↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンサポーター  作者: Aramaki_mai
第一章 白鹿のサポーター
PR
4/80

第3話 第五階層へ

ダンジョンに潜る人たちの話です。

ライト文芸寄りのダークファンタジーです。


▼登場人物

エマ・ウォーカー     主人公です。

ニナ・クラーク      白鹿のギルド所属の前衛 エマの仲間

カイル          今回の探索隊の前衛の一人


▼主人公について

白鹿のギルドで働く二十歳前後のサポーター。

元前衛だが、今は救護、素材回収、物資管理、食料と水の配分、退路確認などを担い、探索隊を生きて帰すために働いている。

挿絵(By みてみん)

隊長は全員の返事を聞き終えると、しばらく黙って地図を見下ろしていた。


松明の火が、石壁に落ちた影を揺らしている。


その沈黙だけで、次に口にする言葉が軽いものではないと分かった。


「方針を変える」


隊長は短く言った。


「このまま四階層で粘っても、予定していた収穫には届かない。物資の残量を考えても、だらだら続ける余裕はない」


副隊長がかすかに眉を寄せる。


「下に降りる気ですか?」


「そうだ」


隊長は地図の一点を指で押さえた。


「五階層へ行く」


その一言に、何人かが息を呑んだ。


五階層。


たった一階層下がるだけで、帰り道の重さが変わる。


隊長は全員を見回した。


「長くはやらない。今日中に成果を補って、引き返す」


誰もすぐには口を開かなかった。


「戦い方は変えない。俺が誘う。狭い通路まで魔物を引き込む。副隊長は前衛をまとめて、左右から挟め」


副隊長はすぐに頷いた。


「了解。前衛は二手に分ける。合図までは絶対に飛び出すな。焦って出れば、隊長ごと巻き込む」


「分かってる」


「矢の残数は?」


弓兵の一人が答える。


「まだ戦えます。ただ、長引くと厳しいです」


それを聞いて、エマは矢束を確かめ、ポーションと解毒剤の瓶を数えた。薬草も回復スクロールも包帯も残ってはいるが、どれも好きに使える数ではない。


一つ使えば、帰り道の余裕が一つ減る。エマは革袋の口を閉じ、背中に残る重さを確かめた。


「エマ」


隊長がこちらを見る。


「支援を頼む。前衛への補給、負傷者の回収、物資の判断。補給と救護は、いつも通りだ」


「了解」


エマは短く答えた。


いつも通りとは、便利な言葉だと思った。誰かが遅れれば背中を押し、倒れればどうにかする役は、変わらず自分に回ってくる。


エマは荷物を背負い直した。


――今日いっぱい。


安全に見て、物資が持つのはそこまでだ。全員で帰れる道は、もう細い。


それでもエマは、五階層へ続く階段を見下ろした。重い闇が、底からこちらを覗いているようだった。


――嫌な感じ。


そう思ったが、口には出さなかった。


