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第六十九話 晴真の答え


 修練場の中央。


桜晴真。


下勝田武尊。


二人が向かい合う。


周囲には。


一年一組。


三組、四組、五組の生徒。


教師。


各家の武人。


さらには神の眷属たちまで集まっていた。


たった一年生同士の模擬戦とは思えない人数である。


「…………」


武尊が苦笑する。


「やっぱり多すぎるだろ……」


晴真も周囲を見回した。


「僕もそう思う」


「原因は桜君だからな?」


「だから、なんで!?」


小さな笑いが起こる。


だが。


勝田忠臣が前へ出ると。


空気が変わった。


「では」


「互いに礼を」


二人が向き合う。


「よろしくお願いします」


「よろしく!」


同時に。


深く頭を下げた。


そして――。


顔を上げる。


◇


以前の晴真なら。


この瞬間。


ほんの少しだけ。


迷いがあった。


人を殴る。


蹴る。


投げる。


相手へ本気で攻撃を仕掛けることに。


どうしても躊躇してしまっていた。


――痛くないかな。


――怪我をさせたらどうしよう。


そんなことを考え。


無意識に。


最後の一歩で力を抜いてしまう。


だが。


将門流で修練するようになってから。


その考えは変わった。


清盛から言われた言葉。


――晴真。


――相手が本気で来ているのに、お前だけ遠慮するのは優しさじゃない。


――こっちは本気のお前と戦おうとしてるんだ。


――だったら、お前も本気で来い。


そして。


――本気で相手にかからないほうが、失礼だぞ。


「…………」


晴真が。


すぅ――。


長く息を吐いた。


ゆっくり。


顔を上げる。


その瞬間。


目つきが変わった。


「!」


武尊が僅かに身構える。


さっきまで。


いつもの柔らかな雰囲気だった晴真から。


戦う者の空気が漂う。


将門清盛。


角来剛乃介。


クシナダ。


多くの武人と修練を重ねてきたことで。


晴真は。


本気で戦うことを恐れなくなっていた。


「……いいね」


武尊が笑う。


「その顔」


晴真も笑う。


「うん」


拳を構える。


「本気でいくよ」


「望むところ!」


忠臣が手を上げた。


「では――」


「始め!」


◇


最初に動いたのは。


晴真だった。


――まず。


――攻め。


――そして、崩し。


忠臣から教わったばかりの勝田五勢。


真正面から。


掌底。


「はっ!」


武尊の胸元を狙う。


――これを防御させる。


――そこを掴んで崩す!


晴真の中では。


すでに次の動きまで決まっていた。


だが。


「甘い!」


武尊は。


防がなかった。


すっ。


半身。


晴真の掌底が。


武尊の胸元を通り過ぎる。


「え?」


そして。


武尊の掌が。


晴真の右肘へ。


トン。


ほんの少し。


押した。


「わっ!」


掌底を放った勢いが。


そのまま横へ流される。


晴真の体勢が崩れた。


――崩し!?


そこへ。


武尊の膝。


腹部。


「っ!」


晴真が咄嗟に両腕を下げる。


腹を守る。


しかし。


膝は――。


来ない。


「え?」


次の瞬間。


ゴッ!


武尊の頭が。


晴真の顔面へ迫った。


――頭突き!


「っ!」


晴真が。


一歩。


後ろへ下がる。


ブンッ!


鼻先。


僅か数センチを。


武尊の頭が通過した。


「…………!」


晴真は。


距離を取りながら。


あることに気づいた。


――今。


膝蹴りが来ると思って。


腹を守った。


その瞬間。


自分の上半身は。


完全に空いていた。


そこへ。


頭突き。


――騙し。


でも。


「…………」


晴真は。


自分が一歩後ろへ下がった瞬間を思い返す。


――あれ?


もし。


頭突きを避けるために。


一歩下がる。


その瞬間に。


何かしたら?


