第二十五話 忍びの意地
実技場の両端。
一組と三組の忍びたちは、一度距離を取って向かい合っていた。
息を整えながら。
互いに次の手を探る。
隼人が額の汗を拭う。
「……やっぱ、やりづらいな」
綾女も静かに頷いた。
「そうだね」
迅は迅雷を肩に担ぎながら笑う。
「響、半端ねぇな」
「それに白夜も厄介だ」
隼人は先ほど凍らされた地面を見る。
「氷って電気通さないんだなぁ……」
「今さら?」
綾女がぼそり。
「いや、知識では知ってたけどよ!」
桔梗も三組側を見る。
「時雨も、いいところで忍術入れてくるし」
茜も続く。
「霞と旭のコンビも息ぴったりだよ」
「でもさぁ」
迅がにやっと笑う。
「なんか――楽しいな!」
「何言ってんだよ」
隼人は呆れたように返す。
だが。
その顔も――。
少し笑っていた。
◇
三組側も同じだった。
響が大きく息を吐く。
「忍び同士の戦いって……」
苦笑する。
「ほんと探り合いだな」
「ああ」
時雨も頷く。
「隼人の洞察力、かなり厄介だ」
一組側を見る。
「あいつ、戦いながらこっちの癖まで見てる」
「しかも指揮も速い」
霞が言う。
「お頭って呼ばれてるらしいね」
旭が笑う。
「妙に似合ってる」
「確かに」
白夜も頷く。
「さて」
五人を見回す。
「次、どうする?」
「うーん……」
霞。
旭。
二人揃って唸る。
響はそんな仲間たちを見て――。
ふっと笑った。
「まあ」
「なるようになるさ」
「それ作戦じゃないでしょ」
霞が笑う。
「響らしいけど」
五人から笑いが漏れた。
◇
一組側。
綾女が隼人を見る。
「どうするの?」
「…………」
隼人は少し考える。
そして――。
迅を見る。
「何だよ、お頭」
「迅」
「おう」
「お前の好きなやつで行くか」
迅の顔が。
ぱあっと輝いた。
「マジで!?」
その横で。
綾女。
茜。
桔梗。
三人が口を揃える。
「えー……」
「なんでだよ!」
「だって迅の好きなやつって」
茜が呆れる。
「だいたい正面突破じゃん」
「今回はちゃんと考えてる!」
「お頭がね」
桔梗が笑う。
「そこ言うな!」
隼人が迅へ指を向ける。
「ただし」
「お前の相手は響じゃない」
「え?」
迅が不満そうな顔をする。
「俺、響とやりてぇんだけど」
「多分お前は――白夜だ」
「なんで?」
「お前の雷でビリビリしてる刀」
隼人は迅雷を見る。
「真正面から受けられるの、あいつくらいだろ」
迅が白夜を見る。
「……なるほど」
「じゃあ響は?」
隼人がため息をつく。
「俺がやるしかないなぁ……」
「おお!」
迅が笑う。
「あれやるんだろ?」
「……それしかないだろ」
「久しぶりに見るな!」
迅の目が輝く。
「あれ、すげえからなぁ!」
隼人は綾女たちを見る。
「綾女」
「茜」
「桔梗」
「うん」
三人が頷く。
「俺、あれ使うとかなり疲れる」
「だから――」
「後は頼むぞ」
綾女が静かに答える。
「任せて」
「じゃ」
隼人が構えた。
「行くぞ!」
◇
最初に飛び出したのは――。
やはり迅だった。
「迅雷――術式解放!」
バチバチバチッ!!
霊装武具の忍刀。
その刀身へ雷が走る。
青白い光が迅の顔を照らす。
「…………」
観覧席の刀也が見て。
ぽつり。
「ちょっと格好いいな」
紅葉も腕を組む。
「……悪くありませんわね」
与一が二人を見る。
太一も見る。
そして。
二人は同時に思った。
(この三人――)
(たぶん格好いいと思う感覚が似てるな)
「何だよ」
刀也が気づく。
「いや、別に」
「何でもない」
◇
迅がさらに霊力を巡らせる。
「立身流――巡らせ!」
全身へ霊力。
その上から。
「風遁――疾風歩!」
ブワッ!!
