つまらないので侯爵家へいってみる。
俺達一行はその後森を抜け1週間足らずで次の街、王都へ到着することができた。
嬉しい誤算がいくつかあった。まずは身分証の作成だ。ユリウスの身分を証明するものはなかったがなんと、セシリアが保証人となってくれた。その時ヘレナがギャーギャー騒いでいたが結局セシリアに丸め込まれていた。
2つ目に回復したヘレナは予想以上に使えること。何かとあれば俺に突っかかってくるのは面倒だが、流石は騎士団長と言ったところか、俺が出る間もなく魔物や盗賊共を蹴散らしていくので何もしなくても良かった。
その後セシリアと共に侯爵家別邸へと訪れることになった。なんでもクロムレント侯爵様がたまたま(?)王都へ訪れている為自分と顔を合わせたいそうだ。
まあ簡単に言えば品定めってやつか。ここで俺がどう出るかによって今後の対応が変わるだろう。
「ごめんなさいユリウスさん。お父様がわがまま言って」
「いえ、気にしないでください。大切な娘が知らない男を連れてくるんです。親なら誰だってそうしますよ」
「そう言っていただけると幸いです」
クロムレント侯爵といえば大の親バカとも言われている。あの厳つい見た目とは裏腹に2人の娘を溺愛している。その噂話は社交界でも有名だった。
「……」
セシリアとの2人きりの空間は気まずい。何故か先程からセシリアがチラチラとこちらの様子を伺ってはそわそわしている。なんなんだ??
こういう時ルルが居てくれれば場を繋いでくれて楽なんだが。
「あの、ユリウスさんは以前クラウドに住んでいたとおっしゃいましたよね」
「ええ、まあ。隣町のクラウドで生活してました」
「でしたら『英雄の拠り所』はご存じですか??」
まさかここでその名前を聞くとは思わなかった。クラウドの街は俺達『英雄の拠り所』が拠点を置いている街だ。
「ええ、もちろん知っています」
「でしたら『空席』について何か知っていますか??」
「何故『空席』について知りたいのですか??」
この娘、何故ここで『空席』の名前を出したのか。もしかして俺の正体が『空席』だと気づいた??いや、気付いたのならこんな遠回しな聞き方をしないはず。
手汗を握り締め俺は強く眼光を光らせた。
「実は私、『空席』にお会いしたいのです」
「それは、どうして……?」
「……」
セシリアの様子がおかしい。わざわざ身の上話をするつもりはないのでここは濁しておく。
「すみません。彼の事は詳しく知りません」
「そうですよね。 ごめんなさい、急に変なこと聞いてしまって」
セシリアは落ち込んだ様子で顔を俯かせてしまった。
なんか悪いことした気分だ。
「お嬢様、目的地へと到着しました」
しばらくして馬車が止まるとすぐにヘレナが扉を開けた。
「ありがとう。 ユリウスさん、行きましょう」
先にセシリアが出て行き数秒置いて俺も馬車から降りるとヘレナが近づいてきた。
「お嬢様の様子がおかしい。お前変なことしなかったか??」
「いえ、何もしていませんよ」
「そうか」
思い当たることと言えば『空席』の話をした事ぐらいだ。
正門が開くとクロムレント侯爵家別邸の全体が顕になる。
「お、大きい……」
別邸でも男爵家とは比べ物にならないぐらい広くて大きい。流石世界有数の大富豪だ。レベルが違う。本邸は一体どれくらい大きんだ??
セシリアが先頭に歩き出すのを見て俺は最後尾に着いて歩く。
「お帰りなさいませ、セシリア様」
本館までの道まで数百メートル、道脇にメイドさんや執事さん、庭師や調理師さん達がびっしりと並んで統制の取れたお辞儀をしている様は圧巻だ。ここだけでも200人以上はいる。
セシリア達はこの道中の事を報告しにいくみたいなのでここでお別れする。
「ユリウス様、お時間になるまでこちらの客間の方でゆっくりと寛ぎください」
メイドさんに連れられ客間へと案内される。
椅子に腰掛ける。座り心地も段違いだ。多分この椅子だけで数万Gはしそうだ。
※1G=約アプルの実1つ分
部屋も広いのに掃除がよく行き届いている。壁に掛けられた絵画や骨董品、出されたお茶の茶葉までも一級品だ。ここにあるもの一つでも売ったら一年は遊んで暮らせるだろう。
しばらく時間が経ちメイドさんが呼びに来た。これから応接室へと案内されるとのこと。
少し歩くとメイドさんが立ち止まった。どうやらここが応接室らしい。
硬そうな扉はもはやダンジョンのボス部屋の扉と相違ない。
もう一度自分の身なりを再確認して扉に触れる。
「入りたまえ」
俺は一呼吸おいて部屋の中へと一歩踏み出した。
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