ただ逃げるだけじゃなく。


下がりながら。


武尊君に何かをさせられたら――。


「晴真!」


「!」


考えている暇はなかった。


武尊が来る。


目線。


晴真の顔。


右肩。


僅かな力み。


――顔面への右拳!


晴真が腕を上げる。


上半身を守る。


その瞬間。


「…………!」


武尊が。


視界から消えた。


「下!?」


しゃがみ込んでいる。


足払い。


ブンッ!


「うわっ!」


晴真がジャンプする。


足払いが下を通過。


だが。


空中。


「だったら!」


晴真が身体を捻る。


そのまま。


踵落とし。


「なっ!?」


武尊が。


慌てて後ろへ跳んだ。


ドンッ!!


晴真の踵が。


地面を叩く。


「危なっ!」


武尊が距離を取る。


晴真は。


そのまま追った。


「!」


武尊の表情が変わる。


さらに。


後ろへ。


――逃げる?


晴真が。


追おうとして。


ふと。


止まった。


「…………?」


忠臣の言葉が浮かぶ。


――隙とは、見せるもの。


――後退も誘いになります。


晴真は。


武尊を見る。


――あれ?


追いかけない。


代わりに。


掌を向けた。


「霊撃弾!」


ドンッ!


「えっ!?」


武尊の顔が。


思いっきり引きつった。


――追ってこない!?


身体強化や霊撃など、武術として用いる霊力技は今回の模擬戦でも認められている。


武尊は咄嗟に。


「結界!」


バンッ!


霊撃弾を結界で防いだ。


ドォン!


衝撃。


二人の間に。


再び距離が生まれる。


「…………」


晴真が首を傾げた。


「なんで……」


武尊は。


さっき。


明らかに距離を取ろうとした。


だから。


追いかけた。


すると。


さらに下がった。


でも。


霊撃弾を撃った瞬間。


武尊は。


少し驚いた。


「…………あ」


晴真の目が開く。


「そうか」


追撃してほしかった。


あの後退。


――誘い。


自分がそのまま踏み込んでいれば。


武尊は。


何か返し技を用意していた。


でも。


晴真が突然追撃をやめ。


予想外の霊撃弾を放った。


だから。


仕方なく結界で防いだ。


「状況に合わせて……」


晴真が小さく呟く。


「答えを変える……?」


最初から。


――攻め。


――次は崩し。


そんなふうに。


自分で答えを決めていた。


でも。


「自分勝手に答えを決めてから動いちゃ……」


「駄目なのかな」


その瞬間。


「考え事してる場合か!」


「!」


武尊が。


一気に間合いを詰める。


視線。


晴真の胸元。


「!」


晴真が。


すぐ胸元を防御。


だが。


ガシッ!


武尊が。


防御した腕を掴んだ。


「しまっ――」


一気に。


引っ張り込まれる。


――投げ!?


晴真が投げに備え。


重心を落とす。


だが。


「違う!」


膝蹴り。


「っ!」


晴真は。


片脚を上げる。


ガンッ!


膝同士。


いや。


脛で受ける。


「くっ!」


そのまま。


晴真の脚が伸びる。


蹴り。


武尊の腹へ。


「おっと!」


武尊が腕で受け。


二人が離れた。


「…………」


晴真が。


また考える。


攻め。


守り。


崩し。


誘い。


騙し。


――違う。


――どれ?


――今のは?


――次は?


その時。


観客席から。


声。


「晴真!」


道満だった。


「考えすぎだ!」


「え?」


道満が。


呆れたように言う。


「いつもみたいに」


「好き勝手にやってみろ」


晴真が目を瞬かせる。


「好き勝手?」


「ああ」


「新しく教わったものだけで戦おうとするな」


道満が笑う。


「お前が今まで覚えてきたもの」


「見てきたもの」


「思いついたもの」


「全部使え」


そして。


「いつものお前みたいにやれ」


「…………」


晴真は。


道満を見る。


少し。


考える。


そして――。


笑った。


「うん」


「分かった」


武尊が構える。


「相談終わったか?」


「うん!」


晴真も。


構える。


しかし。


今度の構えは。


さっきまでと違った。


勝田流。


合気術。


将門流。


角来流。


そんな区別を。


一度。


全部頭の外へ出した。


「じゃあ――」


すぅ。


息を吸う。


丹田。


そこから。


一気に。


霊力が全身へ爆発的に巡る。


「霊爆轟身」


ドンッ!!


