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この世界、締切よりマシだと思ったのに  作者: アンドリュー・チェン


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第三十七章: コマ一、初心者.

ブックマーク、本当にありがとうございます!

海外から日本の読者の皆さまへ物語を届けられることを、とても嬉しく思っています。

皆さまの応援が、私の創作の力になっています。

これからもエルスベスの旅をよろしくお願いいたします!

私は早くに目を覚ました。


宿屋の部屋は、小さかった。ベッド、テーブル、そして通りを見下ろす窓。ここの光は、違っていた。尖塔の柔らかな水晶の輝きではなく、もっと厳しく、もっと現実的なもの。実際の太陽から来る、あの種類の朝の光。


私は、しばらく動かずに横たわり、それを心に落ち着けた。私は、妖精界にはいない。私は、**世界**にいる。部屋は、木と埃の匂いがし、誰か別の存在の、かすかな痕跡がした。


静かに起きた。カエデは、もう起きていた。隣の部屋で彼女が動く音が聞こえる。努力せずに静かにいることを学んだ者の、柔らかな音。


装備を整えた。


服を着て、首飾りを付けた。妖精王が私を送る前にくれたもの。簡素な。銀色の。留め金に一つ星が嵌め込まれている。首から下がっている。


準備は、できていた。


カエデが、戸口に現れた。もう服を着て、髪を後ろに束ねている。彼女は、私を見た。小さな微笑みが、その顔を横切った。


**「初めての本当の仕事の準備はできてる?」** 彼女は尋ねた。


うなずいた。


心の中では、緊張していた。


しかし、それを表に出さなかった。


私たちは、宿屋を出て、朝の光の中へ歩いていった。町は、私たちの周りで目覚めつつあった。商人たちが露店を開け、冒険者たちがギルドへ向かい、私のずっと前からここにあり、私のずっと後にもここにあるだろう場所の、ゆっくりとしたハミング。


最初の仕事が何か、わからなかった。世界が私に何を求めるのか、わからなかった。


しかし、私は、ここにいる。準備はできている。


今は、それで十分だった。


---


冒険者ギルドは、前日の覚えよりも、賑やかだった。


中は、動きで生きていた。あらゆる種類の冒険者たちが、ホールを満たし、その声が絶え間ないハミングに重なり合っていた。あらゆる形状の武器が、テーブルにもたれかかっていた。あらゆる素材の鎧が、光を捉えていた。尖塔の記録でしか垣間見たことのない種族たちが、群衆の中を動いていた。ここでは、私の村での人間と同じくらい、普通に。


依頼板が、壁に沿って並んでいた。様々な大きさと色の紙で、覆われている。空気は、古い木、革、そして人々が働き、休み、計画するために来る場所の、特別な質の匂いがした。


カエデが、私の隣で微笑んだ。**「ここから、あなたの本当の学びが始まるの」**


私は、敷居に立ち、それを吸収した。妖精界は、広大で、異質で、美しかった。しかし、これは、別の何かだった。この人生を選んだ人々の集まり。ここにいたいから、ここに来た人々。


**バッジ**に気づいた。


それらは、ベルトから、首から、鎧の縁から、下がっていた。異なる色、異なる素材。小さく、控えめだが、明らかに重要。


一つを指さした。**「あの記号は、何を意味するの?」**


カエデは、私の視線を追った。**「ギルドの階級よ」**


彼女は、私を群衆から離れた、ホールの静かな隅へと導いた。**「ギルドは、文字の代わりに、金属と素材を使うの。金属は、**経験による熟練**を表す」**


彼女は、説明し始めた。


**Cu**、初心者。基本的な生存を学ぶ。地域の用事、単純な魔獣の制御。経験を必要としない、あの種類の仕事。私は、Cuのバッジをつけた若い女性が、カウンターで依頼を受け取るのを見た。その動きは、不確かだった。


**Fe**、信頼できる冒険者。護衛任務。巡回。小型魔獣の駆除。Feのバッジをつけた男が、依頼板の前に立ち、何度もやってきた者のたやすさで、紙をスキャンしていた。


**Ag**、町から信頼されている。ダンジョン探索。保護依頼。調査任務。Agのバッジをつけた小さな集団が、低い声で何かを話し合っていた。その姿勢は、リラックスしているが、警戒していた。


**Au**、熟練冒険者。地域での評判。小規模なチームを指揮。危険な魔獣を扱う。私は、部屋の向こう側にAuのバッジを見つけた。何年もこれをやってきた者の、特別な無駄のなさで動く女性の鎧に、取り付けられていた。


**Pt**、全国的にも認識されている。軍レベルの任務を任される。ギルドの作戦を指揮することが多い。私は、Ptのバッジは、見かけなかった。


**Cy**、王国中で知られた英雄。その名は、広く知られている。常に任務に就いているため、ギルドホール内で見かけることは、稀。彼らが存在するのか、疑問に思った。カエデは、いると言った。


**Mtl**、最高の通常ギルド階級。冒険者の中の伝説。ほんの一握りしか存在しない。王国でさえ、その助力を求める。カエデは、壁の小さなプレートを指さした。そこには、名前が列挙されていた。そのバッジを身に着けている者は、部屋にはいなかった。


私は、彼女を見た。**「力だけでは、階級は上がらないの?」**


彼女は、微笑んだ。**「そうじゃない」** 彼女は、ギルドホールの周り、日常のルーティンをこなす人々に手をかざした。**「**信頼**よ。ギルドに、町に、あなたに依存する人々に、自分を証明しなければならない。それには、時間がかかる。何度も何度も、現れ続けること」**


