081 力の継承
「他に聞いておきたいことはあるか?」
俯き黙りこくる私に王竜は訊ねる。
まるで今この場ですべての疑問を解消しておかなければならないようだ。
思いつく限りではもう疑問はないはずだが、念のために情報を整理する。
「——一つだけ良いかい? 私は次の王種会議までこの谷を出られないのかい?」
私に科せられた罰は火竜を育てることと、王竜の力を預かること。
火竜を育てることを優先すれば谷にずっといることになるだろう。
すると、王種を探しに出ることができない。
どうすれば良いのだろうか。
「なにもそのようなことはない。今はまだ目が離せんが、いずれしばらく離れていても問題ないようになろう。そうなればお前もここから離れて自由に行動しても良い」
「その判断は私に委ねる……ってことかい?」
「うむ。ただしずっと離れているのは許容せん。火竜から離れるのはあくまで必要に応じてだ。それから、火竜もある程度育てばこの谷から出て本来いるべき場所へ行くことになる」
本来いるべき場所——つまり、私が火竜と戦った南部地域の火山へいつか居を移すということだろう。
ここから南部地域は王国を縦断することになる。
相当な大移動だ。
かなり育ってからのことになるのだろうか。
「その移動はいつになるんだい? ある程度と言っても数年後とかそんな話ではないだろう?」
「そうだな。その時が来れば火竜が自覚する。お前はそれに従えば良い」
それがいつになるのかは王竜でもわからないということだろう。
しかし、ある程度は私の判断で動けることはわかった。
ある程度自力でできるようになれば、一時的にでも谷を出て王種を探すなり、王都に帰ることもできそうだ。
そっとつけたままのピアスに触れる。
もう帰ることはできないと思っていたから、またユーリスに会えるのだと温かい気持ちになる。
——はやくユーリスに会いたい。そんな思いが溢れてくる。
「わかったよ。もう聞いておきたいことはないよ」
「そうか。では、お前に力を預けよう」
そう言った王竜は深呼吸するように大きく息を吐きだした。
少しの間瞑目して、決意したように目を開けた。
途端に私の体が炎の中に入ったかのように熱くなる。
外側から焼かれるかのような感覚だ。
程なくして内側からも迫り上がってくるような熱に襲われる。
吐き出す息など火炎なのではないかと思える。
口の中が焼けてしまったのかいつしかその感覚もわからなくなった。
「アァ、ガッ……アアァ……」
無意識に漏らした声は自分のものではないようだ。
次第に息苦しくなっていき、崩れるように倒れた。
かろうじて腕で体を支えられたがそれも長くは保たないだろう。
視界は霞み、意識も朦朧としている。
私は果たして役目を果たせるのだろうか……。




