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第九十三話 制圧を破る者たち


 「みんな!」


道春が


大きく声を上げる


「合わせろよ!」


二組


四組


五組――


三つの組が


一年一組の布陣を破るため


一時的に手を組んだ


その中心にいるのは


雅


澪


道秋


道春


四人


「火力を一つに集める!」


「一組の結界ごと吹き飛ばすぞ!」


「分かりました!」


雅が札を構える


澪も


大きく息を吸う


「行きます!」


道秋


道春


二人も


霊力を高める


周囲の班員たちも


次々と札を構えた


「《火球の術》!」


「《雷球の術》!」


「合わせろ!」


ボッ!


バチッ!


ボボボボッ!!


無数の火球


雷球


それらが


中央へ集まっていく


さらに――


澪が


両手を前へ


「まとめます!」


巨大な火球へ


雷が纏わりつく


雅も


そこへ霊力を重ねる


道秋


道春


そして班員たちの術まで――


次々と吸収


ゴォォォォォ!!


「うわ……」


一年一組


ひなたが


思わず見上げる


先ほどより――


明らかに大きい


巨大な雷火球


炎の表面を


無数の雷が走っている


「与一!」


誠が叫ぶ


「来るぞ!」


「分かってる!」


そして――


「行けぇ!!」


巨大雷火球が


放たれた


ゴォォォォォ!!


地面を照らしながら


一直線に――


与一たちへ迫る


◇


黒曜の上


与一は


迫ってくる雷火球を見て――


「…………」


苦笑


「ちょっと」


「ひどすぎない?」


遠くから


澪の声


「さっき水龍をぶっ放した人に!」


「言われたくありません!!」


「それはそう!」


与一が笑う


だが――


すぐに表情を変えた


「でも」


巨大雷火球を見る


「こりゃあ――」


「まずいなぁ」


「与一!」


剛が叫ぶ


「《激流水神波》か!?」


「いや」


与一は


首を横へ振る


「これ」


「晴真と道満の言った通りになった」


「え?」


与一は


以前の会話を思い出す


誠の《結界棒》


雷壁


進路制限


その連携を


晴真と道満へ見せた時


与一は


二人へ聞いた


――もし敵だったら


――どうやって破る?


二人は


ほとんど同時に答えた


――巨大な術か技で


――結界ごとぶっ壊す


さらに――


道満は続けた


――ただ壊すだけじゃない


――破壊した瞬間に距離を詰める


晴真も


笑いながら頷いた


――うん


――僕もそうする!


「やっぱり」


与一が呟く


「こうなったか」


誠が


巨大雷火球を見る


「じゃあ」


「アイツらの狙いは――」


「結界を破壊することだけじゃない」


与一は


後方を見る


二組


四組


五組


三つの組が


巨大術を作るため


一箇所へ集まっている


そして――


さらに後方


そこだけ


妙に距離を取っている集団


七曲響


根郷時雨


青菅旭


朝倉霞


寒風白夜


三組の忍びたち


「破壊に紛れて」


「距離を詰める」


与一の目が細くなる


「ってことは――」


にやっ


「距離を詰める役は」


「三組の忍び連中だよな」


「どうする?」


紗月が聞く


与一は


矢筒へ手を伸ばした


「だから――」


一本


特殊な矢を抜く


「こっちも」


「用意してある」


誠が


その矢を見て笑う


「ああ」


「アレか!」


「道満に頼んで」


与一が弓へ番える


「面倒くさい術式」


「書いてもらったからね!」


◇


巨大雷火球


目前


「行くぞ!」


与一


誠


ひなた


三人が――


同時に矢を放つ


ヒュンッ!!


三本の《結界棒》


だが


狙ったのは


雷火球ではない


一本――右


一本――左


一本――前方


三本の矢が


大きな三角形を描くように


地面へ突き刺さる


「術式――」


与一が


指を立てる


「発動!」


ブゥゥゥン!!


三本の《結界棒》が


光で結ばれる


巨大な三角形


そこから


結界面が立ち上がり――


上空の一点へ収束


巨大な


三角錐


その瞬間


道満が書き込んだ術式が


一斉に輝いた


《封術結界》


巨大雷火球が――


結界へ激突


ドォォォォン!!