風が足元へ集まる。
そして――。
「紫電迅雷!」
バシュン!!
姿が消えた。
狙いは――。
響。
「来る!」
響が構える。
だが。
その前へ。
白夜が滑り込んだ。
「やっぱお前か!」
迅が笑う。
白夜も手にした霊木へ霊力を流す。
「寒風流忍術――」
パキパキパキッ!
霊木の周囲へ氷が纏わりつく。
鋭い氷の刃。
「氷遁・氷華刃!」
ギィィン!!
雷の忍刀。
氷の刃。
激突。
「速ぇなぁ、お前!」
白夜はそう言いながらも――。
しっかり受けている。
迅はさらに斬り込む。
右。
左。
上。
下。
ガガガガガッ!!
「こっちは体術専門なんだからな!」
白夜が文句を言う。
「少しくらい手加減しろ!」
「手加減なんかしたら!」
迅が笑う。
「こっちがやられるわ!」
「それもそうだ!」
再び刃がぶつかる。
観覧席。
刀也が目を丸くした。
「あいつ凄えなぁ……」
道満も頷く。
「ああ」
太一は白夜の足運びを見る。
「迅の速さについていってるのも凄いけど」
「剣技もかなり上手いぞ」
「体術と忍術を混ぜるって、ああいうことなんだな」
晴真も楽しそうに見ていた。
◇
一方。
茜と桔梗は――。
霞と旭。
二人を相手にしていた。
ギン!
「旭! 右から!」
霞が叫ぶ。
「分かってる!」
旭が桔梗の刀を止める。
「霞! そっち左!」
「もう少し早く言ってよ!」
「十分早いだろ!」
「遅い!」
ガキン!
口では互いに文句を言いながら。
位置を入れ替え。
互いの死角を補い。
茜と桔梗の攻撃を次々と防いでいく。
茜が呆れた。
「やっぱり二人とも仲いいよね」
「「どこが!」」
霞と旭が同時に叫ぶ。
桔梗が笑う。
「そういうところ!」
「違う!」
「違わない!」
四人の忍刀が激しく打ち合う。
◇
そして。
綾女の相手は――。
時雨。
「綾女」
「時雨」
二人は静かに向かい合う。
従兄妹同士。
幼い頃から。
何度も。
何度も。
忍術の稽古で戦ってきた。
だから――。
「土遁!」
時雨が札へ触れる。
その動きだけで。
綾女は横へ飛ぶ。
ズドン!
次の瞬間。
そこから土の杭が飛び出した。
「……やっぱ避けるか」
「その指の動き」
綾女が答える。
「知ってる」
シュッ!
綾女が苦無を投げる。
時雨は見ることすらせず身体を反らす。
「そっちもね」
「…………」
綾女が呟く。
「やりづらい」
時雨も苦笑する。
「同じく」
互いに。
癖まで知っている。
◇
その時。
綾女がちらりと――。
茜。
桔梗。
二人を見る。
指先を僅かに動かした。
合図。
茜の目が変わる。
桔梗も。
「行くよ!」
「うん!」
攻撃の方向を変える。
霞と旭を押しながら――。
少しずつ。
少しずつ。
白夜の方向へ。
綾女も時雨を誘導していく。
「……?」
時雨が気づいた時には。
遅かった。
白夜。
時雨。
霞。
旭。
四人の位置が――。
一ヶ所へ集まっている。
「まさか!」
響が気づく。
「離れろ!」
だが。
「迅!」
「おう!」
迅が白夜から一気に距離を取る。
そして。
一組の四人が。
四方へ散った。
迅。
綾女。
茜。
桔梗。
四人が一斉に札を構える。
三組側が目を見開く。
「札!?」
「お前ら忍びだろ!?」
迅がにやり。
「忍びだって陰陽術くらい使うぜ!」
四人が同時に霊力を流す。
「四方――!」
地面へ。
四つの桜の紋が浮かび上がる。
「桜花四方封印陣!」
バァン!!
