びた。

その瞬間、俺たちの服にこびりついていた泥や、路地裏の湿った匂いが、霧が晴れるように「薄く」なった。

完全に消えたわけではない。ただ、点検員の意識に残らない程度に、存在感が希薄になったのだ。


直也「……よし。ゼピュロス、お前も少し手伝え。派手に動くなよ」


ゼピュロス「任せて! 風の魔剣様の、地味でチートな小細工、見せてあげる!」


ゼピュロスが指先で風を弄ぶと、点検員のデスクに置かれた書類の端が、ふわりと不自然にめくれ上がった。

「おや、風ですか」と、係員が視線を一瞬だけ書類へと落とす。


直也「今だ。……すみません、手続きの要点は三枚目の『存在確認』だけでいいはずですよね。前段の二枚は、外郭での登録で代用されていると聞いています」


俺はあえて、係員が始めようとしていた「丁寧な説明」を遮り、結論だけを突きつけた。

係員は一瞬、処理が追いつかないように瞬きをしたが、「……左様でございますね。正しいご判断です」と、ルーチンを省略してハンコを押した。


直也(……判断のチート、か。こいつらの『正解の流れ』を、こっちから切ってやる)


俺たちは、係員が「次の丁寧な案内」を開始する前に、素早くその場を離れた。

ポン太は万能なガイドなどではなかった。通路の曲がり角に来るたび、彼は顔を強張らせ、何度も背後を確認している。


ポン太「……旦那、ここから先は勝手に触るなよ。裏側の矢印は、わざと正面へ戻るように配置されてやがる。気を抜くと、親切な案内板に背中を押されて、いつの間にか検問列の最後尾に並ばされることになるぜ」


実際、通路の導線は巧妙だった。

右へ曲がれば近道に見える場所ほど、緩やかなカーブを描いて正面の広場へと合流させようとする「癖」があった。

「こちらの列へどうぞ」という看板が、裏口の暗がりでさえ優しく微笑んでいる。


直也「ここ、裏口でも正面に戻す気満々だな。……ポン太、例の『綻び』、使えるか?」


ポン太「……入口だけ、触る。通り抜けはしねぇ。旦那たちの位置を、一歩だけ『横』にずらす。それだけで、あいつらの視線から外れられる」


直也「条件を確認する。代償は?」


ポン太「一つ、次回の案内料は前払いを増やす。二つ、これからの合図は一秒の遅れも許さねぇ。三つ、質問は次の街まで一切禁止だ。……それに、一歩ずらすたびに、俺たちの時間を少しばかり失うことになる。ま、数分程度のロスだがな」


直也「……勝ったのに、縛りだけ増えるのは納得いかんが、背に腹は代えられない。条件、飲もう。やれ!」


ポン太が世界の継ぎ目に指をかけ、ぐいと空間を捻った。

景色がわずかに歪み、俺たちの立ち位置が、本来あるべき座標から数センチだけ「ズレた」。

その瞬間、俺たちの横を通り過ぎようとしていた誘導員の視線が、虚空を彷徨い、そのまま通り過ぎていった。


直也「……抜けたか」


重苦しい「確認」と「手続き」の迷宮を抜け、俺たちはついに内壁ゲートの反対側、中核区画の入口へと滑り込んだ。

背後で自動ドアが閉まるような、冷たく乾いた音が響く。

そこには、外郭の喧騒も、路地裏の泥も存在しなかった。


ただ、あまりにも整いすぎた、息が止まるような「静寂」だけが広がっていた。


◆◆◆粘着テープの手続きと、座標の綻び◆◆◆

中核区画の入口まで到達しました。

次回はいよいよ、整いすぎた“内側”に入っていきます。

ここから空気が少し変わるので、続きを読んでもらえたら嬉しいです。

次回3月24日(火)更新です!

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