99/1823
ろうかにて
「ひめ……さま……」
「うはぅ……っ!!?」
「ひめ……さま……」
「ちょっと幸介ぇ!!! 冗談やってる時じゃないよっ!?」
「ごめん……なさい……」
悪ノリした幸介を、珠衣があたふたと叱りつけた所、当人は“しゅん……”と項垂れてしまった。
それを見届けた彼女は、片方の腕がつなぎ止める幼なじみへと、意見を求めた。
「……それで? どうする? は、入ってみるの?」
「いや……。 その必要は無いんじゃない?」
これに応じた望月が、ゆるい挙動で頭を振ってみせた。
親指の付け根を使って眼鏡を正し、沈黙に徹するドアを観察する。
「件の女子生徒は、廊下でその声を聞いたんだろ?」
「う、うん……」
言ったそばから、ふたたび恐怖心が首をもたげてきたのだろう。
わずかに汗ばむ幼なじみの掌を、ギュッと握りしめて、それを頼りに意見を述べる。
「ここで待っていれば、なにか起こるかも知れないぞ……?」
「な、なにかって……?」




