↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
90/111

第九十話 第一走――速度


 「始め!!」


若陽の声と同時――


ドンッ!!


二十五頭の霊馬が


一斉に大地を蹴った


砂煙が爆発するように舞い上がり


観客席から


凄まじい歓声が上がる


桜駆け


第一走――


その幕が


ついに切って落とされた


そして――


開始と同時


真っ先に動いた者がいた


「麻倉ァ!!」


「うおっ!?」


迅の真横


三組――


大篠塚正光


霊馬を一気に寄せ


薙刀を振り上げる


狙いは


最初から一人


襷持ち


麻倉迅


「いきなりかよ!」


迅が身を伏せる


だが


薙刀が振り下ろされるより早く――


ガァン!!


横から


巨大な刃が割って入った


「何っ!?」


正光の薙刀を受け止めたのは


富里太一


その手に握られているのは


大振りの長刀


「迅!」


「先に行け!」


「太一!」


「こいつは俺が止める!」


太一が


正光の薙刀を押し返す


「ぐっ……!」


正光の顔が歪む


「貴様……!」


再び薙刀を振るう


ガンッ!


ガァン!!


激しい打ち合い


だが――


正光が驚いたのは


太一の技ではない


その力


本来なら


騎乗しながら扱うには


重すぎるほどの長刀


それを太一は――


まるで


普通の打刀でも扱うように振り回している


「貴様……!」


「どんな力してやがる!」


「へへっ」


太一が笑う


太一が修めるのは


小篠塚流


長大な刀身と


豪快な斬撃を得意とする剣術


そして合同合宿で


太一が重点的に磨いたもの


それは――


霊力操作


さらに


刀也たちから学んだ


立身流《巡らせ》


全身へ


偏りなく霊力を巡らせ


筋力


瞬発力


体幹


全てを底上げする


小篠塚流の剣技を


より強く振るうため


他流の霊力操作を取り入れたのだ


まだ刀也たち立身家ほど


洗練されてはいない


それでも――


以前の太一とは


明らかに違う


正光が苛立つ


「他流の技なんか使いやがって!」


「はぁ?」


太一の眉が上がる


「強くなるために覚えたんだ」


「使えるもん使って何が悪い!」


ガンッ!!


再び


長刀と薙刀がぶつかる


そして――


太一が


にやっと笑った


「それより」


「何だ!」


「お前が大篠塚流の跡取りじゃ――」


一気に長刀を振り抜く


「大篠塚流も終わりだな!」


「貴様ァァァ!!」


◇


だが――


正光だけではない


「迅!」


隼人の声


迅が前を見る


「うげっ……」


左右――


2人ずつ


計4人


他組の選手たちが


一年一組の進路へ入り込んでくる


「本当に狙われてんじゃん!」


迅が叫ぶ


隼人も


「だから先生が言ってただろ!」


第一走


全組が最も密集する区間


そして


一年一組は


警戒されている


正臣の予想通り――


各組が


まず一組を遅らせようとしていた


その時


前方へ抜けた四組から


声が飛んでくる


「これは――」


鏑木弓月


楽しそうに振り返る


「いい機会ですね」


その手に


一輪の黒い薔薇を思わせる弓


霊装武具――


《黒薔薇》


弓月が


弦を引く


霊力が集まり


一本の青い矢を形作る


「《水矢》」


ヒュンッ!!


「来るぞ!」


弓月だけではない


四組の残る四人も


同時に弓を構える


全員――


女子


しかも


全員が弓術を得意とする生徒


「放て!」


無数の《水矢》が


一年一組へ降り注ぐ


「うわっ!」


「マジかよ!」


迅が霊馬を左右へ振る


だが


避け切れる数ではない


その前へ――


綾女


「《風遁――旋風》!」


ブワッ!!


横殴りの風


飛来する水矢が


次々と吹き飛ばされる


「よし!」


迅が笑う


だが――


「違う!」


隼人が叫んだ


「矢そのものが狙いじゃねぇ!」


「え?」


地面へ落ちた水矢


それが弾け――


大量の水が


土へ染み込んでいく


一発


二発


十発


さらに


次々と


地面へ水矢が突き刺さる


あっという間に


乾いていた地面が――


泥濘へ変わる


ズブッ!!


霊馬の脚が沈む


「うおっ!?」


速度が落ちる


「足場狙いか!」


隼人が舌打ち


その前方で――


弓月が


さらに一本


矢を番えた


「鏑木流弓術――」


弦が


大きくしなる


「《響波の矢》!」


ドンッ!!