四角形の結界が展開された。
白夜。
時雨。
霞。
旭。
四人が――。
その中へ閉じ込められる。
「なっ!?」
霞が結界へ刀を叩きつける。
「忍者なのに陰陽術って!」
茜が得意げに。
「そうよ!」
桔梗も。
「何でも使えるもん!」
白夜が拳へ霊力を集める。
「この程度――!」
ドンッ!
結界が揺れる。
だが。
破れない。
「硬い!?」
綾女が淡々と。
「春花さんに散々やらされた」
「こういう時のために」
迅は札を維持しながら笑う。
「めちゃくちゃ練習したからな!」
◇
「皆!」
響が駆け出そうとする。
だが――。
シュッ!
その前へ。
隼人が立ちはだかった。
「悪いな」
「お前の相手――」
構える。
「俺だ」
響の表情が変わる。
「……隼人」
「行くぞ」
隼人の両手が動く。
印。
臨。
兵。
闘。
者。
皆。
陣。
列。
在――。
素早く。
次々と手印が刻まれていく。
響が目を見開く。
「それは……」
「青菅流秘伝――九字暗呪法」
最後の印。
「前!」
瞬間。
ドンッ!!
隼人の全身から――。
霊力が爆発した。
「うおっ!?」
観覧席がどよめく。
霊力が。
丹田から。
腕。
脚。
目。
耳。
全身の霊脈へ強制的に巡っていく。
隼人の目が鋭くなる。
音。
匂い。
空気の揺れ。
響の僅かな筋肉の動き。
全部――。
鮮明に感じ取れる。
ダンッ!
隼人が消えた。
「速い!」
四方八方。
右。
左。
背後。
頭上。
響の周囲を凄まじい速度で駆ける。
「こりゃあ……」
響が笑った。
「負けてらんねぇな!」
響も手印を結ぶ。
そして――。
全身へ霊力を巡らせる。
「七曲流忍術――」
ドンッ!!
一瞬。
響の身体が揺らぐ。
「鬼神走!」
爆発的な速度。
バシュン!!
「えっ!?」
茜が封印陣を維持しながら叫ぶ。
「あれ!」
桔梗も目を見開く。
「鬼神走!?」
「首領と皐月姉しかできない技じゃん!」
「響、使えるの!?」
響と隼人。
二人が。
高速のまま――。
激突する。
◇
「霊装武具――」
隼人が腰の依代を二つ抜く。
「双影!」
ブォン!
二本の小太刀が形成される。
さらに。
「術式解放!」
刀身へ黒い霊力がまとわりつく。
まるで影。
光を吸い込むような――。
漆黒の小太刀。
迅が叫ぶ。
「おお!」
「お頭、それ俺の真似だろ!」
「うるさい!」
隼人が走りながら叫ぶ。
「ちょっと格好いいと思っただけだ!」
「やっぱ思ってたんじゃん!」
観覧席から笑いが起こる。
綾女が冷たく言う。
「迅」
「封印陣」
「気を緩めるな」
「はい!」
◇
隼人が二本の小太刀を構える。
さらに――。
「小竹小太刀二刀流!」
二刀。
右。
左。
高速で打ち込む。
ギン!
ギィン!
響は一本の忍刀で受ける。
だが。
一方を受けた瞬間。
もう片方が死角から迫る。
「くっ!」
響は身体を捻り――。
蹴り。
ドン!
隼人が腕で受ける。
その隙へ。
響の突き。
「甘い!」
隼人が小太刀で逸らす。
さらに――。
左の小太刀。
響は首を反らしてかわす。
速い。
あまりにも速い。
だが。
隼人には。
見えている。
九字暗呪法。
それによって脳の処理能力。
身体能力。
五感。
その全てが大幅に引き上げられている。
響の足。
肩。
目線。
刀の軌道。
全てが――。
読める。
「そこ!」
ギンッ!
