人の手にあるもの
ダンジョンに潜る人達の話です。
エマが主人公です。
オスカーは身内(男性/18歳)
ニナは同じギルドの仲間DPS(女性/19歳)
ノルは今回の探索隊の隊長(男性/20代後半)
▼主人公の基本設定
名前:エマ・ウォーカー
年齢:20歳くらい
性別:女性
ギルド歴:10年
元DPS で ギルドの意向でサポートへ配置転換された
サポートの役割:救護/料理/素材回収/物資管理/運搬等 多岐にわたる
この物語のギルドは、ダンジョン内で採れる素材の回収を専門に請け負う組織です。
魔物の牙や皮、鉱石、薬草、魔石などを回収し、
それを商会や工房、研究機関へ卸すことで利益を得ています。
ただ魔物を倒すだけの集団ではなく、探索、戦闘、救助救援、採取、解体、運搬、物資管理まで含めて、
ひとつの仕事として成り立たせた大手組織です。そのギルドで働く人物達の物語
この者たちが襲った者なのか。それとも、襲われた者なのか。
まだ判断できなかった。
ノルは言った。
「今は、どちらの言い分も信用しない」
その声は冷たく聞こえた。だが、場を押さえるにはその冷たさが必要だった。
「まず、武器を下ろせ。こちらも拾わない。お前たちも、相手もだ。うちのサポーターに救護をさせてほしい」
「ふざけるな。こいつらに襲われたんだぞ!」
刃を向けていた男が叫んだ。その言葉に、壁際の女が顔を上げた。
「そうよ! 私たちは鉱脈を見つけて、採掘していただけ! そこにこいつらが襲ってきて……!」
向かい側の男が怒鳴る。
「嘘だ! 先に刃を抜いたのはそっちだ!」
「抜かせたのはあんたたちでしょ!」
また空気が熱を帯びる。
ノルが一喝した。
「黙れ!」
洞窟に声が反響した。全員が動きを止める。
ノルは倒れた男を見た。
「死人が出ている。ここで言い争えば、次が出る。まずは救護をしてからだ。本当にそいつらが襲ったのなら、領主に報告して引き渡す」
誰も答えなかった。
ノルは壁際の者たちに視線を向ける。
「確認する。お前たちは、先にこの場所にいたのか」
女が頷いた。
「そうです」
「何をしていた」
「夜光石を採っていました。小さい鉱脈だけど、確かにありました」
「相手は後から来たのか」
「そうです」
向かい側の男が口を挟もうとする。ノルが睨んだ。
「あとで聞く。今は黙れ」
男は歯を食いしばった。
ノルはさらに尋ねる。
「助けを求めたのは誰だ」
壁際の女が、震えながら手を上げた。
「私です」
「なぜ」
「押し込まれて……この人が、背中を……」
女は言葉を詰まらせ、床の男を見る。
「この人が、私たちを下がらせようとして……」
その声に、短剣を構えていた男の手が震えた。エマを掴んでいた手が、少しずつ緩む。
ノルは男を見る。
「分かったか」
男は答えなかった。
だが、もう誰にも刃を向けてはいなかった。
エマは息を吸った。
胸が痛い。
倒れた男の血が、まだ手に残っている。
助けられなかった。
それでも、今度は生きている者を見なければならない。
ノルがエマを見る。
「立てるか」
「はい」
エマは頷いた。
足は震えていた。けれど、立った。
ダンジョンは、魔物だけが人を殺す場所ではない。
エマは壁際の者たちを見た。彼らはまだ震えていた。武器を持つ手にも力が入っていない。
荷は壁際に寄せられ、採掘道具が散らばっている。逃げ道を失っていたのは、彼らの方だった。
向かい側のパーティは、入口側にいた。退路を塞ぐ形で。
状況だけを見れば、どちらが追い詰められていたかは明らかだった。
「この人たちは、襲われた方です」
エマは静かに言った。声は小さかった。だが、その場には届いた。
ノルが言った。
「壁際の者たちは、そのまま下がれ。怪我人を確認する。入口側の者たちは動くな。武器には触れるな。手を出せば、こちらは容赦しない」
入口側の男が何か言いかけたが、ノルは遮った。
「先に生きている者を見る。話はその後だ」
ノルの声で、場の空気が少しだけ締まった。
エマは血のついた手を握った。
まだ温かい。なのに、もう届かない。
助けたいと思った。必死に手を伸ばした。
けれど、命は指の間からこぼれていった。
何もできなかった。
その事実だけが、血の重さになって手の中に残っている。
鉱脈を見つけただけだったのかもしれない。
ただ、持ち帰るものを得ようとしただけだったのかもしれない。
それなのに、人が死んだ。
魔物ではない。罠でもない。
人の手で。そのことが、エマの胸に重く残った。
それでも、助けを求める声を聞いたら、たぶんまた動く。
怖くても。また間に合わないかもしれなくても。
聞こえなかったふりは、できない。
そう思った。
修正しました。
元々は、エマが救護後に刃を向けられる展開を考えていましたが、展開を言葉にするのが難しかったです。その展開が少し残っていたので変な描写になっていました。
あと、武器を持った先行パーティ同士の争いを鎮める展開を描きたかったのですが、こちらも言葉に起こすことが出来なかったです。むずい。