言葉にすれば、不安は形を持つ。形を持てば、誰かに伝染する。


サポーターがそれをしてはいけない。


エマは口元だけ笑ってみせた。


「じゃ、行きますか。今日中に稼いで帰るんですよね」


ニナが肩をすくめる。


「軽いですねえ」


「重く言ったら荷物まで重くなるでしょ」


「それはもう重いのでは?」


「それを言ったら負け」


そのやり取りに、数人が小さく笑った。笑えるうちは、まだ大丈夫だ。


一行が五階層へ降りると、四階層よりも冷たい空気が肌に触れた。狭い通路は壁の凹凸も多く、視界は悪いが、待ち伏せには向いていた。


「この先の広間に魔物がいる。俺が引く。前衛は左右の陰に入れ」


副隊長が即座に指示を飛ばす。


「右に二人、左に二人。弓は右後列。飛び出すのは俺の合図の後だ。エマ、補給は左後列で」


「了解」


エマは通路の隅に荷物を置き、すぐ取り出せるように中身を整えた。


矢束は手の届く位置へ。ポーションは蓋を緩め、スクロールは種類ごとに分ける。薬草は布に包み直し、必要な時に片手で取れるように置いた。


準備が整う頃、隊長が一人で前へ出た。


誘い役。


作戦の中で、もっとも危険な役割だ。


魔物に気づかれなければ始まらない。近づきすぎれば、その場で噛みつかれる。離れすぎれば、追ってこない。


相手を怒らせ、背中に牙が届く寸前の距離を保ったまま、狭い通路まで引き込む。


隊長は、それを自分で引き受けている。


そこだけは、エマも認めていた。


――責任は、ちゃんと背負う人なんだよな。


だから厄介なのだ。


嫌いになりきれない。


やがて、奥から低い唸り声が聞こえた。


次の瞬間、隊長が通路の向こうから駆け戻ってくる。その背後に、獣型の魔物が二体。


「来るぞ!」


副隊長の声が飛ぶ。


隊長が狭い通路へ魔物を引き込む。


一体目が牙を剥き、飛びかかった。


「今だ!」


左右の影から前衛が出た。


剣が走り、槍が突き込まれる。弓兵が後方から矢を放つ。


エマはすぐに動いた。


「矢、次!」


後列の弓兵に矢束を投げる。


「助かる!」


別の場所で、前衛の一人が腕を切られた。


エマは身を低くして走り寄り、ポーションを投げ渡す。


「飲むな、傷にかけて! まだ動ける!」


「了解!」


浅い傷なら、ポーションをかけて動ける状態を保てばいい。足や腕に支障が出るなら、薬草を当てて固定する。血が止まらないなら、スクロールを切るしかない。


そして命に届く傷なら、数を惜しむ理由はない。


エマはそう決めていた。


戦闘は順調だった。


隊長が誘い、副隊長が挟撃を制御する。前衛も、さっきよりは動きが合っている。


四階層より魔物は強い。


だが、素材の質もいい。


一体倒すたび、エマはすぐに屈み込んだ。倒した魔物の口元を開き、牙の欠けを確かめる。爪は泥を落として根元を見る。皮は傷が深すぎれば価値が落ちるため、刃を入れる場所を選ばなければならない。


