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第九十二話 第二走――制圧


 第二走――


迅たち第一走班が作ったリードを


死守する


そのため


一年一組第二走班は――


最初から


攻めに出ていた


「誠!」


先頭を走る与一の声


「右二本!」


「了解!」


先崎誠が


騎乗したまま弓を構える


ヒュンッ!


ヒュンッ!


二本の矢が


道の右側へ突き刺さる


続いて――


「ひなた!」


「はい!」


左側


弥富ひなたの矢が


二本


地面へ突き刺さった


その瞬間――


矢に刻まれた術式が光る


ブゥン――


細長い結界が


地面から立ち上がる


《結界棒》


そして――


バチッ!


バチバチバチッ!!


四本の《結界棒》の間を


雷撃が走った


道の左右に――


雷の壁


「来たぞ!」


与一が


後方を見る


追いついてきた他組の生徒たちが


左右へ散開する


だが――


「そこだ!」


雷壁の切れ目


唯一残された


通路


そこへ入った瞬間――


「通さないよ!」


馬渡紗月


剣を振り抜く


斬撃が


道を横切る


「うわっ!」


反対側からは――


「おらぁ!」


萩山剛


槍の一撃


ドンッ!!


「くっ!」


逃げれば紗月


逆へ行けば剛


立ち止まれば――


ヒュンッ!!


一本の矢が


頬すれすれを通過する


「……!」


与一


黒曜を走らせながら


振り返ることすらほとんどない


それでも――


矢は


正確に飛んでくる


一人が抜けようとすれば


その進路へ一本


二人なら


二人の間へ一本


霊馬の速度を落としたいなら


足元へ


進路を変えたいなら


顔の横へ


決して


無駄に撃たない


一射ごとに


相手を動かしていく


「右へ追い込め!」


「了解!」


「剛、そこ!」


「おう!」


「紗月は左!」


「任せて!」


与一の指示に


四人が即座に応える


倒す必要はない


止める必要すらない


進ませたくない場所へ


行かせなければいい


第二走班の役割――


制圧


迅たちが作ったリードを


守り抜くため


道そのものを


一年一組のものへ変えていた


◇


その光景を


少し離れた後方から見ていた


三組


七曲響が


ぽつり


「こりゃあ……」


苦笑する


「駄目だな」


「おいおい!」


根郷時雨が


すぐに突っ込む


「諦めんのかよ!」


「そうじゃねぇよ」


響が


前を見る


「正面から行くのが駄目って話」


三組第二走班


七曲響


根郷時雨


青菅旭


朝倉霞


寒風白夜


忍びの技を得意とする者を中心に


組まれた五人


「奉先から」


響が言う


「正光が遅れるだろうから」


「俺たち忍び組で距離を戻してくれって言われてんだ」


「だったら」


肩をすくめる


「やるしかねぇよな」


青菅旭が


雷壁を見る


「それにしたって――」


「アイツら完璧な連携だぜ」


朝倉霞も


困ったように笑う


「確かに」


「どうするのよ、あれ」


寒風白夜が


前を見る


「邪魔な雷を」


「俺の氷で何とかするか?」


だが――


「いや」


響が止めた


「このままにしようぜ」


「は?」


時雨が振り返る


響は


にやっと笑う


「他の組がどうするか」


「見てみようぜ」


「お前……」


「まさか」


「そう」


響は


悪びれもしない


「誰かが突破口を作ったら――」


「便乗する」


「…………」


旭が


呆れた顔


「なんかダサくねぇ?」


「確かに……」


霞も頷く


白夜だけは


真顔だった


「何を言っている」


「俺たちの役目は」


「襷を距離を詰めて渡すことだ」


「そういうこと!」


響が笑う


「勝負は格好良さじゃねぇ!」


「勝てばいい!」


「開き直ったな……」


◇


そして――


最初に動いたのは


二組だった


「みんな!」


神門澪《ごうど みお》の声


「焦らないで!」


二組の五人が


雷壁の手前で速度を落とす


「どうするんだ、澪!」


仲間の一人が聞く


澪は


雷壁


そして


その隙間を守る


紗月と剛を見る


さらに――


後方から狙う与一


「逆に考えて」


「え?」


「あそこしか開いていないってことは――」


雷壁の切れ目を指差す


「一組は」


「私たちがあそこを通るって分かってる」


つまり――


罠


「だったら」


澪が


札を構える


「通る必要はない」


「みんな」


「合わせて!」


四人が


一斉に札を構えた


「《火球の術》!」


ボッ!


ボッ!


ボッ!


ボッ!


四つの火球


一直線に


雷壁へ向かっていく


そして――


澪


「合わせる!」


掌の前に


火球


そこへ


雷が纏わりつく


《雷火球の術》


バチバチバチッ!!


