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指先

ダンジョンに潜る人達の話です。



登場人物

エマ・ウォーカー     主人公です。

ノル・ハーヴェイ     白鹿の探索隊長の一人

ニナ・クラーク      白鹿のギルド所属の前衛 エマの仲間



▼主人公の基本設定

名前:エマ・ウォーカー

年齢:20歳くらい

性別:女性

ギルド歴:10年

元DPS で ギルドの意向でサポートへ配置転換された

サポートの役割:救護/料理/素材回収/物資管理/運搬等 多岐にわたる



この物語のギルドは、ダンジョン内で採れる素材の回収を専門に請け負う組織です。

魔物の牙や皮、鉱石、薬草、魔石などを回収し、

それを商会や工房、研究機関へ卸すことで利益を得ています。

ただ魔物を倒すだけの集団ではなく、探索、戦闘、救助救援、採取、解体、運搬、物資管理まで含めて、

ひとつの仕事として成り立たせた大手組織です。そのギルドで働く人物達の物語

ギルドに戻ったあとも、エマの手は震えていた。


水で洗った。布で拭いた。もう一度、水で洗った。

血は落ちていた。

爪の間にも、手首にも、服の袖にも、赤いものは残っていない。

それなのに、指先だけがまだ覚えていた。


押さえた傷口の熱。浅くなっていく呼吸。

スクロールの光が、頼りなく揺れて、消えていく瞬間。

あの人の体から、力が抜けた感触。


「……落ちてる」

エマは小さく呟いた。


何が、と自分でも思った。

血なのか。

汚れなのか。

それとも、もっと別のものなのか。


分からないまま、また手をこすった。


「エマ」

背後から声がした。

ニナだった。

エマは振り向こうとして、やめた。今、顔を見られたくなかった。

「もう、落ちてるよ」

ニナの声は静かだった。エマは自分の手を見た。

白い指。

赤くなった皮膚。

それだけだった。


「分かってる」

そう答えたつもりだった。

けれど、声はほとんど出なかった。

ニナは少しだけ迷ってから、隣に立った。

「エマのせいじゃないよ」

その言葉に、エマの胸が小さく痛んだ。


違う。

そう言いたかった。


私のせいだ、と言いたいわけじゃない。

誰かに責めてほしいわけでもない。

許してほしいわけでもない。


ただ。


「助けたかった」

それだけが、口からこぼれた。

ニナは黙った。

エマは手を握った。

強く握っても、感触は消えなかった。


「スクロール、使ったのに」


「うん」


「傷も、押さえたのに」


「うん」


「声も、かけたのに」


「うん」


「でも、だめだった。助けたいと思っても助けられない...」

「助けたいって思っただけじゃ、届かないんだね」


「うん」

ニナは何も言わなかった。

エマはその沈黙に、少しだけ救われた。

慰めの言葉よりも、今はその方がよかった。

やがて、ニナが小さく言った。

「エマのせいじゃないって言っても、たぶん、楽にはならないよね」

エマは頷けなかった。

首を横に振ることもできなかった。

ただ、手を見つめていた。

ニナはそれ以上、無理に言葉を重ねなかった。


責めるなとも、忘れろとも、言わなかった。

泣いていいとも、前を向けとも、言わなかった。

ただ、エマのそばに立っていた。それだけで、少しだけ息がしやすくなった。


「……ごめん」

エマは小さく言った。

「ニナに、こんな顔を見せるつもりじゃなかった」


「いいよ」


ニナはすぐに答えた。

「見せてもらえない方が、たぶん心配だった」


その言葉に、エマは苦く笑おうとした。

けれど、うまく形にならなかった。

年下の彼女に、こんなふうに気を遣わせている。

そう思うと、胸の奥がまた重くなった。


「大丈夫」

エマは言った。


「少し休めば、ちゃんと戻れるから」

自分に言い聞かせるような声だった。


ニナはエマの顔を見た。

信じていない顔だった。それでも、問い詰めはしなかった。

「……無理はしないで」


「うん」


エマは頷いた。

「ありがとう、ニナ」

ニナはまだ何か言いたそうにしていた。

けれど、結局、小さく頷いて、一歩下がった。

「近くにいるから」


そう言い残して、ニナは離れていった。

その背中を見送ってから、エマはもう一度、自分の手を見た。

血は落ちている。

もう、何も残っていない。


それなのに、指先だけがまだ覚えていた。

前書きの設定情報を修正しました。

本作品は未完成な部分や表現に納得できない箇所が随所にあります。なので、随時修正します。

シナリオや展開を変えるつもりはありません。

ご容赦ください。

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