戦闘が終わった瞬間から、素材は報酬になるか、ただの重荷になるかに分かれる。


「牙は使えます。皮は半分。爪も取れます」


「素材回収、今やるのかよ!」


前衛のカイルが、息を切らしながら言った。


「今やらないと傷みます!」


「ほんと忙しいな!」


「サポーターですので!」


エマはそう返しながら、すぐ次の補給へ走った。


何度か危ない瞬間はあったものの、隊は崩れず、収穫もそこそこ順調に増えていた。このままなら予定を取り戻せるかもしれないと思いかけた時、地面が低く震えた。


岩が擦れるような重い音が遠くで鳴り、続いて壁の奥から振動が響く。エマは手を止めた。


「……待って」


誰もすぐには反応しなかった。


次の瞬間、通路の奥の壁が砕けた。


轟音とともに、巨大な腕が突き出される。


石を寄せ集めたような巨体。目に当たる部分には、鈍い魔力の光が灯っていた。


ゴーレム。


「散れ!」


隊長が叫んだ。


だが、遅い。


ゴーレムの腕が横薙ぎに振るわれた。


カイルが避けようとした。剣の腹と腕当てで受け流そうとしたのだろう。


けれど、受け流せる重さではなかった。


鈍い音。


体が宙に浮いた。


「っ――!」


カイルの体が、通路脇の崩れた足場を越え、岩棚の上に叩きつけられた。


さらにそこから落ちる。


下は硬い石床。


頭からではない。


それでも、この高さからまともに落ちれば、ただでは済まない。


一瞬、全員の視線がそちらへ向いた。


エマの体は、考えるより先に動いていた。


――間に合わない。


足では間に合わない。


だったら。


エマは背嚢を肩から引き剥がした。スクロールも薬草も、予備の布や食料も詰まった重い荷を両腕で掴み、落下地点へ向けて全力で投げた。


「届けっ!」


背嚢が石床を滑る。


同時に、エマは手元の布束を引き抜き、広げるように投げた。


布と紙束が地面に散る。


直後、カイルの体がそこへ落ちた。


背嚢が潰れ、布と紙束が衝撃を殺す。


それでも、受け止めきれない。


肋骨のあたりを強く打ったのか、カイルは声にならない音を漏らした。口の端から血がこぼれる。


まずい。


呼吸が浅い。


エマの背筋が冷えた。


その一瞬だけ、音が消えた。


昔の戦場が、目の奥をかすめる。


血の匂い。間に合わなかった手。冷たくなっていく指先。


誰かが言った。


仕方なかった、と。


違う。


仕方なくなんかない。


間に合わなかっただけだ。


自分が、間に合わせられなかっただけだ。


「エマ!」


誰かが叫んだ。


エマは我に返り、駆け出していた。


ゴーレムの足元を縫うように走る。砕けた石が飛び、頬をかすめた。


それでも止まらない。


「どいて!」


カイルのそばへ滑り込むと、血の匂いが鼻を突いた。


呼吸が浅い。内側をやっている。


考えるな。


まず息を確かめる。血を押さえる。胴を動かしすぎず、ここから引きずり出す。


順番を間違えれば、助けるはずの手で殺す。


エマは散らばったスクロールを掴み、カイルの肋骨の上に押し当てた。


一枚では足りない。


もう一枚。


さらに、もう一枚。


「ここで惜しむな」


自分に言い聞かせる。


スクロールが淡く光り、傷を塞ごうと魔力が走る。


カイルが苦しそうに身をよじった。


「動かないで!」


エマは声を荒げた。


「息だけして! 今はそれだけでいい!」


普段の軽さはなかった。


その声に、カイルの体がびくりと止まる。


エマはすぐに肩口を掴み、体を引きずった。


「副隊長! 右、空けて!」


副隊長が即座に反応する。


「前衛、右を空けろ! 隊長、十秒稼げ!」


隊長がゴーレムの前へ踏み込む。


「任せろ!」


ゴーレムの拳が振り下ろされる。


隊長は紙一重で避け、壁際へ誘導した。


副隊長が槍を構え、ニナが短剣を手に低く走る。弓兵は魔力光の走る胴へ矢を放った。


エマはカイルを引きずる。鎧と装備の重さに呼吸が乱れ、血で手が滑っても、掴んだ肩口は離さなかった。


――死なせない。


私がいる現場で、それはない。


絶対に。


「こっち!」


エマはカイルの体を引きずりながら叫んだ。


「布! 固定具! 残ってるスクロールもこっちに投げて!」


ニナが弾かれたように荷物へ走った。