雷を纏った火球が


四つの火球の中央へ飛び込む


その瞬間――


四つの火球が


吸い込まれた


ゴォォォォ!!


「でかっ!」


ひなたが


思わず声を上げる


巨大化した


雷火球


炎


そして雷


五人分の術を


一つへ束ねた


巨大な塊


「来るぞ!」


与一が叫ぶ


「防ぐ!」


誠とひなたが


同時に弓を引く


ヒュンッ!


ヒュンッ!


道の両端


木々へ


《結界棒》の矢が突き刺さる


さらに――


二本


三本


四本


「重ねろ!」


ブゥン!


ブゥン!


ブゥン!


何層もの結界


巨大な雷火球が――


激突


ドォォォン!!


一枚目


砕ける


二枚目


砕ける


三枚目――


「まだ来る!」


誠が叫ぶ


バァン!!


最後の結界も


破壊された


だが


雷火球も


かなり威力を失っている


それでも――


まだ止まらない


「与一!」


紗月が叫ぶ


「分かってる!」


与一が


黒曜の上で


霊装武具を構える


「《鳴鏑《なりかぶら》》――」


霊力を流す


「術式解放」


ギギギギ――


弓が


巨大化していく


「うわ……」


剛が


思わず見上げる


通常の弓とは


比べものにならない


巨大な弓


縦に構えれば


霊馬の上でも扱えない


だから――


与一は


《鳴鏑》を横へ倒した


「黒曜」


一言


黒曜が


速度を一定に保つ


与一は


腰を落とす


そして――


霊力を巡らせる


立身流《巡らせ》


腕


肩


背


腰


脚


全身の身体能力を


一気に引き上げる


「ぐっ……!」


巨大な弦へ


指をかける


ギギギギギ――


引く


さらに――


引く


巨大な弓が


限界までしなる


そこへ


膨大な霊力が集まる


一本の――


巨大な矢


「行け!!」


バァン!!


放たれた


霊力の塊


それが飛翔しながら――


水を纏う


渦を巻く


巨大な水流へ変わる


《激流水神波《げきりゅうすいじんは》》


ゴォォォォォ!!


水流が


形を変える


頭


角


牙


胴


巨大な――


水龍


「何だあれ!?」


他組の生徒が


叫ぶ


水龍が


雷火球へ


大口を開ける


そして――


ゴォン!!


飲み込んだ


炎が


水龍の内部で爆ぜる


雷が走る


だが――


消える


「嘘だろ!?」


そのまま


水龍は止まらない


二組


三組


四組


五組――


周囲を走る生徒たちを


次々と巨大な水流へ巻き込んでいく


「うわぁぁぁ!!」


「何だこれ!」


「流される!」


その中――


一人


少女が


両手を前へ出した


「《結界》!!」


ブゥン!!


水龍が


結界へ激突


ドォォォン!!


「くっ……!」


結界が軋む


だが――


割れない


少女は


襷を身につけている


神門雅


「与一さん!!」


雅が


水飛沫の向こうから叫ぶ


「こんな大技使わないでください!!」


与一が


少し驚いた顔


「あれ防げるんだ」


そして――


笑う


「霊力の方は」


「調子いいみたいだね、雅」


「おかげさまで!」


雅も


少し得意そうに返す


だが――


与一が


再び《鳴鏑》を構え始めた


「…………」


「与一さん」


「何?」


「そう言いながら」


「二発目を構えるのやめてください」


「でも」


与一は


至って真面目


「これ勝負なんで」


「…………」


雅が


眉をぴくっと動かす


「そうですねぇ……!」


その時――


「雅!」


五組の仲間たちが


追いついてくる


「助かった!」


「今のうちに――」


雅が


振り返る


「待ってください」


「え?」


「二発目が来ます」


「えぇ!?」


だが――


飛んできたのは


巨大な水龍ではなかった


ヒュンッ!


ヒュンッ!


誠


ひなた


二人の矢


それが――


濡れた地面へ


突き刺さる


「術式――」


誠が指を立てる


「発動!」


バチッ!!


落雷


ドォン!!


雷が


《結界棒》へ落ちる


そして――


水龍によって


びしょ濡れになった地面へ


電撃が走った


バチバチバチバチッ!!