私は、バッジをもう一度見た。**Cu、Fe、Ag、Au、Pt、Cy、Mtl。**


記号を認識した。少なくとも最初の五つは、別の人生、別の世界から。化学元素が、段階的に配置されている。


**「なぜ、別の世界が、これらの化学記号を使うんだ?」** 私は言った。


カエデは、首をかしげた。**「化学……何?」**


すぐに首を振った。**「気にしないで」**


彼女は、詰め寄らなかった。ただ待った。彼女が示したものを、私が吸収できるように。


私は、ギルドホールを再び見た。騒音。動き。信頼と忍耐の物語を語る、バッジたち。


私は、**Cu**。初心者。それは、称号ではなかった。それは、**始まり**だった。


始める準備は、できていた。


---


カエデは、私を依頼板へと導いた。


彼女は、しばらく紙をスキャンし、それから、何度もこれをやってきた者のたやすさで、一枚を引き抜いた。彼女は、それを私に手渡した。


**Cu依頼**

**東の森近くの家畜の消失を調査せよ。**

**原因を特定せよ。**

**調査結果を報告せよ。**


二度、読んだ。


**「それだけ?」**


カエデは、笑った。**「誰でも、どこかから始めるの」**


私は、紙をもう一度見た。家畜の消失。簡単な調査。魔道書や、人形や、何年もかけて学んだ魔法のどれも必要としないもの。


しかし、カエデは、もうドアの方へ歩いていた。**「来る?」**


依頼書を帯に挟み、後に続いた。


---


森は、平穏だった。


緊張、警戒、妖精界の端の密林で学んだあの種類の注意を、予期していた。しかし、これは、違った。鳥は、さえずる。川は、流れる。風は、脅かされていない場所の特別な質で、葉の間を動く。


その時、突然、**残響振動**が、私の意識的な命令なしに開いた。


地面の下で、小さな生き物たちが動いていた。根、昆虫、闇の中で生きるものたちの、ゆっくりとした脈動。私は、それらをかすかなリズムとして感じた。脅威ではなく、**存在**の質。


柵のところで止まった。


壊れている。砕けている。木は古いが、破損は最近のもの。しゃがみ込み、掌を地面に押し付けた。


**残響視**が、開いた。


残り続ける恐怖。人間ではない。**動物**。狩られた獲物の、特別な質。ここを通り過ぎた何かの匂い。狼ではなく、熊でもなく、この森に属するものではない何か。


立ち上がった。カエデが、私を見ていた。


**「何?」**


**「狼よりも強い何かが、ここを通り過ぎた」** 私は言った。


彼女は、どうやって知ったのか、問わなかった。ただ、うなずいた。


**「なら、追いかけよう」**


---


叫び声が、森に響いた。


カエデは、即座に方向を変えた。その身体は、私が何を聞いたか理解する前に、もう動いていた。ためらわずに、後に続いた。


私たちは、木々を突き破り、小さな開けた場所に飛び出した。


三人の若い冒険者が、がっしりした獣と格闘していた。


一人は、刀で戦っていた。必死にその注意を引きつけようとして。もう一人は、後ろに立ち、かすかな火の玉を投げていたが、それは、その厚い皮膚をほとんど焦がさなかった。三人目は、槍を握りしめて、決して来ない隙を探していた。