空気が震えた。


「!」


清盛の目が見開く。


愛理も。


「将門流……!」


晴真の身体能力が。


一気に跳ね上がる。


武尊が。


身構えた。


――速さで来る!


三重の巡らせ。


霊爆轟身。


晴真の爆発的な加速を警戒する。


だが。


晴真は――。


ゆらり。


「……え?」


武尊が固まる。


速くない。


むしろ。


力が抜けている。


ふらっ。


晴真が。


何でもないように。


武尊の間合いへ入った。


「なんだ、この動き……」


剛ではない。


柔。


身体から余計な力を抜き。


流れるように。


ゆらゆらと。


隙だらけ。


「…………」


武尊が警戒する。


だが。


このままでは。


晴真に好きな距離まで入られる。


「なら!」


拳。


晴真の顔へ。


「…………」


晴真は。


スッ。


半身。


拳が通過する。


そのまま。


武尊の腕へ触れる。


――掴む!


「読んでる!」


武尊は。


すぐ反応した。


晴真が腕を掴み。


合気術で投げる。


そう予測する。


重心を落とす。


投げ返す準備。


しかし。


晴真は――。


投げない。


右手。


武尊の腹部。


「霊衝勁」


ドンッ!!


「なっ!?」


武尊が。


慌てて後ろへ下がる。


霊衝勁が。


腹部の寸前を通過。


「危な――」


その瞬間。


晴真の掌が。


もう前を向いていた。


「霊撃砲!」


「うわっ!」


武尊が。


咄嗟に結界を張る。


バンッ!


しかし。


「…………?」


霊撃砲は。


自分へ来ない。


ドォン!!


武尊の。


頭上。


「は?」


武尊が。


思わず上を見る。


「どこ狙って――」


その瞬間。


晴真が。


消えた。


「!」


霊爆轟身による身体能力。


一気に加速。


そして。


跳躍。


武尊の結界へ。


上から。


蹴り。


「はぁっ!」


ドォンッ!!


「その程度の蹴りで!」


武尊が歯を食いしばる。


自分の結界は。


ただの蹴り程度で壊れるほど。


柔くない。


しかし。


「…………え?」


パァァァン――。


結界が。


砕けたのではない。


霧散した。


「なっ……」


柔次郎が立ち上がる。


「まさか」


清盛も目を丸くする。


晴真は。


蹴りが触れた瞬間。


脚から。


霊力の波を放っていた。


相手の霊力へ。


逆らわず。


波としてぶつけ。


相殺する。


柔波掌。


それを。


脚で。


「柔波掌ならぬ――」


柔次郎が呟く。


「柔波脚……」


「また勝手に変えやがった!」


清盛が笑う。


晴真が。


着地。


そのまま。


武尊へ。


両手。


「!」


武尊の身体を掴む。


――投げ!


武尊が。


晴真の手を払いのけた。


パシッ!


「崩した!」


晴真の身体が。


横へ流れる。


「今だ!」


だが。


晴真は。


戻さない。


「あ」


道満が気づく。


晴真は。


崩れた勢いのまま。


くるり。


身体を回す。


裏拳。


「っ!」


その瞬間。


拳に。


霊力。


硬化。


――剛。


「うおっ!」


武尊が結界。


バンッ!


晴真の裏拳。


ドォン!!


今度は。


相殺ではない。


真正面から。


粉砕。


バギィィン!!