「くっ!」
響が押される。
刀也が叫ぶ。
「隼人、強え!」
道満も目を細める。
「あれが切り札か」
与一は少し心配そうに見ていた。
「でも……」
「負担が大きそうだ」
その通りだった。
隼人の呼吸が。
少しずつ荒くなっていく。
「はぁ……!」
「はぁ……!」
九字暗呪法は。
強制的に身体能力を引き上げる術。
当然。
長時間は使えない。
隼人自身が。
一番よく分かっていた。
(そろそろだ)
指先が僅かに震える。
(あと一手)
(次で――)
隼人の目が鋭くなる。
(決める!)
◇
「行くぞ響!」
二本の双影を構える。
「小竹小太刀二刀流――!」
霊力が刀身を包む。
「双影の嵐!!」
シュババババババッ!!
「なっ!?」
無数。
そう錯覚するほどの斬撃。
右。
左。
上。
下。
正面。
背後。
漆黒の刃が――。
嵐となって響へ襲い掛かる。
ギィン!
ガンッ!
ギギギギンッ!!
響は必死に受ける。
かわす。
流す。
「くっ……!」
(これを凌げば――)
響も分かっている。
隼人の身体能力強化。
長くは続かない。
(あと少し)
(これを耐えれば、隼人の方が先に限界になる)
だが。
その瞬間。
響の脳裏に。
一つの考えが浮かぶ。
(いや)
目の前にいるのは――。
青菅隼人。
戦いながら。
相手を読み。
その読みすら利用する男。
(こいつが)
(そんな分かりやすい終わり方を用意するか?)
隠し玉。
罠。
その可能性が頭をよぎる。
なら――。
「守るのはやめだ!」
響が一歩踏み込んだ。
「何!?」
隼人が目を見開く。
響が忍刀を引く。
霊力が刃へ集中。
「七曲流忍刀術――!」
踏み込み。
一閃。
「響鳴一閃!!」
ズバァン!!
同時。
隼人の双影の嵐。
響の響鳴一閃。
二つの技が――。
真正面からぶつかった。
ドォォォン!!
爆発するような霊気。
砂埃。
観客席から悲鳴が上がる。
「隼人!」
「響!」
やがて――。
煙が晴れる。
「…………」
二人は。
向かい合って立っていた。
隼人の小太刀が――。
響の喉元へ。
そして。
響の忍刀が――。
隼人の喉元へ。
一歩でも動けば。
互いに届く。
「そこまで!」
与乃の声が響いた。
二人が動きを止める。
「この試合――」
会場が静まり返る。
「引き分けとします!」
一瞬。
静寂。
次の瞬間――。
「うおおおおおお!!」
大歓声。
拍手。
拍手。
拍手。
観覧席が揺れるほどの喝采だった。
「すげえぞ!」
「何だ今の戦い!」
「忍びってあんな動きするのかよ!」
刀也も立ち上がる。
「すげえな隼人!」
晴真も目を輝かせている。
「すごい試合だったね!」
「ああ」
道満も素直に頷く。
「あの二人……どちらも最後まで相手を読んでいた」
奉先も腕を組み。
満足そうに笑った。
「良き試合だ」
舞桜も頷く。
「うむ!」
◇
その時。
隼人の膝が――。
がくっ。
「……っと」
九字暗呪法が切れた。
全身から力が抜ける。
倒れそうになる。
「隼人!」
響がすぐに腕を取った。
「大丈夫か?」
「……わりぃ」
隼人は苦笑する。
「やっぱ、これ疲れるわ」
「無茶するなよ」
「お前に言われたくねえ」
二人が笑う。
その姿を見て。
観覧席から――。
さらに大きな拍手。
一組。
三組。
関係なく。
皆が称えていた。
◇
だが――。
「何を引き分けている!」
冷たい声が。
その空気へ水を差した。
影也だった。
「三組なら勝って当然だろうが!」
正光も鼻で笑う。
「七曲響も所詮その程度か」
「…………」
響の表情が僅かに曇る。
茜と桔梗がむっとする。