「押し切れ!」


道春が叫ぶ


雷火球が


結界を破ろうとする


だが――


「……あれ?」


雅が


異変に気づく


雷が


消えていく


炎が


小さくなる


雷火球を構成していた術式そのものが――


崩れている


「術が……!」


澪が目を見開く


巨大雷火球は


三角錐の結界へ触れた部分から


次々と霊力の結びつきを失い――


シュゥゥゥ……


消滅した


「嘘!?」


そして


《結界棒》は――


そのまま


地面に刺さっている


三角錐の内部


そこにいたのは――


巨大術を放つため


一箇所へ集まった


二組


四組


五組の生徒たち


「…………」


道秋が


辺りを見る


右


左


前


そして上


完全に――


囲まれている


「やられた……」


道秋が


顔を引きつらせる


「最初から」


「これが狙いだったんだ」


「え?」


道春が見る


道秋は


地面へ刺さった《結界棒》を見る


「俺たちが協力すれば」


「巨大術を作るために」


「一箇所へ集まる」


「…………!」


雅が


気づく


「そこを――」


澪も


結界を見上げる


「まとめて閉じ込める……!」


◇


「だったら!」


澪が


札を構える


「壊します!」


霊力を流す


「《火球――》」


何も起こらない


「……え?」


雅も


札を構える


「《雷撃の――》」


発動しない


「嘘……」


道春が


霊木の木刀を抜く


「術が駄目なら!」


刃へ霊力を纏わせようとする


だが――


「なっ!?」


霊力が


まとまらない


刃へ集めようとした霊力が


すぐに散ってしまう


道秋が


舌打ち


「くそっ!」


「《封術結界》かよ!」


《封術結界》は


術を消し去る結界ではない


結界内の霊力を乱し


術式として組み上げることを妨げる


そのため


札術


陰陽術


霊力を纏わせる技


どれも


まともに発動できない


ただし


結界そのものを壊すだけなら


術式は必要ない


道秋が


木刀を握った


「術が使えないなら」


「普通に壊せばいい!」


「なるほど!」


霊力は纏わせない


ただ――


物理的に


ガンッ!!


「もう一発!」


ガァン!!


結界棒が


折れた


瞬間――


ブゥン……


三角錐の結界が


消滅


「…………」


雅


ぷるぷる


「もう!」


珍しく


声を荒らげた


「時間を無駄にした!」


「みんな!」


「追いかけるよ!」


前を見る


そして――


「あれ?」


三組が


いない


澪が


遠くを見る


「……もう」


「出遅れましたわ」


◇


一方――


一年一組


「よし!」


与一が


後ろを見る


「かなり離した!」


剛が笑う


「完璧じゃねぇか!」


「いや」


与一の表情が


変わる


「まだ――」


前方


木々の間


そこに――


人影


「……は?」


剛が


目を疑う


一人


二人


三人


四人


七曲響


根郷時雨


青菅旭


寒風白夜


「おい!!」


剛が叫ぶ


「なんでお前ら!」


「前にいるんだよ!」


誠も


思わず叫ぶ


「後ろにいただろうが!」


「っていうか!」


「霊馬より速く走ってるのおかしいだろ!」


「いやぁ……」


響は


肩で息をしている


「めっちゃ疲れたよ」


「響!」


時雨も


息を切らしている


「速すぎだよ!」


旭も


膝へ手をつきそうになりながら


「《鬼神走》使われたら……」


「ついてけないって!」


響が


悪びれず笑う


「追いつかなきゃいけなかったから」


「すまねぇ」


「全然悪いと思ってないだろ!」


だが――


紗月が


すぐ気づく


「待って」


四人


霞がいない


そして――


霊馬もいない


「ああ」


紗月が


理解する


「そういうことね」


「霊馬を運ぶ役を」


「霞がやってるのね!」


響が


指を鳴らす


「正解!」


一度


霊馬から降りる


忍び四人だけで


木々の間を最短距離で駆け抜ける


そして


霞が後方から


霊馬を呼ぶ笛を使い


五頭を誘導してくる


本来なら


霊馬と共に走らなければならない場所でも


忍びだけなら――


道なき場所を


一直線に抜けられる


「つまり――」


響たちは


霊馬を連れて走るのではなく


一度、霊馬を霞に預けた


その間に


忍び四人だけで


木々の間を最短距離で先行する


霊馬は


霞が後方から笛で誘導する


だから


霊馬の速度に合わせて道を選ぶ必要がなく


忍びだけが通れる


道なき最短ルートを抜けられたのだ


「さて」


白夜が


与一を見る


「少し寄っていきなよ」


「与一!」


「悪い」


与一は


即答


「用があるから」


「逃げるのか!」


白夜が叫ぶ


「当たり前だろ!」


与一も叫び返す


「これ競争だぞ!」


「無駄に戦う意味ないだろ!」


「正論!」


響が笑う


「そんなん付き合うの――」


少し考え


「刀也と迅くらいだわ!」


「確かに!」


一年一組まで


思わず頷く


その瞬間――


紗月が


剣を抜く


「与一!」


剛も


槍を構える


誠


ひなたも


弓を構えた


「行って!」


「ここは任せろ!」


「与一!」


誠が叫ぶ


「襷を繋げ!」


与一は


四人を見る


一瞬だけ――


頷く


「任せた!」


黒曜を


前へ出す


「逃がさないよ!」


響が


追おうとした――


その時


森の奥から


ヒヒィィン!!


