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第七十九話 男子だけの週末計画


 合同合宿を終え


学園へ戻ってから数日


桜駆けが近づいていることもあり


一年一組では、休み時間になるたびに


合宿で覚えた技


新しく思いついた戦法


そして霊馬のことまで


あちらこちらで話題になっていた


そんな日の昼休み――


「ねえ、道満君、刀也」


晴真が弁当を食べながら二人へ声をかけた


「今度の週末って空いてる?」


「俺は空いてるぞ!」


刀也が即答する


道満も晴真を見る


「何かあるのか?」


「うん」


晴真は頷いた


「歴博さんのところに行かない?」


「歴博殿?」


「今度、歴博さんが御堂のお屋敷に来るらしいんだけど」


晴真は少し考えながら続ける


「せっかくだから俺たちの方からお店に行こうかなって」


「店へ?」


「うん」


そして少し声を弾ませる


「桜駆けも近いし、下準備も兼ねて色々見ておきたいんだ」


「なるほどな」


道満が頷く


「歴博殿のところなら、古い術具や資料も多いだろう」


「俺も行く!」


いつの間にか話を聞いていた迅が入ってきた


その隣から


「僕も」


与一も手を上げる


「じゃあ俺も!」


青菅隼人


「面白そうじゃねえか」


富里太一


「俺も行くぞ!」


岩名豪太まで加わる


すると――


少し離れたところから


秀


学


誠がやって来た


「晴真君」


「僕らも行っていい?」


「もちろん!」


「なら俺も」


樹も手を上げる


「俺も行こうかな」


遊喜


「俺も!」


剛まで加わった


晴真が周囲を見る


「……なんか」


男子ばかり


いつの間にか


一年一組の男子たちがほとんど集まっていた


刀也がそれを見て


にやっ


迅も


にやっ


二人の視線が合う


「よし!」


刀也が言う


「今回は男子だけで行こうぜ!」


「いいね!」


迅も即座に賛成


晴真が首を傾げる


「なんで男子だけ?」


「だってよ」


迅が晴真の肩へ腕を回す


「凛たちがいたら絶対止められるしさ」


「止められる?」


晴真がさらに首を傾げる


その瞬間


刀也が声を潜めた


「せっかくだし――」


周囲を確認する


そして


「遊戯場、行かないか?」


「…………」


一瞬


男子たちが黙った


最初に反応したのは道満だった


「おい!」


眉を吊り上げる


「そこは初等部の立ち入りは禁止されているだろうが!」


「まあまあ」


刀也が手を振る


「聞けって」


「何を聞く必要が――」


「夜叉丸様が使ってた物が、景品になってるらしいぞ」


「何!?」


道満の態度が一瞬で変わった


身を乗り出す


「それは本当か!?」


「らしい」


「どのような物だ?」


「そこまでは知らねえ」


「なら――」


道満は真剣な顔になる


「確認しなくてはならんな」


迅と刀也が


にんまり


「…………」


晴真が二人を見る


なんとなく


道満が上手く乗せられたような気がした


隼人が呆れる


「どうせ偽物だぜ、きっと」


すると迅が


くるっ


隼人を見る


「お頭」


「何だよ」


「輪投げもあるぞ」


「…………」


隼人の動きが止まった


夏祭り


あの時――


輪投げで思うような結果を出せなかった隼人


その記憶が蘇る


迅がさらに囁く


「雪辱戦できるぞ」


「…………」


「今度こそ全部取れるかもな」


隼人が立ち上がった


「マジか」


拳を握る


「行くしかねえな!」


「よし!」


迅が笑う


与一がため息をついた


「隼人」


「何だ?」


「迅の口車に乗るなよ」


「うっ……」


隼人が少し我に返る


すると刀也が


今度は与一を見る


「与一」


「何?」


「実は――」


少し間を置く


「弓の射的もあるぞ」


「…………」


与一の目が変わった


「本当?」


「ああ」


「どんな的?」


「小さい的を連続で射抜くやつもあるらしい」


「…………」


与一が立ち上がる


「行くしかないな!」


「与一まで!?」


誠が吹き出す


秀も学も笑った


「さっき隼人を止めてたじゃん!」


「射的は別」


「何が違うんだよ!」


笑い声が起きる


◇


そんな中


迅と刀也が


今度は樹の左右へ回った


「樹」


「何?」


二人とも


妙に真剣な顔


「今回の景品の行方は――」


刀也が樹の肩へ手を置く


「お前にかかっている」


「…………」


樹が眉を寄せる


「なんで俺?」


迅が答えた


「そりゃお前」


「式神レースだよ」


「式神レース?」


「どの式神が一番に入るか予想するんだってさ」


刀也が指を立てる


「お前の頭脳で勝つ式神を予想してくれ!」


「…………」


樹は少し考える


式神の種類


能力


走り方


距離


地形


相性


色々な条件から順位を予測する


「予想……」


少しずつ


顔が楽しそうになっていく


「面白そうだね」


遊喜と剛が同時に叫んだ


「「お前もか!」」


また笑いが起きる


晴真も楽しそうに笑った


「でも、本当に楽しそうだよね」


「だろ!」


豪太が晴真の背中を叩く


「合宿頑張ったご褒美だな!」


「それいい!」


太一も頷く


「桜駆け前に一回息抜きするのも悪くないだろ」


「そうだな」


秀も頷く