迅も睨む。
「こいつら……」
その時。
「影也」
低い声。
麻賀多影行だった。
影也が振り返る。
「先生」
「正光」
「はい」
影行は二人を冷たく見る。
「私語を慎みなさい」
「ですが――」
「聞こえなかったのか?」
「…………」
「試合を終えた生徒を罵倒する暇があるなら」
「自分たちの試合に備えなさい」
「……はい」
二人は黙る。
その様子を見ていた――。
晴真。
道満。
二人は顔を見合わせる。
「……やっぱり」
晴真が呟く。
道満も苦笑する。
「ああ」
「影行先生って……」
「損してるな」
二人が同時に言った。
◇
試合を終えた十人が中央へ集まる。
「ありがとうございました!」
互いに礼。
響は隼人を見る。
「またやろう」
「えぇ……」
隼人は露骨に嫌そうな顔をした。
「もうやりたくない」
「なんでだよ!」
「疲れるんだよ、お前!」
「こっちの台詞だ!」
迅が横から。
「次は俺が響とやる!」
白夜が笑う。
「お前はまず俺を倒してからな」
「望むところだ!」
霞と旭も。
茜と桔梗も。
時雨と綾女も。
さっきまで本気で戦っていたのに。
今は皆。
笑っている。
忍び十人。
敵味方ではなく。
同じ技を学び。
同じ道を歩む者同士。
楽しそうな笑い声が実技場へ響いた。
◇
やがて。
与乃が次の札を確認する。
「続いて――」
「一組、四番!」
「私たちです!」
凛が立ち上がった。
晴真。
凛。
刀也。
豪太。
与一。
五人が前へ出る。
「よっしゃ!」
刀也が三組側を見る。
「影也!」
「来い!」
晴真が苦笑する。
「刀也君、くじだから選べないよ」
「でも来い!」
「聞いてないって」
そして――。
「三組、四番!」
三組の生徒たちが立ち上がる。
「…………」
刀也が固まった。
影也ではない。
正光でもない。
別の班だった。
影也が鼻で笑う。
「ふん」
「命拾いしたな」
「…………」
与一。
太一。
二人が顔を見合わせる。
「アイツ」
与一が言う。
「完全に悪役の台詞だね」
「うん」
太一も頷く。
「見事なくらい悪役だ」
周囲から笑いが起こる。
だが。
刀也だけは。
「くっそぉぉぉ!」
本気で悔しがっていた。
「アイツぶっ飛ばしてやりたかったのに!」
「模擬戦だからぶっ飛ばしちゃ駄目ですよ!」
凛が怒る。
「言い方!」
◇
そして。
晴真は――。
少しだけ緊張していた。
「…………」
いよいよ。
自分たちの番。
夏休み前から。
ずっと。
凛。
刀也。
豪太。
与一。
四人と練習してきた。
指揮役を変え。
布陣を変え。
何度も失敗して。
何度も話し合った。
その全部を。
これから試す。
晴真の肩の上。
桜花が顔を覗き込んだ。
「晴真様」
「ん?」
桜花は人差し指を立てる。
「一つだけ」
「何?」
「やりすぎちゃ駄目ですよ」
「…………」
晴真が困った顔になる。
「分かってるよ」
桜花はじーっと晴真を見る。
「本当に?」
「たぶん」
「たぶん!?」
そして。
桜花はひょいっと晴真の肩から飛び降りた。
「今日はお手伝いできませんから」
「春花さんのところで見ています!」
「うん」
「頑張ってください!」
「ありがとう!」
桜花は小さな身体で駆けていき――。
春花の肩へちょこんと座った。
春花が晴真を見る。
「晴真様」
「はい?」
眼鏡を押し上げる。
キラン。
「加減を忘れないように」
「……はい」
晴真の緊張が。
別の意味で増えた。
「よし!」
凛が四人を見る。
「行きましょう!」
「おう!」
第一班。
ついに――。
その成果を見せる時が来た。




