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底辺薬草配信者、怪我した激カワネッコを拾ったらダンジョン配信が大変なことになりました  作者: 水源


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10/11

超高級素材を猫の首輪にしたいんですけど!

 しばらくすると、チビちゃんの震えは収まってきた。けれど、脚の痛みはまだ引かないらしく、立ち上がると片方の後ろ脚をかばってしまう。あの驚くほどの速さでは、今の状態でダンジョンを移動するのも難しいだろう。


 私は岩陰にしゃがんだまま、チビちゃんの様子を見つめて、小さく息をついた。


「……このまま、ここに置いていくわけにはいかないよね」


 探索者協会に保護を頼む方法もあるけれど、今は私のそばでようやく落ち着いてくれたところだ。知らない人が来たら怖がって逃げようとするかもしれないし、脚を痛めたまま一匹で暮らすのは危険だ。まずは家へ連れて帰り、落ち着いたら協会に相談しよう。


 私はチビちゃんと目線を合わせ、指先をそっと差し出した。


「うちで休んでいく? ルゥもいるし、ご飯もあるよ。脚が治るまで、ゆっくりしていけばいいからね」


 チビちゃんは、じっと私を見つめた。少し離れたところで様子を見ていたルゥが、耳をぴんと立てて、興味津々で近づいてくる。


「みゃっ!」


 尻尾をぶんぶん振りながら、チビちゃんへ鼻先を伸ばそうとするルゥ。私は手のひらを上げて、そっと制した。


「ルゥ、待って。この子、まだちょっと怖いみたいだから」


 ルゥはぴたりと止まって、首を傾げた。


「みゃう?」


 すると、チビちゃんも、つられたように同じ向きへ首を傾げた。


「……ふふっ。可愛いね」


 私は思わず頬を緩めた。まだ仲良しとは言えないけれど、少しずつ慣れていけばいい。


 キャリーのタオルを整えて、チビちゃんをそっと中へ入れる。最初は身体を固くしたものの、暴れて逃げようとはせず、タオルの匂いを確かめてから丸くなった。


「ここなら柔らかいからね。少し休もう」


 私はキャリーの扉を静かに閉めて、穏やかな声でそう言った。


 足元にルゥがすり寄ってくる。私はその頭を撫でながら、にっこり笑いかけた。


「今日はお友達が増えるかもしれないね」


「みゃっ!」


 元気な返事に笑いながら、私は採取道具を片づけようと、配信画面に目を向けた。すると、コメント欄に気になる書き込みが流れていた。


 〈ひよりさん、蜘蛛のドロップ品を回収して!〉


 〈あの銀色の糸、スパイダーシルクじゃないか? 本物なら超高級素材だぞ!〉


「えっ? ドロップ品?」


 私はきょとんとして、蜘蛛が消えた場所を振り返った。


 そこには、大きな魔石と銀白色の糸の束が残されていた。キャリーを安全な場所に置き、糸を持ち上げてみる。驚くほど軽いのに、指に巻きつけて引っ張っても、簡単には切れそうにない。


「これ、普通の蜘蛛の糸とは違うんですね」


 私は糸の束をカメラへかざして見せた。


 〈大型の蜘蛛型モンスターからしか採れない希少素材だよ〉


 〈軽くて丈夫で魔力の通りもいい。高級装備や魔法道具に使われるんだ〉


「へえ……それなら、ルゥとこの子の首輪にいいかもしれませんね!」


 ぱっと顔を輝かせて、胸の前で手を叩いた。


 〈待ってwww 超高級素材の使い道が猫の首輪!?〉


 〈防具職人が聞いたら卒倒するぞw〉


「えっ? だって、軽くて丈夫なんですよね? 二匹ともダンジョンで元気に動き回るでしょう? 普通の首輪だと傷んだり、どこかに引っかかったりするかもしれませんし」


 私は首を傾げて、指を一本立てながら説明した。


 〈言ってることは正しいんだけど、素材の価値を考えてw〉


「全部を使う必要はないですよね。少しだけ加工してもらえば、二匹分くらい作れるかな?」


 糸を指で挟んで、「このくらい」とカメラに示す。


 〈加工してもらう前提なの草〉


 私は二匹が首輪をつけて並ぶ姿を想像した。ルゥには翼や毛並みに似合う可愛いものを、チビちゃんには黄色い体と黒い斑点が映えるものがいい。お揃いの飾りがあっても素敵だろう。