「嘘だろ!?」


結界が砕ける。


「剛と柔を……」


剛乃介が。


目を見開く。


「使い分けておる」


武尊も。


負けていない。


結界が砕けた瞬間。


蹴り。


晴真の脇腹へ。


「もらった!」


しかし。


晴真の身体が。


ゆらり。


蹴りの軌道から。


僅かに外れる。


空振り。


柔。


「っ!」


そして。


すぅ――。


晴真の手が。


武尊の腕へ伸びる。


「また掴む気か!」


武尊が。


晴真の手を弾こうとする。


パシッ!


だが。


「…………!」


晴真は。


弾かれた手を。


追わない。


反対の手。


武尊が弾くために伸ばした腕。


その手首を。


ガシッ!


掴んだ。


「え?」


引く。


「うわっ!」


武尊の身体が。


晴真へ引き寄せられる。


――投げ!


そう判断した武尊が。


足を開く。


腰を落とす。


下半身へ。


霊力。


踏ん張る。


「投げられるか!」


その瞬間。


晴真が。


するっ。


武尊の横を通り。


背後。


「え?」


膝。


武尊の膝裏へ。


トンッ!


「っ!?」


踏ん張るために。


下半身へ力を集中させていた。


だからこそ。


ほんの少し。


膝裏を押されただけで。


重心が前へ。


「くっ!」


武尊の身体が。


つんのめる。


「なるほど!」


しかし。


武尊も笑った。


さっき見た。


晴真の動き。


崩されたなら。


その勢いを使う。


「こうだろ!」


くるっ!


振り向きざま。


裏拳。


「!」


晴真の顔面へ。


武尊の拳が迫る。


「…………」


晴真が。


その腕へ。


触れた。


優しく。


添える。


引く。


腰を入れ。


肩を潜らせる。


武尊の勢い。


裏拳の回転。


前へ崩れた重心。


全部。


そのまま。


使う。


――合気術。


「え」


武尊の身体が。


ふわり。


浮いた。


晴真の肩を越える。


「うわぁぁっ!?」


ドンッ!!


