表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

つまらないのでいいカモつかまえてみる。

今日最後の投稿です。

 魔素の乱れを感じた方向へ全力で駆けると上空から数頭の馬にまたがる騎士と馬車の一台。そして喰人鬼(オーガ)の前に立つ若い女騎士が見えた。魔法を放った正体は彼女なのだろう。俺の予感はいつも良くも悪くも当たる。すぐにでも女騎士は殺されそうだ。


 どこかの貴族の護衛だろうが彼女たちは運が悪かった。俺が助ける義理もない。おれは目立ちたくないので立ち去ろうと身を翻そうとした。


「ヘレナッ!! 駄目っ!!」


 彼女の主人なのだろう、馬車の中から顔を出し泣きながら叫んでいる。


「ん? あの子なんか見覚えがあるぞ」


 何処だったか……。そうそう、あれは俺が10歳の頃に貴族のパーティーに誘われた時、俺は興味が無かったがその可愛らしい顔から同年代の男子たちに異様にモテていた女の子にそっくりだ。それにあの馬車の家紋__


「クロムレント侯爵令嬢かっ!! という事はあの女騎士は番犬(ヘレナ)か。見違えすぎだろ」


 何処がとは言わないが彼女たちは見違えるほどに成長していた為一目で分からなかった。あの男子達を蹴散らしまくっていた番犬とは思えないほどだ。


 なぜここに彼女達がいるかはさて置き確かクロムレント侯爵家といえば商業一家から成り上がった家で今でも国の半分以上の商業は侯爵家が所有していたはず。


 俺は思考をフル回転させる。


「あれ、これはチャンスじゃね??」


 俺は打算まみれで今から彼女達を助ける。やばい、笑いが止まらない。


 これこそが悪役っ!! 輝かしい悪役商人への第一歩だ。


 結構考えていたようだ。時間にして数秒だが、今にも番犬が殺されそうになっている。


 そうはさせない。俺の大事なへレナ(交渉材料)を死なせるわけにはいかない。


 俺は高速でヘレナの前に立ち塞がり向かってくる大剣に掌をかざすと大剣に【脆化(ぜいか)】の付与をかける。

 

 大剣は俺の体に当たるとびっくりするぐらい簡単に粉々に崩れ散った。


 蝿でも止まったかな??


 喰人鬼は本当にびっくりしたのだろう。大剣が壊れたという事実に思考が止まっている。そして我に帰り、腕を振り上げ次の攻撃をしようとするまで1秒ほど有した。


 そんだけあれば十分だ。既に奴の心臓に【硬直】を付与済みだ。


 喰人鬼(オーガ)はすぐに口から泡を吹いて後ろへ倒れた。


「何とか間に合ってよかった」


 どうやら俺の大切なヘレナ(交渉材料)は無事だったようだ。専属護衛騎士の命の危機を救ったのだ、これで侯女様も助かるわけだ。俺が今から言うお願いも無視できないはずだ。


 やばいニヤケが止まらん。まずいまずい、ここは怪しまれないようにアイツらをお手本にして優しく安心してもらえるような笑顔で接しないと。


 今後の為にも第一印象が重要だからな。


「ヘレナッ!!」


 おっと、()()(いいカモ)のご登場だ。


 セシリアはドレスが汚れるのも気にしない様子でヘレナの元へと駆けつけた。


「大丈夫っ!? 怪我は」

「お嬢様、私は大丈夫です」

「よかった……。本当に心配したんだから」


 セシリアがヘレナに泣きながら抱きついた。


 おっと、俺はこういう感動のシーンは苦手なんだ。至極どうでもいい__ゲフンッゲフンッ貰い泣きしそうだから早めにこの場の雰囲気を変えないと。


「すみません、大丈夫でしたか??」


 さっきはスルーされたけど今度こそ完璧な営業スマイルで彼女達へと話しかける。


「おまえ、見るからに怪しい奴めッ!!何者だ」

 

 ヘレナがヨロヨロと地面から剣を抜き俺へと突きつける。


 えっ? なんで??