「あっ、でも、首輪ってどこかに引っかかったときに外れるようにしたほうがいいですよね? 安全面も詳しい人に相談してみます」


 はっとして口元に手を当てた私に、コメントが流れた。


 〈そこはちゃんと考えてるw〉


 〈素材の使い道はともかく、安全面は大事!〉


「まずは探索者協会で鑑定してもらいますね。首輪に使えるかどうかも聞いてみます」


 真面目な顔で頷くと、すぐにコメントが返ってきた。


 〈鑑定結果を聞いても首輪にする気なの草〉


 私はスパイダーシルクをケースに収納し、大きな魔石も回収した。


「すみません。今日は予定より早いですが、ここで配信を終わりますね。怪我をした子を保護したので、家に連れて帰って休ませてあげたいと思います」


 カメラに向かって、軽く頭を下げる。


 〈もちろん! 子猫ちゃん、お大事に!〉


 〈ルゥちゃん、お姉ちゃんになるのか!?〉


 〈スパイダーシルクの鑑定結果も教えて!〉


「はい。鑑定してもらったら、またお話ししますね。それでは、皆さん、また次回!」


 私は笑顔で手を振って、配信を終了した。


 * * *


 ダンジョンの出口へ向かう間、私はキャリーを慎重に運んだ。ルゥもそばを歩いたり、短い距離を飛んだりしてついてくる。


「ルゥ、今日はゆっくり歩こうね。もうすぐお家だからね」


 足元のルゥに笑いかけると、ルゥは尻尾をぴんと立てて、「みゃっ」と短く返事をした。


 キャリーの中のチビちゃんは、時々こちらを見上げた。まだ警戒心は残っているけれど、さっきより安心しているようだった。


 * * *


 家に着くと、私は玄関で靴を脱ぎながら声を張った。


「ただいまー!」


 ルゥが先に部屋へ駆けていき、「みゃっ!」と元気に返事をする。


 私は静かな場所に寝床を用意し、柔らかなタオルと水、食事を置いた。チビちゃんは、周囲を見回している。そこへルゥがぽてぽてと近づくと、びくっと身を縮めた。


「あっ、ルゥ。この子はまだ慣れていないから、そっと見守ろうね」


 私はルゥを軽く抱き留めて、耳元でそっと言った。


「みゃう?」


 ルゥは首を傾げたまま、おとなしく私の腕の中に収まった。


 私はチビちゃんのほうへ向き直り、穏やかに微笑みかけた。


「大丈夫だよ。ルゥも悪い子じゃないからね」


 チビちゃんは、少しだけ身体の力を抜いた。脚はまだ痛むらしいので、今は無理をさせずに休ませよう。


「……そうだ。いつまでもチビちゃんって呼ぶのも、ちょっと変だよね」


 私は顎に指を当てて、チビちゃんをじっと見つめた。黄色い体に黒い斑点。チーターみたいな姿で、あの驚くほど速い足。元気になれば、また走り回る姿を見せてくれるだろう。


 ぱっと顔を明るくして、寝床の前にしゃがみ込む。


「チーターみたいだから……チィ、っていうのはどうかな?」


 チビちゃんは、私を見つめたまま、ゆっくりと頭を持ち上げた。そして、差し出した指先に、小さな鼻先をちょんと触れさせた。


「……気に入ってくれた?」


「みゃっ」


 小さく、でもはっきりとした声が返ってきた。


「そっか。じゃあ、今日からチィだね!」