背中から。


修練場へ。


投げ落とされた。


もちろん。


最後は晴真が力を抜き。


衝撃を流している。


「…………」


静寂。


武尊は。


空を見上げていた。


晴真は。


武尊の腕を取ったまま。


いつでも次へ移れる姿勢。


「そこまで!」


忠臣の声。


晴真が。


すぐ手を離す。


「武尊君!」


「大丈夫!?」


「…………」


武尊が。


瞬きをする。


そして。


「大丈夫……」


晴真の手を借り。


起き上がった。


「負けたぁ……」


その瞬間。


「うおおおおおっ!!」


周囲から。


大きなどよめきが起こった。


「すげぇ!」


刀也が叫ぶ。


「最後なんだよあれ!」


迅も目を丸くしていた。


「途中から何やってるか分かんなかったぞ!」


美鈴も。


「剣術の時の道満君と全然違う……」


小夜が頷く。


「道満君は組み立てていましたけど」


「晴真君は――」


凛が続ける。


「その場で次々変えてた……?」


「…………」


道満は。


腕を組み。


少し笑っていた。


「そういうことか」


◇


そして。


大人たち。


「…………」


忠臣は。


少し言葉を失っていた。


教えた。


勝田五勢。


攻め。


守り。


崩し。


誘い。


騙し。


しかし。


途中から。


晴真がやっていたものは。


自分が教えた勝田流徒手術。


それだけではない。


将門流。


――霊爆轟身。


――霊衝勁。


角来流。


――剛。


――柔。


――柔波掌を脚へ転用した柔波脚。


そして。


クシナダから学んだ。


合気術。


それらが。


ばらばらではない。


晴真の中で。


状況に応じて。


勝手に繋がり始めていた。


忠臣が。


ぽつり。


「これは……」


その隣。


クシナダが。


眉を上げた。


「…………」


晴真を。


じーっと見る。


そして。


「ありゃなんじゃ?」


「え?」


忠臣が振り返る。


クシナダは。


腕を組んだ。


「勝田流を教えておったのではないのか?」


「そのはずなのですが……」


「途中から」


クシナダが指を折る。


「妾の合気術」


「将門流」


「角来の剛柔」


「それに勝田五勢」


「全部ごちゃ混ぜではないか」


「…………」


忠臣が。


苦笑する。


「ええ」


「私もそう見えました」


剛乃介が。


豪快に笑った。


「はっはっは!」


「わしの剛柔を、好き放題使いおって!」


柔次郎も笑う。


「しかも柔波掌まで脚で使いましたね」


「教えていないはずなのですが」


清盛が。


頭をかく。


「俺の時もそうだったけど」


「あいつ、見た技をそのまま覚えるんじゃなくて」


「使えそうなら形を変えるんだよな」


ミヅチが。


袖で口元を隠す。


「ふふふ」


「まったく」


「晴真らしいではないか」


忠臣は。


その言葉を聞きながら。


晴真の戦いを。


もう一度。


頭の中で振り返る。


最初。


晴真は。


勝田五勢を使おうとしていた。


――攻めをして。


――次に崩す。


――誘いを見抜いて。


――騙しを考える。


一つ一つ。


答えを先に決めていた。


だから。


武尊に後手を踏んだ。


しかし。


道満の一言。


――好き勝手にやれ。


そこから。


晴真は。


変わった。


相手が。


攻撃してきた。


なら避ける。


投げられると思わせた。


なら霊衝勁。


下がった。


なら霊撃砲。


結界を使った。


なら柔で消す。


また結界。


今度は剛で壊す。


弾かれた。


ならその勢いで裏拳。


掴みを警戒された。


なら反対の腕。


投げを警戒して踏ん張った。


なら膝裏。


それを利用して返された。


なら合気術。


「…………!」


忠臣の目が。


僅かに開く。


――そうか。


晴真は。


途中から。


「勝田五勢を使おう」


などと。


考えていなかった。


ただ。


状況を見て。


その瞬間。


自分が持っているものの中から。


答えを出していた。


それは。


勝田流の。


最も根本にある教え。


――技を覚えるな。


――状況を見ろ。


忠臣が。


思わず笑った。


「なるほど……」


クシナダが見る。


「何がじゃ?」


「晴真殿は」


忠臣は。


楽しそうに武尊と話している晴真を見る。


「勝田五勢を覚えたのではありません」


「ほう?」


「勝田五勢を使って――」


少し考える。


「自分の技を整理する方法を、掴み始めたようです」


クシナダの口元が。


にやりと上がる。


「なるほどのぉ」


忠臣も笑う。


「剣は五つ、答えは無数」


「ですが晴真殿の場合――」


合気術。


将門流。


角来流。


陰陽術。


まだまだ。


彼の中には。


数え切れないほどの選択肢がある。


「答えを作る材料そのものが、多すぎるようですね」


「はっはっは!」


クシナダが。


楽しそうに笑った。


「じゃから面白いのじゃ」


◇


一方。


武尊は。


晴真の肩を掴んでいた。


「桜君」


「なに?」


「一個だけ言わせてくれ」


「うん」


武尊は。


真顔だった。


「勝田流の模擬戦だったよな?」


「…………」


晴真。


周囲。


静かになる。


「えっと……」


武尊が指を折る。


「霊爆轟身」


「霊衝勁」


「霊撃砲」


「剛」


「柔」


「柔波脚」


「合気術」


そして。


「最後に勝田五勢」


「…………」


晴真が。


申し訳なさそうに笑った。


「使えるもの、全部使っちゃった」


「それだよ!」


武尊が叫ぶ。


「忠臣様が教えた通りにしすぎなんだよ!」


「ええっ!?」


修練場に。


大きな笑い声が響いた。


そんな中。


忠臣だけは。


嬉しそうに。


静かに頷いていた。


手に剣なくとも。


五勢は変わらず。


そして。


答えは。


一つではない。


晴真はまた一つ。


自分だけの戦い方へ――。


足を踏み入れ始めていた。

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