「あのぉ、そこに倒れているオーガ、倒したのじぶんなのですが」

「それは見たらわかるっ! こっちはお前が何者かと聞いているんだ」


 何だこいつ、せっかく助けてやったのにムカつく奴だな。失礼極まりない。


「やめなさいヘレナッ!!」


 どうやら俺がいることに気がついたセシリアは袖で涙を拭き、無礼な番犬を叱りつけた。


「この方は確かに何処からどう見ても怪しいですが、間違えなく私達を助けてくれました。クロムレント侯爵家としてそれ以上の非礼は許しませんッ!!」


 いや、アンタが一番非礼だよっ!!っていう言葉は何とか飲み込んだ。


「しかし、お嬢様! この森に武器も持たない男が汚い笑みを浮かべている。しかも目が細い。怪しすぎます!!」


 誰が汚い笑顔だ。完璧なスマイルだろ。目が細いのは仕方ない。


「ヘレナ、私を信用できませんか??」

「申し訳ございません」

「謝る相手がちがうでしょ」

「うっ、それは……」


 おれは何の茶番を見せられてるんだ。確かにこの茶番を始めたのはおれだけど。


 ヘレナは俺へと向き直り素直に頭を下げた。


「すまなかった」

「私の方からもお詫び申し上げます。それから私どもを助けていただきありがとうございました」


 まさかセシリアまで頭を下げるとは思わなかった。貴族という立場上平民に向けて頭を下げる行為はそれは社会的に傷となる。それだけ深く感謝しているということ。


 フフフッ 計画通りだ。


 また自然と頬が上がるのを感じる。いかんいかんここは大事な場面だから気を引き締めないと。悪役というもの同じ失敗はしない。


 俺は更に顔に力を入れる。


「お、怒ってらっしゃるのは当然ですね。謝罪も兼ねてお礼をいたします。叶えられるものなら極力用意いたします。何でもおっしゃってください」


 何故かセシリアは恐怖の表情を見せているがまさかこんなにも簡単に交渉が進むとは思っていなかった。これも日頃の行いというやつか。


「すみません、お言葉に甘えて一つお願いがあります」

「なん、でしょうか?」

「私は名をユリウスと言います。見た通り、商人見習いでしてこの先商業ギルドにて商人の登録をしたいと考えております。ですが、新参者故商業をするに邪魔をする者も出てくると思いまして」

「つまり、クロムレントの名を借りたいと」


 さすがクロムレント侯爵家のご令嬢さまだ。俺が言いたいことを瞬時に理解しているようだ。因みにユリウスは偽名だ。


 俺は言葉では返さずにっこりと笑って見せた。


 クロムレントの名を借りる。言葉だけ聞くと簡単なお願いに聞こえる。しかし実際はとても難しい。


 例えば俺が根の腐った悪党だとしよう。その俺がクロムレントの名を使い悪行という悪行を行うと責任は何処へ行く。もちろん俺自身だが、その責任はクロムレントにも問われる。つまり後ろ盾になるということだ。もちろん双方メリットもある。こちらとしては厄介な問題を丸投げできたり、俺を陥れようとする面倒な輩も近づいて来なくなる。逆に侯爵家にとっては俺の毎月の売り上げから数割侯爵家に納めないといけなかったり、俺の店が有名になった際のブランドとなり箔がつく。


 まあ身の知らないぽっと出の男にそんな信用なんてないに等しい為、そう易々と貸すことができないのは間違いない。断られること前提で交渉するのだ。

 

 どうせ断られた際の交渉材料はもっと他にもある。


「わかりました」


 そうそうまずは断られてっと。


「えっ??」

「いけません、お嬢様!! 侯爵様の了承も得ずに勝手に判断されては。それも見ず知らずの不審な男になどと」


 あまりに簡単にお願いが通ったので呆気にとらわれる。


「ですが条件があります」


 やはり条件を出してきたか。まぁそこら辺も予想済みだ。


「どのような条件でしょうか??」

「商人となられるお方なら回復薬は持っていると思うのでヘレナとその他の騎士様全員の回復を、それからもしよろしければ王都までの護衛をお願いいたします」

「それだけですか??」

「ええ、それだけです」

「わかりました」


 まさか、こんな事で交渉成立できるなんて思っても見なかった。そんなのお茶の子さいさいだぜ。


「お嬢様っ!! そんな簡単な条件で__」

「ヘレナ、私は貴方たちが一番何よりも大切です。貴方達が無事ならそれだけでいいんです。それが今日身に沁みて実感できました。それに私はこの方を信じることに賭けます。何としてもお父様を説得させてみせます」

「お嬢様…!」


 な、なんて良い子なんだセシリアッ!!

 

 まるで、まるで__カモがネギを背負って(聖女様)きたみたいだ。


 いいぞ、いいぞ。 全てうまくいっている


 俺はほくそ笑みながら麻袋から回復薬を数本取り出し全員に渡し回った。

面白かったらいいねと高評価お願いします!!


誤字、脱字や文章がおかしいと感じたらぜひコメントください!!


初心者なので優しくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