 私は嬉しくなって、そっと頭を撫でた。昨日は指先に鼻をつけるだけだったのに、今日は自分から近づいてくれた。少しでも信頼してくれたのなら嬉しい。


 その夜、ルゥはチィの寝床から少し離れた場所に座って、様子をうかがっていた。チィはまだ少し警戒していたけれど、私が近くにいると、逃げようとはしなかった。


「二匹とも、仲良くなれるといいね」


 私は二匹の間に座って、それぞれの頭を順番に撫でた。


 ルゥは甘えん坊で、チィは臆病。性格は違うけれど、どちらも可愛い大切な子だ。明日は探索者協会でチィの脚を診てもらい、スパイダーシルクも鑑定してもらおう。


 * * *


 翌朝。


「よし、今日は探索者協会に行こう!」


 私が声をかけると、ルゥは元気いっぱいに「みゃっ!」と鳴いた。チィも毛布の端から顔を出して、小さく「みゃう」と続く。


 元気いっぱいのルゥと違って、チィはまだ後ろ脚をかばっている。それでも食事と水は口にしてくれたし、夜も比較的落ち着いて眠っていた。


 ルゥが嬉しそうに近づくと、チィはびっくりして、タオルの中へ潜り込んだ。


「ルゥ、もう少し静かにね。チィはまだ怪我が治っていないんだから」


 私はルゥの前にしゃがんで、人差し指を口元に当てた。


「みゃう……」


 ルゥは耳をぺたんと伏せて、しょんぼりと座り込んだ。


「嫌われているわけじゃないよ。これから少しずつ仲良くなればいいんだから」


 背中を撫でて笑いかけると、ルゥは耳をぴんと立て直して、「みゃっ!」と返事をした。


 私は、チィをキャリーに入れて、出かける準備を整えた。今日はチィの脚を診てもらい、昨日拾ったスパイダーシルクの鑑定もお願いするつもりだ。


「それじゃ、二匹とも出発しようね!」


 ルゥが「みゃっ!」と元気に鳴いた。キャリーの中からも、小さく「みゃう」と返事が聞こえた。


 * * *


 探索者協会に着くと、受付の職員さんが笑顔で迎えてくれた。


「おはようございます、小鳥遊さん。本日はどうされましたか?」


「昨日、ダンジョンで蜘蛛型モンスターを倒したら、魔石と一緒に糸の束がドロップしたんです。鑑定してもらえますか?」


 私はカウンターにケースを置き、そのとなりに大きな魔石も並べた。


 銀白色の糸を見た瞬間、職員さんは手を止めた。眉が小さく動く。


「……こちらは?」


「スパイダーシルクだそうです。配信中に視聴者さんたちが教えてくれたんですよ」


 私が首を傾げて答えると、職員さんは魔石と糸を何度か見比べた。


「少々お待ちください。専門の鑑定担当を呼んでまいります」


 慌てた様子で奥へ向かう背中を見送っていると、ルゥが足元にすり寄ってきた。


「みゃっ」


「大丈夫だよ。ちょっと確認してくれているだけだからね」


 しゃがんで頭を撫でると、ルゥは気持ちよさそうに目を細めた。


 やがて戻ってきた鑑定担当の職員さんは、白い手袋をはめた指で糸を摘まみ上げ、光にかざした。その目が、みるみる見開かれていく。


「これは間違いなくスパイダーシルクですね。しかも、かなり品質がいい。太さが揃っていて損傷も少なく、魔力の通りも強度も十分です。これほど状態のよいものがまとまって残るのは珍しいですね」