矢が


泥濘へ突き刺さる


次の瞬間――


ズンッ!!


衝撃が


地面を波紋のように走った


泥が跳ね


水分を含んだ地面そのものが揺さぶられる


「うおおっ!?」


迅の霊馬が


大きく体勢を崩す


「迅!」


「大丈夫!」


だが


完全に速度を殺された


一方――


先ほどまで太一と打ち合っていた正光たち三組は


泥濘が広がり切る直前


辛うじて前へ抜け出していく


正光が


振り返って笑う


「そこで沈んでいろ!」


「くそっ!」


迅が歯噛みする


前との差が


一気に開き始める


◇


「まずいな」


隼人が


周囲を見る


一組は


泥濘の中


先頭では――


二組


そして五組が


抜け始めている


「離されすぎると」


「第二走で取り返すのがきつくなる」


迅が聞く


「どうする、お頭!」


隼人は


前を見る


そして――


その先


道の脇に立つ


巨大な一本の大木へ目を止めた


「太一!」


「何だ!」


「――あの木」


指差す


「斬れるか?」


「は?」


迅が


隼人を見る


「お頭?」


「あれ先頭走ってる二組と五組の前だぞ?」


「だからだ」


隼人が笑う


太一も


すぐ意味を理解した


「なるほどな」


霊馬から


飛び降りる


「太一!?」


地面へ着地


長刀を構え――


霊力を巡らせる


立身流《巡らせ》


合宿で磨き上げた霊力操作によって


太一の全身から


一気に霊力が膨れ上がった


「おいおい……」


迅が目を丸くする


太一が


大きく長刀を振りかぶる


刃へ


巨大な霊力が集約


そして――


「小篠塚流――」


「《超大斬刃》!!」


ブォンッ!!


放たれた斬撃


巨大


しかも――


速い


地面すれすれを


凄まじい速度で駆け抜け


一組の遥か前


三組


四組すら抜き去り


先頭を走る


二組


五組の横を通過


「うわっ!?」


そして――


ズバァァン!!


巨大な大木を


一撃で両断した


「なっ!?」


切断された大木が


ゆっくり――


倒れる


ズズズズ……


ドォォォン!!


道を塞いだ


「よし!」


隼人が叫ぶ


その間に――


一組の五人は


泥濘を抜け出す


迅が振り返る


「でもお頭!」


「あの木どうすんだよ!」


「俺たちも通れねぇぞ!」


「大丈夫だ」


隼人は


笑っている


「前の奴らが何とかする」


「他人任せ!?」


◇


先頭――


二組


巨大な大木が


道を塞ぐ


だが


その先頭にいた男子は


慌てなかった


風間琥太郎


「まったく」


後ろを振り返り


苦笑する


「晴真のクラスメイトは――」


大木を見る


「やることが派手だね」


懐から


小さな包みを取り出す


それを


木へ貼りつけ――


「みんな、少し離れて」


導火


そして――


「発破」


ドンッ!!


大木の一部が


爆ぜ飛んだ


煙が広がる


だが――


その中央には


霊馬一頭が通れるほどの穴


「はい」


琥太郎が笑う


「通れるよ」


二組が


そこを駆け抜ける


◇


一方――


五組


「どうする?」


男子生徒が


隣を走る女子へ尋ねる


「宮本さん」


宮本寧


寧は


目の前の大木を見る


そして――


ただ一言


「切り捨てます」


「え?」


霊力が


一気に膨れ上がる


薙刀へ


濃密な霊力を纏わせ――


「はっ!」


一閃


ドォン!!


大木の別の部分が


真っ二つ


切断された木片が


左右へ弾け飛ぶ


「…………」


五組の男子が


少し引く


寧は


何事もなかったように


「道ができました」


「行きましょう」


「お、おう!」


◇


こうして


二組


五組が作った道


当然――


後続も使う


三組が抜け


四組も続く


だが――


「このままじゃ面白くねぇな」


正光が


札を取り出す


火が走る


ボッ!!