「うわぁぁ!?」


さらに


《結界棒》同士が繋がり――


再び


雷壁


雅の目が


大きくなる


「水で濡らしてから雷!?」


「ちょっと!」


慌てて


札を取り出す


「《石床の術》!」


ゴゴゴゴ――


足元の土が


石へ変わる


水を含んだ泥から


霊馬の脚を逃がす


電流が


その脇を走り抜ける


「危なっ……!」


雅が


額の汗を拭う


遠くから


それを見ていた響


「…………」


苦笑


「やっぱ」


「一組の連中は」


「やることがえげつないんだよ」


時雨が


響を見る


「で」


「いつまで見てるんだ?」


「そろそろ行くぞ」


響が


笑う


「何か思いついたのか?」


「いや」


「誰かが打開策を思いつく」


「それに便乗する」


「やっぱそれかよ!」


旭が


呆れる


「ダサくねぇ?」


霞も


「やっぱりちょっと……」


白夜が


ため息をつく


「だから」


「俺たちの役目は」


「襷との距離を詰めることだろう」


「そうそう」


響が頷く


そして――


森を見る


「ただなぁ」


「霊馬には悪いけど」


「俺たちだけだったら」


「こんな道を真正面から走らなくても」


「木々の間を抜けて」


「あいつらの前に出られるんだけどな」


「霊馬を置いていくわけには――」


その時


霞が


「あっ」


「ん?」


懐を探る


「良いものあるよ」


取り出したのは――


小さな笛


「何それ?」


「霊馬を呼べる笛」


「…………」


響が見る


「何で持ってんの?」


「迅が見せてくれて」


霞が笑う


「欲しくなったから」


一拍


「迅から奪った」


「奪った!?」


時雨が叫ぶ


響は


遠い目


「迅……」


「かわいそう……」


「ちゃんと後で返すわよ!」


霞が怒る


だが――


響は


その笛を見つめる


そして


にやっ


「待てよ」


「良い案――」


「浮かんだぞ」


◇


一方――


二組


雷火球を破られた4組の五人を見て


次の手を考えていた


その中心にいる


二人の男子


麻賀多道秋《まかた みちあき》


双子


そして――


道満の従兄弟


襷を持っているのは


道春《みちはる》


「なぁ、道秋」


「何だ、道春」


二人が


一年一組を見る


「道満のクラスって――」


「うん」


「やばい奴しかいないな」


「道満も」


道秋が笑う


「ちょっとやばいけどな」


「それはそう」


二人で笑う


そこへ――


「雅!」


澪が


五組の雅へ声をかけた


「澪!」


二人は


以前からの知り合い


澪は――


蘭の従姉妹


「どうしようか?」


澪が


一年一組の布陣を見る


雅も


困ったように笑う


「うーん……」


「困ったなぁ」


そこへ


道春と道秋も混ざる


「なぁ」


道春が


小声で言う


「三組のアイツら」


「絶対何か狙ってるよな」


四人の視線が


少し離れた場所にいる


響たちへ向く


「そうだね」


雅が頷く


「さっきから距離を取って」


「私たちの出方を探ってるみたい」


「ずるいなぁ」


道秋が言う


その言葉に


雅が


ちらっと道秋を見る


「あなたたちも」


「今から似たようなこと考えてません?」


「まあまあ」


道春が笑う


そして――


雅と澪を見る


「君たち」


「神門一門だろ?」


「札術は得意だよな」


澪が


少し眉を上げる


「何を考えてるの?」


「俺たちだって」


道秋が札を取り出す


「道満ほどじゃないけど」


「札術は得意だぜ」


道春も


同じように札を構える


「さっきの」


「火球を吸収させるやつ」


澪が


目を細める


「まさか……」


「今度は――」


道春が笑う


「三クラス同時にやろうぜ」


「……!」


雅が


一年一組を見る


一組の守りは強い


なら――


一組の想定を超えるだけの


火力をぶつける


二組


四組


五組


三クラス


同時攻撃


「そうすりゃ」


道春が


少し離れた三組を見る


「そこで様子見してる」


「ずるい忍びの奴らも――」


「絶対動く」


◇


遠く――


響が


くしゃみをした


「へっくし!」


時雨が見る


「どうした?」


「いや」


響が鼻を擦る


「なんか今」


「ずるいって言われた気がする」


「実際ずるいだろ」


「うるせぇ」


◇


道春が


札を指に挟む


道秋


澪


雅


それぞれも


札を構える


敵だったはずの組同士が――


一年一組の


鉄壁の布陣を前に


一時的に手を組み始める


雅が


小さく息を吐く


「与一さん」


遠く


巨大な《鳴鏑》を持つ与一を見る


「今度は――」


少し笑う


「こっちの番ですよ」


道春が


腕を上げる


「よし――」


二組


四組


五組


視線が重なる


「じゃあ」


「行くぞ!!」


第二走――


《制圧》


一年一組が作り上げた


鉄壁の戦場へ


今度は――


三つの組が


同時に牙を剥こうとしていた

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