何を取ればいいのか、一瞬迷う顔をする。それでもエマの声に従い、指定された袋を掴んで放る。


エマは片手で袋を受け取り、カイルのそばへ膝をついた。


カイルは肋骨のあたりを押さえ、声にならない声を漏らしていた。唇の端から、赤い血が滲んでいる。


「吐血あり。呼吸が浅い。飲ませたら詰まる」


迷っている暇はない。


エマはスクロールをもう一枚、カイルの肋骨の上に押し当てた。


淡い光が傷を包む。


足りない。


もう一枚。


「効いて。お願いだから効いて」


スクロールを重ねるたびに光が強くなる。


カイルは背を大きく跳ねさせ、苦しげに息を吐いた。


「動かないで」


エマは布を引き裂き、胴を固定した。呼吸を妨げるほど締めてはいけないが、緩ければ折れた骨が動いてしまう。指先の震えをこらえ、巻く力を加減した。


血が止まっているか。息が続いているか。折れた骨が余計に動いていないか。スクロールの光が、必要な場所へ届いているか。


そして、声は届くか。


何度も見て、何度も判断を間違えかけて、それでも救護の現場で覚えてきたことだった。


背後では、まだゴーレムの重い足音が響いている。


隊長が囮になり、副隊長が前衛を立て直そうとしている声が聞こえた。


「エマ! こっちは長く持たない!」


副隊長の声に、エマは返事をしなかった。今、目を離せばカイルが落ちる。苦しげに浅く上下する肩を見つめる。


まだ、生きている。


エマは血のついた手で、カイルの頬を軽く叩いた。


「聞こえる? 死なないで」


カイルの目がかすかに動く。


「帰るよ。全員で。だから、ここで落ちないで」


もう一枚、スクロールを使う。


光が包帯の下に染み込んでいく。呼吸が、かすかに深くなった。


エマはそこでようやく、肩の力を抜いた。


まだ油断はできない。


でも、今すぐ死ぬ状態ではない。


なら、次だ。


エマが前を見ると、咆哮するゴーレムに前衛が押され、陣形が崩れかけていた。このままでは、もう一人やられる。


エマは落ちていた剣を拾い上げた。


「エマさん!?」


ニナが叫ぶ。


「使うのは私じゃない」


柄の鍔へ、荷を固定する短い革紐を回す。


ゴーレムの胴には亀裂があった。壁際へ誘導された時、自分で石壁へぶつけた跡だ。奥で鈍い光が揺れている。


核。


刃で斬るには狭い。


だが、楔なら入る。


「副隊長! 左腕を止めて! 胴の亀裂を開きます!」


副隊長は一度だけ亀裂を見た。


「左腕を潰せ! ニナ、剣を受け取れ!」


エマは剣を床へ滑らせた。


ニナが低く走り、柄を拾う。斬りかからない。隊長が正面から注意を引き、副隊長の槍が左の関節へ入った瞬間、亀裂へ刃を横向きに打ち込んだ。


剣が石に噛む。


革紐の端は、エマの手に残っていた。


「そのまま!」


エマは近くの柱跡へ紐を回した。腕だけで引かない。柱を支点にし、背と脚で荷重をかける。


軋む革紐をエマが引き、ニナが柄を押し下げると、亀裂が指一本ぶん開いた。


「核が見えた!」


弓兵の矢が入った。


一射目は石に弾かれる。


隊長が剣の腹で楔を叩く。亀裂がもう一段広がった。


二射目が、奥の光を射抜いた。


ゴーレムの体内で光が弾ける。


石の巨体が震え、暴れた腕が壁を砕いた。ニナは剣を捨てて退き、エマも紐を離してカイルの上へ身を伏せる。


直後、魔力の光が消え、巨体が膝から崩れ落ちた。


石片が床に散らばる。


しばらく、誰も声を出せなかった。


荒い息だけが、通路に響いている。


エマは床に片膝をついたまま、肩で息をしていた。


手が震えていた。


怒っているのか、怖かったのか、助かったと思っているのか、自分でも区別がつかなかった。


ただ、体の奥だけが熱い。


「エマさん!」


ニナが駆け寄ろうとする。


エマは、それを手で制した。


「負傷者を先に見て」


短く言う。


「カイルを運べる状態にする」


ニナは一瞬言葉を失い、それから頷いた。


エマは立ち上がり、ふらつきながらカイルの脇へ回った。


カイルの呼吸はまだ浅かったが、先ほどよりは安定していた。


エマは膝をつき、血で濡れた口元を拭う。


「吐血は……止まってる」


スクロールの光は、まだ薄く残っていた。


応急処置は効いている。


だが、安心できる状態ではない。