彼らは、連携していた。


彼らは、単に、圧倒されていた。


その生き物は、爪を振るうたびに、彼らを後退させた。


私は、開けた場所に、一歩足を踏み入れた。


何かが、私の隣で動いた。


**磁器のインク壺**が、警告なく、空中に現れた。


それは、静かに、私の前で、浮かんでいた。


細いインクの流れが、その縁から溢れた。夜よりも暗く、星明かりの小さな欠片が織り込まれている。


以前とは違い、それは、慌てていなかった。


それは、**目的**を持って動いた。


インクは、私の周りを、一周した。


そして、もう一周。


それは、生きている外套のように、私の肩を流れ、胸と腕へと広がった。見慣れた鎧が、私の周りに形成された。


無重力。

心地よい。

**生きている**。


私は、それを召喚しなかった。

考えることさえしなかった。


インクは、単に、私が戦おうとしていると、決めただけだった。


私は、体を覆う黒青の鎧を、見つめた。


カエデは、私に一瞥をくれるだけだった。


**「自ら出てきたの?」**


**「うん……」**


答える時間は、なかった。


最年少の冒険者が、よろめいた。

彼女の火の呪文が、火花に崩れた。

魔獣の注意が、瞬時に切り替わった。

その巨大な体が、彼女に向かって、突進した。


彼女は、凍りついた。

遠すぎる。

遅すぎる。


考えなかった。


**「行け」**


人形が、私の脇から跳んだ。


それは、不可能な速さで、開けた場所を横切った。


魔獣の爪が、振り下ろされた。


本能が、本能に応えた。


私の体を包むインクが、私から離れて、急に動いた。


それは、一筋の黒いリボンとなって、人形の後を追った。


爪が当たる前に、インクは、人形の小さな枠組みの周りに巻き付いた。


鎧が、その縫い目のある体に、花開いた。


**カーン!**


衝撃が、開けた場所に響いた。


魔獣の爪は、硬化したインクの上を、無害に擦り過ぎた。


人形は、微動だにしなかった。


沈黙が、続いた。


全員が、凝視した。


私も含めて。


鎧は……


私を守ったのではなかった。


それは、他の誰かを守ることを、選んだのだ。


人形は、動いた。インクは、私の命令なしに、応答した。


私は、前に手を伸ばし、インクは、応えた。私が召喚したからではない。私が意志したからではない。私が**必要**としたからだ。


魔獣は、戸惑って後退した。人形は、その場所を守った。


前に進み出た。


人形のボタンの目が、光を捉えた。


自分が何をしたのか、わからなかった。


しかし、それが**効いた**ことは、わかった。


---


カエデは、魔獣が立て直す前に、動いた。


彼女の刃が、その注意を引き、三人の若い冒険者たちから、それを引き離した。魔獣は、向きを変えた。その焦点は、人形から、新しい脅威へと移った。カエデは、より速く、より正確だった。その打撃は、計算され、その動きは、無駄がなかった。


私は、自分の集中を取り戻した。


人形は、私と魔獣の間に立っていた。その姿は、まだ鎧をまとい、そのボタンの目は、その生き物に固定されていた。Gペンを召喚し、素早く火の円を描き、次に空気、そして再び火。魔法は、練習した通り、訓練した通り、器から流れた。


刀使いは、体勢を立て直し、攻撃に加わった。槍使いは、自分のリズムを見つけた。魔術師は、自分を落ち着かせ、次の呪文は、前よりも強力だった。


魔獣は、倒れた。


私たちは、開けた場所に立ち、息を切らしていた。インクは、私の肩の周りで柔らかくなった。人形は、動かずにいた。その鎧は、待機状態へと戻っていった。


三人の若い冒険者たちは、私たちを見た。その目は、見開かれていた。刀使いが、前に進み出た。その声は、感謝で荒かった。


**「ありがとうございます。私たちは、もう……」** 彼女は、止まり、首を振った。**「ありがとうございます」**


そのうちの一人、魔術師が、人形を見た。その目は、その小さな姿、その周りにまだ漂うインクの残り香に、留まった。


**「あれは、どんな魔法ですか?」**


私は、人形を見た。それに巻き付いたインクを。ちょうど間に合って形成された鎧を。答えは、なかった。


**「私自身も、まだ、解明しようとしているところです」** 私は言った。


彼女は、その答えを受け入れた。その表情には、好奇心が残っていたが。


私たちは、町へ向かって歩き始めた。三人の若い冒険者たちは、後ろに従い、安堵した口調で、互いに話し合っていた。カエデは、私の隣を歩き、その視線は、人形に向けられていた。


**「あなたの人形」** 彼女は、静かにささやいた。**「それを包み込む鎧。あれは、意図的だったの?」**


すぐには答えなかった。鎧は、今は消えていた。インクは、それが来た場所へと戻っていた。しかし、私は、それを見た。感じた。


**「いいえ」** 私は言った。**「違います」**


カエデは、詰め寄らなかった。ただ、うなずいた。まるで、それで納得したかのように。


私は、何度も人形を見た。そのボタンの目が、光を捉えた。その歪んだ笑みは、まだ動かない。


*「どうやって、あれをやったんだ?」*


わからなかった。


しかし、知りたかった。


鎧は、私の命令なしに、現れた。

インクは、自分が持っていると気づかなかった必要に、応えた。

人形は、私が指示できるよりも、速く動いた。


私は、**初心者**だった。


人形を見た。


インクは、それを守った。


しかし、それは、本当に鎧ではなかった。


それは、**私の**ものを、借りているだけだった。


昔、漫画が新しい章に入るたびに、私は主人公を、デザインし直した。


新しい服。

新しい武器。

新しいシルエット。


読者は、キャラクターが成長するのを見るのが、好きだった。


微笑んだ。


**「どうやら、君も、デザインし直す時期のようだ」**


人形は、何も言わなかった。


しかし、そのボタンの目は、午後の光を捉えた。


私は、脇の魔道書に手を置いた。


新しい章には、新しいデザインが、ふさわしい。


描き始める時だ。

エルスベスは、人形のために何を描くのか...


次回、同じ時間に、同じ場所で。

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