「来た!」


霞


そして――


五頭の霊馬


「響!」


霞が


笛を振る


「霊馬!」


「ありがとう、霞!」


響が


走りながら


自分の霊馬へ飛び乗る


「待て、与一!」


ドドドドドッ!!


「速っ!」


与一が


振り返る


響の霊馬


なかなかの脚


「これは――」


与一が


少し考える


そして


笑った


「最後の切り札」


弓を構える


「使うしかないか」


黒曜の上


空へ向け――


矢を放つ


一本


二本


三本


さらに――


何本も


何本も


「何してる?」


響が


空を見る


放たれた矢が


遥か頭上で――


光る


そして


無数の水矢へ


分裂


「まさか……」


与一が


弓を下ろす


《満天霊雨》


ザァァァァァァ!!


空から――


雨のように


水矢が降り注いだ


地面へ


次々と突き刺さる


バシャッ!


バシャバシャッ!!


水


水


水


乾いていた道が


一気に濡れる


さらに水矢が降り――


土が


泥へ変わる


「おいおい!」


響が叫ぶ


「何考えてんだよ!」


ズブッ!!


霊馬の脚が


泥へ沈む


「馬場が悪くなるだろ!」


「それが狙いだよ!」


与一が笑う


「くそっ!」


「走りづらい!」


だが――


一頭だけ


違う


黒曜


ザッ


ザッ


ザッ!!


泥濘


柔らかい地面


滑る足場


それでも――


黒曜の脚は


乱れない


力強く


一歩一歩


地面を掴みながら


前へ進む


与一は


黒曜の首筋を軽く叩く


「頼むぞ、黒曜!」


さらに――


加速


◇


観覧席


晴真が


嬉しそうに身を乗り出す


「あっ!」


「やっぱり!」


道満が見る


「何がだ?」


晴真は


黒曜を指差す


「黒曜なら――」


笑う


「道が悪ければ悪いほど」


「差が開いちゃうよね!」


「なるほど」


道満も気づく


《満天霊雨》は


単なる妨害ではない


黒曜の長所を


最大限に活かすための


馬場作り


他の霊馬が


速度を落とすほど――


黒曜は


相対的に速くなる


◇


「くそっ!」


響が


前を見る


黒曜との差が


また開き始める


「これ以上!」


「離されるわけにいかない!」


手印


「《土遁――地表石化の術》!」


ゴゴゴゴッ!!


響の霊馬


その足元


泥濘が――


石へ変わる


「よし!」


だが


石になるのは


響の周囲だけ


本来


《地表石化》は


自分の足場を安定させるための術


道を作る術ではない


だから――


霊馬が進むたび


響は


次々と術をかけ直す


「面倒くせぇ!!」


それでも


速い


少しずつ


少しずつ――


黒曜へ迫る


そして


前方


長い直線


その先――


第三走班


「来た!」


千尋が叫ぶ


「与一!」


秀


学


樹


そして――


襷持ち


江原美鈴


「美鈴!」


与一が叫ぶ


「来て!」


美鈴も


霊馬を走らせる


ラストスパート


黒曜


泥濘にもかかわらず――


さらに加速


響も


《地表石化》を連続で使いながら


追いすがる


「追いつけぇぇ!!」


だが――


あと少し


届かない


与一が


襷を外す


「美鈴!」


「はい!」


二頭が並ぶ


パシッ!!


襷が――


渡った


一年一組


一位


「頼む!」


与一が叫ぶ


美鈴は


襷を握り締める


「任せて!」


その瞬間――


第三走班


千尋


秀


学


樹


美鈴


五人が


一斉に飛び出した


◇


その約――


五馬身後方


「蘭!!」


響が叫ぶ


前方


待っている少女


神門蘭


響が


襷を外す


並走


パシッ!!


襷が


蘭へ渡る


「すまない!」


響が


息を切らしながら笑う


「ここまでしか」


「縮められなかった!」


蘭は


前を見る


一年一組


五馬身


だが――


笑う


「上等です!」


襷を握る


「ここからは――」


「私たちの仕事です!」


霊馬が


大地を蹴る


一組を


追う


その後ろでも――


二組


四組


五組


次々と


襷が渡っていく


第二走――


終了


一年一組は


迅が作った一位を


守り抜いた


だが――


三組は


忍びならではの奇策で


その差を


五馬身まで縮めてきた


そして


次なる戦いへ


一年一組


第三走班


襷持ち――


江原美鈴


千尋


秀


学


樹


五人が得意とするのは


圧倒的な速さでも


巨大な一撃でもない


五人で


一つの術を完成させること


第三走――


《組織力》


美鈴が


後ろを振り返る


追ってくる


神門蘭


そして


各組の第三走班


「みんな!」


美鈴が


前を向く


「ここから――」


四人が


それぞれ


結界柱へ手をかける


「私たちのやり方で」


「守り切るよ!」


「おう!!」


五人が


一斉に


戦場へ駆け出した

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