「そんなにすごいものなんですか?」


 私はきょとんとして、職員さんの顔を見上げた。


「高級防具や魔法道具の材料として、十分に価値がある品です。正式な評価額は取引記録などを確認して算出します」


 職員さんは、少し声を落として答えた。


 私は糸の束を眺めて、ぱっと顔を輝かせた。やっぱり、二匹の首輪にぴったりなんじゃないだろうか。


「あの、これで猫の首輪を作ることはできますか?」


「……猫の首輪、ですか?」


 鑑定担当の職員さんは、手袋をはめた手を宙で止めた。


「はい! ルゥとチィの首輪です。二匹ともダンジョンで動き回るので、軽くて丈夫な素材なら長持ちしそうだなと思って」


 胸の前で両手をぎゅっと握って、力強く頷く。


 隣で聞いていた受付の職員さんが、そっと天井を見上げた。


 鑑定担当の職員さんは、咳払いをひとつして、視線を少し泳がせた。それから、言葉を選ぶようにゆっくりと答える。


「装備素材としての利用が一般的ですが、加工そのものは可能だと思います。必要な量や加工方法によりますね」


「全部を使わなくても、少しだけで作れますよね?」


 私は指先で「ちょっとだけ」の形を作って見せた。


「まずは職人に見積もってもらうのがよいでしょう。協会で扱っている高級素材に詳しく、スパイダーシルクを使った装備の製作経験もある職人をご紹介できます」


「本当ですか! ぜひお願いします!」


 私は思わず身を乗り出した。


「小鳥遊さん、本当に二匹のことが大好きなんですね」


 職員さんは、微笑ましそうに目を細めた。


「はい! とっても可愛いですから!」


 胸を張って答えると、職員さんは笑みを浮かべたまま、首輪の安全性についても説明してくれた。ダンジョンで使うなら、引っかかったときに外れる仕組みや、首に負担がかからない構造が必要らしい。


「そこも職人さんに相談します。丈夫なだけじゃ危ないですもんね」


 私は真剣な顔で頷いた。


「では、正式な鑑定結果が出たら、必要な量も含めて相談してみましょう」


「ありがとうございます!」


 首輪ができるかはまだわからないけれど、一歩前進だ。


 * * *


「そうだ、もう一つお願いがあるんです。この子の脚を診てもらいたくて」


 私はチィの入ったキャリーを持ち上げて、少し声を落とした。


「それと……資料にあった、小型の未確認生物って、この子かもしれなくて。昨日、蜘蛛に襲われているところを保護したんです」


「……えっ?」


 受付の職員さんの表情が、はっと引き締まった。


「接近せず連絡を、って書いてあったんですけど……放っておけなくて」


 私は肩をすくめて、申し訳なさそうに言った。


「状況を考えれば、仕方のない判断だったと思います。図鑑にない種類であれば、協会としても確認が必要ですが……まずは、脚の治療を優先しましょう」


 職員さんは、苦笑いを浮かべながら、診察のできる部屋へ案内してくれた。


「チィ、ちょっと診てもらおうね。怖くないからね」


 職員さんがキャリーを開けると、チィは不安そうに耳を伏せた。私はそばにしゃがみ、指先を差し出す。


「ここにいるからね」


 チィは鼻先で匂いを確かめ、ちょんと私の指に触れた。それから少し力を抜いて、診察を受け入れてくれた。


「小鳥遊さんには、ずいぶん安心しているんですね」


 診察していた職員さんが、優しく目を細めた。


「そうだったら嬉しいです。少しずつ慣れてくれたらいいなって」


 私は照れて頬をかいた。


 脚の状態を確認した職員さんは、骨に大きな異常は見当たらず、捻挫に近い状態だろうと教えてくれた。ただし、完全に判断するには経過を見る必要があるという。


「しばらくは安静にしてください。無理に走らせたり、高いところへ跳ばせたりしないこと。痛みが続くようなら、改めて診察を受けてくださいね」


「わかりました。よかった……!」


 私は胸を撫で下ろして、チィの頭をそっと撫でた。


「怖かったね。よく頑張ったね」


「みゃっ!」


 ルゥが元気よく鳴いて、私の膝に前足をかけた。自分も撫でてほしいらしい。


「はいはい。ルゥも頑張ったね」


 笑いながら撫でてあげると、ルゥは気持ちよさそうに目を細めた。チィは、その様子をじっと見つめている。二匹の距離が、ほんの少し縮まった気がした。


 首輪作りについては、素材の確認と見積もりを職人さんにお願いすることになった。日程が決まったら連絡をくれるそうだ。


 * * *


 帰宅すると、二匹の様子を確かめてから、配信機材を準備した。昨日の配信は、スパイダーシルクを拾ったところで終わっている。視聴者さんたちも、その後が気になっているはずだ。