エマはカイルの肋骨の上にそっと手を当て、呼吸の浅さと骨の違和感を確かめた。


「肋骨は、たぶん折れてる。肺は……ぎりぎり」


エマは残りのスクロールへ手を伸ばした。


一枚、追加する。


一瞬、指が止まった。


残りは少ない。


ここで使えば、帰路の余裕はさらに削れる。


けれど、惜しんで死なせたら何のための物資だ。


「使う」


エマの声は強かった。


スクロールをカイルの包帯へ重ねる。


淡い光が、再び傷を包み込んだ。


カイルの表情が、ほんの少し緩んだ。エマはそこで初めて、床に座り込みそうになるのをこらえた。


隊長が近づいてきた。その顔には、さっきまでとは違う緊張が残っている。


「……助かった」


エマは返事をしなかった。


隊長は続ける。


「今の判断がなければ、死んでいた」


「そうですね」


エマの声は、冷たかった。


自分でも驚くほど。


隊長が言葉を詰まらせる。


エマはカイルの呼吸を見たまま、低く言った。


「物資は減りました」


「……ああ」


「でも、使わなかったら死んでました」


「分かっている」


「本当に?」


エマは隊長を見た。


その目に、抑えきれない感情が滲んでいた。


「本当に、分かってますか?」


周囲の空気が固まる。


エマは自分でも、言い過ぎだと分かっていた。


隊長も危険な場所にいた。


分かっているのに、止まらなかった。


「スクロールの数がどうとか、消費を抑えられたところがなかったかとか、そういう話じゃないんですよ」


エマの声が震える。


「死ぬんです。判断ひとつで。遅れたら、迷ったら、惜しんだら」


カイルが苦しそうに息をする。


エマは奥歯を噛んだ。


「私は、死なせたくないんです」


また目の前で誰かの息が浅くなるのが怖くて、エマはカイルへ視線を落とした。


「……すみません。今のは、言い過ぎました」


隊長はしばらく黙っていた。


そして、静かに言った。


「いや」


短い言葉だった。


「言わせたのは、俺だ」


エマは何も返せなかった。


副隊長が場を切るように声を上げる。


「負傷者を運ぶ準備をする。素材は最低限を手分けして回収。撤退経路を確認するぞ」


隊長が頷く。


「撤退する」


その判断は早かった。


「五階層での狩りはここまでだ。全員で帰る」


それで、エマの肩から力が抜けた。


エマは血のついた手で、壊れた背嚢を拾い上げた。中では潰れた薬草と砕けた食料が混じり合い、布が血を吸っていた。


でも、役に立った。


人一人を、冷たい地べたの上に叩きつけられたままにせずに済んだ。


それだけで十分だった。


ニナがそっと近づいてくる。


「エマさん」


「なに?」


「服、また汚れてますよ」


エマは自分の服を見下ろした。


血が袖に染み、膝には土がこびりついていた。薬草の汁まで前身頃に擦れて、服はもう元の色が見えない。


こないだの肉汁なんて、かわいいものだった。


エマはしばらく服を見下ろし、力なく笑った。


「……もう、今日は服ごと酒に浸かりたい」


ニナが小さく笑う。


オスカーがいたら、きっとくだらないことを言っただろう。


エマはそんなことを思いながら、カイルの容体をもう一度確認した。


まだ油断はできない。


でも、生きている。


隊長が撤退の指示を出す。副隊長が隊列を組み直す。


前衛は負傷者を守るように周囲へ散った。


エマは壊れた背嚢を背負い直し、残ったスクロールを数える。


少ない。


かなり少ない。


それでも、帰るだけなら足りる。


足りさせる。


エマはカイルの顔を見て、静かに呟いた。


「帰るよ」


誰に言うでもなく。


自分に言い聞かせるように。


「全員で」


五階層の闇は、まだ深く口を開けていた。


だが一行は、その奥へは進まない。


背を向ける。


生きて帰るために。


そしてエマは、誰よりも忙しく、誰よりも静かに、撤退の準備を始めた。




前書きの設定情報を修正しました。

本作品は未完成な部分や表現に納得できない箇所が随所にあります。なので、随時修正します。

シナリオや展開を変えるつもりはありません。

ご容赦ください。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。