ろじうらで
史が“それ”と出くわしたのは、昼休みのことだった。
食後に昵懇の面子で行われた、アイスクリームの買い出しを賭けたジャンケン。
結果のほうは、言わずもがなである。
高校の近所で商う鄙びた商店から、レジ袋を提げて引き返す道中のことだった。
「ん…………?」
奇妙なものを見た。
所は高校の裏手。 周辺住民から、生活道路として重宝される路地裏である。
行く手に独り。 “それ”は、ひっそりと佇んでいた。
「………………」
年頃は、見たままに16歳ほどと、大凡にも見当をつけることができる。
その身を包む装いは、品の良い和装。
形式からして、“汗衫”と呼ばれる装束だったろうか。
たしか、元は平安期、童女の正装として用いられた品だった筈だ。
豊かな美髪は、白銀とも銀白ともつかず、透けるような色味を湛えている。
その一筋・一筋が、並み居る湿気を打ち払い、生き生きと輝いている。
それらがゆるりと垂下する模様は、あたかも夏山をいろどる雪渓の風情か。
色味のない透色が、高尚な召物に及んでも尚、美観をひとつも損なってはいない。
むしろ、完全に溶け合うことで、ようやくの完成品。 一幅の美術品を想起させた。
「………………」
それらの持ち主たる少女自身に、よくよく目を留める。
うすら寒いものを感じた。
絶世の品々をいくつも持ち合わせているにも関わらず、快味の利いた俗っぽさがない。
あろうことか、その眠たげな瞳に、際立った生命力はなく、覇気もない。
“人間じゃ無いな……”
ともあれ、一目瞭然だ。
彼女が有する無依ぶりは、万世にひと口の執着もなく。 来世に渡す望みもない。
それでいて、この恐ろしいまでの純朴ぶり。
さながら、一輪の野花か。
その可愛らしさは、下心を覚えさせる暇もなく、幅広い異性を虜にすることと思う。
もしくは、妬みの類を生じさせる暇もなく、同性をも魅了することだろう。
それは正しく、軋轢を生むことのない美しさであり、少女が体現する純粋さ・素朴さだった。
“……うん。 やっぱり、人間じゃないな”
ただし、その美しさというのは、到底人間のそれでは無かった。
巡りゆく季節の色合い──、奥深い美に富んだこの国にあっても尚、それは意想外の代物だった。
尋常ではない彼女の立場を、暗に仄めかすものだった。
“立ち位置こそ違え、この少女は、自分と同じく人間じゃない”




