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異世界の魔法使い暗殺者  作者: 日神ラーメン
第2章:魔法使い専門の暗殺学校
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第8節:眠れる者

「……そんな、馬鹿な。」


俺は何度も手の中の青いカードを見返した。病室の蛍光灯を受けて、カードは静かに青白く輝いている。表面に刻まれた見慣れない文字。中央には、酒場で俺に身分証を見せた女将の顔写真。


夢じゃない。あの酒場は、本当に存在した。


「どうしました?」


看護師が不思議そうな顔でこちらを覗き込む。


「あ、いえ……。」


慌ててカードを握り締める。これを見せても信じてもらえるはずがない。異世界の酒場で手に入れた身分証です、などと言えば、そのまま精神科へ案内されるだけだろう。


「気分はどうですか?」


「少し頭が重いですが、大丈夫です。」


看護師は安心したように微笑み、カルテへ何かを書き込んだ。


「検査結果は異常ありませんでした。一時的な意識消失でしょう。今日は安静にしてくださいね。」


俺は黙って頷いた。だが、心の中は嵐だった。


あの裁判。牢屋で出会った老人。


魔法使い。酒場の女将。


すべて夢ではなかった。そう考えるしか、このカードの存在を説明できない。



翌日の昼、退院許可が下りた。病院を出ると、真夏の熱気が全身を包み込む。


車のクラクション。信号機の電子音。


コンビニから流れる店内放送。見慣れた日本の日常だった。


(帰ってきた……。)


それなのに、不思議と安心できない。自宅に帰るとポケットの中へ手を入れる。


カードはまだそこにあった。冷たい感触が指先へ伝わる。


自宅へ戻ると、靴も脱ぎ散らかしたまま机へ向かった。カードを慎重に置く。改めて見ると、紙でも金属でもない奇妙な素材だった。


薄い。だが、軽く曲げても折れない。爪で引っ掻いても傷一つ付かない。


「一体、何なんだ……。」


スマートフォンで写真を撮ろうとする。しかし、画面にはカードが映らなかった。


机だけが映っている。


「あれ?」


何度撮り直しても結果は同じだった。肉眼では確かに見える。

それなのにカメラには映らない。背筋がぞくりとした。


今度は翻訳アプリを起動し、カードへ向ける。画面には『文字を認識できません』と表示されるだけだった。


「異世界の文字だからか……。」


独り言を漏らした、その瞬間だった。カードが淡く光る。


「……!」


部屋の照明が一瞬だけ明滅した。


テレビの電源が落ちる。エアコンが止まり、冷房の風が消えた。電子レンジの時計まで真っ暗になる。


「停電か?」


窓の外を見る。向かいのマンションは何事もなく明かりが点いている。


俺の部屋だけだった。カードの光は次第に強くなり、中央に刻まれた紋章がゆっくりと回転を始める。


カチ……。


カチ……。


歯車が噛み合うような音が響く。


(何が起きたんだ)


一瞬、何が起きたのか理解できなかった。


俺は、床に寝転んだ。


その時だった、またあの胸の痛みが起きた。

胸に何本の釘が指すような痛みだ。


(おいおい、またかよ)

(やべえ、また意識が薄れていく、、、、)


目を覚ますと、あの酒場に居た。


また、女がカウンターに立っていた。


「おいおい、ここは酒場だよ。寝ないでおくれ。」


(えっ)


俺は、びっくりして転げ落ちた。


女は、それを見て爆笑した。


「あっはっはっは。何だい、その無様な姿は」


俺は、驚きのあまり腰を抜かした。女は、顎が外れるくらい爆笑した。


「そんなに爆笑するなよ!!」


女は、机を叩きながら笑っていた。


「まあいいわ。アンタ、半日くらい寝てたわよ」

「起こそうと思ったけど、ぐっすりと寝ていたから起こさなかったのよ」


(は?)


そう、俺は寝ると現実世界に戻ってしまうのであった。



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― 新着の感想 ―
半日、客を放置しておく酒場がダイナミックですね。女将さんが豪快な人柄であることが伺い知れて面白かった。現実世界と無意識に行き来してしまうというのも、斬新で面白かったです。今回も楽しく読ませて頂きました…
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