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ろじうらで6
「……ひょっとして、迷子?」
「………………」
なるべく穏やかな口調を繰りながら、試行錯誤する。
「………………」
「えっと……」
「………………」
「その……」
それでも、やはり少女は応えない。
ばかりか、ひとまずの興味さえ、露とも抱こうとはしてくれない。
「んー……」
「………………」
どうも埒の明きそうにない現状に、いよいよ困り果てた。
次ぐべきセリフを、小難しい唸り声に切り替える。
「あ……」
そこで、右手に提げたレジ袋の存在を思い出した。
慌てて腕時計を確認する。
「ヤバ……っ!」
もう少しで、昼休みが終わる。
急いで戻って、どうにか滑り込み。 ギリギリか。
「もしよかったら──」
“そこの学校まで、一緒に来てくれる?”
「あれ……?」
そういった申し出が、史の口を離れることは無かった。
ふたたび上向けた視線の先に、少女の姿はすでに無く。
ただ、人気のない路地裏の向こうに、高校の棟舎を望むのみだった。