倒れた大木へ


炎が燃え移る


さらに――


弓月たち四組


「《火矢》!」


次々と


炎の矢が突き刺さる


瞬く間に


倒木全体が


炎に包まれた


「これなら――」


弓月が


振り返って笑う


「簡単には通れないでしょう?」


そのまま


三組


四組が走り去っていく


後方から追いついた太一が


燃え盛る大木を見る


「…………」


ぽつり


「与一の許嫁」


「なかなか性悪だな」


「本人の前で絶対言うなよ」


迅が即座に返す


「で――」


迅が隼人を見る


「どうする、お頭?」


「簡単だ」


隼人は


遊喜を見る


「遊喜」


「何だ?」


「あの燃えてる大木」


指差す


「お前の槍技で粉々にできるか?」


遊喜は


大木を見る


少し考え――


「騎乗したまま使える技がある」


隼人が


にやっと笑う


「そりゃ好都合だ」


次に


綾女を見る


「綾女」


「うん」


「俺とお前で《烈風》」


「遊喜が砕いた瞬間」


「全部前へ吹っ飛ばす」


「分かった」


そして――


迅を見る


「迅」


「おう!」


「霊馬に《風遁・疾風脚》」


一拍


「分かるな?」


迅も


にやっと笑った


「任せろ」


「前が避けた瞬間――」


「後ろから一気に抜くんだろ?」


「正解 そしてひたすら逃げろ!」


最後に


太一


「お前は迅の後ろへつけ」


「おう」


「追ってくる奴を止めろ」


太一が長刀を担ぐ


「どうやって?」


隼人は


一瞬考え――


「向かってくる敵――」


「全員斬れ」


「マジか」


「マジだ」


その瞬間――


綾女が


くすっ


笑った


隼人が見る


「どうした?」


「だって」


綾女は


迅を見る


「迅の家族の助言」


「全部そのままじゃない?」


「え?」


迅が固まる


綾女が


指を折る


「お父さん」


「とにかく逃げろ」


迅を見る


「お姉さん」


「最後に全部抜け」


太一を見る


「お母さん」


「全員斬れ」


「…………」


全員


沈黙


そして――


「本当だ!」


迅が叫ぶ


「全部やるじゃん!」


隼人まで笑う


「お前ん家」


「意外と正しかったな!」


「意外とは何だよ!」


緊張の中


一組の五人に


笑いが戻る


だが――


次の瞬間


隼人の目が鋭くなる


「行くぞ!」


◇


遊喜が


霊馬の腹へ脚を入れる


「行くぞ!」


一気に加速


燃え盛る大木へ――


真正面から突っ込む


「遊喜!」


槍を


脇へ抱える


穂先へ


霊力が一点に凝縮されていく


岩名流騎乗槍術――


《猪突打点衝》


ドンッ!!


槍の穂先が


大木の一点へ突き刺さる


だが――


ただ突いただけではない


一点へ込められた霊力が


内部へ侵入


そこから――


波紋のように


木全体へ伝播する


ミシッ


ミシミシミシ――


一瞬の静止


そして


バァァァン!!


巨大な倒木が


内側から弾け飛んだ


「よし!」


隼人が叫ぶ


「綾女!」


「合わせる!」


二人


騎乗したまま


同時に手印を組む


「《風遁――烈風の術》!!」


ゴォォォォ!!


凄まじい突風


砕かれた


燃え盛る木片が――


一斉に前方へ吹き飛ぶ


「何!?」


「うわっ!」


前を走る生徒たちへ


炎を纏った破片が


雨のように襲いかかる


三組


四組


二組


五組


全員が


左右へ散開


避ける


防ぐ


弾き落とす


道の中央が――


空いた


「今だ!」


隼人の声


迅が


愛馬の首筋へ手を添える


「行くぞ!」


霊力が


迅から霊馬へ巡る


風が


四肢を包み込む


《風遁――疾風脚》


ドンッ!!


「うおおおお!!」


一気に加速


まるで


風そのもの


炎の木片の間を抜け


前へ


前へ――


迅が


一気に集団を追い抜いていく


「迅!」


太一も


すぐ後ろへ続く


◇


「麻倉が抜けたぞ!」


「追え!」


他組の生徒たちが


慌てて進路を戻す


だが――


その中央へ


一人


太一が割り込む


「悪いな!」


手にしていた長刀へ


霊力が流れる


霊装武具――


《那由多刀》


ギギギ……


刀身が


異常なほど伸びていく


一メートル


二メートル


そして――


三メートル近い


常識外れの長大な刀身


「何だそれ!?」


太一が


巨大な刀を振りかぶる


立身流《巡らせ》


合宿で鍛えた


霊力操作


その力を――


本来の自分の剣術へ乗せる


「いくぞ!」


小篠塚流――


「《超大薙斬刃》!!」


ブォォォン!!