「こんにちは、小鳥遊ひよりです! 今日は昨日の配信の続きを、簡単に報告しますね」


 〈待ってました!〉


 〈スパイダーシルクどうなった?〉


 〈チィちゃんは大丈夫?〉


「チィの脚は、協会で診てもらって、しばらく安静にすれば大丈夫そうです。スパイダーシルクも、高品質だと確認してもらえました」


 私は指を折りながら、カメラに向かって報告した。


 〈よかった!〉


 〈本当に首輪にするんだwww〉


「ふふっ。それは、職人さんと相談してからですね。それより、チィが皆さんに会いたそうなので」


 私はチィの寝床にカメラを向けて、そっと声をかけた。


「チィ、皆さんにご挨拶してみる?」


 チィは少しだけ顔を上げて、小さく「みゃっ」と鳴いた。


 〈かわいいいい!〉


 〈まだちょっと緊張してるね〉


「まだ慣れていないので、そっと見守ってあげてくださいね」


 そこへ、ルゥが画面の前を横切った。尻尾をぴんと立てて、「みゃっ!」と元気に鳴く。


 〈ルゥちゃんも来たw〉


 〈お姉ちゃん、チィちゃんをよろしくね!〉


「ルゥ、近すぎるよ。チィをびっくりさせちゃ駄目」


 私は苦笑しながら、ルゥの背中をぽんぽんと軽く叩いた。


「みゃう?」


 ルゥは首を傾げたあと、ふと動きを止めた。寝床から顔を出したチィと目が合ったのだ。ルゥは近づきすぎず、その場にちょこんと座った。チィも、逃げなかった。


「……あっ、少し仲良くなれそうかな?」


 私は声を潜めて、画面に向かってささやいた。


 〈ルゥちゃん、ちゃんと待ってる!〉


 〈チィちゃんも逃げなかった!〉


「ふふっ。二匹とも、えらいね。それでは、今日はこのくらいで! また次回!」


 私は笑顔で手を振り、配信を終えた。


 * * *


 夕方、チィの寝床を整えていると、探索者協会から通知が届いた。


「来た!」


 私は慌ててスマートフォンを手に取った。画面には、正式な鑑定結果が記されていた。


 ――高品質スパイダーシルク。協会基準による評価額、六百万円相当。


「……ええっ!?」


 思わず声が出た。スマートフォンを両手で持ち直し、画面を二度見する。六百万円。昨日、蜘蛛を倒した場所に落ちていた糸の束が、そんな価値のあるものだったなんて。


「ろ、六百万円……」


 足元でルゥが、不思議そうに首を傾げている。


「みゃう?」


「ルゥ……あなたの首輪、六百万円の素材になるかもしれないよ……」


 私は呆然として、ルゥに話しかけた。もちろん、二匹の首輪に全部を使うつもりはない。必要な量を見積もってもらい、安全に加工できるか確認してから決めればいい。


「うん。無駄遣いにならないように、ちゃんと相談しよう」


 そう自分に言い聞かせていると、もう一通、協会から連絡が届いた。紹介予定の職人さんからの伝言だった。


 ――スパイダーシルクを猫用の首輪に加工したいと伺いました。素材を拝見し、ご希望を直接お聞きしたいので、明日、工房までお越しいただけますか。


「わあ! 明日、職人さんに会えるんだ!」


 私は二匹の前にしゃがんで、にっこり笑いかけた。


「ルゥ、チィ。明日は首輪の相談に行こうね!」


 ルゥは「みゃっ!」と元気に返事をして、チィは寝床から顔を上げて、小さく「みゃう」と鳴いた。私は順番に、二匹の頭を撫でた。


 六百万円相当の素材で、二匹の首輪を作る。そう話したら、職人さんはどんな顔をするのだろう。少し不安だけれど、それ以上に楽しみだった。

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