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ろうかにて2
結果から言って、なにも起きなかった。
「んーむ……」
二階へ通じる階段の下部。
適度なスペースが確保されたその場所で、おのおの身を寄せ合い、いったん一塊となる。
そんな中、小難しい表情の望月が、携えていたノートパソコンを開いてみせた。
液晶に視線を落とし、キーボードに指先を走らせ始める。
先ほど、生徒会室の前では、随分と時間を費やした。
窓から内部も確認した。
お隣の校長室。 そこに連なる職員室の様子も、丹念に窺ってみた。
そのどれもが、まったくの空振りだった。
そういった事実が、望月の苦い表情には、よく表れていた。
あるいは、いよいよ本調子を取り戻し始めた珠衣と幸介の様子が、何より雄弁に物語っていた。
もっとも、何事も起こらなかったのは、史とて実に喜ばしく思う。
取り越し苦労に終わる懸念ほど、めでたいものは無い。
しかし───
「………………」
感知網を波紋状に発信し、周縁の気配を入念に探る。
この校舎内に、相変わらず不可解な気配があることはたしかだった。
それは、自分たちの他に、誰かがいるということ。
それは、委託会社の警備員ではなく。
宿直の教師でもなく。 居残った生徒でもなく。
それ以前に、広義でいうところの生物ですらない。
だとすると、いまだに気を抜くことなど出来ない。