巨大な横薙ぎ


斬撃そのものが


壁のように広がる


「結界!」


「防げ!」


次々と


生徒たちが結界を展開


ドドドドドッ!!


斬撃と結界が衝突


霊力が弾ける


「ぐっ!」


「重い!」


足止め――


成功


だが


その瞬間


結界の上を――


二つの影が


跳んだ


霊馬ごと


太一の斬撃を利用するように


一気に前へ抜ける


「しまっ――」


太一が


目を丸くする


そして


遠くを走る迅へ叫ぶ


「悪りぃ迅!」


「二人行ったわ!」


前を走りながら


迅が片手を上げる


「了解!」


その二人


風間琥太郎


そして――


宮本寧


◇


後方


「太一!」


隼人が叫ぶ


「お前!」


「全員斬れとは言ったけど――」


太一の斬撃を避けながら


「俺たちまで斬ろうとすんな!!」


「ははは!」


太一が笑う


「悪い!」


「手加減できなかったんだよ!」


「これだけの人数止めるんだから仕方ないだろ!」


「仕方なくねぇ!」


その瞬間――


ヒュンッ!


「危なっ!」


矢が


隼人の横を通過


さらに


二本


三本


「弓月か!」


避けている間に――


四組が横を抜ける


弓月が


ちらりと一組を見る


続いて


三組


正光も追い抜いていく


迅には追いつけない


その苛立ちをぶつけるように


太一たちへ言う


「頑張れよ」


「後継君」


「ビリになったら――」


にやり


「大篠塚流の面目丸潰れだな」


「くそが!」


正光が吐き捨て


前へ走る


「お前らまで煽ってどうすんだよ!」


隼人が叫ぶ


だが――


すぐ前を見る


「俺たちは予定通りだ!」


「迅を先へ行かせた!」


綾女が頷く


遊喜も


「追いつくぞ!」


太一


「おう!」


第一走班の役目


襷持ちを


次へ届ける


そのためなら――


四人は


何度でも壁になる


◇


一方


先頭争い


「うおっ!」


迅が


上体を大きく反らす


ヒュンッ!!


鼻先を


薙刀の刃が通過


「危ねぇな!」


「避けましたか」


宮本寧


騎乗したまま


薙刀を自在に操る


右


左


斜め


刃そのものを当てるのではなく


迅の進路を


少しずつ削っていく


「やりにくっ!」


迅が忍刀を抜く


ガンッ!!


薙刀を弾く


そこへ――


ヒュンッ!


「今度は何だ!?」


手裏剣


迅が


忍刀を返す


キンッ!!


弾いた


だが――


「おっと」


手裏剣を投げたのは


風間琥太郎


「二対一はずるくねぇ!?」


「別に組んでないよ」


琥太郎が笑う


「たまたま同じ人を狙っただけ」


「もっと悪いわ!」


再び


手裏剣


迅が弾く


だが今度は――


キィン!!


角度をつけ


弾いた手裏剣を


寧へ飛ばす


「……!」


寧が


薙刀の柄で弾く


迅が笑う


「へへっ」


寧が


少し目を見開く


「あなた――」


薙刀を戻しながら


「ずいぶん器用ですね」


「忍びなんでね!」


「そうですか」


寧は


淡々


だが――


少しだけ楽しそう


琥太郎も笑う


「じゃあ」


手印


「これはどう?」


冷気が


一気に広がる


《氷遁――氷柱陣》


バキバキバキ!!


地面から


巨大な氷柱が


次々と突き出す


進路が――


塞がれる


「うわっ!」


迅が手綱を引く


だが――


寧は止まらない


「邪魔です」


薙刀へ


霊力


一閃


バァン!!


氷柱を


正面から叩き壊す


その瞬間――


寧の横


すっ


迅が通り抜ける


「お先!」


「…………」


寧が


振り返る


「あなた」


「何?」


「そこ――」


自分が破壊した氷柱を見る


「わたしが壊したところですよ」


迅が笑う


「ありがとさん!」


「お礼を言えばいいという問題では――」


その時


迅の前方


木々の間に――


網


「げっ!」


すでに


仕掛けられている


琥太郎が笑う


「そっちもあるよ」


「いつ仕掛けたんだよ!」


霊馬が


網へ突っ込む


このままでは――


脚が絡む


「っ!」


迅が


手綱から片手を離す


霊馬の首へしがみつき――


身体を


くるっ!


横へ一回転


ほとんど


霊馬の腹側まで身体を落とす


「えっ」


寧が


初めて驚いた声


迅の足


そこに仕込まれていた


小刀


シュッ!!