「最近ずっと桜駆けのことばっかりだったし」


男子たちが次々と賛成していく


刀也はもう完全に待ちきれない様子だった


「やべぇー!」


両手を頭の後ろへ組む


「早く週末にならねぇかな!」


「その前に問題がある」


道満が言った


「何だ?」


「女子だ」


男子たちの動きが止まる


「…………」


確かに


一年一組では普段


男子も女子も一緒に動くことが多い


男子だけでぞろぞろ外出すれば


まず間違いなく聞かれる


――どこへ行くのか


そして


遊戯場へ寄ると知られたら


凛


小夜


紅葉


美鈴


綾女


誰かしらが止めるだろう


迅が腕を組む


「どうするかな」


晴真が何気なく言った


「また小夜ちゃんにお願いするの?」


前にも何かある時


小夜が女子側をまとめてくれたことがある


しかし


刀也が即座に首を横へ振った


「小夜は駄目だ!」


「なんで?」


「意外と勘が鋭い」


迅も頷く


「何か隠してるってすぐ気づきそう」


与一も


「確かに」


道満が考える


「なら凛は?」


全員


「「「もっと駄目」」」


即答


道満が黙る


晴真も


「凛ちゃん、絶対聞くよね」


「聞く」


「間違いなく聞く」


「遊戯場なんて言ったら終わりだな」


男子たちがうんうんと頷く


そこで


迅がぽんと手を叩いた


「じゃあ――」


道満を見る


「紅葉で行こう」


「紅葉?」


道満が聞き返す


「そう」


迅が笑う


「紅葉に女子をまとめてもらえばいい」


刀也も頷く


「頼むぞ、道満!」


「なぜ俺なんだ?」


道満が真顔で聞く


「紅葉と話しやすいだろ」


「同じ麻賀多だからな!」


「そういう問題か?」


「まあまあ」


迅が道満の肩を叩く


「気にするな!」


「気にするだろう!」


だが


迅


刀也


隼人


太一


豪太


秀


学


誠


樹


遊喜


剛


皆が


にやにやしている


「…………」


道満は眉を寄せる


その隣で


晴真も首を傾げていた


「なんでみんな笑ってるの?」


「晴真は気にしなくていい」


与一が言う


「そう?」


「うん」


そして


道満と晴真だけが


最後までよく分からない顔をしていた


◇


その日の放課後――


道満は


紅葉のところへ向かった


「紅葉」


「はい?」


紅葉が振り返る


「どうしました、道満様?」


「少し相談がある」


「相談ですか?」


「ああ」


道満は


男子たちから言われたことを思い返す


――女子の予定を作ってくれ


だが


そのまま言うのは明らかにおかしい


少し考え


「桜駆けも近いだろう」


「はい」


「だから――」


道満は真面目な顔で言った


「女子同士でも、団結を深める機会を作ってはどうだ?」


「…………」


紅葉が少し目を丸くする


そして


ぱっと笑った


「それは良いですね!」


「そうか?」


「はい!」


紅葉はすぐに考え始める


「凛様や小夜さん、美鈴さんたちにも声をかけてみます」


「頼めるか?」


「もちろんです!」


「皆で出かけたり、お茶をしたりするのも良さそうですね」


「そうだな」


道満はほっとする


思ったより


簡単に話が進んだ


紅葉は嬉しそうに続ける


「桜駆けは団体戦ですし、普段あまり話さない子とも仲を深める良い機会です!」


「その通りだ」


「では私から皆さんに声をかけておきますね!」


「ああ、頼む」


道満が頷く


紅葉は早速


女子たちのところへ向かっていった


その後ろ姿を見送りながら


道満は小さく息を吐く


「……思ったより上手くいったな」


少し離れた場所


柱の陰から


迅と刀也が顔を出す


「よし!」


「作戦成功!」


さらに


隼人


豪太


太一まで顔を出す


道満が振り返った


「お前たち!」


「静かに!」


迅が口元へ指を立てる


「女子にバレる!」


「そもそも何を企んでいるのか、まだ俺は納得していないぞ!」


「大丈夫だって」


刀也が笑う


「歴博さんの店に行って」


「遊戯場をちょっと見て」


「景品取って」


「帰ってくるだけだ!」


「初等部立入禁止の場所へ行く時点で大丈夫ではない!」


その時


後ろから


晴真がひょこっと顔を出した


「でも歴博さんのお店、楽しみだね」


「晴真!」


道満が晴真を見る


相変わらず


晴真だけは遊戯場へ行くことの危なさをあまり理解していない


晴真が笑う


「みんなで出かけるの久しぶりだし」


その一言に


道満も少し黙る


合宿


桜駆けの修練


授業


最近は皆


ずっと忙しかった


たまには


男子だけで出かけるのも悪くない


「…………」


道満はため息をつく


「本当に見るだけだからな」


迅と刀也の顔が輝く


「おお!」


「道満も行く気になった!」


「歴博殿の店が目的だ!」


「分かってる、分かってる!」


明らかに分かっていない返事


道満はもう一度


大きくため息をついた


そんなことをしている間にも――


紅葉は女子たちの輪へ入り


楽しそうに週末の相談を始めていた


男子たちの計画も


女子たちの計画も


着々と進んでいく


そして――


誰もまだ知らなかった


男子だけの気楽な週末が


本当に気楽な一日で終わるのかどうかを――

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