身体を回転させながら


網を切断


そのまま


反対側へ身体を戻す


「よっと!」


再び


鞍上


霊馬は――


一度も速度を落としていない


琥太郎が


目を丸くする


「へぇ……」


「凄い体捌きだな」


寧も


感心したように頷く


「本当ですわ」


そして


真顔で――


「まるで猿みたいですわ」


「猿は失礼だろ!!」


迅の叫びが


森へ響く


◇


「でも――」


琥太郎が


迅の霊馬を見る


その脚を包む風


《疾風脚》


「面白いね」


手印


「悪いけど」


笑う


「真似するよ」


「は?」


風が


琥太郎の霊馬を包む


《風遁――疾風脚》


ドンッ!!


「おい!」


琥太郎が


一気に加速


迅へ並ぶ


「それ俺の!」


「風遁は君だけの術じゃないでしょ?」


「そうだけど!」


そして――


寧


二人が


風で加速したのを見る


「でしたら――」


薙刀を


低く構える


霊力が


刃へ集中


「わたしも」


「何する気だ?」


薙刀へ


大量の霊力


それを


前へ放つのではない


刃の後方


自分の進行方向とは


逆側へ――


宮本流薙刀術――《爆霊衝波》


ドォン!!


爆発


反動


その力を


そのまま推進力へ変える


寧の霊馬が――


弾丸のように飛び出した


「うわっ!」


一瞬で


迅の横へ


「お前ら何でもありかよ!」


迅が叫ぶ


琥太郎


寧


二人が


一気に前へ出る


だが――


迅の目が


寧の薙刀へ向く


今の技


霊力を纏わせ


一気に放出


その爆発を


加速へ変えた


「…………」


迅の口元が


上がる


「それ――」


寧が見る


「?」


「面白ぇな」


霊装武具――


《迅雷》


忍刀へ


雷が走る


バチッ


バチバチバチッ!!


「おいおい」


琥太郎が振り返る


「まさか」


迅が笑う


「俺もやるぜ!」


寧の目が


少し大きくなる


迅雷へ


雷の霊力を集中


そして――


一気に


後方へ放出


「《雷爆衝波》――」


にやっ


「ってね!!」


ドガァン!!


雷鳴


「なっ!?」


「……!」


寧


琥太郎


二人の間を――


一筋の雷が


駆け抜けた


迅


さらに


霊馬の脚へ


《疾風脚》


風


そして――


雷


二つの加速


「うおおおおお!!」


一気に


寧を抜く


琥太郎も抜く


「速っ!」


琥太郎が


思わず笑う


寧も


驚きながら


迅の背中を見る


「見ただけで……」


自分の技そのものではない


原理を見て


自分の雷へ置き換えた


寧の口元が


ほんの少しだけ上がる


「面白い人ですわね」


◇


直線


その先――


第二走の待機地点


「来た!」


誠が叫ぶ


「一組!」


ひなたも


身を乗り出す


「先頭です!」


紗月


剛


そして――


襷持ち


鏑木与一


与一は


すでに愛馬へ跨がっている


黒曜石のような


艶やかな黒毛


《黒曜毛》


与一の愛馬――


黒曜


その耳が


ぴくりと動く


「来るぞ、黒曜」


与一が


手綱を握る


前方


雷を纏った霊馬が


猛烈な速度で迫る


「与一ぃぃぃ!!」


「迅!」


襷


迅が


身体から外す


速度を落とす


与一も


黒曜を走らせ始める


並走


一瞬――


二人の手が交差


パシッ!!


襷が


迅から


与一へ


渡った


「よし!」


迅が叫ぶ


「与一!」


「一番だ!」


与一が


襷を握り締める


「よくやった、迅」


黒曜の首を撫でる


「後は任せろ」


迅が


拳を突き出す


「頼むぜ――」


与一も


走りながら拳を合わせる


「相棒!」


次の瞬間――


黒曜が


大地を蹴った


ドッ!!


「行くぞ、黒曜!」


一気に


第二走へ


その背後――


寧


琥太郎


さらに


正光


弓月たちも


続々と迫ってくる


第一走――


正臣が託した役目


麻倉迅は


他の四人と共に


見事に果たした


そして――


一本の襷は


次なる戦いへ


鏑木与一の手へ


第二走班 襷持ち


与一と黒曜が


力強く大地を蹴り


戦場へ飛び出していった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。